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EUの労働法政策

2022年9月14日 (水)

EUの強制労働生産物の流通禁止規則案

本日、欧州委員会は強制労働による生産物がEU市場で流通することを禁止する規則案を提案しました。

https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_22_5415

The Commission has today proposed to prohibit products made with forced labour on the EU market. The proposal covers all products, namely those made in the EU for domestic consumption and exports, and imported goods, without targeting specific companies or industries. This comprehensive approach is important because an estimated 27.6 million people are in forced labour, in many industries and in every continent. The majority of forced labour takes place in the private economy, while some is imposed by States. 

欧州委員会は本日、EU市場における強制労働による生産物の流通を禁止する提案を行った。本提案はすべての生産物、すなわちEUの域内消費用、輸出用、及び輸入品に、特定企業や産業に限ることなく適用される。この包括的アプローチは、多くの産業や大陸において2760万人もの人々が強制労働させられていると推計されるが故に重要である。強制労働の多くは民間経済で生じているが、国家により課せられているものもある。・・・

日本でも人権デューディリジェンスの動きがひっそりと始まったばかりですが、EUではかなり強硬な政策が続々ととられ始めています。

 

 

 

本日、欧州議会が最低賃金指令案を可決

20220909pht40127cl 6月に欧州議会と閣僚理事会の間で合意されていた最低賃金指令案が、本日欧州議会の総会で、賛成505、反対92、棄権44で可決されたようです。

https://www.europarl.europa.eu/news/en/press-room/20220909IPR40138/parliament-adopts-new-rules-on-adequate-minimum-wages-for-all-workers-in-the-eu

Parliament adopts new rules on adequate minimum wages for all workers in the EU
遠からずEU官報に掲載されて、正式に公布されることになると思われます。

 

2022年6月28日 (火)

EU労使が「つながらない権利」協約に向けた作業計画に合意

誤解のないようにあらかじめ言っておきますと、明日調印されるのは欧州経団連、欧州労連などEU労使団体間の作業計画であって、そこに将来の作業予定が並んでいるにすぎません。ただ、その一つとして、「テレワークとつながらない権利」というのが入っているようなので、やや将来のはなしではありますが、労働法の観点から興味を惹かれます。

https://www.etuc.org/en/pressrelease/european-unions-and-employers-sign-historic-deal

European trade unions and employers will tomorrow sign a work programme, including to negotiate a legally binding agreement on ‘Telework and right to disconnect’.  

欧州の労働組合と使用者団体は明日(ってのは今日ですが)法的拘束力のある「テレワークとつながらない権利」に関する協約を交渉することを含む、作業計画に調印する。

Telework and right to disconnect

Review and update the 2002 Autonomous Agreement on Telework to be put forward for adoption as a legally binding agreement implemented via a Directive.

This is a key signal that the European social partners are committed to be key actors to shape the future labour markets functioning, and the first time such an agreement would be implemented as a Directive since 2010.

こちらが法的拘束力ある指令を目指しているのに対し、近年AIとの関係で注目されている「プライバシーと監視」については、労使合同セミナーの開催とガイドラインという目標になっています。

Work related privacy and surveillance

Joint seminar and guidelines on workplace monitoring and surveillance technologies to exchange views on the trends and their relevance for social partners and collective bargaining at all appropriate levels across Europe.

(追記)

日本時間の29日14時、欧州時間ではまだ早朝なので、欧州労連のHPにはまだ出ていませんが、欧州経団連のHPには既に載っています。

https://www.businesseurope.eu/sites/buseur/files/media/reports_and_studies/2022-06-28_european_social_dialogue_programme_22-24_0.pdf

Telework and right to disconnect 

In 2002, the European Social Partners reached their forward-looking agreement on telework, defining telework, which was then a new form of organising and/or performing work in the context of an employment relationship. This agreement addressed issues such as, provision of equipment and health and safety, as well as establishing that teleworkers have the same employment conditions as workers who work in the employers’ premises.
One of the key challenges going forward is for the social partners to take stock of the digitalisation developments and the learnings from the sanitary crisis on telework, in light of their existing agreement of 2002 which laid the foundation for social dialogue and collective bargaining on voluntary telework solutions. This includes the issues such as hybrid work, the right to disconnect, organisation of work in particular the management of online workers and the link with working-time, health and safety, work life balance, surveillance, privacy, and data protection. 

INSTRUMENT:
Review and update of the 2002 Autonomous Agreement on Telework to be put forward for adoption in the form of a legally binding agreement implemented via a Directive1 

というわけで、「つながらない権利」はハイブリッドワークからデータ保護に至るさまざまな論点の一つという位置づけです。ただ、明確に「指令によって実施される法的拘束力ある協約」といっているので、現在の自律協約から指令に移行することは確かなようです。

 

2022年6月 8日 (水)

EU最低賃金指令に理事会と欧州議会が合意

昨日、EUの閣僚理事会と欧州議会が最低賃金指令案について政治的合意に達したというプレスリリースが両機関のサイトに同時にアップされています。

https://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2022/06/07/minimum-wages-council-and-european-parliament-reach-provisional-agreement-on-new-eu-law/

https://www.europarl.europa.eu/news/en/press-room/20220603IPR32188/deal-reached-on-new-rules-for-adequate-minimum-wages-in-the-eu

Eulabourlaw2022_20220608082001 この指令案の内容については、4月に刊行したばかりの『新・EUの労働法政策』でも詳しく解説していますが、欧州議会のサイトでは

  • The minimum wage should be adequate to ensure a decent standard of living
  • Right to redress for workers, their representatives and trade union members if rules are violated
  • EU rules to respect the powers of national authorities and social partners to determine wages
  • Collective bargaining to be strengthened in countries where it covers fewer than 80% of workers

とまとめられています。

まだ具体的な条文の形では出ていないので、それが出てきたらまた取り上げます。

 

 

 

 

2022年5月22日 (日)

『新・EUの労働法政策』は絶対にAmazonでは買わないように!

Eulabourlaw2022_20220522100901 またぞろ、Amazonを覗いてみたら、『新・EUの労働法政策』にとんでもない値段がついていました。

https://www.amazon.co.jp/%E6%96%B0%E3%83%BBEU%E3%81%AE%E5%8A%B4%E5%83%8D%E6%B3%95%E6%94%BF%E7%AD%96-%E6%BF%B1%E5%8F%A3%E6%A1%82%E4%B8%80%E9%83%8E/dp/4538411671/ref=sr_1_1

単行本
¥7,743 より
¥7,743 より 1 中古品
¥7,743 より 1 新品

いうまでもなく、この目次を含めれば900ページを超えるやたら分厚い本は、しかしながら本体3,800円+税=税込み定価4,180円なんですから、こんな中間搾取は信じられませんね。

新品未読品です。通常、1週間以内にお届けします。希少本としての扱いの場合は、定価より高額に設定している場合がありますので御注意下さい。万一在庫切れの場合には、速やかにキャンセルさせて頂きますので予め御了承ください。
出荷元プルート書店 

などと言っていますが、です。希少品でも何でもありません。他のインターネット書店では(e-honでも、Honyaでも、 楽天でも、セブンネットでも)みんな当たり前に定価販売していますし、JILPTには在庫が積まれています。足りなくなれば増刷します(したい)。

どういう仕掛けでこういう得体のしれない事態になっているのかよくわかりませんが、なんにせよこの本は、絶対にAmazonでは買わないようにしてください。

 

 

 

 

2022年5月18日 (水)

欧州議会のプラットフォーム労働指令案への修正案

昨年12月に欧州委員会がプラットフォーム労働指令案を提案したことは御承知の通りですが、それに対する欧州議会の雇用社会問題委員会の修正案がアップされていました。

https://www.europarl.europa.eu/meetdocs/2014_2019/plmrep/COMMITTEES/EMPL/PR/2022/05-19/1253717EN.pdf

100ページを超える膨大な修正案ですが、見ていくと、雇用関係の法的推定(第4条)の5つの要件のうち2つ充たせば推定するよという部分がざっくりと削除されていて、どういうことかと考えたら、結局プラットフォームを通じて働いていたらまずは全て雇用関係だと推定し、その上で反証したかったら反証してごらん、という仕組みなんですね。

これはさすがに、現実に存在するプラットフォームの多様性を考えればあまりにも乱暴な気がします。

 

2022年4月25日 (月)

『新・EUの労働法政策』が遂に刊行

Eulabourlaw2022 『新・EUの労働法政策』が遂に刊行されました。『日本の労働法政策』まではいきませんが、892頁という分厚さになっています。5年前の『EUの労働法政策』には「字が小さすぎて読めんぞ!」というお叱りの言葉をたくさんいただいたので、今回はどんなに分厚くなっても良いからとにかく字を大きく読みやすくすることを第一義に心がけました。

https://www.jil.go.jp/publication/ippan/eu-labour-law.html

 本書は、2017年1月に刊行した『EUの労働法政策』の5年ぶりの全面改訂版である。同書自体が、1998年7月に刊行した『EU労働法の形成』(日本労働研究機構)、2005年9月に刊行した『EU労働法形成過程の分析』(東京大学大学院法学政治学研究科附属比較法政国際センター)の全面改訂版であったので、最初の版から数えるとほぼ四半世紀になる。
 ただ、2000年代後半から2010年代前半の時期は、新自由主義的なバローゾ欧州委員長の下でEU労働社会政策が沈滞していたため、前回版はめぼしい新規立法にいささか乏しいきらいがあった。ところが2010年代後半に入ると、ユンケル前欧州委員長が「欧州社会権基軸」を掲げて新たな労働立法が動き始め、2019年には公正で透明な労働条件指令やワークライフバランス指令が成立、さらに2020年代に入るとフォン・デア・ライエン現欧州委員長の下で、最低賃金指令案、賃金透明性指令案、プラットフォーム労働指令案など、新規立法が続々と提案されてきている。また狭義の労働政策の外側においても、個人データ保護、公益通報者保護、人工知能、デューディリジェンスなど、労働法に深く関わる政策立法の動きが加速化しており、EU労働法政策は再び注目の的となりつつある。そこで、2021年までの動きを現段階でとりまとめて前回版に大幅に増補し、今日のEU労働法の姿を紹介することとした。
 本書が、EU労働法やEU加盟諸国の労働法に関心を持つ人々によって活用されることができれば、これに過ぎる喜びはない。
というわけで、諸外国とりわけ欧州の労働法に関心を持つ方々にはいろいろと役に立つ情報が入っているはずです。

第1章 EU労働法の枠組みの発展
 第1節 ローマ条約における社会政策
  1 一般的社会規定
  2 ローマ条約における労働法関連規定
   (1) 男女同一賃金規定
   (2) 労働時間
  3 その他の社会政策規定
   (1) 欧州社会基金
   (2) 職業訓練
 第2節 1970年代の社会行動計画と労働立法
  1 準備期
  2 社会行動計画指針
  3 社会行動計画
  4 1970年代の労働立法
  5 1980年代前半の労働立法
 第3節 単一欧州議定書と社会憲章
  1 単一欧州議定書
   (1) 域内市場の確立のための措置
   (2) 労働環境のための措置
   (3) 欧州労使対話に関する規定
   (4) 労使対話の試みとその限界
  2 1980年代後半の労働立法
  3 社会憲章
   (1) 域内市場の社会的側面
   (2) 社会憲章の採択に向けて
   (3) EC社会憲章
  4 社会憲章実施行動計画
  5 1990年代初頭の労働立法
   (1) 本来的安全衛生分野の立法
   (2) 安全衛生分野として提案、採択された労働条件分野の立法
   (3) 採択できなかった労働立法
   (4) 採択された労働立法
   (5) 非拘束的な手段
 第4節 マーストリヒト条約付属社会政策協定
  1 マーストリヒト条約への道
   (1) EC委員会の提案
   (2) ルクセンブルク議長国のノン・ペーパー
   (3) ルクセンブルク議長国の条約案
   (4) 欧州経団連の方向転換と労使の合意
   (5) オランダ議長国の条約案
  2 マーストリヒト欧州理事会と社会政策議定書、社会政策協定
   (1) 社会政策議定書
   (2) 社会政策協定
   (3) 対象事項
   (4) 労使団体による指令の実施
   (5) EUレベル労働協約とその実施
   (6) その他
   (7) 附属宣言
  3 社会政策協定の実施
   (1) 労使団体の提案
   (2) 社会政策協定の適用に関するコミュニケーション
   (3) 欧州議会の要求
  4 1990年代中葉から後半の労働立法
   (1) マーストリヒト期の労働立法の概要
   (2) EU労働協約立法の問題点
 第5節 1990年代前半期におけるEU社会政策の方向転換
  1 雇用政策の重視と労働市場の柔軟化の強調
   (1) ドロール白書
   (2) ドロール白書以後の雇用政策
  2 社会政策のあり方の再検討
   (1) ヨーロッパ社会政策の選択に関するグリーンペーパー
   (2) ヨーロッパ社会政策白書
  3 中期社会行動計画
 第6節 アムステルダム条約
  1 アムステルダム条約に向けた検討
   (1) 検討グループ
   (2) IGCに向けたEU各機関の意見
   (3) 条約改正政府間会合
  2 アムステルダム条約
   (1) 人権・非差別条項
   (2) 新・社会条項
   (3) 雇用政策条項
 第7節 世紀転換期のEU労働社会政策
  1 社会行動計画(1998-2000)
  2 世紀転換期の労働立法
   (1) ポスト・マーストリヒトの労働立法の特徴
   (2) ポスト・マーストリヒト労働立法の具体例
   (3) 人権・非差別関係立法
   (4) 欧州会社法の成立
 第8節 ニース条約と基本権憲章
  1 ニース条約に向けた検討
   (1) 欧州委員会の提案
   (2) 条約改正政府間会合
  2 ニース条約
   (1) 人権非差別条項
   (2) 社会条項
  3 EU基本権憲章に向けた動き
   (1) 賢人委員会報告
   (2) EU基本権憲章を目指して
   (3) EU基本権憲章
 第9節 2000年代前半のEU労働社会政策
  1 社会政策アジェンダ
   (1) 社会政策アジェンダ(2000-2005)
   (2) 社会政策アジェンダ中期見直し
  2 2000年代前半の労働立法
   (1) 労使団体への協議と立法
   (2) 自律協約の問題点
   (3) 人権・非差別関係立法
 第10節 EU憲法条約の失敗とリスボン条約
  1 EU憲法条約に向けた検討
   (1) 社会的ヨーロッパ作業部会
   (2) コンヴェンションの憲法条約草案とEU憲法の採択
  2 EU憲法条約の内容
   (1) 基本的規定
   (2) 基本権憲章
   (3) EUの政策と機能
  3 EU憲法条約の蹉跌とリスボン条約
   (1) EU憲法条約の蹉跌
   (2) リスボン条約とその社会政策条項
 第11節 2000年代後半のEU労働社会政策
  1 新社会政策アジェンダ
   (1) 社会政策アジェンダ
   (2) 刷新社会政策アジェンダ
  2 フレクシキュリティ
   (1) フレクシキュリティの登場
   (2) フレクシキュリティのパラドックス
   (3) フレクシキュリティの共通原則とその後
  3 労働法の現代化
   (1) グリーンペーパーに至る労働法検討の経緯
   (2) グリーンパーパー発出をめぐる場外乱闘
   (3) グリーンペーパーの内容
   (4) その後の動き
  4 2000年代後半の労働立法
   (1) 労使団体への協議と立法
   (2) 人権・非差別関係立法
 第12節 2010年代前半のEU労働社会政策(の衰退)
  1 欧州2020戦略
   (1) 新たな技能と仕事へのアジェンダ
   (2) 欧州反貧困プラットフォーム
  2 「失敗した理念の勝利」
  3 2010年代前半の労働立法
   (1) 労使団体への協議と立法
   (2) ラヴァル事件判決等がもたらした労働法課題
第13節 欧州社会権基軸とEU労働社会政策の復活
  1 欧州社会権基軸
   (1) 欧州社会権基軸の提唱
   (2) 欧州議会の意見
   (3) 欧州委員会勧告から三者宣言へ
   (4) 強いソーシャル・ヨーロッパ
   (5) 欧州社会権基軸行動計画
  2 2010年代後半の労働立法
   (1) 労使団体への協議と立法
   (2) 人権・非差別関係立法
   (3) その他の労働に関係を有する立法
 第14節 EU労働立法プロセスの問題
  1 労使団体への協議と立法
   (1) 自律協約への疑念
   (2) 自律的交渉による協約の締結
   (3) 協約の指令化をめぐる問題
   (4) 規制緩和政策と労働協約立法への否定的姿勢
  2 一般協議の拡大
 
第2章 労使関係法政策
 第1節 欧州会社法等
  1 欧州会社法
   (1) 欧州会社法規則第1次案原案
   (2) 欧州会社法規則第1次案原案への欧州議会修正意見
   (3) 欧州会社法規則第1次案修正案
   (4) 議論の中断と再開
   (5) 欧州会社法第2次案原案(規則案と指令案)
   (6) 欧州会社法第2次案修正案(規則案と指令案)
   (7) 欧州会社法案の隘路突破の試み
   (8) 欧州会社法案に関するダヴィニオン報告書
   (9) 合意まであと一歩
   (10) 一歩手前で足踏み
   (11) 欧州会社法の誕生
   (12) 欧州会社法規則と被用者関与指令の概要
   (13) 欧州会社法被用者関与指令の見直し
  2 他の欧州レベル企業法制における被用者関与
   (1) 欧州協同組合法
   (2) 欧州有限会社法案
 第2節 会社法の接近
  1 会社法第5指令案
   (1) 会社法の接近
   (2) 会社法第5指令案原案
   (3) EC委員会のグリーンペーパー
   (4) EC委員会の作業文書
   (5) 欧州議会の修正意見
   (6) 会社法第5指令案修正案
   (7) 撤回
  2 会社法第3指令
   (1) 会社法第3指令案
   (2) 会社法第3指令
  3 会社法関係の諸問題
   (1) 国境を越えた会社の転換・合併・分割
 第3節 労働者への情報提供・協議
  1 フレデリング指令案
   (1) 多国籍企業問題への接近
   (2) フレデリング指令案原案
   (3) 原案提出後の推移
   (4) フレデリング指令案修正案
   (5) 修正案提出後の推移
   (6) アドホックワーキンググループの「新たなアプローチ」
   (7) その後の経緯
  2 欧州労使協議会指令
   (1) 議論の再開
   (2) 欧州労使協議会指令案原案
   (3) 欧州労使協議会指令案修正案とその後の推移
   (4) ベルギー修正案
   (5) 欧州労使団体への第1次協議
   (6) 欧州労使団体への第2次協議
   (7) 欧州委員会の指令案
   (8) 欧州労使協議会指令の概要
   (9) 国内法への転換に関するワーキングパーティ
   (10) 先行設立企業の続出
   (11) イギリスのオプトアウトの空洞化
   (12) ルノー社事件
   (13) 指令の見直しへの動き
   (14) 欧州労使協議会指令の改正
  3 一般労使協議指令
   (1) 中期社会行動計画
   (2) 労働者への情報提供及び協議に関するコミュニケーション
   (3) 一般労使協議制に関する第1次協議
   (4) 一般労使協議制に関する第2次協議
   (5) 欧州経団連の逡巡と交渉拒否
   (6) 指令案の提案
   (7) 理事会での議論開始
   (8) 一般労使協議指令の概要
   (9) 一般労使協議指令のインパクト
  4 公的部門の情報提供・協議
   (1) 情報提供・協議関係諸指令の統合
   (2) 中央政府行政協約
  5 労働者参加への提起
   (1) 新たな枠組みへの欧州労連提案
   (2) 欧州議会の提起
 第4節 集団的労使関係システムの問題
  1 欧州レベルの労使紛争解決のための斡旋、調停、仲裁の自発的メカニズム
  2 EUレベルの労働基本権規定の試み
   (1) EUにおける経済的自由と労働基本権
   (2) 問題が生じた法的枠組み
   (3) 4つの欧州司法裁判所判決
   (4) 判決への反応
   (5) 団体行動権に関する規則案
   (6) 規則案に対する反応とその撤回
  3 EU競争法と自営業者の団体交渉権
   (1) EU競争法と労働組合
   (2) FNV事件欧州司法裁判決
   (3) 端緒的影響評価
   (4) 一人自営業者労働協約ガイドライン案
 第5節 その他の労使関係法政策
  1 多国籍企業協約
   (1) EUレベルの労働協約法制の模索
   (2) 多国籍企業協約立法化への動き
   (3) 専門家グループ報告書
   (4) 非公式の「協議」
   (5) 労使団体の反応
   (6) 欧州労連の立法提案
  2 被用者の財務参加
 
第3章 労働条件法政策
 第1節 リストラ関連法制
  1 集団整理解雇指令
   (1) ECにおける解雇法制への出発点
   (2) EC委員会の原案
   (3) 旧集団整理解雇指令
   (4) 1991年改正案とその修正案
   (5) 1992年改正
  2 企業譲渡における被用者保護指令
   (1) 前史:会社法第3指令案
   (2) EC委員会の原案
   (3) 旧企業譲渡指令
   (4) 欧州委員会の1994年改正案
   (5) 1997年の修正案
   (6) 1998年改正指令
   (7) 国境を越えた企業譲渡
  3 企業倒産における被用者保護指令
   (1) EC委員会の原案
   (2) 1980年指令
   (3) 2001年の改正案
   (4) 2002年改正指令
 第2節 安全衛生法制
  1 初期指令
  2 危険物質指令群
   (1) 危険物質基本指令
   (2) 危険物質基本指令に基づく個別指令
  3 単一欧州議定書による条約旧第118a条
  4 安全衛生枠組み指令
   (1) 使用者の義務
   (2) 労働者の義務
  5 枠組み指令に基づく個別指令
  6 安全衛生分野における協約立法
   (1) 注射針事故の防止協約指令
   (2) 理美容部門における安全衛生協約
   (3) 筋骨格障害
  7 自営労働者の安全衛生の保護の問題
  8 欧州職業病一覧表
  9 職場の喫煙
  10 職場のストレス
   (1) EU安全衛生戦略
   (2) 職場のストレスに関する労使への協議
   (3) 職場のストレスに関する自発的労働協約の締結
  11 職場の暴力とハラスメント
   (1) 欧州生活労働条件改善財団の調査結果
   (2) 欧州議会の決議
   (3) 労働安全衛生諮問委員会の意見
   (4) 欧州委員会の新安全衛生戦略
   (5) 職場のいじめ・暴力に関する自律労働協約
   (6) 職場における第三者による暴力とハラスメントに取り組むガイドライン
   (7) 学校における第三者暴力・ハラスメント
 第3節 労働時間法制
  1 労働時間指令以前
   (1) ローマ条約上の規定
   (2) 週40時間労働及び4週間の年次有給休暇の原則に関する理事会勧告
   (3) ワークシェアリング
   (4) 労働時間の適応に関する決議
   (5) 労働時間の短縮と再編に関するメモランダム
   (6) 労働時間の短縮と再編に関する理事会勧告案
  2 労働時間指令の形成
   (1) 社会憲章と行動計画
   (2) 労使団体への協議文書
   (3) EC委員会の原案
   (4) 欧州経団連の批判
   (5) 経済社会評議会と欧州議会の意見
   (6) 第1次修正案
   (7) 理事会の審議(1991年)
   (8) 理事会の審議(1992年)
   (9) 共通の立場から採択へ
   (10) 旧労働時間指令
   (11) イギリス向けの特例規定
   (12) イギリスの対応
   (13) 欧州司法裁判所の判決
   (14) 判決の効果とイギリスへの影響
  3 適用除外業種の見直し
   (1) 適用除外業種の見直しに関するホワイトペーパー
   (2) 第2次協議
   (3) 業種ごとの協約締結の動き
   (4) 欧州委員会の指令改正案
   (5) 改正労働時間指令
   (6) 道路運送労働時間指令
   (7) 船員労働時間協約指令
   (8) EU寄港船船員指令
   (9) 民間航空業労働時間協約指令
  4 難航する労働時間指令の本格的改正
   (1) 欧州委員会の第1次協議
   (2) 欧州委員会の第2次協議
   (3) 労働時間指令案の提案
   (4) 欧州議会の意見
   (5) 欧州委員会の修正案
   (6) 理事会における議論
   (7) 閣僚理事会の共通の立場
   (8) 欧州議会の第二読意見と決裂
   (9) 再度の労使団体への協議、交渉、決裂
   (10) 労働時間指令に関する一般協議
  5 その後の業種ごとの労働時間指令
   (1) 道路運送労働時間指令の改正案
   (2) 多国間鉄道労働時間指令
   (3) 内水運輸労働時間指令
   (4) ILO海上労働条約協約指令
   (5) 海上労働の社会的規制枠組みの見直し
   (7) ILO漁業条約協約指令
  6 自動車運転手の運転時間規則
  7 年少労働者指令
   (1) 指令案の提案
   (2) 理事会での検討
   (3) 指令の内容
 第4節 非典型労働者に関する法制
  1 1980年代前半の法政策
   (1) テンポラリー労働、パートタイム労働に関する考え方の提示
   (2) 自発的パートタイム労働に関する指令案
   (3) テンポラリー労働に関する指令案
   (4) 理事会等における経緯
   (5) 派遣・有期労働指令案修正案
  2 1990年代前半の法政策
   (1) 社会憲章と行動計画
   (2) 特定の雇用関係に関する3指令案
   (3) 労働条件との関連における特定の雇用関係に関する理事会指令案
   (4) 競争の歪みとの関連における特定の雇用関係に関する指令案
   (5) 有期・派遣労働者の安全衛生改善促進措置を補完する指令案
   (6) 修正案
   (7) 理事会での経緯
   (8) 有期・派遣労働者の安全衛生指令
  3 パートタイム労働指令の成立
   (1) 欧州労使団体への第1次協議
   (2) 欧州労使団体への第2次協議
   (3) パートタイム労働協約の締結
   (4) 協約締結後の推移
  4 有期労働指令の成立
   (1) 有期労働に係る労使交渉
   (2) 有期労働協約の内容
   (3) 欧州委員会による指令案
   (4) 指令の採択
  5 派遣労働指令の成立
   (1) 派遣労働に関する交渉の開始と蹉跌
   (2) 幕間劇-欧州人材派遣協会とUNI欧州の共同宣言
   (3) 提案直前のリーク劇と指令案の提案
   (4) 欧州委員会の派遣労働指令案
   (5) 労使の反応と欧州議会の修正意見
   (6) 理事会におけるデッドロック
   (7) フレクシキュリティのモデルとしての派遣労働
   (8) ついに合意へ
   (9) 指令の内容
  6 テレワークに関する労働協約
   (1) 労働組織の現代化へのアプローチ
   (2) 情報社会の社会政策へのアプローチ
   (3) 雇用関係の現代化に関する労使団体への第1次協議
   (4) 労使団体の反応とテレワークに関する労使団体への第2次協議
   (5) 産業別レベルのテレワーク協約の締結
   (6) EUテレワーク協約の締結
   (7) EUレベル労働協約の法的性格
   (8) EUテレワーク協約の実施状況
   (9) 2020年のデジタル化自律協約
   (10) 欧州議会による「つながらない権利」の指令案勧告
  7 透明で予見可能な労働条件指令
   (1) EC委員会の原案
   (2) 書面通知指令の内容
   (3) 新たな就業形態へのアプローチ
   (4) 欧州社会権基軸
   (5) 一般協議
   (6) 労使団体への第1次協議
   (7) 労使団体への第2次協議
   (8) 透明で予見可能な労働条件指令案
   (9) 透明で予見可能な労働条件指令
  8 プラットフォーム労働指令案
   (1) 雇用関係の現代化に関する第1次協議
   (2) 労働法現代化グリーンペーパー
   (3) 新たな就業形態へのアプローチ
   (4) 欧州社会権基軸
   (5) リサク氏のプラットフォーム労働指令案
   (6) 労使団体への第1次協議
   (7) 労使団体への第2次協議
   (8) 労使団体の反応
   (9) 欧州議会の決議等
   (10) プラットフォーム労働指令案
 第5節 その他の労働条件法制
  1 海外送出労働者の労働条件指令
   (1) 指令案の提案
   (2) 理事会における経緯
   (3) 指令の内容
   (4) 海外送出指令実施指令
   (5) 発注者の連帯責任
   (6) 海外送出指令改正案
   (7) 改正海外送出指令の成立
   (8) 改正海外送出指令の内容
  2 最低賃金指令
   (1) 公正賃金に関する意見
   (2) 経済政策における賃金介入
   (3) 労使団体への第1次協議
   (4) 労使団体への第2次協議
   (5) 最低賃金指令案
   (6) 最低賃金指令の採択へ
 
第4章 労働人権法政策
 第1節 男女雇用均等法制
  1 男女同一賃金
   (1) ローマ条約の男女同一賃金規定
   (2) 男女同一賃金指令
   (3) 男女同一賃金行動規範
  2 男女均等待遇指令の制定
   (1) EC委員会の原案
   (2) 男女均等待遇指令
  3 社会保障における男女均等待遇
   (1) 公的社会保障における男女均等待遇指令
   (2) 職域社会保障制度における男女均等待遇指令
   (3)公的・職域社会保障制度における男女均等待遇指令案
   (4) 欧州司法裁判所の判決とその影響
  4 自営業男女均等待遇指令
   (1) EC委員会の原案
   (2) 自営業男女均等待遇指令
   (3) 2010年改正指令
  5 性差別事件における挙証責任指令
   (1) EC委員会の原案
   (2) 欧州司法裁判所の判決
   (3) 欧州労使団体への協議
   (4) 欧州委員会の新指令案と理事会の審議
   (5) 性差別事件における挙証責任指令
  6 ポジティブ・アクション
   (1) ポジティブ・アクションの促進に関する勧告
   (2) カランケ判決の衝撃
   (3) 男女均等待遇指令の改正案
   (4) ローマ条約における規定
   (5) マルシャル判決
  7 セクシュアルハラスメント
   (1) 理事会決議までの前史
   (2) 理事会決議
   (3) EC委員会勧告と行為規範
   (4) 労使団体への協議
   (5) 1998年の報告書
   (6) 男女均等待遇指令改正案
  8 男女均等待遇指令の2002年改正
   (1) ローマ条約の改正
   (2) 欧州委員会の改正案原案
   (3) 理事会における議論
   (4) 欧州議会の第1読修正意見
   (5) 欧州委員会の改正案修正案と理事会の共通の立場
   (6) 欧州議会の第2読修正意見と理事会との調停
   (7) 2002年改正の内容
  9 男女機会均等・均等待遇総合指令
   (1) 男女均等分野諸指令の簡素化
   (2) 男女機会均等・均等待遇総合指令案
   (3) 労使団体等の意見
   (4) 欧州議会の意見と理事会の採択
  10 賃金透明性指令
   (1) 欧州委員会勧告
   (2) 賃金透明性指令案
   (3) 賃金透明性指令の採択へ
 第2節 その他の女性関係法制
  1 母性保護指令
   (1) EC委員会の原案
   (2) EC委員会の修正案
   (3) 理事会での検討
   (4) 母性保護指令
   (5) 母性保護指令の改正案とその撤回
  2 ワークライフバランス指令
   (1) 1983年の育児休業指令案
   (2) 理事会におけるデッドロック
   (3) 労使団体への協議
   (4) 欧州レベルの労使交渉
   (5) 育児休業協約の内容
   (6) 育児休業指令の成立
   (7) 労使団体への協議と改正育児休業協約
   (8) 2010年改正指令
   (9) ワークライフバランスに関する労使団体への協議
   (10) ワークライフバランス指令案
   (11) ワークライフバランス指令
  3 雇用・職業以外の分野における男女均等待遇指令
   (1) EC条約及び基本権憲章における男女均等関係規定
   (2) 指令案の予告
   (3) 男女機会均等諮問委員会のインプット
   (4) 指令案の遅滞
   (5) 指令案の提案
   (6) 理事会での審議
   (7) 採択に至る過程
 第3節 性別以外の均等法制
  1 特定の人々に対する雇用政策
   (1) 障害者雇用政策
   (2) 高齢者雇用政策
  2 一般雇用均等指令
   (1) EU社会政策思想の転換
   (2) 一般雇用均等指令案
   (3) 使用者団体の意見
   (4) 理事会における議論
   (5) 採択に至る過程
   (6) 一般雇用均等指令の内容
  3 人種・民族均等指令
   (1) 人種・民族均等指令案
   (2) 理事会における議論
   (3) 採択に至る過程
   (4) 人種・民族均等指令の内容
  4 雇用・職業以外の分野における一般均等指令案
   (1) 雇用・職業以外の分野における一般均等指令案
 
第5章 その他の労働関連法政策
 第1節 教育訓練法政策
  1 トレーニーシップ勧告
   (1) トレーニーシップに関する一般協議と労使への協議
   (2) トレーニーシップ上質枠組勧告
  2 アプレンティスシップ勧告
  3 ノンフォーマル・インフォーマル学習の認定勧告
  4 個人別学習口座勧告案
  5 ミクロ学習証明書勧告案
 第2節 労働市場法政策
  1 非申告労働
  2 不法滞在第三国民の使用者制裁指令
 第3節 社会保障法政策
  1 最低所得保障
   (1) 社会保護に係る2勧告
   (2) 労働市場排除者の統合
   (3) 最低所得をめぐる近年の動向
  2 補完的社会保障
   (1) 補完的年金権のポータビリティに関する協議
   (2) 補完的年金権指令案と採択された指令
  3 あらゆる就業形態の人々の社会保護アクセス
   (1) 労使団体への第1次協議
   (2) 労使団体への第2次協議
   (3) 労働者と自営業者の社会保護へのアクセスに関する理事会勧告案
   (4) 労働者と自営業者の社会保護へのアクセスに関する理事会勧告
第4節 労働条件に関連する諸法政策
  1 労働者の個人情報保護
   (1) 旧個人データ保護指令
   (2) 労働者の個人情報保護に関する検討
   (3) 労使団体への第1次協議
   (4) 労使団体への第2次協議
   (5) 第29条作業部会の諸意見
   (6) 一般データ保護規則案
   (7) 欧州議会の意見
   (8) 一般データ保護規則
   (9) 第29条作業部会の2017年意見
  2 公益通報者保護指令
  3 オンライン仲介サービス規則
   (1) オンラインプラットフォームとデジタル単一市場
   (2) オンライン仲介サービス規則
  4 人工知能規則案
   (1) 人工知能(AI)に関する政策の展開
   (2) 人工知能規則案
   (3) 労使団体の反応
  5 デューディリジェンス指令案

2022年3月24日 (木)

EUのデューディリジェンス指令案がついに提案@『労基旬報』2022年3月25日号

『労基旬報』2022年3月25日号に「EUのデューディリジェンス指令案がついに提案」を寄稿しました。

 本紙の昨年5月25日号で「EUのデューディリジェンス指令案への動き」について解説しましたが、その時文末で「欧州委員会の方は、上記一般協議を終了し、現在具体的な指令案を検討中です。2021年第2四半期には提出すると予告されているので、おそらく今年6月に公表されると思われます」と述べていました。ところがこれがずるずると遅れ、同年第4四半期になっても提出されませんでした。
 これに業を煮やした諸市民社会団体や欧州労連は、2021年12月8日に共同してフォン・デア・ライエン委員長宛の公開状を公表し、理由も明らかにされないまま延期が繰り返されていることに疑念を呈し、このままではグローバルサプライチェーンにおける強制労働が野放しになると懸念を表明しました。明けて2022年2月8日には、ダノンはじめ100以上の主要企業等が、デューディリジェンス指令案の早急な提出を求める公開状を公表し、その中で指令案の公表の深刻な遅延を深く懸念すると述べています。
 こうして、同年2月23日、欧州委員会はようやく「企業の持続可能なデューディリジェンスに関しかつ公益通報者保護指令を改正する欧州議会と理事会の指令案」(Proposal for a Directive of the European Parliament and of the Council on Corporate Sustainability Due Diligence and amending Directive (EU) 2019/1937)(COM(2022)71)を正式に提案するに至りました。半年以上も遅れたのは、企業サイドから相当なロビイングがあったからだと思われますが、内容的にも適用対象企業から中小企業が除外されるなど、企業サイドに相当配慮した内容になっています。
・主題(第1条)
 本指令案は、①潜在的な人権への悪影響(human rights adverse impacts)と環境への悪影響(environmental adverse impacts)に関して、企業自身の運営、その子会社の運営、当該企業が取引関係を樹立した(established)主体によって遂行されるバリューチェーンの運営に関する企業の義務、②上記義務の違反に対する責任(liability)について定めています。この「樹立した」取引関係の性質については、少なくとも12か月おきに再審査されます。
・適用範囲(第2条)
 本指令案が最も注目されたのはその適用範囲でした。まず原則として、従業員500人超かつ全世界での売上高が直近年度で1億5千万ユーロ超の大企業が対象となります。
 ただし、とりわけバリューチェーンの人権侵害が問題とされる業種についてはその対象がやや中規模企業にも拡大されています。すなわち、①繊維、皮革とその関連の製造業、これらの卸売業、②農林漁業、食品製造業とこれらの卸売業、③石油、ガス、石炭、金属その他の鉱山採掘業、金属・鉱物の製造業とこれらの卸売業の3業種については、従業員250人超かつ全世界での売上高が直近年度で4千万ユーロ超の企業まで対象となります。
 さらに、非EU企業、つまり第三国の法律によって設立された企業であっても、EU域内で直近年度で1億5千万ユーロ超の売上があるか、売上の半分以上が上記3業種に属して4千万ユーロ超である場合には適用されます。
・デューディリジェンスの義務
 本指令案は第4条以下で具体的なデューディリジェンスの義務を規定していますが、それぞれについてかなり詳しい規定がされています。
①デューディリジェンスの企業政策への統合(第5条)
②現実の及び潜在的な悪影響の確定(identification)(第6条)
③潜在的な悪影響の予防(第7条)
④現実の悪影響の解消(第8条)
⑤苦情処理手続(第9条)
⑥モニタリング(第10条)
⑦情報公開(第11条)
 これら義務の遵守のために、欧州委員会はモデル契約条項を作成するとともに、ガイドラインを示すことにしています(第12,13条)。
・その他の規定
 本指令が適用される非EU企業は権限ある代表者を指名しなければなりません(第16条)。
 加盟国は企業がデューディリジェンスの義務の遵守に係る監督機関を設置し(第17条)、当該機関が任務を果たせるよう適切な権限と資源を確保しなければなりません(第18条)。
 ある企業が本指令の義務を遵守していないと考える者がその旨(裏付けのある懸念(substantiated concerns))を監督機関に訴えることを確保するとともに(第19条)、本指令に基づく国内法の違反に対する罰則を定めなければなりません(第20条)。
 欧州委員会は欧州監督機関ネットワークを設置し(第21条)、ここが監督や制裁に関する調整を行います。
 加盟国はデューディリジェンスの義務を遵守しない企業に対する民事責任(civil liability)を規定し、同条に規定する責任が当該訴えに適用される法律が当該加盟国の法律でないというだけの理由によっては否定されない旨を定めなければなりません(第22条)。
 なお本指令上の全ての違反は公益通報者保護指令の対象であり、これに伴い同指令(2019/1937)も一部改正されています。

 

2022年2月24日 (木)

EUのデューディリジェンス指令案

欧州委員会が昨日「企業の持続可能なデューディリジェンスに関しかつ公益通報者保護指令を改正する欧州議会と理事会の指令案」(Proposal for a Directive of the European Parliament and of the Council on Corporate Sustainability Due Diligence and amending Directive (EU) 2019/1937)(COM(2022)71)を正式に提案しました。

https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_22_1145

詳細はまた別稿で解説しますが、対象がかなりの大企業に限定された点が、労組やNGOから批判されているようです。

まず原則として、従業員500人超かつ全世界での売上高が直近年度で1億5千万ユーロ超の大企業が対象となります。ただし、とりわけバリューチェーンの人権侵害が問題とされる業種についてはその対象がやや中規模企業にも拡大されています。すなわち、①繊維、皮革とその関連の製造業、これらの卸売業、②農林漁業、食品製造業とこれらの卸売業、③石油、ガス、石炭、金属その他の鉱山採掘業、金属・鉱物の製造業とこれらの卸売業の3業種については、従業員250人超かつ全世界での売上高が直近年度で4千万ユーロ超の企業まで対象となります。さらに、非EU企業、つまり第三国の法律によって設立された企業であっても、EU域内で直近年度で1億5千万ユーロ超の売上があるか、売上の半分以上が上記3業種に属して4千万ユーロ超である場合には適用されます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2022年2月19日 (土)

不払いインターンシップは欧州社会憲章違反

本日付のPOLITICO紙に、「Belgium violates charter over unpaid internships, human rights body says」(ベルギーは不払いインターンシップについて憲章違反だと人権機関が言った)という記事が載っています。

https://www.politico.eu/article/belgium-violates-social-rights-charter-unpaid-internships-human-rights/

Belgium’s failure to crack down on problematic internships violates a key human rights charter, the European Committee of Social Rights (ECSR) said in a ruling published Wednesday.
The human rights body said Belgium breached elements of the European Social Charter, a Council of Europe treaty guaranteeing fundamental socio-economic rights, because its labor inspectorate is not sufficiently effective in detecting and preventing “bogus internships” — disguised employment involving real work for the benefit of the employer. 

ベルギーが問題のあるインターンシップを摘発しないのは人権憲章の違反だ、と欧州社会権委員会が水曜日に公表した決定は言う。この人権機関によれば、ベルギーは労働監督機関が「名ばかりインターンシップ」を十分効果的に探索し防止しなかったために、基本的社会経済的権利を保証する欧州評議会の欧州社会憲章に違反している。これは、使用者の利益のために本当は労働に従事している偽装された雇用だ。

これを訴えていたのは欧州若者フォーラムという団体で、その団体の副代表曰く:

“This decision should signal the end of unpaid internships not just in Belgium, but across Europe,” said EYF’s Vice President Frédéric Piccavet. “Unpaid internships are an exploitative practice.”

この決定はベルギーだけではなく欧州全体の不払いインターンシップの終わりを告げるべきだ。不払いインターンシップは搾取的慣行だ。

日本でインターンシップというと、見学会みたいなワンデーインターンシップか、せいぜい1週間くらいのままごとみたいな「いんたーんしっぷ」が大勢ですが、何にもできない素人を潜在力で採用するメンバーシップ型雇用社会と違い、具体的なジョブの募集にそのジョブを遂行しうるスキルがあることを証明してはじめて採用されるジョブ型社会では、インターンシップという名のもとに何年も無給で労働に従事させられるという状況が広範に広がっています。

採用されるためにはその仕事をできることを証明しなければならず、そのためにはその仕事に実際について実習しなければならない、というジョブ型社会故の状況を逆手にとって、いつまでも「お前は実習生であって労働者じゃない、だから給料はないからな」という建前で実習という名の無給労働がまかり通るというのは、おそらく圧倒的に多くの日本人には理解できないジョブ型社会の「闇」の側面でしょう。

もちろん、採用されるためにはその仕事をできることをいくら証明しても何の意味もなく、どんな仕事でも喜んでやり抜きますという「人間力」を売り込まなければならないというメンバーシップ型社会も、圧倒的に多くの欧州人には理解できないでしょうが。

今年に入ってからもマスコミやネット上では毎日のように見当はずれのジョブ型論が量産され続けていますが、ジョブ型社会の最大の特徴は、こういう雇用の入口に関わる部分にあるのだということを、本当に理解して喋っている人は暁天の星よりも少ないであろうことだけは間違いありません。

 

 

 

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