EUの労働法政策

EUの新たな労働法政策-多様な就業形態への対応

『労基旬報』2017年6月25日号に「EUの新たな労働法政策-多様な就業形態への対応」を寄稿しました。

 イギリスが国民投票でEU離脱を決め、大陸諸国でも反EU運動が政治の焦点になるなど、EUを取り巻く状況は厳しいものがあります。かつてのソーシャル・ヨーロッパが輝いていた時代は遠くなったようです。しかしその中にあっても、あまり目立たない形ではありますが、新たな労働法政策への萌芽が動き始めています。
 去る4月26日、欧州委員会は久しぶりに条約154条に基づく労使団体への第1次協議を開始しました。それも一度に2個もです。一つ目は書面通知指令(91/533/EEC)の改正であり、二つ目は「あらゆる就業形態の人々の社会保護へのアクセス」です。どちらも「欧州社会権基軸」(European Pillar of Social Rights)の枠組で提起されているので、まずその流れをざっと見ておきましょう。
 2016年3月8日、欧州委員会は「欧州社会権基軸」に関する一般協議を始めました。金融主導のグローバリゼーションの先兵とみられるに至った経済通貨統合に、今さらながら社会的側面を取り入れようというのがその狙いですが、それに対する諸組織の反応の中からいくつかの方向性が現れてきました。そのうち同年12月20日の欧州議会の決議では「あらゆる就業形態におけるディーセントな労働条件に関する枠組指令」を提案することを求めるとともに、書面通知指令(91/533/EEC)の改正を提起しています。そこで念頭に置かれている就業形態としては、まずインターンシップ、トレーニーシップ、アプレンティスシップといった学校から仕事への移行形態、そして近年拡大しているデジタル・プラットフォームの仲介による仕事や従属的自営業、さらにゼロ時間契約などのオンデマンド労働です。
 各方面からの意見を受けて、今年4月26日欧州委員会は一般協議のまとめとして「欧州社会権基軸の確立」(COM(2017)250)を公表するとともに、20項目にわたる「欧州社会権基軸勧告」を提示しました。この勧告の中には、今回の二つの労使協議に直接関わるような項目も含まれています。実は、今回の労使への協議はこの勧告と同時になされており、その意味ではその一環と見ることもできます。
 まず書面通知指令改正に関する協議ですが、同指令は適用対象たる「被用者」を加盟国の法令の定義に委ねています。これを改めて、EU共通の労働者の定義規定を設けるべきではないかというのが第1点目です。そして、オンコール労働者、バウチャーベースの労働者、ICTベースの移動型労働者、あるいはトレーニーやアプレンティスなど適用関係が明確でない新たな形態の非典型労働者にも適用されることを明らかにするというのが第2点目です。そして現行指令で雇用期間1か月以下や週労働時間8時間以下の雇用関係を加盟国が適用除外できるという規定も削除すべきではないかとしています。
 書面で通知されるべき情報項目に追加すべきものとして、まず濫用が指摘される試用期間が挙げられています。そしてオンコール労働者への適用拡大を前提として、その通常の週又は日の労働時間を通知することを提示しています。指令違反に対する救済や制裁が実効性に欠けることも問題で、書面通知をしなかった使用者に罰金を科すとか、書面通知がなかった場合は労働条件について労働者に有利な推定をするといった提起もしています。また書面通知の時期について現行指令は雇用開始後2か月以内としていますが、この期間を短縮すべきではないかという案とともに、そもそも遅くとも雇用開始時に通知すべきという選択肢も提起しています。
 上記欧州議会決議はこれらを超えて「あらゆる就業形態」の労働条件枠組指令を求めていましたが、こちらについては協議文書は書面通知指令の対象を拡大する可能性として協議しています。現行指令は使用者の通知義務を定めているだけですが、ここに規範的側面を持ち込み、あらゆる就業形態に共通の最低労働条件を規定するものに作り替えるという話です。欧州委員会が提示している項目は:試用期間がある場合の上限の権利、労働時間が変動する場合の参照時間の権利(予見可能性のため)、(オンコール労働における)前期の平均労働時間に設定された最低時間の権利、新たな就業形態に転換を求める権利(と使用者の回答義務)、訓練を受ける権利、解雇や雇止めの場合の理由を附した告知期間の権利、不当解雇や不当な雇止めの場合の適切な救済の権利、そして解雇や不当な待遇に対する有効で中立的な紛争解決制度にアクセスする権利です。大変包括的で、これらを入れたらもはや「書面通知指令」ではなく、まさに「一般最低労働条件指令」になってしまいます。
もう一つの協議文書はあらゆる就業形態の人々に対する社会保護と就業サービスを取り上げています。ここで「就業サービス」といったのは、職業指導、職業紹介、職業訓練等のことです。ただ、あらゆる就業形態といったときに、純粋の自営業者についてはそもそも条約154条に基づく労使協議への対象になり得ません。そこでやや技巧的ですが、非標準的な雇用形態の労働者の社会保護等については労使団体への第1次協議、自営業者等の社会保護等については任意協議だと説明しています。
 この文書で提示されているのは、契約類型、就業形態、労働法上の地位に関わらず、類似の労働に対しては類似の社会保護の権利と就業サービスが適用されるべきという原則です。これにより非標準的な雇用の労働者や自営業者が社会保護制度や就業サービスの適用を受けることができるというわけです。また社会保護の権利が就労当初から個人単位で蓄積され、転職、就業形態の変更、自営化などによって失われることのないようにすることを求めています。
 ただ、前者に比べてもこちらは困難性が高そうです。まず条約153条において、書面通知指令が属する「労働条件」は特定多数決事項となっていますが、「労働者の社会保障及び社会保護」は全会一致事項となっています。さらに上述のように、自営業者の社会保護はこれに含まれず、条約352条という一般条項に頼らなければなりません。現実に立法までこぎ着けることができそうかという点で見ると、可能性が高いのはせいぜい書面通知例の改正くらいで、欧州議会の求める実質新法としての一般最低労働条件指令はなかなか難しく、社会保護はほとんど不可能と言えるでしょう。
 とはいえ、こうした新たな就業形態に対する法的対応が試みられていることは、同じように就業形態の多様化への対応を迫られている日本にとっても、大変興味深い先行事例であることは間違いありません。今回の労使団体への第1次協議が、今後どのような展開を示していくことになるのか、労働関係者は注意深く見守っていく必要がありそうです。

 

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目次
 
第1章 EU労働法の枠組みの発展
 第1節 ローマ条約における社会政策
  1 一般的社会規定
  2 ローマ条約における労働法関連規定
   (1) 男女同一賃金規定
   (2) 労働時間
  3 その他の社会政策規定
   (1) 欧州社会基金
   (2) 職業訓練
 第2節 1970年代の社会行動計画と労働立法
  1 準備期
  2 社会行動計画指針
  3 社会行動計画
  4 1970年代の労働立法
  5 1980年代前半の労働立法
 第3節 単一欧州議定書と社会憲章
  1 単一欧州議定書
   (1) 域内市場の確立のための措置
   (2) 労働環境のための措置
   (3) 欧州労使対話に関する規定
   (4) 労使対話の試みとその限界
  2 1980年代後半の労働立法
  3 社会憲章
   (1) 域内市場の社会的側面
   (2) 社会憲章の採択に向けて
   (3) EC社会憲章
  4 社会憲章実施行動計画
  5 1990年代初頭の労働立法
   (1) 本来的安全衛生分野の立法
   (2) 安全衛生分野として提案、採択された労働条件分野の立法
   (3) 採択できなかった労働立法
   (4) 採択された労働立法
   (5) 非拘束的な手段
 第4節 マーストリヒト条約付属社会政策協定
  1 マーストリヒト条約への道
   (1) EC委員会の提案
   (2) ルクセンブルク議長国のノン・ペーパー
   (3) ルクセンブルク議長国の条約案
   (4) 欧州経団連の方向転換と労使の合意
   (5) オランダ議長国の条約案
  2 マーストリヒト欧州理事会と社会政策議定書、社会政策協定
   (1) 社会政策議定書
   (2) 社会政策協定
   (3) 対象事項
   (4) 労使団体による指令の実施
   (5) EUレベル労働協約とその実施
   (6) その他
   (7) 附属宣言
  3 社会政策協定の実施
   (1) 労使団体の提案
   (2) 社会政策協定の適用に関するコミュニケーション
   (3) 欧州議会の要求
  4 1990年代中葉から後半の労働立法
   (1) マーストリヒト期の労働立法の概要
   (2) EU労働協約立法の問題点
 第5節 1990年代前半期におけるEU社会政策の方向転換
  1 雇用政策の重視と労働市場の柔軟化の強調 
   (1) ドロール白書
   (2) ドロール白書以後の雇用政策 
  2 社会政策のあり方の再検討
   (1) ヨーロッパ社会政策の選択に関するグリーンペーパー
   (2) ヨーロッパ社会政策白書
  3 中期社会行動計画
 第6節 アムステルダム条約
  1 アムステルダム条約に向けた検討
   (1) 検討グループ
   (2) IGCに向けたEU各機関の意見
   (3) 条約改正政府間会合
  2 アムステルダム条約
   (1) 人権・非差別条項
   (2) 新・社会条項
   (3) 雇用政策条項
 第7節 世紀転換期のEU労働社会政策
  1 社会行動計画(1998-2000)
  2 世紀転換期の労働立法
   (1) ポスト・マーストリヒトの労働立法の特徴
   (2) ポスト・マーストリヒト労働立法の具体例
   (3) 人権・非差別関係立法
   (4) 欧州会社法の成立
 第8節 ニース条約と基本権憲章
  1 ニース条約に向けた検討
   (1) 欧州委員会の提案
   (2) 条約改正政府間会合
  2 ニース条約
   (1) 人権非差別条項
   (2) 社会条項
  3 EU基本権憲章に向けた動き
   (1) 賢人委員会報告
   (2) EU基本権憲章を目指して
   (3) EU基本権憲章
 第9節 2000年代前半のEU労働社会政策
  1 社会政策アジェンダ
   (1) 社会政策アジェンダ(2000-2005)
   (2) 社会政策アジェンダ中期見直し
  2 2000年代前半の労働立法
   (1) 労使団体への協議と立法
   (2) 自律協約の問題点
   (3) 人権・非差別関係立法
 第10節 EU憲法条約の失敗とリスボン条約
  1 EU憲法条約に向けた検討
   (1) 社会的ヨーロッパ作業部会
   (2) コンヴェンションの憲法条約草案とEU憲法の採択
  2 EU憲法条約の内容
   (1) 基本的規定
   (2) 基本権憲章
   (3) EUの政策と機能
  3 EU憲法条約の蹉跌とリスボン条約
   (1) EU憲法条約の蹉跌
   (2) リスボン条約とその社会政策条項
 第11節 2000年代後半以降のEU労働社会政策
  1 新社会政策アジェンダ
   (1) 社会政策アジェンダ
   (2) 刷新社会政策アジェンダ
  2 フレクシキュリティ
   (1) 「フレクシキュリティ」の登場 
   (2) フレクシキュリティのパラドックス 
   (3) フレクシキュリティの共通原則とその後
  3 労働法の現代化
   (1) グリーンペーパーに至る労働法検討の経緯
   (2) グリーンパーパー発出をめぐる場外乱闘
   (3) グリーンペーパーの内容
   (4) その後の動き
  4 2000年代後半以降の労働立法
   (1) 労使団体への協議と立法
   (2) 一般協議の拡大
 
第2章 労使関係法政策
 第1節 欧州会社法等
  1 欧州会社法
   (1) 欧州会社法規則第1次案原案
   (2) 欧州会社法規則第1次案原案への欧州議会修正意見
   (3) 欧州会社法規則第1次案修正案
   (4) 議論の中断と再開
   (5) 欧州会社法第2次案原案(規則案と指令案)
   (6) 欧州会社法第2次案修正案(規則案と指令案)
   (7) 欧州会社法案の隘路突破の試み
   (8) 欧州会社法案に関するダヴィニオン報告書
   (9) 合意まであと一歩
   (10) 一歩手前で足踏み
   (11) 欧州会社法の誕生
   (12) 欧州会社法規則と被用者関与指令の概要
   (13) 欧州会社法被用者関与指令の見直し
  2 他の欧州レベル企業法制における被用者関与
   (1) 欧州協同組合法
   (2) 欧州有限会社法案
 第2節 会社法の接近
  1 会社法接近各指令の概要
  2 会社法第5指令案
   (1) 会社法第5指令案原案
   (2) EC委員会のグリーンペーパー
   (3) EC委員会の作業文書
   (4) 欧州議会の修正意見
   (5) 会社法第5指令案修正案
   (6) 撤回
  3 会社法第3指令
   (1) 会社法第3指令案
   (2) 会社法第3指令
 第3節 労働者への情報提供・協議
  1 フレデリング指令案
   (1) 多国籍企業問題への接近
   (2) フレデリング指令案原案
   (3) 原案提出後の推移
   (4) フレデリング指令案修正案
   (5) 修正案提出後の推移
   (6) アドホックワーキンググループの「新たなアプローチ」
   (7) その後の経緯
  2 欧州労使協議会指令
   (1) 議論の再開
   (2) 欧州労使協議会指令案原案
   (3) 欧州労使協議会指令案修正案とその後の推移
   (4) ベルギー修正案
   (5) 欧州労使団体への第1次協議
   (6) 欧州労使団体への第2次協議
   (7) 欧州委員会の指令案
   (8) 欧州労使協議会指令の概要
   (9) 国内法への転換に関するワーキングパーティ
   (10) 先行設立企業の続出
   (11) イギリスのオプトアウトの空洞化
   (12) ルノー社事件
   (13) 指令の見直しへの動き
   (14) 欧州労使協議会指令の改正 
  3 一般労使協議指令
   (1) 中期社会行動計画
   (2) 労働者への情報提供及び協議に関するコミュニケーション
   (3) 一般労使協議制に関する第1次協議
   (4) 一般労使協議制に関する第2次協議
   (5) 欧州経団連の逡巡と交渉拒否
   (6) 指令案の提案
   (7) 理事会での議論開始
   (8) 一般労使協議指令の概要
   (9) 一般労使協議指令のインパクト
  4 情報提供・協議関係諸指令の統合
  5 新たな枠組みへの欧州労連提案
 第4節 被用者の財務参加
 第5節 EUレベルの紛争解決と労働基本権
  1 欧州レベルの労使紛争解決のための斡旋、調停、仲裁の自発的メカニズム
  2 EUレベルの労働基本権規定の試み
   (1) EUにおける経済的自由と労働基本権
   (2) 問題が生じた法的枠組み
   (3) 4つの欧州司法裁判所判決
   (4) 判決への反応
   (5) 団体行動権に関する規則案
   (6) 規則案に対する反応とその撤回
 第6節 多国籍企業協約
   (1) EUレベルの労働協約法制の模索
   (2) 多国籍企業協約立法化への動き
   (3) 専門家グループ報告書
   (4) 非公式の「協議」
   (5) 労使団体の反応
   (6) 欧州労連の立法提案
 
第3章 労働条件法政策
 第1節 リストラ関連法制
  1 集団整理解雇指令
   (1) ECにおける解雇法制への出発点
   (2) EC委員会の原案
   (3) 旧集団整理解雇指令
   (4) 1991年改正案とその修正案
   (5) 1992年改正
  2 企業譲渡における被用者保護指令
   (1) 前史:会社法第3指令案
   (2) EC委員会の原案
   (3) 旧企業譲渡指令
   (4) 欧州委員会の1994年改正案
   (5) 1997年の修正案
   (6) 1998年改正指令
  3 企業倒産における被用者保護指令
   (1) EC委員会の原案
   (2) 1980年指令
   (3) 2001年の改正案
   (4) 2002年改正指令
 第2節 安全衛生法制
  1 初期指令
  2 危険物質指令群
   (1) 危険物質基本指令
   (2) 危険物質基本指令に基づく個別指令
  3 単一欧州議定書による条約旧第118a条
  4 安全衛生枠組み指令
   (1) 使用者の義務
   (2) 労働者の義務
  5 枠組み指令に基づく個別指令
  6 安全衛生分野における協約立法
   (1) 注射針事故の防止協約指令
   (2) 理美容部門における安全衛生協約
   (3) 筋骨格障害
  7 自営労働者の安全衛生の保護の問題
  8 欧州職業病一覧表
  9 職場の喫煙
  10 職場のストレス
   (1) EU安全衛生戦略
   (2) 職場のストレスに関する労使への協議
   (3) 職場のストレスに関する自発的労働協約の締結
  11 職場の暴力とハラスメント
   (1) 欧州生活労働条件改善財団の調査結果
   (2) 欧州議会の決議
   (3) 労働安全衛生諮問委員会の意見
   (4) 欧州委員会の新安全衛生戦略
   (5) 職場のいじめ・暴力に関する自律労働協約 
   (6) 職場における第三者による暴力とハラスメントに取り組むガイドライン
   (7) 学校における第三者暴力・ハラスメント
 第3節 労働時間法制
  1 労働時間指令以前
   (1) ローマ条約上の規定
   (2) 週40時間労働及び4週間の年次有給休暇の原則に関する理事会勧告
   (3) ワークシェアリング
   (4) 労働時間の適応に関する決議
   (5) 労働時間の短縮と再編に関するメモランダム
   (6) 労働時間の短縮と再編に関する理事会勧告案
  2 労働時間指令の形成
   (1) 社会憲章と行動計画
   (2) 労使団体への協議文書
   (3) EC委員会の原案
   (4) 欧州経団連の批判
   (5) 経済社会評議会と欧州議会の意見
   (6) 第1次修正案
   (7) 理事会の審議(1991年)
   (8) 理事会の審議(1992年)
   (9) 共通の立場から採択へ
   (10) 旧労働時間指令
   (11) イギリス向けの特例規定
   (12) イギリスの対応
   (13) 欧州司法裁判所の判決
   (14) 判決の効果とイギリスへの影響
  3 適用除外業種の見直し
   (1) 適用除外業種の見直しに関するホワイトペーパー
   (2) 第2次協議
   (3) 業種ごとの協約締結の動き
   (4) 欧州委員会の指令改正案
   (5) 諸指令の採択
   (6) 改正労働時間指令
   (7) 道路運送労働時間指令
   (8) 船員労働時間協約指令
   (9) EU寄港船船員指令
   (10) 民間航空業労働時間協約指令
   (11) その後の業種ごとの労働時間指令
  4 難航する労働時間指令の本格的改正
   (1) 欧州委員会の第1次協議
   (2) 欧州委員会の第2次協議
   (3) 労働時間指令案の提案
   (4) 欧州議会の意見
   (5) 欧州委員会の修正案
   (6) 理事会における議論
   (7) 閣僚理事会の共通の立場
   (8) 欧州議会の第二読意見と決裂
   (9) 再度の労使団体への協議、交渉、決裂
   (10) 労働時間指令に関する一般協議
  5 自動車運転手の運転時間規則
 第4節 非典型労働者に関する法制
  1 1980年代前半の法政策
   (1) テンポラリー労働、パートタイム労働に関する考え方の提示
   (2) 自発的パートタイム労働に関する指令案
   (3) テンポラリー労働に関する指令案
   (4) 理事会等における経緯
   (5) 派遣・有期労働指令案修正案
  2 1990年代前半の法政策
   (1) 社会憲章と行動計画
   (2) 特定の雇用関係に関する3指令案
   (3) 労働条件との関連における特定の雇用関係に関する理事会指令案
   (4) 競争の歪みとの関連における特定の雇用関係に関する指令案
   (5) 有期・派遣労働者の安全衛生改善促進措置を補完する指令案
   (6) 修正案
   (7) 理事会での経緯
   (8) 有期・派遣労働者の安全衛生指令
  3 パートタイム労働指令の成立
   (1) 欧州労使団体への第1次協議
   (2) 欧州労使団体への第2次協議
   (3) パートタイム労働協約の締結
   (4) 協約締結後の推移
  4 有期労働指令の成立
   (1) 有期労働に係る労使交渉
   (2) 有期労働協約の内容
   (3) 欧州委員会による指令案
   (4) 指令の採択
  5 派遣労働指令の成立
   (1) 派遣労働に関する交渉の開始と蹉跌
   (2) 幕間劇-欧州人材派遣協会とUNI欧州の共同宣言
   (3) 提案直前のリーク劇と指令案の提案
   (4) 欧州委員会の派遣労働指令案
   (5) 労使の反応と欧州議会の修正意見
   (6) 理事会におけるデッドロック
   (7) フレクシキュリティのモデルとしての派遣労働
   (8) ついに合意へ
   (9) 指令の内容
  6 テレワークに関する労働協約
   (1) 労働組織の現代化へのアプローチ
   (2) 情報社会の社会政策へのアプローチ
   (3) 雇用関係の現代化に関する労使団体への第1次協議
   (4) 労使団体の反応とテレワークに関する労使団体への第2次協議
   (5) 産業別レベルのテレワーク協約の締結
   (6) EUテレワーク協約の締結
   (7) EUレベル労働協約の法的性格
  7 経済的従属労働者
   (1) 雇用関係の現代化に関する第1次協議
   (2) 労働法現代化グリーンペーパー
 第5節 その他の労働条件法制
  1 海外送出労働者の労働条件指令
   (1) 指令案の提案
   (2) 理事会における経緯
   (3) 指令の内容
   (4) 海外送出指令実施指令
   (5) 元請の連帯責任
   (6) 海外送出指令改正案
   (7) 海外送出指令改正案をめぐる加盟国議会の反発
  2 年少労働者指令
   (1) 指令案の提案
   (2) 理事会での検討
   (3) 指令の内容
  3 雇用条件通知義務指令
   (1) EC委員会の原案
   (2) 指令の内容
   (3) 指令見直しへの一般協議
  4 労働者の個人情報保護
   (1) 個人情報保護指令
   (2) 労働者の個人情報保護に関する検討
   (3) 労使団体への第1次協議
   (4) 労使団体への第2次協議
   (5) 新個人情報保護規則
  5 トレーニーシップ上質枠組勧告
   (1) トレーニーシップに関する一般協議と労使への協議
   (2) トレーニーシップ上質枠組勧告
 
第4章 労働人権法政策
 第1節 男女雇用均等法制
  1 男女同一賃金
   (1) ローマ条約の男女同一賃金規定
   (2) 男女同一賃金指令
   (3) 男女同一賃金行動規範
  2 男女均等待遇指令の制定
   (1) EC委員会の原案
   (2) 男女均等待遇指令
  3 社会保障における男女均等待遇
   (1) 公的社会保障における男女均等待遇指令
   (2) 職域社会保障制度における男女均等待遇指令
   (3)公的・職域社会保障制度における男女均等待遇指令案
   (4) 欧州司法裁判所の判決とその影響
  4 自営業男女均等待遇指令
   (1) EC委員会の原案
   (2) 自営業男女均等待遇指令
   (3) 2010年改正指令
  5 性差別事件における挙証責任指令
   (1) EC委員会の原案
   (2) 欧州司法裁判所の判決
   (3) 欧州労使団体への協議
   (4) 欧州委員会の新指令案と理事会の審議
   (5) 性差別事件における挙証責任指令
  6 ポジティブ・アクション
   (1) ポジティブ・アクションの促進に関する勧告
   (2) カランケ判決の衝撃
   (3) 男女均等待遇指令の改正案
   (4) ローマ条約における規定
   (5) マルシャル判決
  7 セクシュアルハラスメント
   (1) 理事会決議までの前史
   (2) 理事会決議
   (3) EC委員会勧告と行為規範
   (4) 労使団体への協議
   (5) 1998年の報告書
   (6) 男女均等待遇指令改正案
  8 男女均等待遇指令の2002年改正
   (1) ローマ条約の改正
   (2) 欧州委員会の改正案原案
   (3) 理事会における議論
   (4) 欧州議会の第1読修正意見
   (5) 欧州委員会の改正案修正案と理事会の共通の立場
   (6) 欧州議会の第2読修正意見と理事会との調停
   (7) 2002年改正の内容
  9 男女機会均等・均等待遇総合指令
   (1) 男女均等分野諸指令の簡素化
   (2) 男女機会均等・均等待遇総合指令案
   (3) 労使団体等の意見
   (4) 欧州議会の意見と理事会の採択
 第2節 その他の女性関係法制
  1 母性保護指令
   (1) EC委員会の原案
   (2) EC委員会の修正案
   (3) 理事会での検討
   (4) 母性保護指令
   (5) 母性保護指令の改正案とその撤回
  2 育児休業指令
   (1) 1983年の原案
   (2) 理事会におけるデッドロック
   (3) 労使団体への協議
   (4) 欧州レベルの労使交渉
   (5) EUレベル労働協約の内容
   (6) 協約締結後の推移
   (7) 労使団体への協議と改正育児休業協約
   (8) ワークライフバランスに関する労使団体への協議
  3 雇用・職業以外の分野における男女均等待遇指令
   (1) EC条約及び基本権憲章における男女均等関係規定
   (2) 指令案の予告
   (3) 男女機会均等諮問委員会のインプット
   (4) 指令案の遅滞
   (5) 指令案の提案
   (6) 理事会での審議 
   (7) 採択に至る過程
 第3節 性別以外の均等法制 
  1 特定の人々に対する雇用政策 
   (1) 障害者雇用政策 
   (2) 高齢者雇用政策 
  2 一般雇用均等指令 
   (1) EU社会政策思想の転換
   (2) 一般雇用均等指令案
   (3) 使用者団体の意見
   (4) 理事会における議論
   (5) 採択に至る過程
   (6) 一般雇用均等指令の内容
  3 人種・民族均等指令
   (1) 人種・民族均等指令案
   (2) 理事会における議論
   (3) 採択に至る過程
   (4) 人種・民族均等指令の内容 
  4 雇用・職業以外の分野における一般均等指令案 
   (1) 雇用・職業以外の分野における一般均等指令案

 

 

 

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『EUの労働法政策』は5月30日入荷予定

33565524 現在品切れ中でご迷惑をおかけしておりますが、『EUの労働法政策』は5月30日入荷予定ですので、いましばらくお待ちいただくようお願い申し上げます。

http://www.jil.go.jp/publication/ippan/eu-labour-law.html

着実に進展を続けるEUの労働法について、労使関係法や労働条件法、労働人権法など労働法政策に係わる最新情報に基づき全体像がわかるよう1冊にまとめた決定版。

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必要なのは国家主権の進歩的なビジョン

例によって、ソーシャル・ヨーロッパ・マガジンから。

https://www.socialeurope.eu/2017/05/needed-progressive-vision-national-sovereignty/

Thomasfazi What Is Needed Is A Progressive Vision Of National Sovereignty

The last year has seen the Right and extreme Right capitalise on the dissatisfaction and despair fostered by neoliberalism – and usher in a ‘post-neoliberal order’. Their success is based on championing and monopolising the idea of national sovereignty, but only of a certain kind. The Left has accepted their discourse that national sovereignty goes hand in hand with exclusivist and right-wing ideas, rather than attempting to reclaim it as vehicle for change ・・・

昨年は右翼と極右が、ネオリベラリズムによって助長された不満と絶望をうまく利用し、「脱ネオリベラル時代」の到来を告げた。彼らの成功は国家主権の理念を掲げ、独占したことに基づくが、しかしそれは特定の種類の国家主権に過ぎない。左翼は、国家主権が排他主義と右翼思想と一体だという彼らの議論を受け入れてきた。それを変化のための手段として取り戻そうと試みることもせずに・・・。

So why has the mainstream left not been able to develop an alternative, progressive view of national sovereignty in response to neoliberal globalisation? The answer largely lies in the fact that over the course of the past 30 years, most strands of left-wing or progressive thought have accepted the false narrative that nation states have essentially been rendered obsolete by neoliberalism and/or globalisation and thus that meaningful change can only be achieved at the international/supranational level,・・・. Furthermore, most leftists have bought into the macroeconomic myths that the Establishment uses to discourage any alternative use of state fiscal capacities. For example, they have accepted without question the so-called household budget analogy, which suggests that currency-issuing governments, like households, are financially constrained, and that fiscal deficits impose crippling debt burdens on future generations. This is particularly evident in the European debate, where, despite the disastrous effects of the EU and monetary union, the mainstream left continues to cling on to these institutions and to the belief that they can be reformed in a progressive direction, despite all evidence to the contrary, and to dismiss any talk of restoring a progressive agenda on the foundation of retrieved national sovereignty as a ‘retreat into nationalist positions’ inevitably bound to plunge the continent into 1930s-style fascism.

ではなぜ主流派左翼はネオリベラルなグローバル化に対する対応としてそれに代わる進歩的な国家主権の見方を展開できなかったのだろうか?その答えは大幅に過去30年間にわたって左翼や進歩派の思想の流れが、国民国家はネオリベラリズムやグローバル化によって本質的に時代遅れになり、それ故意味のある変化は国際的ないし超国家レベルでのみ達成しうるという間違ったおとぎ話を受け入れてきたからだ。・・・さらに、多くの左翼は体制は国家の財政能力のいかなる代替的な活用にも反対だというマクロ経済神話を買い込んできた。たとえば、彼らは疑うこともなくいわゆる家計財政アナロジー、つまり通貨発行政府は家計と同様財政的に制約され、財政赤字は将来世代に債務の負担を課すという考え方を受け入れてきた。・・・

This, however, is tantamount to relinquishing the discursive and political battleground for a post-neoliberal hegemony – which, as we have seen, is inextricably linked to the question of national sovereignty – to the right and extreme right. It is not hard to see that if progressive change can only be implemented at the global or even European level – in other words,

if the alternative to the status quo offered to electorates is one between reactionary nationalism and progressive globalism– then the left has already lost the battle

これがしかし、ポストネオリベラル覇権の散漫な政治的戦場-上述のように国家主権の問題と密接にリンクしているのだが-を右翼と極右に譲り渡すに等しい。・・・もし選挙民に提示される現状維持に対する代替案が反動的ナショナリズムと進歩的グローバリズムの間であるならば、その時左翼は既に闘いに負けているのだ。

国家主権を(右翼の手から)取り戻せ、という危機感溢れる主張です。

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『EUの労働法政策』品切中

Eulabourlawhttps://twitter.com/aokikatsuya/status/864084098242838528

『EUの労働法政策』の重刷はまだかい

はあ、もうしわけありません。こんな小さな字で山のような情報を詰め込んだ本がなんで売れるのかよくわからないのですが、現在在庫品切中です。重刷銃殺を予定しておりますので、今しばらくお待ち下さい。

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『エルダー』5月号に『EUの労働法政策』の書評

Elder 雑誌『エルダー』は、わたくしの連載が4月号でちょうど終わったところですが、その後の5月号に、拙著『EUの労働法政策』の書評が載っております。

http://www.jeed.or.jp/elderly/data/elder/q2k4vk000000vc38-att/q2k4vk000000vc5s.pdf

Eulabourlaw


最新のEU労働法の体系を歴史的・網羅的に解説
EUの労働法政策
濱口(はまぐち)桂一郎 著/
独立行政法人
労働政策研究・研修機構/
2500円+税
 本書の著者は、評判のブログ「EU労働法政策雑記帳」で日々発信を続ける濱口桂一郎氏。雇用・労働問題のブロガーとして著名だが、日本で数少ないEU労働法の研究者でもある。本書は、1998年に刊行した『EU労働法の形成』を全面的に改訂し、EUの労働法政策に関する最新の情報を盛り込んだ。本文500ページを超える大著である。
 著者は、EU労働法の全領域にわたり、指令として結実したもの、あるいは結実していないものも含めて、法政策として取り上げられたほとんどのトピックを、公刊資料などをもとに「歴史的視座に立って叙述した」としている。現在のEU労働法の全貌を、歴史的な側面からとらえるためにも、本書の価値は高い。
 EU労働法は、非正規労働者の均等待遇や労働時間規制問題など、日本が労働法制の見直しをする場合、たびたび引用され、比較される重要資料である。しかし、その全貌を理解するには、骨が折れることもまた事実。本書は、EU諸国に進出する企業の担当者にとって必読の書でもあるが、同時に、EU労働法が日本の労働法制に与えている影響に関心のある人にとっても一読の価値がある。

Euelder

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欧州社会民主主義に未来はあるか?

Royo_bio フランス大統領選が明日に迫る今日この頃ですが、ソーシャル・ヨーロッパ・マガジンからセバスチャン・ロヨの「欧州社会民主主義に未来はあるか?」を。まんまタイトル通りですが。

https://www.socialeurope.eu/2017/04/future-social-democracy-europe/

The response to the Great Recession from European social democratic/centre-left parties, with some notable exceptions like Portugal’s, was largely to implement the austerity policies of the right: they bailed out the banks and the bondholders, and they tightened fiscal policies and supported loose monetary ones. The economic and political consequences of these policies have been disastrous, particularly for Southern Europe: they led to brutal recessions that have left many of our countries in shambles, with deepening inequalities, increasing political instability, and a pervasive sense of fear and loss of hope about the future. These have led to the electoral defeats of centre-left parties and fueled the rise of populism all over Europe.

欧州社会民主主義/中道左派政党の大不況への反応は、ポルトガルのような例外を除き、おおむね右派の緊縮政策を実施するものだった。彼らは銀行と債権所有者に資金援助し、財政政策を締め上げ、金融政策を緩和した。これら政策の経済的政治的帰結は、とりわけ南欧諸国では惨憺たるものであり、多くの国を残酷な不況により不平等の拡大と政治的不穏の増大と恐怖と未来への希望の喪失の感覚の瀰漫とともに混乱を残した。これらが選挙における中道左派の敗北をもたらし、欧州全域にわたるポピュリズムの興隆を焚き付けたのである。

The biggest mistake, of course, was the acceptance and implementation of austerity, which turned social democratic governments into reactionaries. Centre-left politicians, convinced that elections were won from the centre, obsessed with a mission to prove that they could also be fiscally responsible, incapable of joining forces at EU level to counter Germany’s dogmatism, and complacent because they felt that leftist voters had no alternatives, jumped eagerly onto the austerity bandwagon, in some cases even doubling down to prove their bona fides to the markets, with all the consequences our countries will suffer from for years to come.

最大の失敗はもちろん、緊縮策の受容と実施であり、これが社会民主主義政権を反動へと転化した。中道左派政治家たちは中道からの票で選挙に勝てると信じて、彼らが財政的に責任あることを証明する任務に取り憑かれ、左翼の有権者にはほかに投票する先なんていないとおもって、熱心に緊縮政策の流行に飛び乗り、ときには市場への善意に倍掛けするほどだったが、そのあげくはこの有様だ。

・・・・・Rather than blindly supporting fiscal austerity and free trade agreements, which have hurt their core traditional constituencies, progressive governments need to find the right mix of monetary and fiscal policies, support public sector investment, and lower taxes to the middle class to encourage greater consumption. They also need to reform their tax and welfare systems to encourage a fairer distribution of wealth and reduce inequality, as well as invest in infrastructure and in their communities; implement industrial policies that help diversify our economies as well as apply labor standards that protect our workers, even if we need to change our trade rules; and enforce financial regulations that prevent the damage caused by short-term capital flows. Finally, they need to rethink how we educate and train our workforce to meet the demands of the future.

・・・・・伝統的な中核的支持基盤を痛めつける緊縮財政と自由貿易協定を盲目的に支持するのではなく、進歩的政権は金融政策と財政政策の正しいミックスを見いだし、公共部門の投資を支持し、消費拡大のため中間層を減税する必要がある。彼らはまた税制と福祉制度を改革して富の公平な分配と不平等の削減を促進するとともにインフラとコミュニティに投資し、経済のダイバーシティを拡大する産業政策を進めるとともに労働者を保護する労働基準を適用し、短期的な資本の移動で引き起こされる被害を防止するための金融規制を強化する必要がある。最後に彼らは我々労働力が将来の需要に対応できるよう教育訓練のあり方を再検討する必要がある。

And they need to accept that many of the solutions need to be implemented at the European level. The constraints imposed by EU rules are central to understand the predicament of centre-left parties because Eurozone members must abide by a plethora of strict fiscal rules that constrain national policies and have forced centre-left parties to worship at the altar of budgetary restraint and competitiveness to satisfy their Eurozone masters (as well as financial markets), often at the expense of social policies and their citizens’. Right now, for any country to escape the fiscal straitjacket of the Growth & Stability Pact, the only real option is to leave the euro. That is the solution offered by extremist parties. Rather, what we need is more fiscal flexibility and a Eurozone-wide investment plan funded by Eurobonds. While this is now opposed by Germany, centre-left parties need to find a way to come together and counter this rigid stance.

そして彼らは多くの解決策がEUレベルで実施される必要があることを受け入れる必要がある。EU規則で強制された制約は中道左派の苦境を理解する上で枢要である。というのは、ユーロ圏諸国は国内政策を制約する厳格な財政規則の多血症に従わなければならず、これが中道左派政党に社会政策や市民を犠牲にして財政制約の祭壇に跪かせた。いまや、成長安定協定の財政的拘禁服から逃れ出るために唯一の現実的な選択肢はユーロから脱出することだ。これは急進派政党から提示されている選択肢である。むしろ我々に必要なのは、財政的柔軟性の拡大であり、ユーロ圏全域でユーロ債でまかなう投資計画である。ドイツがこれに反対しているが、中道左派政党はこれを乗り越え道を見いだす必要がある。

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福田耕治編著『EU・欧州統合研究[改訂版]』

51rzab447fl__sx350_bo1204203200_引馬知子さんより、福田耕治編著『EU・欧州統合研究[改訂版]Brexit以後の欧州ガバナンス』(成文堂)をお送りいただきました。

http://www.seibundoh.co.jp/pub/search/030621.html

2009年に出た本の改訂版です。2009年にいただいた時のエントリはこちらです。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/01/eu-6583.html

副題にもあるように、初版が出た時からのEUは疾風怒濤の時期を経験し、昨年は遂にイギリス離脱というところまでいきました。

はしがき…福田耕治
第1部 EU/欧州統合研究の基礎
第1章 ヨーロッパとは何か
―欧州統合の理念と歴史…森原隆…2
はじめに…2
第1節 「ヨーロッパ」の起源とギリシア・ローマ世界の
「ヨーロッパ」…3
第2節 聖書・初期キリスト教の「ヨーロッパ」…6
第3節 中世「キリスト教世界」の精神的統合と
近世「ヨーロッパ」の分化…10
第4節 近世ヨーロッパの勢力均衡,統合・平和思想…13
第5節 近代ヨーロッパの国民・文明・文化統合の動き…16
第6節 20世紀「ヨーロッパ連合・EU」前史…18
おわりに…20
第2章 EU・欧州統合過程と欧州統合理論…福田耕治…23
はじめに…23
第1節 欧州統合の起源とクーデンホーフ・カレルギー…24
第2節 欧州統合の目的と制度設計…26
第3節 欧州地域統合の歴史的発展…28
第4節 EU条約―マーストリヒト条約から
リスボン条約までの変遷…30
第5節 欧州統合理論アプローチ…34
おわりに…42
第3章 EU経済通貨統合と世界金融・経済危機…田中素香…47
はじめに…47
第1節 経済統合について…47
第2節 EUの経済統合発展の諸段階(経済統合の深化)…49
第3節 域内市場統合―経済統合の後期(広域国民経済形成)
その1―…53
第4節 通貨統合―経済統合の後期(広域国民経済形成)
その2―ユーロについて…56
第5節 EUの拡大…63
第6節 世界金融・経済危機とEU…67
おわりに…71
第2部 EU機構と政策過程
第4章 EU/EC法秩序とリスボン条約…須網隆夫…76
はじめに…76
第1節 EU/EC法秩序の基礎…77
第2節 「多義的な主権概念」と「主権の分割可能性」…78
第3節 国家主権とEC権限…83
第4節 統治権限の移譲の意味…87
第5節 リスボン条約の構造とEU法…91
おわりに…95
第5章 EU・欧州ガバナンスと政策過程の民主化
―リスボン条約による機構改革―…福田耕治…100
はじめに…100
第1節 EUにおける法制化と民主的ガバナンス…101
第2節 欧州ガバナンス:ハード・ローによる法制化と
デモクラシー…105
第3節 EU政策過程と欧州ガバナンスの類型…111
第4節 EU・リスボン条約における法制化と民主的ガバナンス…113
おわりに…120
第6章 欧州議会の機能と構造
―立法・選挙・政党…日野愛郎…124
はじめに…124
第1節 欧州議会の立法権…124
第2節 欧州議会の選挙制度…129
第3節 欧州議会の政党システム…135
おわりに…137
第3部 EUの持続可能なガバナンスとリスク管理
第7章 EU高齢者政策とリスク管理
―貧困・社会的排除とCSRによるリスク制御―…福田耕治…142
はじめに…142
第1節 EUの持続可能な社会の構築とリスク管理…143
第2節 EU高齢者政策と各加盟国の年金制度改革:
開放型年金整合化方式(OMC)による調整…147
第3節 EUの高齢者雇用・社会的排除のリスク制御と
EUのCSR政策…151
おわりに…154
第8章 EU対テロ規制と法政策…須網隆夫…158
はじめに…158
第1節 EUにおける国際テロリズム規制…158
第2節 国際テロリズム規制と基本的人権の保障…165
おわりに…173
第9章 EU不正防止政策と欧州不正防止局
…山本直…177
はじめに…177
第1節 EU不正防止政策の始動…177
第2節 欧州不正防止局の設置と捜査活動…180
第3節 EU政治システムにおける欧州不正防止局…185
おわりに…186
第10章 EUタバコ規制政策と健康リスク管理…福田八寿絵…189
はじめに…189
第1節 喫煙と健康リスク…190
第2節 EUのタバコ規制政策の形成…191
第3節 各加盟国のタバコ規制の取り組み…194
第4節 タバコ規制に係わるステークホルダー…199
第5節 タバコの喫煙率の現状と喫煙に対する市民の意識…201
おわりに…202
第4部 EUの域内政策の展開と課題
第11章 EU共通農業政策と東方拡大…弦間正彦…212
はじめに…212
第1節 共通農業政策と改革…213
第2節 東方拡大とCAP…219
おわりに…223
第12章 EU社会政策の多次元的展開と均等待遇保障
―人々の多様性を尊重し活かす社会の創造に向けて―…引馬知子…226
はじめに…226
第1節 EU社会政策と均等待遇保障…227
第2節 EU均等法…230
第3節 雇用均等枠組指令とEU全加盟国での置換…232
第4節 加盟国間の履行上の相違と収斂…234
第5節 EUによる均等施策・行動計画…243
第6節 EU均等法施策における「福祉アプローチ」と
「市民権アプローチ」の共存…244
おわりに…245
第13章 EU科学技術政策とジェンダー
―先端生命医科学研究政策を事例として―
…福田八寿絵…250
はじめに…250
第1節 EU科学技術政策の形成…251
第2節 EU科学技術政策(FP7)とリスボン戦略…252
第3節 EUにおける科学技術政策とジェンダー…254
第4節 女性と科学―生命医科学研究開発分野への
女性支援政策の形成と展開…256
第5節 生命医科学研究におけるジェンダー配慮の必要性…259
おわりに…263
第5部 EUの対外政策と課題
第14章 EU共通通商政策とWTO…須網隆夫…270
はじめに…270
第1節 共通通商政策に係る権限の性質…271
第2節 共通通商政策の範囲―WTO協定の文脈において―…273
第3節 WTO法の裁判規範性…279
おわりに…285
第15章 EUとアフリカ…片岡貞治…289
はじめに…289
第1節 EUの開発援助政策の特殊性と概略…290
第2節 EUの対アフリカ戦略…297
おわりに…304
第16章 EUの対西バルカン政策…久保慶一…308
はじめに…308
第1節 欧州の「挫折」―EUと旧ユーゴ紛争…308
第2節 EU加盟プロセスの発足…312
第3節 危機管理能力の向上―CFSPの発展と紛争後
平和構築…316
おわりに…319

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右翼ポピュリズムと社会問題

例によって、ソーシャル・ヨーロッパ・ジャーナルから「右翼ポピュリズムと社会問題」という論考を。筆者はコヴァルとリントナー。

https://www.socialeurope.eu/2017/04/right-wing-populism-social-question/

Kowall_bio

・・・There is now a heated debate about whether right-wing populist support is mainly driven by social and cultural or by economic anxiety. However, both types are highly interdependent: socio-economic uncertainty is related to cultural anxiety. The loss or feared loss of well-paid jobs can lead to a general sense of identity erosion and the search for easy scapegoats. But while right-wing populists play up and upon socio-cultural anxiety, they also tend to offer economic certainty by drawing on traditional social democratic discourse. This discourse gains credibility and support because many feel that social democratic parties have embraced neoliberalism “light” in recent decades, thereby opening the political space for right-wing extremists to offer protection from an uncertain world.

・・・いま右翼ポピュリズムへの支持が主として社会文化的な不安によるものか経済的な不安によるものかという熱い議論が行われている。しかし、どちらも高度に相互依存的だ。社会経済的不確実性は文化的不安に関係している。高収入の仕事の喪失やその恐れは一般的なアイデンティティ溶解感覚をもたらし、安易なスケープゴート探しをもたらす。しかし右翼ポピュリストは社会文化的不安をかき立てているが、彼らはまた伝統的な社会民主主義的議論を引き出すことで経済的確実性を提供しようとしている。この議論は信頼と支持を得られる。というのも、多くの人は社会民主主義政党が過去数十年間ネオリベラルズムの「光」を抱きしめてきたため、右翼急進派が不確実な世界からの保護を提供する余地を与えてきたと感じている。

Linder_bio ・・・Right-wing extremists can justly claim that the nation has lost much of its control over economic, social and cultural developments. Indeed, one of the reasons German social democrats used to explain their cuts in labour market regulation and the welfare state in the early 2000s was globalisation and its impact on wage costs. Also, the centre-left’s steady promise to re-establish control over the economy at transnational level – for instance in the EU – sounds increasingly hollow when austerity and mass unemployment in many crisis countries was often advocated by leading European social democrats.

右翼急進派は国家が経済的社会的文化的発展へのコントロールの大部分を失ってきたという主張を正当化することができる。実際、ドイツ社会民主党が2000年代初頭に労働市場規制と福祉国家の削減を正当化した理由はグローバリゼーションとその賃金コストへの影響であった。超国家レベルで経済へのコントロールを再建するという中道左派の繰り返される約束-たとえばEUとか-は、多くの危機に陥った諸国における緊縮策と大量失業が欧州の社会民主勢力によって唱道されているときにはうつろに響く。

ここで一言。一昨日の金曜日、同志社大学でEUの労使関係と労働法というタイトルで講義した話は、まさにここのところに関わるんですね。閑話休題。

This has opened the door for right-wing populism and nationalism: right-wing populists seek to “take back control” by nationalistic means. Social democrats in the second half of the 20th century promised to protect workers within a nation through democratic policies. Now they have abandoned this promise, right-wing populists instead become increasingly credible by making the same promise.

これは右翼ポピュリズムとナショナリズムへのドアを開く。右翼ポピュリストはナショナリズム的な手段で「コントロールを取り戻す」ことを追求する。20世紀後半に社会民主主義者は民主主義的な政策を通じて国家の中で労働者を保護することを約束した。いまや彼らはこの約束を放棄し、その代わりに右翼ポピュリストが同じ約束をすることで次第に信頼を勝ち得てきている。

・・・・The strategy of offering national protection from the anonymous and malign forces of globalisation is not peculiar to the FPÖ: Marine Le Pen in France has adopted the same kind of discourse, promising to stop the austerity and deregulation demanded by European institutions and Germany.

匿名で悪意あるグローバリゼーションの力からのナショナルな保護を提供するという戦略はFPÖに限らない。フランスのマリーヌ・ルペンも同様の議論を採用し、欧州機関とドイツの要求する緊縮策と規制緩和をストップさせると約束している。

・・・Paul Krugman nicely summarized the promises of modern right-wing extremists as offering “herrenmensch social democracy”; “a welfare state but only for people who look like you”

ポール・クルーグマンは現代右翼急進派の約束を「支配民族社会民主主義」を提供するものと見事に要約している。福祉国家、ただしあなたのように見える人々のためだけの。

・・・The scary thing is that this modern right-wing strategy is not modern at all, but the very principle of 20th century fascism: it and national socialism already offered “herrenmensch social democracy” in the 1920s and 1930s. Widely overlooked today, this aspect explains much of its appeal at the time – when there was almost no welfare state in Europe and the economy was devastated by war, inflation and financial crises.

恐ろしいことに、この現代右翼戦略はちっとも現代的なんかじゃなく、20世紀ファシズムの原則そのものだってことだ。ファシズムと国家社会主義は既に1920年代と1930年代に「支配民族社会民主主義」を提供していた。今日では看過されているけれども、この側面こそが当時のファシズムの魅力の多くを説明するのだ。ヨーロッパに福祉国家なんて全然なく、経済は戦争とインフレと金融危機で破壊され尽くしていた頃の。

Fascists identified real economic and social problems of the time, using them to build nationalistic mass political movements while many socialists were still fighting each other over the right interpretation of Karl Marx.・・・・

ファシストがその時代のリアルな経済社会問題を明らかにし、それを使ってナショナリスト的な大衆政治運動を確立していた頃、多くの社会主義者たちはカール・マルクスの正しい解釈をめぐってお互いに争い合っていたのだ。・・・・・

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ギード・フィッシャー『労使共同経営』@『HRmics』26号

Image1海老原嗣生さんのニッチモが出している『HRmics』の26号が届きました。なぜかまだニッチモのホームページにアップされていませんが、その関係のHRicsレビューの案内は載っているので、何かの手違いかも知れません。

http://www.nitchmo.biz/

特集は「あーせい、そーせいいわない地域創生」で、なぜか高橋洋一氏とか古賀茂明氏といった「脱藩官僚」な方々が出てきて、いろいろと語っています。今度のHRmicsレビューもこのお二人のようですね。

それはともかく、わたしの連載「原典回帰」は、ギード・フィッシャー『労使共同経営』を取り上げています。

ギード・フィッシャーといってもほとんどの人は知らないかも知れませんが、ドイツ経営学の一つの頂点みたいな人です。

 前回のフリッツ・ナフタリ編『経済民主主義』に続いて、今回もドイツです。ただし、ナフタリの本がワイマール期の労働組合サイドの考え方を提示したものであるのに対し、今回のギード・フィッシャーはドイツ経営学の代表的な学者で、本書は「ドイツ的経営」の神髄をまとめた本として知られています。えっ?ドイツ的経営?そう、日本が毀誉褒貶はともかく「日本的経営」で特徴づけられるのと似て、ドイツの企業経営もアングロサクソン型の経営思想に対してドイツ的な経営思想で特徴づけられるのです。
 この点については、ミシェル・アルベール『資本主義対資本主義』(竹内書店新社)や有名どころではロナルド・ドーア『日本型資本主義と市場主義の衝突』(東洋経済新報社)などで、ライン型資本主義という言葉で知っている方も多いのではないかと思います。ただ、アルベールはフランス人だし、ドーアはイギリス人です。彼らがアングロサクソン型に比べて推奨するそのドイツ的経営を、ドイツ人自身が「こういう考え方なんだぜ」とまとめた本というのは、実はなかなか見つかりません。今回のフィッシャーの本は、原著が1955年、邦訳が1961年と半世紀以上も昔の本ではありますが、それだけに純粋にドイツ的経営の神髄を打ち出しているところが見られますので、ドイツの労働システムを前回のナフタリと合わせて労使両方の観点から眺める上でも、結構有用な本だと思います。

1 経営パートナーシャフト-生活の安定

2 公正賃金 

3 共同体メンバーとしての従業員

4 組織原則の違い

5 フィッシャー経営学とカトリシズム

で、最後に海老原さん曰く:

う~ん、深いなフィッシャー

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