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EUの労働法政策

2021年1月17日 (日)

年末年始に、欧州3か国でプラットフォーム労働関係で判決

欧州労連によると、この年末年始に欧州3か国(スペイン、ベルギー、イタリア)で、プラットフォーム労働の労働者性にかかわる判決が続けざまに出されたようです。ちなみにデリバルーは欧州で一番流行っているプラットフォームデリバリー企業で、日本のウーバーイーツとほぼ同じです。

https://www.etuc.org/en/pressrelease/national-rulings-platform-work-show-need-eu-action

Three rulings in three countries on the rights of delivery riders shows why EU action is needed to end the scandal of platforms not accepting their responsibilities as employers.

A court in Spain found over 700 Deliveroo workers were falsely self-employed, an Italian court found the platform discriminated against riders who take sick leave and the Belgian government found Uber’s working conditions were incompatible with self-employment.

The European Commission is scheduled to launch a consultation on “improving the working conditions of platform workers” on February 24 but these decisions show why workers need action not merely more talk・・・

デリバリー・ライダーの権利に関する3か国の3つの判決は、プラットフォームが使用者責任を受け入れようとしないスキャンダルを終わらせるためにEUの行動が必要であることを示している。

スペインの裁判所は700人以上のデリバルー労働者が偽装自営業者であるとみなし、イタリアの裁判所はプラットフォームが病休をとったライダーを差別したと判断し、ベルギー政府はウーバーの労働条件が自営業者というには不適合だとした。

欧州委員会は来たる2月24日に「プラットフォーム労働者の労働条件の改善」に関して協議を開始する予定であるが、これらの判決は労働者が単なるおしゃべりではなく行動を必要としている理由を示している。・・・

というわけで、来月24日にはいよいよ欧州委員会がプラットフォーム労働者の労働条件について協議を始めるようです。

 

 

2021年1月 7日 (木)

EU自営業者の団体交渉規則へのロードマップ

昨日、EUの競争当局は、いよいよ自営業者の団体交渉を認める立法に向けた動きを始めました。

https://ec.europa.eu/info/law/better-regulation/have-your-say/initiatives/12483-Collective-bargaining-agreements-for-self-employed-scope-of-application-EU-competition-rules

昨日付で、「Inception impact assessment」(「端緒的影響評価」)を公表して、2月3日までの4週間にフィードバックを募っていて、今現在すでに3つほど投稿されていますね。

今後の日程表を見ると、2021年の第2四半期に「Public consultation」(一般協議)が予定されていて、その翌年の2022年の第2四半期に「Commission adoption」、欧州委員会による規則案の提出が予定されているようです。

何をやろうとしているかというと、一番端的には

This initiative aims to define EU competition law’s scope of application, to enable an improvement of working conditions through collective bargaining agreements – not only for employees, but also, under some circumstances, for the solo self-employed.

このイニシアティブは、EU競争法の適用範囲を、被用者だけではなく、一定の状況下で一人自営業者にも、労働協約を通じて労働条件を改善することを可能にするように定義することを目指す。

この動きについては、『労基旬報』2021年1月5日号に「フリーランスと独占禁止法」を寄稿して、やや詳しく解説していますので、お読みいただければと思います。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2020/12/post-17e8ca.html

・・・・・こうして、ここ数年来、EUでは自営業者の団体交渉権をめぐる議論が沸騰しています。これについても本紙2020年7月25日号でやや詳しく紹介しました。同年6月30日、EUの競争総局は、自営業者の団体交渉問題に取組むプロセスを開始したと発表しました。記者発表資料は、「EU競争法は団体交渉を必要とする者の道に立ちふさがらない。このイニシアティブは、労働協約を通じて労働条件を改善することが被用者だけではなく保護を要する自営業者にも確保されることを目指す」と述べ、既に始まっているデジタルサービス法の一般協議の、「自営個人とプラットフォーム」の項に意見を出すように求めています。これと並行して労働組合や経営団体とも協議を行うと述べています。
 競争政策担当のマルグレーテ・ヴェステアー副委員長の言葉が、その問題意識を明瞭に示しています。曰く、「欧州委員会は、プラットフォーム労働者の労働条件の改善にコミットしている。それゆえ、団体交渉が必要な者がEU競争法に違反する恐れなくそれに参加できるようにするプロセスを開始したのだ。競争法は労働者が組合を結成するのを止めないが、近年の労働市場では「労働者」概念と「自営業者」概念は境界が曖昧になっている。多くの個人が自営業としての契約を受入れざるを得なくなりつつある。我々はそれゆえ、労働条件の改善のために団体交渉する必要のある人々に明確さを与える必要がある」と。
 ここで共有されている問題意識とは、「労働者でないからといって、フリーランスに安易に競争法を適用するな!」というものです。競争法は集団的労使関係の敵であるという「常識」の上で議論が行われている欧州から見ると、労働側弁護士が競争法の適用を諸手を挙げて歓迎している日本の姿はいささか奇妙に見えます。
*1菅俊治「独禁法を使った労働運動の可能性」(『労働法律旬報』1913号)。 

 

 

2020年12月22日 (火)

EU離脱寸前のイギリスで、ギグワーカーはEU安全衛生指令上の労働者だという判決

本日付のソーシャル・ヨーロッパに、「Gig workers’ rights and their strategic litigation」(ギグワーカーの権利とその戦略的訴訟)というのが載っていますが、EU離脱があと数日後に迫ったイギリスで、プラットフォーム型のギグワーカーを労働安全衛生法の保護から外しているのは、EU労働安全衛生指令に違反するという判決を、イングランドとウェールズの高等裁判所が下したそうです。

https://www.socialeurope.eu/gig-workers-rights-and-their-strategic-litigation

話が複雑なんですが、そもそもEU法の最終的解釈権限は国内裁判所ではなくEU司法裁判所にあるので、この解釈が正しいかどうかは、この事案をEU司法裁に持って行かないと分かりません。

ところが、あと数日後に(協定が結ばれるか無協定のままかは未だ不透明ですが)イギリスはEUから出ていってしまうので、出ていった国はもはやEU裁判所に事案を持って行く道がないはず。ということは、この判決はイギリスの裁判官の判断がEUによって確認されることのないままになってしまうわけですね。

というわけで、なんだかすっきりしない状況ですが、いずれにしても大変興味深い判決であることは確かです。

 

2020年11月 1日 (日)

EU最低賃金指令案

今まで何回かその動きを紹介してきたEUの最低賃金指令案ですが、去る10月28日に欧州委員会が正式に提案したようです。

https://ec.europa.eu/social/main.jsp?langId=en&catId=89&furtherNews=yes&newsId=9808

Proposal for a DIRECTIVE OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL on adequate minimum wages in the European Union 

法定最低賃金の水準について規定した第5条を見てみましょう

Article 5
Adequacy
1. Member States with statutory minimum wages shall take the necessary measures to ensure that the setting and updating of statutory minimum wages are guided by criteria set to promote adequacy with the aim to achieve decent working and living conditions, social cohesion and upward convergence. Member States shall define those criteria in accordance with their national practices, either in relevant national legislation, in decisions of the competent bodies or in tripartite agreements. The criteria shall be defined in a stable and clear way.
2. The national criteria referred to in paragraph 1 shall include at least the following elements:
(a) the purchasing power of statutory minimum wages, taking into account the cost of living and the contribution of taxes and social benefits;
(b) the general level of gross wages and their distribution;
(c) the growth rate of gross wages;
(d) labour productivity developments.
3. Member States shall use indicative reference values to guide their assessment of adequacy of statutory minimum wages in relation to the general level of gross wages, such as those commonly used at international level.
4. Member States shall take the necessary measures to ensure the regular and timely updates of statutory minimum wages in order to preserve their adequacy.
5. Member States shall establish consultative bodies to advise the competent authorities on issues related to statutory minimum wages.  

第5条 十分性

1.法定最低賃金を有する加盟国は、法定最低賃金の設定および改定がまっとうな労働生活条件、社会的結束、上方への収斂を達成する目的で十分性を促進するような基準に基づくよう確保する必要な措置をとるものとする。加盟国はこれらの基準を国内法によるか権限ある機関の決定によるか又は三者合意により定めるものとする。この基準は安定的かつ明確なやり方で定められるものとする。

2.第1項に言う国内基準は少なくとも以下の要素を含むものとする。

(a)生活費並びに租税及び社会保険料を考慮に入れて、法定最低賃金の購買力

(b)賃金総額の一般水準及びその分布

(c)賃金総額の成長率

(d)労働生産性上昇率

3.加盟国は賃金総額の一般水準との関係で法定最低賃金の十分性の評価を導くために、国際レベルで通常用いられるもののような基準値を用いるものとする。

4.加盟国は法定最低賃金の十分性を維持するため、その定期的かつ時宜に適した改定を確保する必要な措置をとるものとする。

5.加盟国は法定最低賃金に関する問題について権限ある機関に助言する諮問機関を設置するものとする。

ちなみに、北欧の労働組合が猛反発していたことに対する言い訳として、その前の第4条に「賃金決定に関する団体交渉の促進」という条項が設けられています。

 

2020年3月14日 (土)

EU新産業戦略にプラットフォーム労働者対策を予告

欧州委員会が去る3月10日に新産業戦略(A New Industrial Strategy for Europe)を公表しましたが、

https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX:52020DC0102

その中で、プラットフォーム労働者の労働条件改善のためのイニシアティブをとると予告しています。

Initiative on improving the working conditions for platform workers. 

いや、これだけなので、具体的にどういう措置を取るつもりなのかさっぱりわかりませんが、ここまでくると何かやらないといけないということだけは確かなようです。

 

2020年1月16日 (木)

EUが最低賃金について労使団体に第一次協議

一昨日(1月14日)付けで、欧州委員会が最低賃金に関する労使団体に対する第一次協議を開始したようです。

https://ec.europa.eu/social/BlobServlet?docId=22219&langId=en (First phase consultation of Social Partners under Article 154 TFEU on a possible action addressing the challenges related to fair minimum wages)

これは、なまじEU労働法を知っている人にとっては却って驚くべき話です。なぜなら、EU運営条約は明文の規定で以て賃金をEUの権限から排除しているからです。

とはいえ、これは政治的な案件なのかも知れません。

ブレグジットで、何でも反対するイギリスはもう何も言わなくなるという状況もあるのかも。

もう少し情報を調べてみる必要がありそうです。

 

2019年5月18日 (土)

労働時間毎日把握義務@EU司法裁判所

EU司法裁判所が去る5月14日に、労働時間指令と労働安全衛生指令の解釈として、使用者は実労働時間を毎日把握しなければならない義務があるという判決を下したようです。

判決文自体はこちら:

http://curia.europa.eu/juris/document/document.jsf;jsessionid=D6C917E0219967825FA962C56FAE7624?text=&docid=214043&pageIndex=0&doclang=en&mode=lst&dir=&occ=first&part=1&cid=4097884

新聞発表資料はこちらです。

https://curia.europa.eu/jcms/upload/docs/application/pdf/2019-05/cp190061en.pdf

これ、原告はスペインの労働組合のCCOO、被告はドイツ銀行。

スペインの労働法では、使用者は毎日の実労働時間を毎日把握する必要はなく、月単位で時間外労働時間を把握すればよいとされているのですが、それはEU指令に違反すると。

Articles 3, 5 and 6 of Directive 2003/88/EC of the European Parliament and of the Council of 4 November 2003 concerning certain aspects of the organisation of working time, read in the light of Article 31(2) of the Charter of Fundamental Rights of the European Union, and Article 4(1), Article 11(3) and Article 16(3) of Council Directive 89/391/EEC of 12 June 1989 on the introduction of measures to encourage improvements in the safety and health of workers at work, must be interpreted as precluding a law of a Member State that, according to the interpretation given to it in national case-law, does not require employers to set up a system enabling the duration of time worked each day by each worker to be measured.

EU労働時間指令第3,5,6条と労働安全衛生指令第4条第1項、第11条第3項、第16条第3項は、国内判例法による解釈に従い使用者に各労働者が毎日労働した時間の長さを測定することを可能にする仕組みを設けることを要求しない加盟国の法律を排除すると解釈されなければならない。

判決文に引用されたスペイン法の条文(の英訳)を見ると、正確には使用者は毎日の労働時間を把握しなければならないけれども、労働者にはい単位で時間外労働の時間数だけ伝えればよいということのようですが、とにかく毎日何時間労働したかが確定しないまま1か月が過ぎるという状況のようです。

で、それはEU指令違反だと。EU法は労働者の安全衛生を目的として、1日単位の休息時間、1週単位の休日と最長労働時間を定めているので、それが守られているかどうかを1か月単位ではだめだということですね。日本では労働時間と言えば残業代と見込む人が多いですが、残業代の話では全然ありませんので、その点は誤解なきよう。

 

 

 

2019年2月14日 (木)

マルコ・ビアジ「僕たちはみんなメッキの蝶に笑うだろう」

Ella_9_4_cover_2『欧州労働法雑誌』(European Labour Law Journal)の最新号に、イタリアの労働法学者マルコ・ビアジさんが興味深い論文を書いています。

というと、おいおい、何を言っておいるんだ、マルコ・ビアジは2002年に赤い旅団に暗殺されたはずじゃないか、と思ったあなた。極左テロに殺されたのはMarco Biagi。今回の論文の著者はMarco Biazi。一字違いですが、カタカナにするとどちらもビアジになっちゃうんですね。

https://journals.sagepub.com/toc/ella/current

‘We will all laugh at gilded butterflies’. The shadow of antitrust law on the collective negotiation of fair fees for self-employed workers
Marco Biasi

「僕たちはみんなメッキの蝶に笑うだろう」などと、なんだか下手な純文学崩れみたいなタイトルですが、中身は副題のとおり、「自営就業者の公正な報酬の団体交渉に対する反トラスト法の影」で、今はやりの雇用類似の働き方に対する集団的労働法による保護の試みに対して独占禁止法などの経済法が邪魔をするという危険性を論じています。

The development of a wide-reaching collective representation for (genuine) self-employment and the collective negotiation of fair fees for independent contractors might often be more dissuasive vis-à-vis scam self-employment than the threat of reclassification. However, case law in both civil and common law jurisdictions showcases how antitrust law can hamper the collective negotiation of workers’ minimum fees. The premise of such a view, which has its roots in the early stage of development of collective bargaining, is that the agreements setting the rates of pay for non-subordinate labour stand as restraints of trade. The author contends that this narrow interpretation of the scope of collective labour law - or rather this extensive view of the scope of antitrust law - is unacceptable. On the one hand, workers who personally carry out their activity cannot be treated as businesses operating on a free market, because they are - akin to the employees - individuals who lack the power to tangibly affect the terms and conditions of their work. For those persons, as the author recalls, collective bargaining have always stood for, even before the binary legal divide between employment and self-employment was drawn. On the other hand, it appears incongruous that a major challenge to the perimeters of collective labour law stems from a formalistic approach to a field of law (antitrust or competition law) which seeks to correct the market asymmetries in the interest of weaker parties, such as smaller businesses, communities and consumers. Ultimately, the author contends that a solution to overcome this legal hurdle cannot be found through a mere change in the interpretation of the existing US and EU competition and labour law rules, which have to be amended by the legislators in accordance with the current social needs.

・・・・かかる集団的労働法の適用範囲の狭い解釈-あるいはむしろ反トラスト法の適用範囲の拡張的見解-は受入れがたいと筆者は主張する。一方では、個人的に活動を遂行する就業者は自由市場で運営する事業として扱われ得ない、なぜなら彼らは被用者に近く、その就業条件に影響を与える権力を欠いているからである。これらの者には、雇用と自営の法的二分法が引かれる以前ですら集合的取引が常にその味方であったことを想起する。他方、集団的労働法の境界線への主たる挑戦が、零細企業や消費者のような弱者の利益のために市場の不均衡を矯正しようとする法(反トラスト法や競争法)の分野に対する公式的なアプローチから生じていることは、矛盾したことのように思われる。結局のところ、筆者はこの法的障壁を乗り越える解決策は既存のアメリカや欧州の競争法と労働法のルールの解釈を少しばかり変えることでは見いだせず、今日の社会的必要性に沿った立法によって改正されるべきだと主張する。

ちなみに、ビアジさんの論文以外にも、ギグだの、プラットフォームだのと今はやりの話題の論文が載っています。

2018年9月19日 (水)

ウェビナール

ウェビナール(webinar)って何?

いや、私も今初めて知った言葉ですが、ウェブ(web)とゼミナール(seminar)をくっつけた言葉のようですね。

https://www.eurofound.europa.eu/events/webinar-platform-work(Making the platform economy work well for workers - Webinar)

On 8 November 2018 from 14:00 to 16:00 CET, Eurofound will host a webinar: Making the platform economy work well for workers. Platform workers are one of the new forms of employment making a global impact. Eurofound’s 2-hour webinar will provide a forum to go beyond the debate about the challenges inherent to this new form of employment and focus on possible solutions to tackle the various work and employment-related implications of platform work.

During the webinar, Eurofound will present its fresh research on platform work. Moderated by Financial Times columnist Simon Kuper, a panel discussion will bring together business, government and social partners to illustrate experiences and share new, innovative approaches aimed at addressing the downsides of this employment form.
Examples will include the first collective trade union agreement on platform work in Europe, a national tax regime beneficial to platform workers, and a platform worker.

This webinar is aimed at platform workers, social partners, EU and national policy makers as well as academics and representatives from civil society.

中身は今世界中の労働関係者のホットな話題になっているプラットフォーム経済で、オンラインでパネルディスカッションをするようです。

2018年8月22日 (水)

Risak氏のEUプラットフォーム労働指令構想@『労基旬報』2018年8月25日号

『労基旬報』2018年8月25日号に「Risak氏のEUプラットフォーム労働指令構想」を寄稿しました。最近関心を持って追いかけている新たな就業形態に対する労働法政策の一つの参照点になると思います。

 急速に進展する第4次産業革命の中で、現在世界同時的にシェアリング経済、プラットフォーム経済への関心が高まっていますが、とりわけプラットフォームを利用して働く人々の保護の問題は、労働政策方面からも産業市場政策方面からも注目を集めています。EUにおいては、昨年から今年にかけてプラットフォーム労働者をターゲットにした立法提案が相次いで出されており、今後の日本における議論にも参照点となっていくはずです。
 このうち、雇用社会総局が立案した指令案「EUにおける透明で予見可能な労働条件に関する欧州議会と閣僚理事会の指令案」(Proposal for a Directive of the European Parliament and of the Council on transparent and predictable working conditions in the European Union)については、『季刊労働法』2018年春号において、「EUの透明で予見可能な労働条件指令案」 と題してかなり詳しく解説しましたし、デジタル単一市場担当総局が立案した「オンライン仲介サービスのビジネスユーザーのための公正性と透明性の促進に関する規則案」(Proposal for a Regulation of the European Parliament and of the Council on promoting fairness and transparency for business users of online intermediation services)については、本誌6月25日号で概略を紹介したところです。プラットフォーム労働をめぐって労働者概念に含めて規制をかけていく方向性と、労働者ではない者の取引の公正さを追求していく方向がせめぎ合っていることが分かります。
 ただ、前者の指令案は、その前文の第7文に「これらの基準を満たす限り、家事労働者、オンデマンド労働者、間歇的労働者、バウチャーベースの労働者、プラットフォーム労働者、トレーニー及びアプレンティスは本指令の適用範囲に含まれる」と書かれているだけで、プラットフォーム労働者自体に向けた労働法規制を打ち出しているわけではありません。おそらくこの点を補完する目的で、EUレベルで制定されるべき「プラットフォーム労働指令」の具体的内容を提起している論文があります。ドイツのフリードリッヒ・エーベルト財団から出されたMartin Risak氏の『プラットフォーム労働者のための公正労働条件-EUレベルにおけるあり得べき規制のアプローチ』です。Risak氏はプラットフォーム労働の現状と法的課題を論じた上で、まずプラットフォーム労働者についてプラットフォームとの間の雇用関係を(反証可能な形で)推定するという法的規定を置くことを主張し、その上で、具体的に次のような規定を盛り込んだプラットフォーム労働指令案を求めています。
・書面通知指令と同様の通知義務:プラットフォームに労働者のアカウントが設けられればすぐに契約期間にかかわらず契約パートナーとその住所を通知する義務。
・とりわけウェブ上のクラウドワークの場合、労働の場所はプラットフォーム労働者がその作業を物理的に遂行する場所であることの確立。
・企業ユーザーの既存労働力との均等待遇の確保:最低賃金等を免れるためにプラットフォーム労働者にクラウドソースされないため。
・ウェブ上のクラウドワークに関連する探索時間(タスクを探す時間及び返事待ちの待機時間)が労働時間であり、賃金支払対象であることの明確化。
・最低賃金を下回るサービスの募集の禁止。
・以下のような条項の禁止
 ・プラットフォームに登録中及び登録後の競業避止条項、とりわけプラットフォーム労働者にユーザーとの直接契約を禁止する専属条項。
 ・ビットコインやバウチャーのような現金以外による報酬の支払。
 ・正当な理由なくプラットフォーム労働者にタスクを提供せず、又はそのアカウントを凍結する可能性。
 ・プラットフォームとユーザーが、理由を示さずに完成したタスクの受領を拒否したり、広告した報酬の支払を拒否したり、作業結果を保留したりする権限。
・プラットフォーム労働者やユーザーに対し、デジタル評判(レーティング)の仕組みとその影響を通知する義務。
・おそらく間違ったレーティングを再検討し、修正される可能性。
・デジタル評判のあるプラットフォームから別のプラットフォームへの移転可能性。
・プラットフォーム労働者のための無料の苦情処理手続を設置する義務。
・職場の安全衛生、最低賃金、租税と社会保険料の支払に責任を持つ者の明示。
 これはあくまでも一民間研究者の提案に過ぎませんが、上述の欧州委員会の指令案や規則案に比べると、労働者保護の問題意識がフルに出ており、ヨーロッパの労働関係者がこの問題にどのような懸念と関心を持っているかがよく分かります。
 日本でもこれから、こういった具体的な立法提案が各方面から出てくることが期待されます。

 

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