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EUの労働法政策

2021年12月 7日 (火)

明日欧州委がプラットフォーム労働のメディアセミナーをやるらしい

Blobservlet_20211207132901 欧州委員会雇用総局のホームページに、明日12月8日に、プラットフォーム労働の労働条件に関するオンラインメディアセミナーをやるからふるって応募せよという案内が載っていまして、

https://ec.europa.eu/social/main.jsp?langId=en&catId=88&eventsId=1935&furtherEvents=yes

The European Commission’s Directorate-General for Employment, Social Affairs and Inclusion (DG EMPL) invites journalists to take part in a media seminar on improving working conditions in platform work. The online event will present and explain the Commission initiative with high-level speakers, policy experts, and representatives from digital platforms and workers.

ふむ、いろいろあるようですが、やはり明日には予定通りプラットフォーム労働指令案を提案するようですね。

これで某紙新年号の解説記事は書けそうで、私的にはまずはめでたい。

かつ、予想通りプラットフォーム労働者の労働者性について推定規定や立証責任の転換が規定されるということになると、ウーバーはじめグローバルに活動している企業ですから、EU域外への影響も大きいでしょう。とりわけ日本での議論にどういう影響を与えることになるか、しばらく目を離せません。

 

2021年12月 6日 (月)

EUの閣僚理事会が最低賃金指令案に合意

Ciglerkralj_veja 本日、EUの立法府の一つである閣僚理事会が、最低賃金指令案について合意したというニュースが流れてきました。

https://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2021/12/06/council-agrees-on-mandate-for-negotiations-on-a-eu-framework-on-adequate-minimum-wages/

The Council today agreed its position on a Commission proposal for an EU law on adequate minimum wages in the EU. Fair wages that provide for a decent standard of living are one of the principles of the European Pillar of Social Rights. To improve working and living conditions, this draft law establishes a framework to promote adequate levels of statutory minimum wages, to promote collective bargaining on wage setting and to improve the effective access to minimum wage protection of those workers who are entitled to a minimum wage.

理事会は本日、EUの十分な最低賃金に関する欧州委の提案に対するそのポジションに合意した。まっとうな生活水準を提供する公正な賃金は欧州社会権基軸の原則の一つである。労働生活条件を改善するために、この指令案は十分な水準の法定最低賃金を促進し、賃金決定における団体交渉を促進し、最低賃金の権利のある労働者に最低賃金保護への効果的なアクセスを改善するための枠組みを構築する。

Work should pay. We cannot accept that people who put all their energy in their job, still live in poverty and cannot afford a decent standard of living. This law will be a great step forward towards this goal.

仕事はペイするものでなければならない。我々は仕事に全精力を注ぎこんでいる人々がなお貧困のうちに暮らしまっとうな生活水準を維持できないことを受け入れることができない。この法はこの目的への大いなる第一歩である。

なお、もう一つの立法府である欧州議会はすでに先月意見をまとめていますので、これからはこの二つの立法府の間ですり合わせが行われることになります。

この調子でいくと、来年のそう遅くない時期にEUの最低賃金指令が採択される可能性が高まってきました。

 

 

 

 

2021年12月 1日 (水)

EUプラットフォーム労働指令案をめぐる水面下の暗闘

EUにおけるプラットフォーム労働をめぐる政策の推移についてはこれまでも随時紹介してきましたが、欧州委員会の週間予定表によれば、来週の12月8日にプラットフォーム労働者の労働条件指令案が提案されることになっています。

が、やはりこの問題はそうスムーズには行かないようで、水面下でいろいろと暗闘があるようです。

メディアの性格はよく知らないのですが「BRAVE NEW EUROPE」(オルダス・ハックスリをもじってるようです)というネットメディアに、「Gig Economy Project – Open letter to EU Commission: Don’t ‘water down’ plans to regulate platform work」という記事が載っていて、ベルギー、スペイン、ポルトガル、ドイツ、イタリアの労働相が連名で、この指令案をちゃんと提出しろというオープンレターを出したとか。

https://braveneweurope.com/open-letter-to-eu-commission-dont-water-down-plans-to-regulate-platform-work

その背景として、ウーバーなどのプラットフォーム企業が懸命に指令案を出さないようにロビイングしているようです。

このオープンレター、欧州労連のホームページにも載っていますね。

https://www.etuc.org/en/document/open-letter-president-european-commission-ursula-von-der-leyen-ambitious-european

全く個人的な都合で言えば、欧州委員会がこの指令案を来週12月8日に出してくれることを前提に、その紹介記事を某紙新年号に書く予定なので、先延ばしされると大変困るんです。

2021年9月 3日 (金)

スペインのライダー法

例によってソーシャル・ヨーロッパの最新記事の紹介です。スペインで先月施行されたライダー法について。

https://socialeurope.eu/platforms-put-a-spoke-in-the-wheels-of-spains-riders-law

Shutterstock_1520233316 On July 21st, after less than a month of debate, the Spanish Congress approved the ‘riders’ law’, which presumes riders to be employees entitled to access to work-regulating algorithms, without any amendments to the initial government proposal. Enterprises were given three months to adjust to the legislation, which officially entered into force on August 12th. 

去る7月21日、1か月足らずの審議を経て、スペイン国会は「ライダー法」を承認したが、これは当初の政府案に何ら修正を加えることなく、ライダーに作業を規制するアルゴリズムへのアクセスの権利のある労働者と推定するものである。プラットフォーム企業は8月12日の施行日から法に適合するために3か月の猶予がある。

ここのところ、欧州各国の最高裁でこれっらプラットフォーム労働者の労働者性を認める判決が相次いでいること、欧州委員会が労働者性を推定するプラットフォーム労働指令案を準備していること、などこの問題の展開は早いですが、この記事は日本にあまり伝わらないスペインの近況を詳しく伝えてくれます。

 

2021年7月20日 (火)

ヒジャブ禁止は宗教差別にあらず@EU司法裁

これもまた社会問題を超えて政治問題に発展する予感がします。EU司法裁判所が先週7月15日、またも労働者にヒジャブみたいなものを身につけるなという会社の方針はEUの一般均等指令に反しないと判示したようで、さっそくトルコ政府が反発しているようです。

https://curia.europa.eu/juris/document/document.jsf?text=&docid=244180&pageIndex=0&doclang=en&mode=lst&dir=&occ=first&part=1&cid=258120

 Article 1 and Article 2(2)(a) of Council Directive 2000/78/EC of 27 November 2000 establishing a general framework for equal treatment in employment and occupation must be interpreted as meaning that an internal rule of an undertaking, prohibiting workers from wearing any visible sign of political, philosophical or religious beliefs in the workplace, does not constitute, with regard to workers who observe certain clothing rules based on religious precepts, direct discrimination on the grounds of religion or belief, for the purpose of that directive, provided that that rule is applied in a general and undifferentiated way.

一般均等指令第1条と第2条第2項第a号は、労働者に職場においていかなる政治的、哲学的又は宗教的信念の目に見えるサインを着用することを禁じる企業の内部規則は、当該規則が一般的かつ非差別的な方法で適用される限り、宗教的戒律に基づく特定の衣服規則を遵守する労働者に関して、指令の目的のために宗教又は信条に基づく直接差別を構成しない。

Article 2(2)(b) of Directive 2000/78 must be interpreted as meaning that a difference of treatment indirectly based on religion or belief, arising from an internal rule of an undertaking prohibiting workers from wearing any visible sign of political, philosophical or religious beliefs in the workplace, may be justified by the employer’s desire to pursue a policy of political, philosophical and religious neutrality with regard to its customers or users, provided, first, that that policy meets a genuine need on the part of that employer, which it is for that employer to demonstrate, taking into consideration, inter alia, the legitimate wishes of those customers or users and the adverse consequences that that employer would suffer in the absence of that policy, given the nature of its activities and the context in which they are carried out; secondly, that that difference of treatment is appropriate for the purpose of ensuring that the employer’s policy of neutrality is properly applied, which entails that that policy is pursued in a consistent and systematic manner; and, thirdly, that the prohibition in question is limited to what is strictly necessary having regard to the actual scale and severity of the adverse consequences that the employer is seeking to avoid by adopting that prohibition. 

指令第2条第2項第b号は、労働者に職場においていかなる政治的、哲学的又は宗教的信念の目に見えるサインを着用することを禁じる企業の内部規則から生ずる宗教又は信条に間接的に基づく取扱いの相違は、当該政策がとりわけ顧客やユーザーの合法的な要望や係る政策がなければ使用者が被るであろう有害な帰結、それが遂行される文脈において使用者の側の純粋の必要に見合うものであり、取扱いの相違が使用者の中立政策を確保する上で適切であって、整合的かつ体系的な方法で追求され、問題の禁止が使用者が係る禁止によって避けようとする有害な帰結の実際の規模と深刻さに関して厳格に必要である限り、顧客やユーザーとの関係で政治的、哲学的及び宗教的中立性の政策を追及したいという使用者の要望によって正当化しうる。

いろいろごちゃごちゃと条件をつけてはいますが、要するに、顧客に変な偏った会社だと思われたくないから、ヒジャブみたいなのはダメだと労働者に命じることは、EU指令の禁止する差別には(必ずしも)当たらない、というわけです。

 

2021年5月 8日 (土)

今年のEU労働政策の予定

01_20210508114601 昨日、今日と、ポルトガルのポルトでEUソーシャルサミットが開かれていますが、その関係の資料の中に、今後のEUの労働社会政策の予定表が載っています。

https://op.europa.eu/webpub/empl/european-pillar-of-social-rights/en/

そのうち、労働法の観点から関心の高い労働条件関係のものを見ると、

The Commission will:

Present in Q4 2021 a legislative proposal on the working conditions of platform workers, following the consultation of social partners.

Put forward an initiative in Q4 2021 to ensure that EU competition law does not stand in the way of collective agreements for (some) self-employed.

Following the White Paper on Artificial Intelligence, propose an EU regulation on AI in Q2 2021, for the uptake of trustworthy AI use in the EU economy, including in the workplace for all forms of work.

Present in 2022 a report on the implementation of the Working Time Directive.

Ensure an appropriate follow-up to the European Parliament Resolution with recommendations to the Commission on the right to disconnect.

The Commission encourages:

Social partners to follow-up on their Autonomous Framework Agreement on Digitalisation, notably in relation to the modalities for connecting and disconnecting, and to explore: 1) measures to ensure fair telework conditions and 2) measures to ensure that all workers can effectively enjoy a right to disconnect. 

最初の、2021年第4四半期にプラットフォーム労働者の労働条件に関する立法提案をするというのは、その前段階の労使団体に対する第1次協議について、先日『労基旬報』で紹介したところですが、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2021/03/post-8a9722.html(EUのプラットフォーム労働における労働条件に関する労使への第1次協議@『労基旬報』2021年3月25日号)

もう今年中には指令案の提案までいくみたいです。

同じく2021年第4四半期には、これも先日『季刊労働法』にかなり詳しく書いたフリーランスの団体交渉権について競争法が邪魔にならないような措置を講ずることが予定されていますね。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2021/03/post-6e35b0.html(『季刊労働法』2021年春号(272号))

次の2021年第2四半期に職場を含むEU経済におけるAI利用に関する規則を提案するというのは、すでに先月提案されていて、こちらはJILPTのコラムで速報的に紹介しておきました。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2021/04/post-01d3f9.html(EUの新AI規則案と雇用労働問題@JILPTリサーチアイ)

2022年に労働時間指令の実施状況報告をするのはいいとして、次の二つはテレワーク関係です。これらはつながっていて、欧州議会のつながらない権利にかんする勧告については先日WEB労政時報に詳しく紹介していますが、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2021/02/post-a6dda2.html(欧州議会による「つながらない権利」の指令案勧告@WEB労政時報)

そこで触れた欧州労使のデジタル化協約でやってね、というのが欧州委員会の意向だということのようです。

Teleworkbooklet ちなみに、こうした最近のテレワークの動きについては、3月末に東京労働大学講座の特別講座でお話ししたところですが、その中身とJILPTのテレワーク調査研究などをまとめて、来月にはブックレットとして刊行する予定です。

 

 

 

 

 

2021年4月10日 (土)

欧州議会の企業デューディリジェンスと企業アカウンタビリティに関する欧州委員会への勧告

ちょっと分野がずれるのでしばらく気が付かなかったんですが、先月の3月10日、欧州議会が企業デューディリジェンスと企業アカウンタビリティに関する欧州委員会への勧告をいう決議を採択していました。

https://www.europarl.europa.eu/doceo/document/TA-9-2021-0073_EN.html

よく言うように、EUでは立法府たる欧州議会には立法提案権はなく、指令案を出せるのは行政府たる欧州委員会に限られます。なので、欧州議会が立法提案をしたければ、欧州委員会への勧告という形をとって、その中にこういう指令案を出せという文案をそのまま乗っけるというやり方になります。先日紹介したテレワークのつながらない権利に関する勧告も似たようなものですが、こちらは昨今注目を集めている企業のサプライチェーンに関する人権とか環境とかに関するデューディリジェンスとアカウンタビリティを義務付けようというもの。

とりわけここのところ、中国の新疆ウイグル自治区の強制労働問題をめぐって日本の企業も含めてものすごい議論が燃え上がっているのはご存じのとおりですが、それをEUの立法として確立しようという動きがあるのですね。

ためしに、上のリンク先の決議の全文に「human rights」という言葉が何回出てくるかと数えたら161回出てきました。

指令案(の案)第1条は、

Article 1

Subject matter and objective

1.  This Directive is aimed at ensuring that undertakings under its scope operating in the internal market fulfil their duty to respect human rights, the environment and good governance and do not cause or contribute to potential or actual adverse impacts on human rights, the environment and good governance through their own activities or those directly linked to their operations, products or services by a business relationship or in their value chains, and that they prevent and mitigate those adverse impacts.

本指令は、域内市場で操業する企業が人権、環境、善き統治を尊重し、それ自身の活動又は事業関係やバリューチェーンによってその創業、製品、サービスに直接リンクされた活動を通じて、人権、環境、善き統治に対して潜在的ないし現実的な悪影響をもたらし又は貢献することがなく、そのような悪影響を防止し緩和するその責務を完遂することを確保することを目的とする。

2.  This Directive lays down the value chain due diligence obligations of undertakings under its scope, namely to take all proportionate and commensurate measures and make efforts within their means to prevent adverse impacts on human rights, the environment and good governance from occurring in their value chains, and to properly address such adverse impacts when they occur. The exercise of due diligence requires undertakings to identify, assess, prevent, cease, mitigate, monitor, communicate, account for, address and remediate the potential and/or actual adverse impacts on human rights, the environment and good governance that their own activities and those of their value chains and business relationships may pose. By coordinating safeguards for the protection of human rights, the environment and good governance, those due diligence requirements are aimed at improving the functioning of the internal market.

本指令は、企業のバリューチェーンのデューディリジェンスの義務、すなわちそのバリューチェーンにおいて発生する人権、環境、善き統治への悪影響を防止し、起こった場合はかかる悪影響を適切に対処するべきあらゆる比例的な措置をとる義務を定める。デューディリジェンスの遂行は企業に対して、その活動及びバリューチェーンと事業関係がもたらす人権、環境、善き統治への潜在的又は現実的な悪影響を、明らかにし、評価し、防止し、止めさせ、緩和し、監視し、通信し、説明し、対処し、修復することを要求する。人権、環境、善き統治の保護のためのセーフガードを調整することにより、これらデューディリジェンスの要件は域内市場の機能の改善に資する。

3.  This Directive further aims to ensure that undertakings can be held accountable and liable in accordance with national law for the adverse impacts on human rights, the environment and good governance that they cause or to which they contribute in their value chain, and aims to ensure that victims have access to legal remedies.

本指令はさらに、企業がもたらし又はそのバリューチェーンにおいて貢献する人権、環境、善き統治への悪影響について国内法に従って説明責任を果たし製造責任を果たすことを確保することを目指し、その被害者が法的救済を得られるように確保することを目指す。

やや別分野とはいいながら、労働問題ともかかわってくる話でもあるので、その動向にも注意を向けておきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

2021年1月17日 (日)

年末年始に、欧州3か国でプラットフォーム労働関係で判決

欧州労連によると、この年末年始に欧州3か国(スペイン、ベルギー、イタリア)で、プラットフォーム労働の労働者性にかかわる判決が続けざまに出されたようです。ちなみにデリバルーは欧州で一番流行っているプラットフォームデリバリー企業で、日本のウーバーイーツとほぼ同じです。

https://www.etuc.org/en/pressrelease/national-rulings-platform-work-show-need-eu-action

Three rulings in three countries on the rights of delivery riders shows why EU action is needed to end the scandal of platforms not accepting their responsibilities as employers.

A court in Spain found over 700 Deliveroo workers were falsely self-employed, an Italian court found the platform discriminated against riders who take sick leave and the Belgian government found Uber’s working conditions were incompatible with self-employment.

The European Commission is scheduled to launch a consultation on “improving the working conditions of platform workers” on February 24 but these decisions show why workers need action not merely more talk・・・

デリバリー・ライダーの権利に関する3か国の3つの判決は、プラットフォームが使用者責任を受け入れようとしないスキャンダルを終わらせるためにEUの行動が必要であることを示している。

スペインの裁判所は700人以上のデリバルー労働者が偽装自営業者であるとみなし、イタリアの裁判所はプラットフォームが病休をとったライダーを差別したと判断し、ベルギー政府はウーバーの労働条件が自営業者というには不適合だとした。

欧州委員会は来たる2月24日に「プラットフォーム労働者の労働条件の改善」に関して協議を開始する予定であるが、これらの判決は労働者が単なるおしゃべりではなく行動を必要としている理由を示している。・・・

というわけで、来月24日にはいよいよ欧州委員会がプラットフォーム労働者の労働条件について協議を始めるようです。

 

 

2021年1月 7日 (木)

EU自営業者の団体交渉規則へのロードマップ

昨日、EUの競争当局は、いよいよ自営業者の団体交渉を認める立法に向けた動きを始めました。

https://ec.europa.eu/info/law/better-regulation/have-your-say/initiatives/12483-Collective-bargaining-agreements-for-self-employed-scope-of-application-EU-competition-rules

昨日付で、「Inception impact assessment」(「端緒的影響評価」)を公表して、2月3日までの4週間にフィードバックを募っていて、今現在すでに3つほど投稿されていますね。

今後の日程表を見ると、2021年の第2四半期に「Public consultation」(一般協議)が予定されていて、その翌年の2022年の第2四半期に「Commission adoption」、欧州委員会による規則案の提出が予定されているようです。

何をやろうとしているかというと、一番端的には

This initiative aims to define EU competition law’s scope of application, to enable an improvement of working conditions through collective bargaining agreements – not only for employees, but also, under some circumstances, for the solo self-employed.

このイニシアティブは、EU競争法の適用範囲を、被用者だけではなく、一定の状況下で一人自営業者にも、労働協約を通じて労働条件を改善することを可能にするように定義することを目指す。

この動きについては、『労基旬報』2021年1月5日号に「フリーランスと独占禁止法」を寄稿して、やや詳しく解説していますので、お読みいただければと思います。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2020/12/post-17e8ca.html

・・・・・こうして、ここ数年来、EUでは自営業者の団体交渉権をめぐる議論が沸騰しています。これについても本紙2020年7月25日号でやや詳しく紹介しました。同年6月30日、EUの競争総局は、自営業者の団体交渉問題に取組むプロセスを開始したと発表しました。記者発表資料は、「EU競争法は団体交渉を必要とする者の道に立ちふさがらない。このイニシアティブは、労働協約を通じて労働条件を改善することが被用者だけではなく保護を要する自営業者にも確保されることを目指す」と述べ、既に始まっているデジタルサービス法の一般協議の、「自営個人とプラットフォーム」の項に意見を出すように求めています。これと並行して労働組合や経営団体とも協議を行うと述べています。
 競争政策担当のマルグレーテ・ヴェステアー副委員長の言葉が、その問題意識を明瞭に示しています。曰く、「欧州委員会は、プラットフォーム労働者の労働条件の改善にコミットしている。それゆえ、団体交渉が必要な者がEU競争法に違反する恐れなくそれに参加できるようにするプロセスを開始したのだ。競争法は労働者が組合を結成するのを止めないが、近年の労働市場では「労働者」概念と「自営業者」概念は境界が曖昧になっている。多くの個人が自営業としての契約を受入れざるを得なくなりつつある。我々はそれゆえ、労働条件の改善のために団体交渉する必要のある人々に明確さを与える必要がある」と。
 ここで共有されている問題意識とは、「労働者でないからといって、フリーランスに安易に競争法を適用するな!」というものです。競争法は集団的労使関係の敵であるという「常識」の上で議論が行われている欧州から見ると、労働側弁護士が競争法の適用を諸手を挙げて歓迎している日本の姿はいささか奇妙に見えます。
*1菅俊治「独禁法を使った労働運動の可能性」(『労働法律旬報』1913号)。 

 

 

2020年12月22日 (火)

EU離脱寸前のイギリスで、ギグワーカーはEU安全衛生指令上の労働者だという判決

本日付のソーシャル・ヨーロッパに、「Gig workers’ rights and their strategic litigation」(ギグワーカーの権利とその戦略的訴訟)というのが載っていますが、EU離脱があと数日後に迫ったイギリスで、プラットフォーム型のギグワーカーを労働安全衛生法の保護から外しているのは、EU労働安全衛生指令に違反するという判決を、イングランドとウェールズの高等裁判所が下したそうです。

https://www.socialeurope.eu/gig-workers-rights-and-their-strategic-litigation

話が複雑なんですが、そもそもEU法の最終的解釈権限は国内裁判所ではなくEU司法裁判所にあるので、この解釈が正しいかどうかは、この事案をEU司法裁に持って行かないと分かりません。

ところが、あと数日後に(協定が結ばれるか無協定のままかは未だ不透明ですが)イギリスはEUから出ていってしまうので、出ていった国はもはやEU裁判所に事案を持って行く道がないはず。ということは、この判決はイギリスの裁判官の判断がEUによって確認されることのないままになってしまうわけですね。

というわけで、なんだかすっきりしない状況ですが、いずれにしても大変興味深い判決であることは確かです。

 

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