EUの労働法政策

右翼こそが女性の自由と解放を体現?

水島治郎さんの本で繰り返し論じられていることではありますが、こういうシンボリックなかたちで演じられてしまうと、改めて、近代ヨーロッパが作り上げた価値観を体現しているのは右翼政党なのか!?という何とも言えない奇妙な気分になります。

http://www.cnn.co.jp/world/35096984.html (仏FNのルペン氏、レバノンでベール着用拒否 会談中止に)

Marinelepenfile ベイルート(CNN) 仏大統領選の有力候補とされる極右政党、国民戦線(FN)のルペン党首は21日、訪問先のレバノンでイスラム教の女性が頭を覆うスカーフの着用を拒否し、予定されていた大ムフティ(イスラム法最高権威者)との会談を中止した。・・・

FNのフィリポ副党首は直後にツイッターでこの件に言及し、「フランスと世界の女性たちに向けた自由と解放のメッセージだ」と称賛した。

ルペン氏はかねてイスラム教のベールに反対の立場を示し、公共の場では宗教的シンボルを全て禁止するとの公約を掲げてきた。

文化相対主義の名の下に非西洋社会の価値観を尊重するあまり、実は自分たちが依って立っているはずの近代西洋的価値観を却っておとしめてしまっているかのように振る舞ってしまいがちな(今日風の文化的)左翼のジレンマに対し、正々堂々とまさにその近代的価値観を振りかざしてみせることでその排外主義的思想と行動を正当化してしまえる立ち位置を得てしまっている右翼勢力、というよく考えてみれば実に不思議な、しかしそれこそが現代社会というものを表してしまっているのだなあ、というその姿。

まあ、これが一番よく現れているのはやはりヨーロッパであって、アメリカやとりわけ日本は大部文脈が違うのですが。

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労働者階級と知的文化的左翼の永すぎた春の終焉

Rothstein_bio 「ソーシャル・ヨーロッパ」にオックスフォードのロスステインさんが「The Long Affair Between The Working Class And The Intellectual Cultural Left Is Over」というエッセイを寄稿しています。

https://www.socialeurope.eu/2017/02/long-affair-working-class-intellectual-cultural-left/

「affair」ってのは「love affair」つまり恋愛とか情事という意味なので、「long affair」を「永すぎた春」と訳してみましたが、これは凝り過ぎかも知れません。

なにが「恋愛」かというと、

Sometimes love comes to an end. The glow fades, the couple has grown “apart” or suffered what used to be called “irreconcilable differences”. This occurs not only between individuals but also in politics. The Brexit referendum in the UK, Donald Trump’s election victory in the United States and the success of all sorts of nationalist-populist parties in many European countries (including Sweden) clearly show that one of the more protracted political marriages must now be regarded as dissolved.

愛は時に終わりを迎える。愛の高揚が薄れていくにつれ、二人は別れたり、「妥協しがたい相違」というやつに悩まされる。これは男女の間だけではなく政治でも起こる。イギリスのEU離脱投票、アメリカのトランプの勝利、多くの欧州諸国におけるあらゆる種類のナショナリスト-ポピュリストの勝利が、長きにわたる政治的結婚の一つが解消しつつあることを示している。

The more than 150-year-old alliance between the industrial working class and what one might call the intellectual-cultural Left is over. The recent election results suggest that these two now have almost completely different views on key social and political issues. In general, the traditional working class favours protectionism, the re-establishment of a type of work that the development of technology inexorably has rendered outdated and production over environmental concerns; it is also a significant part of the basis for the recent surge in anti-immigrant and even xenophobic views. Support from the traditional working class for strengthening ethnic or sexual minorities’ rights is also pretty low. The intellectual-cultural Left is the exact opposite: these people are internationalists, free traders, environmentalists and strongly focused on supporting various minority groups’ rights via identity politics. And this group is positively disposed towards immigration and multiculturalism. It is nowadays difficult to imagine a leftist intellectual like Olof Palme inspiring the industrial masses. Instead, it is Trump’s, Marine Le Pen’s and Nigel Farage’s nationalist and xenophobic messages that are gaining a hearing. ・・・

産業労働者階級と知的文化的左翼というべきものとの間の150年以上にわたる同盟は終わった。近年の選挙結果は、この両者が重要な社会的政治的問題について殆ど完全に異なった見解を持っていることを示している。一般的に、伝統的労働者階級は保護主義、技術革新が否応なく時代遅れにするタイプの労働の再建を望み、環境よりも生産を優先する。これはまた近年の反移民的、排外主義的見解の高まりの根っこでもある。人種や性的志向におけるマイノリティの権利を強化することへの伝統的労働者階級の支持は極めて低調だ。知的文化的左翼は完全に正反対である。彼らはインターナショナリストで、自由貿易論者で、環境保護主義者で、アイデンティティポリティクスを通じた様々なマイノリティグループの権利を擁護することに強く焦点を当てている。このグループは移民と多文化主義に積極的に傾いている。今日では、オロフ・パルメのような左翼知識人が産業大衆を鼓吹したことを想像することも難しい。その代わり、聴衆を引きつけているのはトランプやマリーヌ・ルペンやナイジェル・ファラージのナショナリスト的で排外主義的なメッセージなのだ。・・・

This also means that one of the dominant theories about what would be the driving force behind the rise of a new socio-economic system must be abandoned. The classic Marxist idea that the working class would be the historical engine of a fundamentally new socio-economic form of production has simply come to nothing. None of the traditional industrial workers’ unions or any of the Social Democratic parties in Europe has produced a vision of what this new model would look like.・・・

これはまた、新たな社会経済システムの興隆の背後にある原動力は何かについての支配的な理論の一つが放棄されなければならないということも意味する。労働者階級が根本的に新たな生産方式の歴史的なエンジンであるという古典的なマルクス主義の考え方は水の泡になった。欧州の伝統的な産業労働者の組合のどれ一つとして、社会民主政党のどれ一つとして、この新たなモデルがどういうものかというビジョンを生み出せていない。

Well, we should not be that surprised. When a group of union leaders in London in 1864 urged Karl Marx to help them form the First Workers’ International, they did not envision any particularly radical socialist future. One of their main demands was instead to stop the British employers’ import of cheap French labour which was used to drive down their wages.

いや、我々は驚くべきではない。1864年にロンドンの組合リーダーのグループがカール・マルクスに第1インターナショナルの結成について援助を求めた時、彼らは特段ラディカルな社会主義的未来を想像していたわけじゃない。彼らの主たる要求の一つは、イギリスの使用者たちがその賃金を引き下げるために安価なフランス人労働力を輸入しようとするのを止めることにあった。・・・

じわじわと何かが内からしみ出してくるような文章です。

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『EUの労働法政策』刊行

Eulabourlaw本日、拙著『EUの労働法政策』(労働政策研究・研修機構)を刊行しました。

http://www.jil.go.jp/publication/ippan/eu-labour-law.html

着実に進展を続けるEUの労働法について、労使関係法や労働条件法、労働人権法など労働法政策に係わる最新情報に基づき全体像がわかるよう1冊にまとめた決定版

「はしがき」にこの本の趣旨を簡単に書いておりますのでそのまま引用します。

 本書は、1998年7月に刊行した『EU労働法の形成』(日本労働研究機構)の全面改訂版である。
 同書は、1999年3月に第2刷を刊行した後、2001年3月に増補版を刊行したが、EUの労働法自体はその後も着実に進展を続けており、EU加盟諸国の労働法の研究という面からもその立法過程の分析への関心は高い。
 そこで今回、EUにおける労使関係法や労働条件法、労働人権法など労働法政策に係る最新情報に基づき、今日のEU労働法の全体像がわかるような決定版としてまとめ直した。
 本書が、EU労働法やEU加盟諸国の労働法に関心を持つ人々によって活用されることができれば、これに過ぎる喜びはない。

イギリスがEUを離脱するという話が出ているときに、イギリスの保守派があれほど嫌がっていたEUの労働法とはどういうもので、両者の間にどういういきさつがあったのか、といったことを改めて考える上でも役に立つでしょうし、あるいは、現在日本で国政の重要課題になってきている非正規労働の均等待遇問題や労働時間規制問題で常に引証されるEUの法制がどういう経緯で作られてきたのかを知りたいという要望にも応えられると思います。

上記リンク先の目次はごく簡単なものですが、

  • 第2章 労使関係法政策
    • 第1節 欧州会社法等
    • 第3節 労働者への情報提供・協議
    • 第5節 EUレベルの紛争解決と労働基本権
    • 第6節 多国籍企業協約
  • 第3章 労働条件法政策
    • 第1節 リストラ関連法制
    • 第2節 安全衛生法制
    • 第3節 労働時間法制
    • 第4節 非典型労働者に関する法制
  • 第4章 労働人権法政策
    • 第1節 男女雇用均等法制
    • 第2節 その他の女性関係法制
    • 第3節 性別以外の雇用均等法制

詳細な目次は以下の通りです。

ご関心に合うところがあれば幸いです。

第1章 EU労働法の枠組みの発展
 第1節 ローマ条約における社会政策
  1 一般的社会規定
  2 ローマ条約における労働法関連規定
   (1) 男女同一賃金規定
   (2) 労働時間
  3 その他の社会政策規定
   (1) 欧州社会基金
   (2) 職業訓練
 第2節 1970年代の社会行動計画と労働立法
  1 準備期
  2 社会行動計画指針
  3 社会行動計画
  4 1970年代の労働立法
  5 1980年代前半の労働立法
 第3節 単一欧州議定書と社会憲章
  1 単一欧州議定書
   (1) 域内市場の確立のための措置
   (2) 労働環境のための措置
   (3) 欧州労使対話に関する規定
   (4) 労使対話の試みとその限界
  2 1980年代後半の労働立法
  3 社会憲章
   (1) 域内市場の社会的側面
   (2) 社会憲章の採択に向けて
   (3) EC社会憲章
  4 社会憲章実施行動計画
  5 1990年代初頭の労働立法
   (1) 本来的安全衛生分野の立法
   (2) 安全衛生分野として提案、採択された労働条件分野の立法
   (3) 採択できなかった労働立法
   (4) 採択された労働立法
   (5) 非拘束的な手段
 第4節 マーストリヒト条約付属社会政策協定
  1 マーストリヒト条約への道
   (1) EC委員会の提案
   (2) ルクセンブルク議長国のノン・ペーパー
   (3) ルクセンブルク議長国の条約案
   (4) 欧州経団連の方向転換と労使の合意
   (5) オランダ議長国の条約案
  2 マーストリヒト欧州理事会と社会政策議定書、社会政策協定
   (1) 社会政策議定書
   (2) 社会政策協定
   (3) 対象事項
   (4) 労使団体による指令の実施
   (5) EUレベル労働協約とその実施
   (6) その他
   (7) 附属宣言
  3 社会政策協定の実施
   (1) 労使団体の提案
   (2) 社会政策協定の適用に関するコミュニケーション
   (3) 欧州議会の要求
  4 1990年代中葉から後半の労働立法
   (1) マーストリヒト期の労働立法の概要
   (2) EU労働協約立法の問題点
 第5節 1990年代前半期におけるEU社会政策の方向転換
  1 雇用政策の重視と労働市場の柔軟化の強調
   (1) ドロール白書
   (2) ドロール白書以後の雇用政策
  2 社会政策のあり方の再検討
   (1) ヨーロッパ社会政策の選択に関するグリーンペーパー
   (2) ヨーロッパ社会政策白書
  3 中期社会行動計画
 第6節 アムステルダム条約
  1 アムステルダム条約に向けた検討
   (1) 検討グループ
   (2) IGCに向けたEU各機関の意見
   (3) 条約改正政府間会合
  2 アムステルダム条約
   (1) 人権・非差別条項
   (2) 新・社会条項
   (3) 雇用政策条項
 第7節 世紀転換期のEU労働社会政策
  1 社会行動計画(1998-2000)
  2 世紀転換期の労働立法
   (1) ポスト・マーストリヒトの労働立法の特徴
   (2) ポスト・マーストリヒト労働立法の具体例
   (3) 人権・非差別関係立法
   (4) 欧州会社法の成立
 第8節 ニース条約と基本権憲章
  1 ニース条約に向けた検討
   (1) 欧州委員会の提案
   (2) 条約改正政府間会合
  2 ニース条約
   (1) 人権非差別条項
   (2) 社会条項
  3 EU基本権憲章に向けた動き
   (1) 賢人委員会報告
   (2) EU基本権憲章を目指して
   (3) EU基本権憲章
 第9節 2000年代前半のEU労働社会政策
  1 社会政策アジェンダ
   (1) 社会政策アジェンダ(2000-2005)
   (2) 社会政策アジェンダ中期見直し
  2 2000年代前半の労働立法
   (1) 労使団体への協議と立法
   (2) 自律協約の問題点
   (3) 人権・非差別関係立法
 第10節 EU憲法条約の失敗とリスボン条約
  1 EU憲法条約に向けた検討
   (1) 社会的ヨーロッパ作業部会
   (2) コンヴェンションの憲法条約草案とEU憲法の採択
  2 EU憲法条約の内容
   (1) 基本的規定
   (2) 基本権憲章
   (3) EUの政策と機能
  3 EU憲法条約の蹉跌とリスボン条約
   (1) EU憲法条約の蹉跌
   (2) リスボン条約とその社会政策条項
 第11節 2000年代後半以降のEU労働社会政策
  1 新社会政策アジェンダ
   (1) 社会政策アジェンダ
   (2) 刷新社会政策アジェンダ
  2 フレクシキュリティ
   (1) 「フレクシキュリティ」の登場 
   (2) フレクシキュリティのパラドックス 
   (3) フレクシキュリティの共通原則とその後
  3 労働法の現代化
   (1) グリーンペーパーに至る労働法検討の経緯
   (2) グリーンパーパー発出をめぐる場外乱闘
   (3) グリーンペーパーの内容
   (4) その後の動き
  4 2000年代後半以降の労働立法
   (1) 労使団体への協議と立法
   (2) 一般協議の拡大
 
第2章 労使関係法政策
 第1節 欧州会社法等
  1 欧州会社法
   (1) 欧州会社法規則第1次案原案
   (2) 欧州会社法規則第1次案原案への欧州議会修正意見
   (3) 欧州会社法規則第1次案修正案
   (4) 議論の中断と再開
   (5) 欧州会社法第2次案原案(規則案と指令案)
   (6) 欧州会社法第2次案修正案(規則案と指令案)
   (7) 欧州会社法案の隘路突破の試み
   (8) 欧州会社法案に関するダヴィニオン報告書
   (9) 合意まであと一歩
   (10) 一歩手前で足踏み
   (11) 欧州会社法の誕生
   (12) 欧州会社法規則と被用者関与指令の概要
   (13) 欧州会社法被用者関与指令の見直し
  2 他の欧州レベル企業法制における被用者関与
   (1) 欧州協同組合法
   (2) 欧州有限会社法案
 第2節 会社法の接近
  1 会社法接近各指令の概要
  2 会社法第5指令案
   (1) 会社法第5指令案原案
   (2) EC委員会のグリーンペーパー
   (3) EC委員会の作業文書
   (4) 欧州議会の修正意見
   (5) 会社法第5指令案修正案
   (6) 撤回
  3 会社法第3指令
   (1) 会社法第3指令案
   (2) 会社法第3指令
 第3節 労働者への情報提供・協議
  1 フレデリング指令案
   (1) 多国籍企業問題への接近
   (2) フレデリング指令案原案
   (3) 原案提出後の推移
   (4) フレデリング指令案修正案
   (5) 修正案提出後の推移
   (6) アドホックワーキンググループの「新たなアプローチ」
   (7) その後の経緯
  2 欧州労使協議会指令
   (1) 議論の再開
   (2) 欧州労使協議会指令案原案
   (3) 欧州労使協議会指令案修正案とその後の推移
   (4) ベルギー修正案
   (5) 欧州労使団体への第1次協議
   (6) 欧州労使団体への第2次協議
   (7) 欧州委員会の指令案
   (8) 欧州労使協議会指令の概要
   (9) 国内法への転換に関するワーキングパーティ
   (10) 先行設立企業の続出
   (11) イギリスのオプトアウトの空洞化
   (12) ルノー社事件
   (13) 指令の見直しへの動き
   (14) 欧州労使協議会指令の改正
  3 一般労使協議指令
   (1) 中期社会行動計画
   (2) 労働者への情報提供及び協議に関するコミュニケーション
   (3) 一般労使協議制に関する第1次協議
   (4) 一般労使協議制に関する第2次協議
   (5) 欧州経団連の逡巡と交渉拒否
   (6) 指令案の提案
   (7) 理事会での議論開始
   (8) 一般労使協議指令の概要
   (9) 一般労使協議指令のインパクト
  4 情報提供・協議関係諸指令の統合
  5 新たな枠組みへの欧州労連提案
 第4節 被用者の財務参加
 第5節 EUレベルの紛争解決と労働基本権
  1 欧州レベルの労使紛争解決のための斡旋、調停、仲裁の自発的メカニズム
  2 EUレベルの労働基本権規定の試み
   (1) EUにおける経済的自由と労働基本権
   (2) 問題が生じた法的枠組み
   (3) 4つの欧州司法裁判所判決
   (4) 判決への反応
   (5) 団体行動権に関する規則案
   (6) 規則案に対する反応とその撤回
 第6節 多国籍企業協約
   (1) EUレベルの労働協約法制の模索
   (2) 多国籍企業協約立法化への動き
   (3) 専門家グループ報告書
   (4) 非公式の「協議」
   (5) 労使団体の反応
   (6) 欧州労連の立法提案
 
第3章 労働条件法政策
 第1節 リストラ関連法制
  1 集団整理解雇指令
   (1) ECにおける解雇法制への出発点
   (2) EC委員会の原案
   (3) 旧集団整理解雇指令
   (4) 1991年改正案とその修正案
   (5) 1992年改正
  2 企業譲渡における被用者保護指令
   (1) 前史:会社法第3指令案
   (2) EC委員会の原案
   (3) 旧企業譲渡指令
   (4) 欧州委員会の1994年改正案
   (5) 1997年の修正案
   (6) 1998年改正指令
  3 企業倒産における被用者保護指令
   (1) EC委員会の原案
   (2) 1980年指令
   (3) 2001年の改正案
   (4) 2002年改正指令
 第2節 安全衛生法制
  1 初期指令
  2 危険物質指令群
   (1) 危険物質基本指令
   (2) 危険物質基本指令に基づく個別指令
  3 単一欧州議定書による条約旧第118a条
  4 安全衛生枠組み指令
   (1) 使用者の義務
   (2) 労働者の義務
  5 枠組み指令に基づく個別指令
  6 安全衛生分野における協約立法
   (1) 注射針事故の防止協約指令
   (2) 理美容部門における安全衛生協約
   (3) 筋骨格障害
  7 自営労働者の安全衛生の保護の問題
  8 欧州職業病一覧表
  9 職場の喫煙
  10 職場のストレス
   (1) EU安全衛生戦略
   (2) 職場のストレスに関する労使への協議
   (3) 職場のストレスに関する自発的労働協約の締結
  11 職場の暴力とハラスメント
   (1) 欧州生活労働条件改善財団の調査結果
   (2) 欧州議会の決議
   (3) 労働安全衛生諮問委員会の意見
   (4) 欧州委員会の新安全衛生戦略
   (5) 職場のいじめ・暴力に関する自律労働協約 
   (6) 職場における第三者による暴力とハラスメントに取り組むガイドライン
   (7) 学校における第三者暴力・ハラスメント
 第3節 労働時間法制
  1 労働時間指令以前
   (1) ローマ条約上の規定
   (2) 週40時間労働及び4週間の年次有給休暇の原則に関する理事会勧告
   (3) ワークシェアリング
   (4) 労働時間の適応に関する決議
   (5) 労働時間の短縮と再編に関するメモランダム
   (6) 労働時間の短縮と再編に関する理事会勧告案
  2 労働時間指令の形成
   (1) 社会憲章と行動計画
   (2) 労使団体への協議文書
   (3) EC委員会の原案
   (4) 欧州経団連の批判
   (5) 経済社会評議会と欧州議会の意見
   (6) 第1次修正案
   (7) 理事会の審議(1991年)
   (8) 理事会の審議(1992年)
   (9) 共通の立場から採択へ
   (10) 旧労働時間指令
   (11) イギリス向けの特例規定
   (12) イギリスの対応
   (13) 欧州司法裁判所の判決
   (14) 判決の効果とイギリスへの影響
  3 適用除外業種の見直し
   (1) 適用除外業種の見直しに関するホワイトペーパー
   (2) 第2次協議
   (3) 業種ごとの協約締結の動き
   (4) 欧州委員会の指令改正案
   (5) 諸指令の採択
   (6) 改正労働時間指令
   (7) 道路運送労働時間指令
   (8) 船員労働時間協約指令
   (9) EU寄港船船員指令
   (10) 民間航空業労働時間協約指令
   (11) その後の業種ごとの労働時間指令
  4 難航する労働時間指令の本格的改正
   (1) 欧州委員会の第1次協議
   (2) 欧州委員会の第2次協議
   (3) 労働時間指令案の提案
   (4) 欧州議会の意見
   (5) 欧州委員会の修正案
   (6) 理事会における議論
   (7) 閣僚理事会の共通の立場
   (8) 欧州議会の第二読意見と決裂
   (9) 再度の労使団体への協議、交渉、決裂
   (10) 労働時間指令に関する一般協議
  5 自動車運転手の運転時間規則
 第4節 非典型労働者に関する法制
  1 1980年代前半の法政策
   (1) テンポラリー労働、パートタイム労働に関する考え方の提示
   (2) 自発的パートタイム労働に関する指令案
   (3) テンポラリー労働に関する指令案
   (4) 理事会等における経緯
   (5) 派遣・有期労働指令案修正案
  2 1990年代前半の法政策
   (1) 社会憲章と行動計画
   (2) 特定の雇用関係に関する3指令案
   (3) 労働条件との関連における特定の雇用関係に関する理事会指令案
   (4) 競争の歪みとの関連における特定の雇用関係に関する指令案
   (5) 有期・派遣労働者の安全衛生改善促進措置を補完する指令案
   (6) 修正案
   (7) 理事会での経緯
   (8) 有期・派遣労働者の安全衛生指令
  3 パートタイム労働指令の成立
   (1) 欧州労使団体への第1次協議
   (2) 欧州労使団体への第2次協議
   (3) パートタイム労働協約の締結
   (4) 協約締結後の推移
  4 有期労働指令の成立
   (1) 有期労働に係る労使交渉
   (2) 有期労働協約の内容
   (3) 欧州委員会による指令案
   (4) 指令の採択
  5 派遣労働指令の成立
   (1) 派遣労働に関する交渉の開始と蹉跌
   (2) 幕間劇-欧州人材派遣協会とUNI欧州の共同宣言
   (3) 提案直前のリーク劇と指令案の提案
   (4) 欧州委員会の派遣労働指令案
   (5) 労使の反応と欧州議会の修正意見
   (6) 理事会におけるデッドロック
   (7) フレクシキュリティのモデルとしての派遣労働
   (8) ついに合意へ
   (9) 指令の内容
  6 テレワークに関する労働協約
   (1) 労働組織の現代化へのアプローチ
   (2) 情報社会の社会政策へのアプローチ
   (3) 雇用関係の現代化に関する労使団体への第1次協議
   (4) 労使団体の反応とテレワークに関する労使団体への第2次協議
   (5) 産業別レベルのテレワーク協約の締結
   (6) EUテレワーク協約の締結
   (7) EUレベル労働協約の法的性格
  7 経済的従属労働者
   (1) 雇用関係の現代化に関する第1次協議
   (2) 労働法現代化グリーンペーパー
 第5節 その他の労働条件法制
  1 海外送出労働者の労働条件指令
   (1) 指令案の提案
   (2) 理事会における経緯
   (3) 指令の内容
   (4) 海外送出指令実施指令
   (5) 元請の連帯責任
   (6) 海外送出指令改正案
   (7) 海外送出指令改正案をめぐる加盟国議会の反発
  2 年少労働者指令
   (1) 指令案の提案
   (2) 理事会での検討
   (3) 指令の内容
  3 雇用条件通知義務指令
   (1) EC委員会の原案
   (2) 指令の内容
   (3) 指令見直しへの一般協議
  4 労働者の個人情報保護
   (1) 個人情報保護指令
   (2) 労働者の個人情報保護に関する検討
   (3) 労使団体への第1次協議
   (4) 労使団体への第2次協議
   (5) 新個人情報保護規則
  5 トレーニーシップ上質枠組勧告
   (1) トレーニーシップに関する一般協議と労使への協議
   (2) トレーニーシップ上質枠組勧告
 
第4章 労働人権法政策
 第1節 男女雇用均等法制
  1 男女同一賃金
   (1) ローマ条約の男女同一賃金規定
   (2) 男女同一賃金指令
   (3) 男女同一賃金行動規範
  2 男女均等待遇指令の制定
   (1) EC委員会の原案
   (2) 男女均等待遇指令
  3 社会保障における男女均等待遇
   (1) 公的社会保障における男女均等待遇指令
   (2) 職域社会保障制度における男女均等待遇指令
   (3)公的・職域社会保障制度における男女均等待遇指令案
   (4) 欧州司法裁判所の判決とその影響
  4 自営業男女均等待遇指令
   (1) EC委員会の原案
   (2) 自営業男女均等待遇指令
   (3) 2010年改正指令
  5 性差別事件における挙証責任指令
   (1) EC委員会の原案
   (2) 欧州司法裁判所の判決
   (3) 欧州労使団体への協議
   (4) 欧州委員会の新指令案と理事会の審議
   (5) 性差別事件における挙証責任指令
  6 ポジティブ・アクション
   (1) ポジティブ・アクションの促進に関する勧告
   (2) カランケ判決の衝撃
   (3) 男女均等待遇指令の改正案
   (4) ローマ条約における規定
   (5) マルシャル判決
  7 セクシュアルハラスメント
   (1) 理事会決議までの前史
   (2) 理事会決議
   (3) EC委員会勧告と行為規範
   (4) 労使団体への協議
   (5) 1998年の報告書
   (6) 男女均等待遇指令改正案
  8 男女均等待遇指令の2002年改正
   (1) ローマ条約の改正
   (2) 欧州委員会の改正案原案
   (3) 理事会における議論
   (4) 欧州議会の第1読修正意見
   (5) 欧州委員会の改正案修正案と理事会の共通の立場
   (6) 欧州議会の第2読修正意見と理事会との調停
   (7) 2002年改正の内容
  9 男女機会均等・均等待遇総合指令
   (1) 男女均等分野諸指令の簡素化
   (2) 男女機会均等・均等待遇総合指令案
   (3) 労使団体等の意見
   (4) 欧州議会の意見と理事会の採択
 第2節 その他の女性関係法制
  1 母性保護指令
   (1) EC委員会の原案
   (2) EC委員会の修正案
   (3) 理事会での検討
   (4) 母性保護指令
   (5) 母性保護指令の改正案とその撤回
  2 育児休業指令
   (1) 1983年の原案
   (2) 理事会におけるデッドロック
   (3) 労使団体への協議
   (4) 欧州レベルの労使交渉
   (5) EUレベル労働協約の内容
   (6) 協約締結後の推移
   (7) 労使団体への協議と改正育児休業協約
   (8) ワークライフバランスに関する労使団体への協議
  3 雇用・職業以外の分野における男女均等待遇指令
   (1) EC条約及び基本権憲章における男女均等関係規定
   (2) 指令案の予告
   (3) 男女機会均等諮問委員会のインプット
   (4) 指令案の遅滞
   (5) 指令案の提案
   (6) 理事会での審議
   (7) 採択に至る過程
 第3節 性別以外の均等法制
  1 特定の人々に対する雇用政策
   (1) 障害者雇用政策
   (2) 高齢者雇用政策
  2 一般雇用均等指令
   (1) EU社会政策思想の転換
   (2) 一般雇用均等指令案
   (3) 使用者団体の意見
   (4) 理事会における議論
   (5) 採択に至る過程
   (6) 一般雇用均等指令の内容
  3 人種・民族均等指令
   (1) 人種・民族均等指令案
   (2) 理事会における議論
   (3) 採択に至る過程
   (4) 人種・民族均等指令の内容
  4 雇用・職業以外の分野における一般均等指令案
   (1) 雇用・職業以外の分野における一般均等指令案

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低賃金カルテル異聞

Coffeeillustrationbybi009 昨年末からネット上で「低賃金カルテル」なる言葉が流行っていたようですが、あまり口を挟む必要もなさそうな議論が多いようなので静観しておりましたが、そういえばそういう概念って欧米でもあるのだろうかと思って検索してみたら、一昨年の英紙「ザ・ガーディアン」の記事にこういうのがありました。

https://www.theguardian.com/commentisfree/2015/sep/21/lidl-living-wage-low-pay-cartel-british-business-model (Will Lidl’s living wage smash the UK’s low-pay cartel?)

「リドルの生活賃金はイギリスの低賃金カルテルをたたき壊すか?」

「low-pay cartel」は文字通り「低賃金カルテル」ですね。リドルというスーパーマーケットが時給を8.2ポンド(ロンドンでは9.35ポンド)に引き上げるという決定が、どこもほぼ最低賃金で販売員を雇っているイギリスのスーパーやチェーンレストランをゆるがしていると。

この記事のこの一節は、イギリスのことを叙述しているんですが、なかなか興味深い一節です。

One of the prevailing ideas of our time is that workers need not be paid enough to live on. Of course, few put it so crudely. When asked why they don’t pay staff more, company bosses talk about financial viability or summon up the spectre of 1970s-style inflation. But whatever the euphemism, the net result is the same: more households scraping by on poverty wages and having to depend on the public for top-ups..

我らの時代に広まっている一つの考え方は、労働者にその生計を立てるに十分な賃金を払う必要はないというものだ。もちろん、そこまで露骨にいう人はほとんどいないが。どうして職員にもっと高い給料を払わないのかと聞かれると、企業経営者たちは財務的実行可能性を語り、1970年代のようなインフレの脅威を持ち出す。しかしなんと言いくるめようと、その正味の帰結は同じだ。貧困賃金によって破壊され、補填のために公的扶助に依存する世帯の増加だ。

この記事の時点でイギリスの最低賃金は6.7ポンド(現在は7.2ポンド)だったので、約2割強増しということでしょうか。ただ、この記事ではこのリドル社って、白馬にまたがった王子様みたいですが、実はヨーロッパではこのリドル社って、ブラック企業として有名だったりするんですね。ウィキペディアに邦語の記事もあるのでちょっと引用しますと、

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%89%E3%83%AB

ドイツやその他の国の労働組合は繰り返し、就業時間や酷使に関するEU指令に違反したリドルの従業員に対する不利な取り扱いを批判している。Black Book on the Schwarz Retail Companyという本がドイツで発行されており、現在では英語版も入手できる[4]。タイムズは、リドルのマネージャーは会社に就職する際にEU指令から逸脱することを承認させられ、過剰な時間の労働を強いられていると報じている。ガーディアン[5]やタイムズ[6]は、リドルは全従業員、特に女性や時間雇用の従業員に対してカメラを使ったスパイを行っており、個人の行動に関する膨大な文書を作っていると報じている。イタリアでは2003年にサヴォーナの裁判所が、リドルが反労働組合活動を行っていると認め、現地法で有罪としている[7]。イギリスやアイルランドでも、従業員が労働組合に入るのを認めていないとして批判されている。

うううむ、これを見ると、ブラック企業という批判を緩めるために賃金を引き上げたのかという疑問も生じますね。白書ならぬ「黒書」が出てくるくらいですからまさにブラック。低賃金カルテルを壊したのはそれ以上のブラック企業でした、というのはなかなかシュールな構図かも知れません。

ちなみに、法律的に厳密な意味で、いくつかの企業が共謀して賃金を一定額以上にしないようにカルテルを結んでいたことが競争法上のカルテル行為として訴えられたアメリカの事例がありますが、

http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/030500800/ (GoogleやAppleなど4社、4億1500万ドルで賃金カルテル訴訟和解)

これは高い給料に歯止めをかけようとするものなので、まさに使用者サイドの「高賃金阻止カルテル」ではありますが、ここでいう「低賃金カルテル」とは別のレベルの話のようです。

(参考)

ちなみに、そもそも労働組合とは賃金カルテルなんだよ、という話をよくわかっていない人に噛んで含めるように解説したのが6年前のこのエントリ。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/06/post-1383.html (労働組合は賃金カルテルだが・・・)

http://twitter.com/#!/ikedanob/status/80854685522739200

>労働組合は賃金カルテル。ワグナー法までは違法だった

例によって、半分だけ正しいというか、一知半解というか、いやいやそういうことを言ってはいけないのであった。どこが正しいかというと、

1890年のシャーマン反トラスト法が、連邦最高裁によって労働組合にも適用されると判決されたことにより、まさに「労働組合は賃金カルテル」となりました。

これに対し、1914年のクレイトン法が「人間の労働は商品ではない」と規定して、労働組合の行動を反トラスト法の対象から除外したのですが、なお当時の司法はいろいろと解釈して反トラスト法を適用し続けたのです。

それをほぼ全面的に適用除外としたのが1932年のノリス・ラガーディア法で、これを受けて、むしろ積極的に労働組合を保護促進するワグナー法がルーズベルト大統領の下でニューディール政策が進められていた1935年に成立します。

ですから、学生ならお情けで合格点を与えてもいいのですが、社会科学に関わる人であれば「ワグナー法までは違法だった」で落第でしょう。

で、ここからが本題。

このように労働組合がカルテルであるというのは、つまり労働者が企業の一員ではなく企業に対する労働販売者であり、労働組合とはそういう労働販売者の協同組合であるという認識を前提にします。労働組合がギルドだという言い方も、同じです。

欧米の労働組合は、まさにそういう意味で労働販売者の協同組合として、社会的に位置づけられているわけですが、日本の労働社会ではそうではない、というのが、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/09/post_a4ee.html(半分だけ正しい知識でものを言うと・・・)

の最重要のポイント。

日本の企業別組合は、企業の一員(メンバー)であることが要件であり、そのメンバーシップを守ることが最重要課題なので、自分が働いている職場に、自分のすぐ隣で、同じ種類の労働をものすごい安売りをしている非正規労働者がいても、全然気にしないのです。そんなもの、カルテルでもなければギルドでもあり得ない。

アメリカは自由市場イデオロギーの強い国なので、こういう反カルテル的発想から反労働組合思想が発生しがちなのですが、少なくともそのロジックをそのまま日本に持ち込んで、日本の企業別組合に対して何事かを語っているつもりになるとすれば、それは相当に見当外れであることだけは間違いありません。

批判するなら、「もっとまともなギルドになれ!」とでもいうのでしょうかね。それは立場によってさまざまでしょうが。

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ブランパン『ヨーロッパ労働法』

大内伸哉さんも書かれていますが、去る10月11日、国際的な労働法学の巨星ロジェ・ブランパン先生が亡くなったそうです。

http://lavoroeamore.cocolog-nifty.com/blog/2016/10/roger-blanpain-.html

http://www.flanderstoday.eu/education/labour-law-expert-and-employee-advocate-dies-83

Roger_blanpain_c_ku_leuvenLabour law expert Roger Blanpain, emeritus professor at the University of Leuven (KU Leuven), has died at the age of 83. As well as being an academic authority, Blanpain had a strong voice in social debates on topics such as employee rights..

労働法の専門家にしてルーバンカトリック大学名誉教授であったロジェ・ブランパンが83歳で亡くなった。ブランパンは学術的権威であるとともに、労働者の権利などの問題に関する社会的議論に大きな影響力を持っていた。

187258私の在欧中、ちょうど小宮文人さんがルーバンカトリック大学のブランパン先生のところで在外研究をしており、その縁で、ブランパン先生の大著『ヨーロッパ労働法』の邦訳にも関わらせていただいたことがあります。

http://www.shinzansha.co.jp/book/b187258.html

http://hamachan.on.coocan.jp/blanpain.html

 本書は、EU労働法の第一人者で国際労働法学者として名高いベルギー・ルーヴァン大学名誉教授、ロジェ・ブランパン教授の著作European Labour Law(国際労働法百科事典の1部をなすモノグラフ)の第8版を翻訳したものである。同教授は、EU労働法に関する極めて多くの著書、編著、論文などを出版し、また、国際労使関係協会の代表理事を経験し、現在は国際労働法社会保障法の代表理事を務めるなど、国際的に労働法・労使関係の学会を牽引してきたスーパースターである。
 1970年代前半まで、ECの関心は主に通貨・経済統合という経済的側面に向けられてきたのであるが、1970年代後半から労働法を中心とする社会的側面にも強い関心が向けられるようになった。男女同一賃金指令、集団整理解雇指令、営業譲渡と労働者の既得権に関する指令などはみな1970年代後半に採択されたものである。その後、社会的規制を進めようとする加盟諸国とこれを嫌うイギリスのサッチャー政権と熾烈な抗争を経て、EU労働法は社会的価値と自由市場的価値との調和を図る欧州社会モデルを模索してきた。そうした中で、欧州労使協議会指令、労働時間指令、欧州会社法規則、一般労使協議指令など多くの注目すべき立法が採択された。また、欧州規模の労使間で締結された育児休業に関する協約、パートタイム労働に関する協約及び有期雇用契約に関する協約などが閣僚理事会の指令により実施された。わが国では、ここ数年の風潮として、グローバルスタンダードとされるアメリカの経済モデルがもてはやされ、社会的規制は悪であると決め付ける傾向がある。しかし、最近のアメリカ経済の危機は、アメリカモデル賛美に対する警鐘を鳴らしている。こうした状況のもとで、EU労働法の足跡と今後の動向は、わが国が将来の労働法の進むべき方向を模索する上で、益々重要なものとなるものと確信している。 ・・・

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EU最低賃金制?

Investment_plan_cash_euro_money_cr EurActivに、「Minimum wage debate in EU centres on social dumping, ‘fair pay’」(EUの中心でソーシャルダンピングに関して最低賃金の議論-“公正賃金”)という記事が載っています。

http://www.euractiv.com/section/social-europe-jobs/news/building-momentum-for-a-european-minimum-wage/

Germany’s adoption of a minimum wage in 2015 and the EU’s repeated talks over posted workers have paved the way for the adoption of a European minimum wage. But political resistance in some quarters is still strong. EurActiv France reports.

2015年のドイツの最低賃金導入と海外派遣労働者に関するEUの繰り返される議論とが、EU最低賃金の導入への道を舗装している。しかし一部の政治的抵抗はなお強い。

最近欧州議会でそういう動きがあったようです。

As a precursor to these discussions, the European Parliament’s rapporteur on social dumping, French Socialist Guillaume Balas (S&D), recommended the progressive enforcement of a European minimum wage.

This, Balas said, should be fixed at 60% of each country’s median national wage.

これら議論への先駆けとして、欧州議会のソーシャルダンピングに関する報告者であるフランス社会党のギヨーム・バラは、欧州最低賃金の段階的導入を勧告した。

バラによれば、それは各国の賃金中央値の60%に設定されるべきである。

欧州委員会のトップも興味を示しているとか。

The idea of advancing the question of fair pay was also recently supported by the President of the European Commission.

“Workers should get the same pay for the same work in the same place. It is a question of social justice,” Jean-Claude Juncker said in his State of the Union Speech last Wednesday (14 September).

公正賃金の問題を進めるという考えは欧州委員会の委員長も支持している。

「労働者は同じ場所での同じ仕事には同じ賃金を得るべきだ。これは社会的正義の問題だ」ジャン・クロード・ユンケルは先週水曜日(9月14日の施政方針演説でこう述べた。

しかし、これはそう簡単な話ではありません。

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欧州労連は会社役員会への労働者参加制を主張

Executive_committee_new_team_12下記「ドイツの労働者重役制はEU法違反!?」記事の冒頭で、欧州労連が「会社重役会における労働者代表が政治的アジェンダに戻りつつあるとき」と言っているのは、フランスやイギリスの政治的状況を指しているのですが,もう一つ、欧州労連自身が近年、再びEUレベルの指令で情報提供・協議だけでなく、それを確実にするために会社の重役会への労働者代表の参加を義務づけるべきだと主張していることが背景にあります。

今年6月の執行委員会で欧州労連は「情報提供、協議及び役員会レベルの代表権に関する新たなEU枠組みのための方向付け」というポジションペーパーを採択しています。

https://www.etuc.org/documents/etuc-position-paper-orientation-new-eu-framework-information-consultation-and-board-level#.V-Tac9Ff270

これによると、現行よりさらに強化した情報提供・協議の規定に加えて、この指令は役員会における労働者代表の制度を義務づけるべきとし、役員会の労働者代表は株主代表と権利義務に変わりのないフルメンバーとして参加し、労使協議会の委員と同様解雇や不利益取扱いから保護されます。機密事項に関しても株主代表と同等の権利と義務を有するべきであり、制限すべきではない。このポジションペーパーはエスカレーターアプローチと称して、企業規模に応じて労働者代表比率を変える仕組みを提案しています。具体的には、50-250人規模の小企業では2-3人の低比率で、250-1000人規模の中企業では役員会の3分の1とし、1000人以上規模の大企業では労使同数とするというものです。

世界全体が労働者志向、生産志向の資本主義から、投資家志向、金融志向の資本主義に滔滔と流れる中で、あえて一見古くさく見えかねない労働者の経営参加という政策を鮮明に打ち出してきており、どの程度影響力があるかどうかは分かりませんが、労働関係者としては注目していく必要があることは間違いないでしょう。

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ドイツの労働者重役制はEU法違反!?

欧州労連のホームページに興味を惹く記事が載っています。9月21日付けで、「ECJ to declare composition of German company boards illegal? 」(欧州司法裁判所はドイツの会社重役会の構成を違法と宣言する?)というセンセーショナルなタイトルです。

https://www.etuc.org/press/ecj-declare-composition-german-company-boards-illegal#.V-SIVdFf270

PeterscherrerJust as the representation of workers on company boards is getting back on the political agenda*, an attempt is being made to get the German system of board-level worker representatives declared illegal!

会社重役会における労働者代表が政治的アジェンダに戻りつつあるとき、ドイツの重役レベル労働者代表制が違法とされるかも知れない企てがなされつつある。

A case is being brought to the European Court of Justice (ECJ) claiming that the German law is discriminatory for the subsidiaries of German companies in Europe and therefore incompatible with European law.   

ドイツの法律はドイツ会社の子会社に対して差別的であり、それゆえEU法に違反するという訴えが欧州司法裁判所に提起された。

To highlight this threat to the cooperation between companies and trade unions, an essential part of the German economic success story, the leaders of the European Trade Union Confederation (ETUC)  and German Trade Union Confederation (DGB) are taking part today in a legal conference in Luxembourg, the seat of the ECJ. 

ドイツの経済的成功の要因である会社と労働組合の間の協調に対するこの脅威を明らかにするため、欧州労連とドイツ労連は本日ルクセンブルクで法律会合を開いた。

“I am very alarmed that the German system of workers on company boards is being challenged in the European Court of Justice” said Peter Scherrer, Deputy General Secretary of the ETUC. “Workers’ rights have not always been sufficiently respected by the ECJ in recent judgements. We all have very bad memories of cases like Laval and Viking. We really do not need another set-back.” 

「私はドイツの労働社会者重役制が欧州司法裁判所で挑戦を受けていることに極めて危機感を持っている」「近年の判決において、労働者の権利は必ずしも充分に尊重されていない・・・」

“Instead of trying to strike down the German system the EU should be debating how to get workers on boards all over Europe.”   

「ドイツの制度をたたき落とすのではなく、EUはその全域にわたって労働者重役制に向けて議論すべきだ」

The conference, organised by the Hans Böckler Foundation and the Chambre Des Salaries Luxembourg, takes place today, with speakers Reiner Hoffman, President of the DGB  and Peter Scherrer, Deputy General Secretary of the ETUC.

詳しいことはよくわかりませんが、市場主義的な色彩が強まって久しいEUにおいて、かつてはドイツ型労働者参加システムをEU全域に広めようとしていろいろ摩擦が絶えなかったことを思い起こすと、世の中の流れの方向性が全く逆向きに動いているのだなあ、ということがよく窺えるニュースです。

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なぜ極右政党は危機の時代にうまくやるのか?

Whyfarrightpartiesdowellattimesofcr 欧州労連のシンクタンクである欧州労研(ETUI)が「Why far right parties do well at times of crisis: the role of labour market institutions」(なぜ極右政党は危機の時代にうまくやるのか?:労働市場機構の役割)というワーキングペーパーを公表しています。なかなか興味深い分析をしているので、ご紹介。

http://www.etui.org/Publications2/Working-Papers/Why-far-right-parties-do-well-at-times-of-crisis-the-role-of-labour-market-institutions

http://www.etui.org/content/download/24349/201792/file/WP+2016.07+Far+right+parties+Labour+market+institutions+Vlandas+Halikiopoulou+Web+version.pdf

This working paper argues with extensive statistical analysis that the rise of far-right parties in Europe has less to do with the economic crisis and unemployment levels as such but more with specific labour market policies and institutions. The authors show that the deregulation of employment protection legislation and the reduction of employment benefits have in many countries intensified the support for these far-right parties.

このワーキングペーパーは、広汎な統計的分析によって、欧州における極右政党の興隆は経済危機や失業水準それ自体よりも、特定の労働市場政策や機構と関わりがあると主張する。著者らは雇用保護法制の規制緩和と失業給付の削減が多くの国でこれら極右政党への支持を強化したことを示している。

政治学系の議論の一般的な傾向では、経済危機で失業が増えることが極右への指示をもたらすという単純な議論になりがちですが、各国ごとのデータを詳しく見るとかならずしもそうなっておらず、むしろ解雇規制緩和や失業給付削減が直接に極右政党への支持を押し上げているという議論です。

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高等徒弟制

でね、ジョブのスキルが無ければ就「職」できないジョブ型社会だからこそ、こういう仕組みが作られるわけです。

ハイヤー・アプレンティスシップス、高等徒弟制

http://www.apprenticeshipguide.co.uk/higher-apprenticeships/

Landingpage_higherapprenticeships_2Higher Apprenticeships are a great alternative to university

Many now offer qualifications up to degree level

You will also receive training (on- and off-the-job), a salary and the opportunity to really start moving your career forward

All without paying hefty tuition fees or running up student debts

高等徒弟制は大学に代わる大きな選択肢だ

多くのコースが学位レベルの職業資格を提供している

あなたは(OJTとOffJTの)訓練を受け、給料をもらい、そしてキャリアを前進させる出発点を得られる

莫大な授業料や学生債務を負わなくてもいいのだ

ふむ、近年授業料が高騰しているイギリスでも学生債務は大きな問題になっているようです。

このリンク先にあるような、様々な、大学や大学院で授業料を払わなければ得られないような分野のスキルが、給料をもらって仕事をしながら身につけられ、資格も得られますよ、といううたい文句。

たまたま最近のデーリーテレグラフ紙に、

http://www.telegraph.co.uk/news/2016/08/15/apprenticeships-arent-second-class-degrees---they-are-a-high-pow/

Apprenticeships aren't second-class degrees – they are a high-powered route to qualifications and employment

徒弟制はB級の学位じゃない、とても強力な職業資格と雇用への道だ

てな記事が載っていたのですが、そもそも、学位と職業資格と能力が三位一体で、それがなければ就「職」できないジョブ型社会でないと、なぜそんなものが必要になるのかが分からないのでしょう。

奨学金問題とか考えるときに、ジョブ型社会のセンスで考えれば、それこそこういう高等徒弟制を、という発想になりがちなんですが、残念ながらこの日本では、この3つは全く別々もものとみんな考えているから、こういうのが役に立つ回路がそもそも閉ざされているわけです。

日本の企業は、(場合によっては奨学金を借りて)授業料を払って大学を出た人間に、そんなものは忘れろといった上で、まさにOJTでハイヤー・アプレンティスシップをやっているわけですから。

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