賃金とは何か読了。うーん相変わらずグロい。基本的に濱ちゃんセンセの本読むの嫌いなんだよな。グロすぎるから。ところどころぽつりと漏らす本音がもうね。。。
うーん、拙著は「グロ」いですか?
「相変わらず」と言われているので、過去の拙著もみんな「グロ」いということのようです。
「グロすぎる」から「濱ちゃんセンセの本読むの嫌い」とまで言われているんですが、さてはて、どこらへんがどのように「グロ」いのか、言われている本人が自省できるように、具体的にご教示いただけると幸いです。
いや、「ところどころぽつりと漏らす本音」がそうだということなんでしょうが、それは具体的にどこらへんなのか、著者としては、言ってることはすべて本音であって、本音を隠した建前論を書いたつもりはないですし、書いてあることはすべて歴史的根拠を示して書いているつもりで、根拠のない本音をぶちまけているつもりもないのですが。
たまには何百年も何千年も前のことじゃなくて今のこと書いてある本読もうかなくらいの気持ちで買ったけど面白かった 賃金とは何か 職務給の蹉跌と所属給の呪縛 (朝日新書)
いや、確かに「何百年も何千年も昔のこと」じゃありませんが、厳密には「今のこと」はごくわずかで、大部分は「何十年も昔のこと」を引っ張り出して、今の話と照らし合わせているので、書いた本人のつもりから言えば、現代史という歴史書のつもりではあるんです。
昨年の労働関係図書優秀賞を受賞した鈴木誠さんは、『賃金事情』で「人事制度改革にとって参考になる本」という書評コラムを連載されています。昨年4月20日号では、昔の『新しい労働社会』を取り上げていただいていたのですが、
今回、3月20日号では一番新しい方、昨年刊行した『賃金とは何か』(朝日新書)を取り上げていただきました。
https://www.e-sanro.net/magazine_jinji/chinginjijo/a20250320.html
ベースアップと定期昇給という賃金の上げ方/上がり方という上部構造に対し、賃金の決め方(賃金制度)は下部構造をなす。そのため、本書は第Ⅰ部で賃金の決め方、第Ⅱ部で賃金の上げ方について議論し、第Ⅲ部で賃金の支え方、すなわち最低賃金制の確立と展開、および最低賃金類似の諸制度について取り上げている。・・・
当然であるが、人事制度は労使関係によって構築される。だが、労使関係を労働者と使用者の関係とだけ捉えるのは不十分である。重要なのは、政労使が行為者であるという視点である。この点を再確認できる本書は、紛れもなく「人事制度改革にとって参考になる本」といってよいだろう。
「紛れもなく「人事制度改革にとって参考になる本」」との言葉、有り難い限りです。
本日発売の『中央公論』3月号に、例年恒例の新書大賞2025が発表されています。今回栄えある対象は三宅香帆さんの『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』でした。
https://chuokoron.jp/chuokoron/latestissue/
新書大賞2025
新書通100人が厳選した
年間ベスト20大賞
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』大賞受賞者に聞く
――これからも「名付ける責任」を担いたい
▼三宅香帆2位『日ソ戦争』麻田雅文
3位『歴史学はこう考える』松沢裕作
ベスト20レビュー
小熊英二、坂井豊貴、増田寛也、三牧聖子......
目利き45人が選ぶ2024年私のオススメ新書
三宅さんの本だけでなく、今年は勅使川原真衣さんの『働くということ』や近藤絢子さんの『就職氷河期』など、労働関係の良書が多く出ました。
ちなみに、拙著『賃金とは何か』は、日本郵政社長の増田寛也さんが取り上げていますが、その理由が:
経営者として春闘に臨むに当たって、賃金やベースアップの意味をもう一度理解するには絶好の書といえる
だそうです。ううむ。
今やフジテレビと並んで全日本注目の的の『週刊文春』ですが、2月13日号の「文春図書館」の吉川浩満さん担当の「私の読書日記」に、拙著『賃金とは何か』が取り上げられておりました。
https://clnmn.net/archives/5879
「私は会社勤めもしているので、賃金はもちろん重大関心事である」と始まり、「賃金は単なる労働の対価にとどまらず、その会社/社会の仕組みそのものを映し出す鏡でもある」と述べ、拙著に対しても「いつもながらきわめて明快な記述で非常に助かる」とお褒めいただいております。
「東京スポーツ新聞社の紙面で過去に掲載された連載がまとめて読めたり、ココだけしか読めないコンテンツがあったりします」という「東スポnote」で、拙著『賃金とは何か』がかなり詳しく紹介されています。
「上げなくても上がるから上げないので上がらない賃金」ってどういうこと
・・・そもそも給料とは何かを一から考え直すべく、『賃金とは何か 職務給の蹉跌と所属給の呪縛』という本を読みました。ベア(ベースアップ)を身をもって知らない私にとっては、この奇妙な和製英語が1950年に初めて使われた、意外と古い言葉なんだと知っただけで読む価値がありました。当時の日本はまだ占領下で、GHQによる緊縮政策が進められる中、賃金抑制の手段に対する呼び名であった「賃金ベース」という言葉が、労働組合運動によってそれを突破していつしか賃金引き上げを図るための言葉として使われるようになったというのは数奇な話でしょう。また、ジョブ型雇用をめぐる議論が60年前に行われていて、まったく実現しないまま終わったというのも皮肉めいたものを感じます。
一番膝を打ったのが、タイトルにも入れた「上げなくても上がるから上げないので上がらない賃金」という文言です。一読したときにはまるで意味が飲み込めず、お笑いコンビ「かまいたち」のUFJ・USJ漫才の中に登場する魔のフレーズ、「もし俺が謝ってこられてきてたとしたら絶対に認められてたと思うか?」を思い出してしまいました(笑)。漫才はさておき、どういうことなのかを見ていきましょう。・・・
と、このフレーズの意味を解説したうえで、
賃金の世界と歴史は想像以上に複雑怪奇でしたが、これは実にわかりやすくて面白いですね!給料のために働いていますが、私は面白いことを面白く伝えるために働いている気がしないでもないでも過言ではないような気がしています(笑)。(東スポnote編集長・森中航)
私のこの本も、そういう意味で言えば、「面白いことを面白く伝えるために」書いたという面があるのかもしれません。
昨年12月23日に発行された『週刊東洋経済』で発表された2024年ベスト経済書の記事がアップされました。わたくしの『賃金とは何か』(朝日新書)は第2位ということで、わたくしのインタビューとお二人の方の推薦文が載っています。担当は東洋経済編集部の山本舞衣さんです。
2024年ベスト経済書、2位と3位はこの書籍だ! 賃金と日本経済に関する書籍がランクイン
多くの国で賃金が上がる中、なぜ日本の賃金は停滞し続けたのか。カギは「定期昇給」のシステムにあると著者は指摘する。
▼著者に聞く
歴史を見ていくと、日本の賃金が上がらなかった理由は明らかだ。メンバーシップ制の中で、「定期昇給」の仕組みが非常にうまく運用されていたのである。会社員個人は何もしなくても毎年給料が上がる。しかしそれを全部足し上げると、企業が支払う給料の総額は大きく変動しない。企業にとって使い勝手がよく、労働者個人もそれなりに満足できる仕組みだったから、本当の意味での賃上げ、「ベースアップ」なしでもやってくることができた。
昨今、マスメディアで繰り広げられる賃金に関する議論は表層的で、最近のことしか見えていない印象があった。例えば職務給にしても、60年ほど前、池田勇人政権時代に同様の議論が行われており、日本の賃金を考えるなら当時の話は不可欠だ。しかし、それを語る人はいない。まだ「歴史」になってはいないけれども今はもう顧みられない「昔話」を、一度まとめておこうとこの本を書いた。
時に誤解されるのだが、私には「世の中を変える提言をしたい」などというたいそうな発想はない。歴史書として楽しんでほしい。
▼推薦コメント
「ジョブ型雇用」というフレーズが楽観的思考と共に乱用される昨今だが、本書は日本の雇用・賃金情勢について、現状と展望を的確に示す。明治以降の歴史を踏まえつつ日本の賃金制度の現在地を説いており、歴史的、国際的な視点からの学びが多い。(唐鎌大輔)
2024年の春闘で大幅賃上げが実現し、今後もベースアップが期待されている。だが、「それだけで万々歳というわけにはいかない」とする著者の主張は、春闘前の今、傾聴に値する。(宮嶋貴之)
ちなみに、書評サイトの「ブクログ」でも、12月にいくつかの本書の書評が載っていたので、こちらに紹介しておきます。
https://booklog.jp/item/1/4022952741
12/8:bakumon17. 賃金問題を深く考えたことは今までなかった 定期昇給は 人件費を一定に保つため制定されたとは思わなかった 現状のメンバーシップ型雇用を ジョブ型に変更することは並大抵の努力では なしえないと理解できた12/13:masa. 新聞で「ベア、定期昇給」が用語解説に載るほど、賃上げにはとんとご無沙汰だった日本。 先進各国の賃金伸び率を比較すると日本の賃金は全く上がっていないが、個人ベースでは上がっている。だから「上がるから上がらない」。 欧米では賃金表を改訂しない限り同じ仕事をしていれば賃金は上がらないので、ストでもなんでもやって賃金を上げる。「上がらないから上げる」。 言葉遊びの巧みさもあって、賃金のからくりがよく分かる。 また本書では、職務給や職能給などの議論の変遷が興味を惹いた。働き方や賃金体系なんで理屈で説明しても現実の力が圧倒的に強くて、いつの間にか雲散霧消したり、後付けでの理屈になったりの連続だったんだ。 ジョブ型など○○型は言わずもがなだが、分かりやすい賃金論にはこれからも眉に唾して聞かないと。12/30:chocofunk. 賃金に焦点を当てて、戦前から現在までの制度を解説しつつ、賃金を上げる方法を紹介して、最後になぜ日本の賃金が上がっていないのかを解説している。 最低賃金の設定など政府主導で行われる部分もあり、法文が出てくる箇所などはすらすらとは読めなかった。 賃金制度の話の際には日本の伝統的な年功序列のメンバーシップ型と海外のジョブ型との比較がされるが、本書でも取り扱いわかるやすくそれぞれの違いなど解説されていた。 印象的だったのはジョブ型では人事査定がない点、人事異動がない点など。 たしかにその人のその時点でのスキルで給与が決まるのであれば査定はしないし、使用者の都合で業務が変わることもおかしい。 こういった解説部を読めば読むほど現代社会と年功序列による賃金決定が乖離していることを思い知らされる。 また、名目賃金の推移を各国と比較できる図表が挿入されていて日本の変化のなさに驚く。 いくら他国と事情が違うといったって30年でここまで変化がないことがよいことなわけがない。 それでも賃金が上がっていると感じる労働者は多いが、上がっているのは定期昇給によってであり、個々人が働く年数が上がっていることに過ぎないということ。 つまり図表が示すとおり労働者全体で賃金が上がっていることはないのだが、それでもベースアップという仕組みで賃金を積極的に上げていこうとしない国には正直不信感を覚える。 本書では、「上げなくても上がるから上げないので上がらない賃金」と表現していて、定期昇給で個人の賃金は上がるからわざわざ苦労してベースアップをしなくなったため、結果的に日本全体の賃金の上昇が滞ってしまっているとのこと。 労働者自身も、働き続けることで上がる賃金によって勘違いしていると思うので、国が主導してくれるなんて楽観的な考え方はやめて自ら積極的に声を上げていく必要があるだろう。2025/1/1:fujine. 賃金の歴史について勉強。日本の年功序列や長期雇用は、明治以降の重工業発展に伴う熟練工の育成や転職抑止から形成された雇用文化だと知って納得。ベースアップの仕組みは朝鮮特需から産まれたりと、今では合理的ではない賃金の仕組みも当時は有効だったことが窺える。 一方、現代の企業は生産性が重視される傾向にあるも、職能基準の給与体系はまだまだ普及していないのが現実。だが、世界の変化に追随するためには、日本の雇用もドラスティックに変えていく必要があると思う。
本の要約サービス flier(フライヤー)に拙著『賃金とは何か』が登場しました。
https://www.flierinc.com/summary/4049
おすすめポイントにはこうあります。
賃金の仕組みについて、どれだけ深く考えたことがあるだろうか。本書『賃金とは何か』は、賃金という私たちの日常に密接するテーマを通じて、日本社会や労働市場の成り立ちを鋭く照らし出す一冊だ。
特に興味深かったのは、日本型雇用システムの本質に切り込んだ分析である。ジョブ型雇用が職務ごとの「値札」を基準に賃金を決定するのに対し、日本では「人」を基準に賃金を設定するメンバーシップ型雇用が採用されてきた。これは勤続年数や年齢といった属性が重視される年功賃金制や定期昇給制度につながり、労働者と企業の長期的な関係を支える基盤となっている。しかし、変化し続ける人口構造や労働市場の課題に直面しているいま、賃金制度が単なる経済的仕組み以上のものであることが浮き彫りになる。
また、賃金制度の歴史的な展開がいかにして日本の賃金制度を特徴づけてきたのか、本書では丁寧に描かれている。その中で、「賃金ベース」の発想が、賃金を抑制する仕組みからベースアップという賃金引き上げのロジックに転じていく流れは、経済状況や労使間の駆け引きが生むダイナミズムを感じさせた。
ただ歴史を追うだけではなく、読者に今後を考えさせる余地を残している点が本書の魅力だ。長期雇用慣行が揺らぎ、非正規雇用の拡大が続く中で、賃金制度はどこへ向かうべきか。賃金の形を問い直すことは日本社会の未来を考えることであるという、静かな訴えを感じた。
労働や雇用について考えるすべての人にとって、自分自身の働き方や賃金観についても再考したいと感じさせる、多くの示唆に富んだ一冊だ。
ちなみに、要約した石渡翔さんは、ほかにもハラリの『サピエンス全史』やアレントの『人間の条件』、オルテガの『大衆の反逆』などを要約しているようです。
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