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ジョブ型雇用社会とは何か

2025年2月 4日 (火)

そのお嬢さんは心の眼で読んでるんです、きっと

Fzmhfluacaaelep_20250204194501 こんなつぶやきが流れてきました

まだ字も読めない娘がソファで濱口先生の「ジョブ型雇用社会とは何か」を読んでいるフリをしている😂

かわいすぎます😂

しかも本が上と下逆で読んでるフリしてます😂

想像しただけでかわいすぎてにやにやひちゃいます😂😂😂

そのお嬢さんは、心の眼で読んでるんです、きっと。

大人にはわからない分かり方で、ちゃんとわかってるんです。

 

 

2024年12月 3日 (火)

『ジョブ型雇用社会とは何か』8刷

71ttguu0eal_20241203085401 皆様のお陰で、拙著『ジョブ型雇用社会とは何か』(岩波新書)に8刷がかかりました。2021年9月の刊行から3年余り経ちましたが、依然としてロングセラーを続けさせて頂いているようで、有り難いことです。

書店の人事労務管理のコーナーに行くと、大きな書店では「ジョブ型」なんていうインデックスプレートで仕切られていたりすることもありますが、そこに並んでいる「ジョブ型」をタイトルに謳った本の大部分(全てではない)が、本書で「そんなものはジョブ型じゃねぇ」と一刀両断したはずの代物であるのは、この言葉をでっち上げた張本人からすると、なかなかに微妙なものでありますね。

 

 

 

2024年6月24日 (月)

岩波ベストテン電子書籍部門第2位

71ttguu0eal_20240624085601 なぜか、岩波書店の週間売上げベストテンの電子書籍部門の第2位に、3年前の『ジョブ型雇用社会とは何か』が今さらながらランクインしたようです。

https://www.iwanami.co.jp/news/n57704.html

電子書籍

  書名 著者
1 [岩波新書]カラー版 名画を見る眼Ⅰ 高階 秀爾
2 [岩波新書]ジョブ型雇用社会とは何か 濱口 桂一郎
3 [岩波新書]カラー版 名画を見る眼Ⅱ 高階 秀爾

本書は、2021年9月に刊行されてから、翌2022年4月くらいまで、だいたい新書部門でベストテンに入り続けていましたが、その後はベストセラーからは退いて、まあぼちぼち売れてるロングセラーだったようです。

『ジョブ型雇用社会とは何か』の推移

9月13日~9月19日:4位、1位:長部三郎『伝わる英語表現法』

9月20日~9月26日:4位、1位:芝健介『ヒトラー』 

9月27日~10月3日:4位、1位:芝健介『ヒトラー』  

10月4日~10月10日:4位、1位:芝健介『ヒトラー』 

10月11日~10月17日:3位、1位:芝健介『ヒトラー』 

10月18日~10月24日:4位、1位:師茂樹『最澄と徳一』 

10月25日~10月31日:7位、1位:師茂樹『最澄と徳一』 

 11月1日~11月7日:4位、1位:師茂樹『最澄と徳一』 

 11月8日~11月14日:4位、1位:芝健介『ヒトラー』 

11月15日~11月21日:1位 

11月22日~11月28日:3位、1位:辻本雅史『江戸の学びと思想家たち』

11月29日~12月5日:4位、 1位:辻本雅史『江戸の学びと思想家たち』

 12月6日~12月12日:4位、 1位:辻本雅史『江戸の学びと思想家たち』

12月13日~12月19日:3位: 1位:芝健介『ヒトラー』

12月20日~12月26日:4位、1位:今野真二『うつりゆく日本語をよむ』

12月27日~1月2日:1位 

 1月3日~1月9日:1位

1月10日~1月16日:1位 

1月17日~1月23日:5位、1位:須田努『幕末社会』

1月24日~1月30日:5位、1位:須田努『幕末社会』

1月31日~2月6日:5位、1位:菊地暁『民俗学入門』 

2月7日~2月13日:4位、1位:菊地暁『民俗学入門』 

2月14日~2月20日:3位、1位:長谷川櫂『俳句と人間』

2月21日~2月27日:8位、1位:五十嵐敬喜『土地は誰のものか』

2月28日~3月6日:10位、1位:大木毅『独ソ戦』

3月7日~3月13日:7位、 1位:大木毅『独ソ戦』

3月14日~3月20日:番外、1位:小川幸司,成田龍一編『世界史の考え方』 

3月21日~3月27日:6位、1位:小川幸司,成田龍一編『世界史の考え方』 

3月28日~4月3日:7位、 1位:小川幸司,成田龍一編『世界史の考え方』

 4月4日~4月10日:5位、1位:小川幸司,成田龍一編『世界史の考え方』

4月11日~4月17日:8位、1位:小川幸司,成田龍一編『世界史の考え方』 

何で今さら本書が急に売れたのかわかりませんが、もしかしたら先週末に骨太の方針や新しい資本主義実行計画が策定されて、その中で例によってジョブ型だの職務給だのという言葉が乱舞していたからかも知れません。

Asahishinsho_20240624090601 だとすると、来月には『賃金とは何か-職務給の蹉跌と所属給の呪縛』(朝日新書)ってのも出ますので、是非そちらもお読みいただければ幸いです。

序章 雇用システム論の基礎の基礎
 1 雇用契約のジョブ型、メンバーシップ型
 2 賃金制度のジョブ型、メンバーシップ型
 3 労使関係のジョブ型、メンバーシップ型
 
第Ⅰ部 賃金の決め方
第1章 戦前期の賃金制度
 1 明治時代の賃金制度
 2 大正時代の賃金制度
 3 生活給思想の登場
 4 職務給の提唱
第2章 戦時期の賃金制度
 1 賃金統制令
 2 戦時体制下の賃金思想
第3章 戦後期の賃金制度
 1 電産型賃金体系
 2 ジョブ型雇用社会からの批判
 3 公務員制度における職階制
 4 日経連の職務給指向
 5 労働組合側のスタンス
 6 政府の職務給推進政策
第4章 高度成長期の賃金制度
 1 日経連は職務給から職能給へ
  (1) 定期昇給政策との交錯
  (2) 職務給化への情熱
  (3) 能力主義への転換
 2 労働組合は職務給に悩んでいた
  (1) ナショナルセンターの温度差
  (2) それぞれに悩む産別
  (3) 単組の試み
 3 政府の職務給指向
  (1) 経済計画等における職務給唱道
  (2) 労働行政等における職務給推進
第5章 安定成長期の賃金制度
 1 賃金制度論の無風時代
 2 中高年・管理職問題と職能給
 3 定年延長と賃金制度改革
第6章 低成長期の賃金制度
 1 日経連(経団連)は能力から成果と職務へ
  (1) 『新時代の「日本的経営」』とその前後
  (2) 多立型賃金体系
  (3) 裁判になった職務給
 2 非正規労働問題から日本型「同一労働同一賃金」へ
  (1) 非正規労働者の均等待遇問題の潜行と復活
  (2) 二〇〇七年パート法改正から二〇一二年労働契約法改正へ
  (3) 同一(価値)労働同一賃金原則の復活
  (4) 働き方改革による日本型「同一労働同一賃金」
 3 岸田政権の「職務給」唱道
  (1) 「ジョブ型」と「職務給」の唱道
  (2) 男女賃金格差開示の含意
  (3) 職務分析・職務評価の推奨
 
第Ⅱ部 賃金の上げ方
第1章 船員という例外
第2章 「ベースアップ」の誕生
 1 戦時体制の遺産
 2 終戦直後の賃上げ要求
 3 公務員賃金抑制のための「賃金ベース」
 4 「ベースアップ」の誕生
 5 総評の賃金綱領と個別賃金要求方式
第3章 ベースアップに対抗する「定期昇給」の登場
 1 中労委調停案における「定期昇給」の登場
 2 日経連の定期昇給推進政策
 3 定期昇給のメリットとデメリット
第4章 春闘の展開と生産性基準原理
 1 春闘の始まり
 2 生産性基準原理の登場
 3 石油危機と経済整合性論
第5章 企業主義時代の賃金
 1 石油危機は労働政策の分水嶺
 2 雇用が第一、賃金は第二
 3 消費者目線のデフレ推進論
第6章 ベアゼロと定昇堅持の時代
 1 ベースアップの消滅
 2 定期昇給の見直し論と堅持
第7章 官製春闘の時代
 1 アベノミクスと官製春闘
 2 ベースアップの本格的復活?
 3 ベースアップ型賃上げの将来
 
第Ⅲ部 賃金の支え方
第1章 最低賃金制の確立
 1 業者間協定の試み
 2 賃金統制令
 3 労働基準法の最低賃金規定
 4 業者間協定方式の登場
 5 業者間協定方式の最低賃金法
 6 業者間協定は最低賃金の黒歴史か
第2章 最低賃金制の展開
 1 目安制度による地域別最低賃金制
 2 最低賃金の日額表示と時間額表示
 3 新産業別最低賃金制
 4 産業別最低賃金の廃止を求める総合規制改革会議
 5 二〇〇七年改正法
 6 最低賃金の国政課題化
第3章 最低賃金類似の諸制度
 1 一般職種別賃金と公契約法案
 2 公契約条例
 3 派遣労働者の労使協定方式における平均賃金
 
終章 なぜ日本の賃金は上がらないのか
 1 上げなくても上がるから上げないので上がらない賃金
 2 ベースアップに代る個別賃金要求
 3 特定最低賃金、公契約条例、派遣労使協定方式の可能性
 
あとがき

 

 

2023年12月30日 (土)

『ジョブ型雇用社会とは何か』岩波新書2023年売り上げ第3位

71cahqvlel_20231230111401 岩波書店のサイトに「2023年 ジャンル別売上ベスト10」が載っています、

2023年 ジャンル別売上ベスト10

各ジャンル毎に見ていくと、文系単行本の1位は佐藤正午さんの『月の満ち欠け』、岩波文庫の1位がマルクス・アウレリウスの『自省録』、そして岩波新書はなんと未だに大木毅さんの『独ソ戦』が1位をキープしていますね。同書はコロナ禍前の2019年に刊行され、2020年に新書大賞を受賞した本なのですから、ものすごい本です。

で、その岩波新書の第2位が小川さんと成田さんの『世界史の考え方』で、これも昨年の本、そしてそれに続いて第3位は、わたくしが一昨年に上梓致しました『ジョブ型雇用社会とは何か』なので、結構ロングセラーが並んでいます。

世間で一知半解の「ジョブ型」がはやるたびに、この「ジョブ型」って、そもそもなんなんだろうか、と、売らんかなの人事コンサルの本では満足できない方々が、本書を手にとっていただいているということなのでしょう。

254914 ちなみに、児童書(絵本)部門の第1位はバージニア・バートンの『ちいさいおうち』だそうで、これは私が幼い頃に何回も眺めていた絵本なので、そのロングセラーぶりは超絶的といえましょう。

350_ehon_7864 本当はここに、同じようにためすすがめつながめていた『ちびくろさんぼ』も並んでいて不思議はないのですが、妙な(間違った)ポリティカリー・コレクトネスのために、そうなっていないのはまことに残念です。

中国が特異か日本が特異か

Armf6or2_400x400 経営法曹の向井蘭さんが、拙著を読まれてこんなつぶやきを

とても面白かったです(そこまで言うかという箇所も)。如何に日本が特異な雇用社会かが分かります(中国にいると痛感する)。教育や文化ともにかかわるので容易には変わらないですね。 ジョブ型雇用社会とは何か 正社員体制の矛盾と転機 (岩波新書)

いま中国におられるようですね。

中国の目から見て「如何に日本が特異な雇用社会か」を痛感するというのですから、よっぽどなのでしょう。

政治体制とか言論の自由といったことでいえば、いうまでもなく「如何に中国が特異か」というはなしになるのでしょうが、こと雇用システムという観点から見れば、中国は欧米とあまり変わり映えのしない普通のジョブ型社会であるのに対して、日本はそれとは隔絶した「特異な雇用社会」なのです。

 

 

 

2023年9月 7日 (木)

日経BOOKプラスで拙著紹介

02_20230907195701 日経BOOKプラスの経済学の本棚で、『ジョブ型雇用社会とは何か』(岩波新書)が「「ジョブ型雇用」の誤解を解き、意義を問い直す2冊」の一冊として紹介されています。もう一冊は鶴光太郎さんの『人事の経済学』ですから、まあほぼ似た主張の本を紹介していることになります。

https://bookplus.nikkei.com/atcl/column/122100175/082500017/

低成長、少子高齢化、人口減少に対応できる雇用システムへの改革として、雇用形態をメンバーシップ型からジョブ型へ移行すべきだと唱える論者が日本では多いが、両者の違いは必ずしも明確ではない。「経済学の書棚」第9回前編は、「ジョブ型」と「メンバーシップ型」を誤解して議論を展開する論者たちを戒める『ジョブ型雇用社会とは何か』と、ジョブ型を踏まえ、日本の雇用システムの改革案を提示する『日本の会社のための人事の経済学』を紹介する。

書かれている前田裕之さんという名前には覚えがありました。

先日『労働新聞』に書評を書いた岩井克人談の『経済学の宇宙』の聞き手の方です。この本はとても面白い本でした。岩井さんの不思議な魅力をうまく引き出しています。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2023/07/post-bbf250.html

その方に、拙著と鶴さんの本が取り上げられているのは、なんだか嬉しくなります。

 高度成長期に確立した日本型雇用システムの持続可能性が改めて問われている。多くの日本企業は低成長、少子高齢化、人口減少に対応できる雇用システムを模索してきたが、結果として正社員と非正規社員の二極化が進み、日本の経済社会に深刻な分断をもたらしている。他の選択肢はないのだろうか。

 雇用の形態を「ジョブ型雇用」と「メンバーシップ型雇用」に二分し、日本はメンバーシップ型からジョブ型へ移行すべきだと唱える論者は多い。ジョブ型に対する期待は大きいものの、両者の違いは必ずしも明確ではない。

「ジョブ型雇用」の誤解を解く

 労働法と社会政策が専門の濱口桂一郎氏は『 ジョブ型雇用社会とは何か 正社員体制の矛盾と転機 』(岩波新書/2021年9月刊)で、ジョブ型とメンバーシップ型の概念を整理し、両者を誤解して混乱した議論を展開する論者たちを戒める。 

 

 

2023年1月 1日 (日)

岩波新書で2022年売上第3位だったようです

昨日の大晦日、岩波書店のサイトに「2022年 ジャンル別売上ベスト10」がアップされていて、拙著『ジョブ型雇用社会とは何か』は新書の第3位だったようです。

https://www.iwanami.co.jp/news/n50815.html

新書

  書名 著者
1 独ソ戦 絶滅戦争の惨禍 大木 毅
2 世界史の考え方〈シリーズ歴史総合を学ぶ1〉 小川 幸司、成田 龍一 編
3 ジョブ型雇用社会とは何か 濱口 桂一郎
4 スピノザ 國分 功一郎
5 空海 松長 有慶
6 幕末社会 須田 努
7 学問と政治 学術会議任命拒否問題とは何か 芦名 定道、宇野 重規、岡田 正則、小沢 隆一、加藤 陽子、松宮 孝明
8 俳句と人間 長谷川 櫂
9 森鴎外 学芸の散歩者 中島 国彦
10 人種主義の歴史 田中 久稔

なお、電子書籍部門でも第7位に入っているようです。

これも読者の皆様のおかげです。ありがとうございます。

 

2022年5月 8日 (日)

吉岡真史さんの拙著書評+α

71cahqvlel_20220508131501 元官庁エコノミストで現在立命館大学教授の吉岡真史さんに、そのブログで拙著『ジョブ型雇用社会とは何か』を書評していただいています。

http://economist.cocolog-nifty.com/blog/2022/04/post-350f1a.html

最後に、濱口桂一郎『ジョブ型雇用社会とは何か』(岩波新書) です。著者は、労働省・厚生労働省出身で、現在は国立研究機関で研究所の所長をしています。私も同じ国立研究機関に勤務していた経験があり、著者とも少しだけ勤務時期が重なっていたりします。ただし、著者と私に共通しているのは、ほかに、ソニーのウォークマンを愛用していることくらいかもしれません。・・・・ 

ココログを使っているというのも数少ない共通点ですかね。

拙著の概要を簡単に説明した後、

・・・でも、ジョブ型雇用に転換すると社会全体が、まさに、マルクス主義的な見方ながら、下部構造が上部構造に大きな影響を及ぼすように、我が国経済社会に大変換をもたらすような気がします。ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の違いはかなりよく判りましたし、授業などにも活かせそうな手応えを感じますが、ホントにジョブ型雇用を日本社会に普及させていいものかどうか、もう一度よく考える必要がありそうな気がします。

と述べていますが、どこにどういうメリットがあり、どこにどういうデメリットがあるかという各論こそが大事だと思っていろいろ書いたつもりなんですが、そこは、

・・・ただし、本書の第1章でジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の基礎の基礎を展開した後、労働法に基づく訴訟の紹介が多くなり、やや私の専門分野からズレを生じてしまった気もします。・・・

と、あまり面白く読んでいただけなかったようです。総論だけならだれでも何とでもいえるので、各論のディテールにこそ神が宿ると思っている立場からするとやや残念でした。

さて、この書評の最後で、吉岡さんはこのように述べられるのですが、ここは実はまさに各論のディテールのレベルで山のように言いたいことがてんこ盛りなんです。

・・・ただ、現実として、すでに日本でもジョブ型の雇用システムが採用されている分野があります。医師の世界と大学教員の雇用です。私もその中に入ります。大学教員でいえば、どのような学位を持っていて、あるいは、その学位相当の能力があり、どのような分野の授業がどのような言語でできるか、を明示した採用となります。そして、その職務記述書に沿ったお給料となるハズなのですが、なぜか、私の勤務する大学では年功賃金が支払われています。少しだけ謎です。 

いや、謎というか、そこにこそ日本社会の中の局部的ジョブ型雇用社会の特徴があるのですよ。

ジョブ型の本質は入口にこそある、いやむしろ入口以前にこそある、という本書の立場からすると、大学教員の世界は日本ではまことに例外的なジョブ型の世界です。

でも、賃金制度はほぼ完全な年功賃金で、民間企業のような能力主義すらほとんどないまことに古典的な生活給。

そして、入口が特定のジョブにそのジョブを遂行しうるスキルを有する者をはめ込むというジョブ型であるにもかかわらず、出口については最近のいくつかの大学教授整理解雇訴訟に見られるように、何やらみょうちきりんなメンバーシップ型がまかり通るという奇妙な事態が出来しているのです。

これはまさに吉岡さんがあまり関心を持たない「やや私の専門分野からズレを生じてしまった」領域かもしれませんが、雇用システム論の威力というのは、こういう細部にこそ現れてくるのです。

これは、『ジュリスト』に載せた淑徳大学事件の判例評釈ですが、

http://hamachan.on.coocan.jp/jurist2004.html

解雇された大学教授らは、大学教授という職務への限定性を強く主張し 、「大学教員はその専門的知識及び実績に着目して採用されるもの」と言いながら、学部が廃止されても他学部への配置転換可能性を当然の如く主張していたのは、実に奇妙な話です。もっとも本件は、彼ら高齢教授たちの首を斬るためにわざと学部を廃止してよく似た新学部を設置するといういんちきなことをやっているので、結果オーライという面もあるのですが、そもそも論からすると、ある学問の専門分野に着目して、当該分野のジョブにはめ込むために採用されたジョブ型大学教授を、全然別の学部の全然別のジョブに配置転換するなどということがジョブ型の本旨に合致するものなのかという問題意識がかけらも感じられないという、欠陥判決ではあります。

[評釈] 結論には賛成だが、判旨に疑問あり。
Ⅰ 大学教授の整理解雇事案の概観
 本件は内容的には事業の縮小に伴う整理解雇事案であるが、整理解雇対象が大学教授という職種である点に特徴がある。近年、少子化に伴い大学のリストラが話題となっているが、大学教授の整理解雇が焦点となった裁判例はなお極めて少ない。現在までのところ、本件を含めて5事案8判決ある(学校法人村上学園(東大阪大学)事件〔大阪地判平成24.11.9労働判例ジャーナル12号8頁〕:整理解雇有効、学校法人獨協学園(姫路獨協大学)事件地裁判決〔神戸地判平成25.4.19平成23年(ワ)1338号〕:整理解雇無効、同高裁判決〔大阪高判平成26.6.12労働判例ジャーナル30号30頁〕:整理解雇有効、学校法人金蘭会学園(千里金蘭大学)事件地裁判決〔大阪地判平成26.2.25労判1093号14頁〕:整理解雇無効、同高裁判決〔大阪高判平成26.10.7労判1106号88頁〕:整理解雇無効、学校法人専修大学(専修大学北海道短期大学)事件地裁判決〔札幌地判平成25.12.2労判1100号70頁〕:整理解雇有効、同高裁判決(札幌高判平成27.4.24労働判例ジャーナル42号52頁〕:整理解雇有効、学校法人大乗淑徳学園事件〔東京地判令和元.5.23〕〔本件〕:整理解雇無効)。
 いずれも1つの学校法人の下に複数の大学、短大等が設置され、それらに複数の学部、学科、専攻等が置かれている。学校法人の一部であるこれらの大学、短大、学部、学科、専攻といった単位の廃止が、当該単位に所属する大学教授の整理解雇をどこまで正当化するのか、言い換えれば大学教授という職種の解雇回避努力義務はどの範囲までかが中核的論点である。
 廃止単位に着目すると、短期大学という事業所自体の完全廃止事案(専修大学事件)では解雇有効、短大部廃止に伴う学部再編事案(金蘭会学園事件)では解雇無効、学部内の学科の縮小再編事案(獨協学園事件)では地裁と高裁で判断が分かれているが、最も単位の小さな学科内の専攻廃止(村上学園事件)では解雇有効である。一方、解雇対象教授の職務範囲に着目すると、村上学園事件が「介護福祉士養成施設である生活福祉専攻の教授という職種限定の合意」を認定して、他学部・他学科等への配置転換の余地を全く認めていないのに対し、金蘭会学園事件では当該教授の東洋史学という狭い専門分野にもかかわらず、幅広い授業科目を担当してきた実績を考慮しており、また獨協学園事件では、外国語学部の外国語教師が全学の語学教育を担当していたことが考慮されている。
Ⅱ 人員削減の必要性
 整理解雇4要素は一般には独立の要素と考えられるが、学校法人のうちのある単位を廃止して人員削減する場合、その必要性を法人全体で見るのか当該単位で見るのかという問題がある。職務や勤務場所が限定されているのであれば、人員削減の必要性の判断もその範囲内でなされるべきとも考えられるからである(獨協学園事件では法人全体ではなく大学単位で判断)。
 本判決は、国際コミュニケーション学部の廃止自体は経営判断として不合理とはいえないとしつつ、Xらを解雇しなければYが経営危機に陥るといった事態は想定しがたいとして、人員削減の必要性は法人全体で見るべきという立場に立っているようだが、一方で「Xらは人文学部の一般教養科目及び専門科目の相当部分を担当可能であったものであるから」と職務範囲を拡大して判断していることがその判断根拠となっているようでもあり、だとすると人員削減の必要性の判断は労働者の職務範囲の限度でなされていることになる。判旨Ⅱ2「所属学部の限定の有無との関係」も解雇回避努力ではなくこの人員削減の必要性の一部で論じられているが、その論拠は国際コミュニケーション学部と入れ替わりに設置されかつ教育内容に共通性のある人文学部への配置転換可能性ではなく、「アジア国際社会福祉研究所その他の附属機関」への配置転換可能性であり、議論の筋道が錯綜していると言わざるを得ない。
Ⅲ 解雇回避努力
1 労働契約における所属学部の限定の有無
 Xらは国際コミュニケーション学部の専門性と関係のない一般教養科目を担当してきたこと、就業規則8条1項を根拠に学部間の配置転換を命ずることが可能であったこと等を論拠に所属学部が国際コミュニケーション学部に限定されていたことを否定するが、Yは「大学は学部ごとに研究及び教育内容の専門性が異なる」ことを論拠にXらの所属学部及び職種が国際コミュニケーション学部の大学教員に限定されていたと主張し、それゆえ整理解雇に該当しないと主張した。Yの主張は、(解雇回避努力の範囲に関わる)労働契約の限定性と整理解雇該当性という次元の異なるものを混同しているが、本判決はこれを奇貨として、「Xらの所属学部及び職種が同学部の大学教員に限定されていたか否かにかかわらず」整理解雇に該当すると(至極当然のことを)述べるだけで、限定の有無を正面から論ずることを回避している。
2 人文学部への教授としての配置転換可能性
 本件の最大の論点は国際コミュニケーション学部と入れ替わりに設置された人文学部へのXらの配置転換可能性である。なぜなら、古典的な学部配置を前提とすれば学部とは大学教授の専門性のまとまりであり、例えば法学部には法律学者がおり、理学部には物理学者がいるという状況を前提として、「大学は学部ごとに研究及び教育内容の専門性が異な」り、「大学教授は所属学部を限定して公募、採用されることが一般的」であると言えようが、近年のように学部学科の在り方が多様化し、古典的学部のようには明確に専門性を区別しがたい(「国際」等を冠する)諸学部が濫立すると、必ずしも「大学は学部ごとに研究及び教育内容の専門性が異なる」とは言えなくなるからである。Xら側が国際コミュニケーション学部と人文学部に「連続性があることは明らか」と主張しているにもかかわらず、本判決はこの最重要論点を回避し、「Yのとるべきであった解雇回避措置は、Xらの同学部への配置転換に限られるものではなかったというべき」と言って済ませている。本件では国際コミュニケーション学部の高齢で高給の教授を排除して、新たな人文学部ではより若く高給でない専任教員に代替しようという意図が背後に感じられる面もあり、この論点回避は残念である。
 なお本判決は「Xらは人文学部の一般教養科目及び専門科目の相当部分を担当可能であった」と認定しており、過去の裁判例(金蘭会学園事件)に倣えばこれを決め手として配置転換可能性ありと判断することもあり得たが、本判決は学部が「限定されていたか否かは別として」と言ってこれを回避している。
3 附属機関の教員としての配置転換可能性
 本判決がYの学部限定論に対して肯定も否定もせず、それによって制約されない選択肢として提示するのがアジア国際社会福祉研究所その他の附属機関であるが、これは論理的におかしい。Yの学部限定論を認めるのであれば、人文学部であろうが附属機関であろうがその限定の範囲外であることに変わりはない。逆に学部限定論を全面的には認めず、附属機関への配置転換可能性を認めるのであれば、より職務内容が類似している人文学部への配置転換可能性を認めない理由はないはずである。本丸の人文学部への配置転換可能性をまともに議論しないでおいて、もっぱら附属機関への配置転換可能性のみを持ち出すのはあまり誠実とは言いがたい(大学附属機関を伸縮自在の魔法の器とでも考えているのであろうか)。
4 事務職員としての配置転換可能性
 本件で興味深いのは、大学教授の配置転換可能性として事務職員としての雇用継続という選択肢も論じられていることである。この点に関しては、Xら側が大学教授という職務への限定性を強く主張し、本判決もそれを認めている。しかしながら、そもそも「大学教員はその専門的知識及び実績に着目して採用されるもの」を強調するのであれば、およそ大学教授であれば何を教えていても配置転換可能などという議論はありえまい。例えば法学部が廃止される場合、その専任教員を事務職員にすることは絶対に不可能であるが、理学部の専任教員にすることは同じ「大学教員」だから可能だとでも主張するのであろうか(労働法の教授を人事担当者にする方がよほど専門知識に着目しているとも言えよう)。
 逆に配置転換可能性という意味ではその範囲外であったとしても、解雇回避努力の一環として本俸を維持した事務職員への配置転換を提示することはありうる。それは職務限定の範囲外であるためにXらがそれを拒否することは当然ありうるが、少なくともY側の解雇回避努力の一つとして認めることには特段問題はない。附属機関への配置転換可能性を過度に強調することと比べると、事務職員への配置転換を安易に「解雇回避努力としては不十分というべき」と断じていることには違和感がある。
Ⅳ 解雇手続の相当性
 本件では、Xらが結成した職員組合が団体交渉を申し入れたことから始まる不当労働行為事件の申立て、その再審査、その取消訴訟という一連の流れがあり、そのいずれにおいても、YのXら組合に対する団交拒否、支配介入の不当労働行為を認定しており、Yが「Xらとの協議を真摯に行わなかった」という判断に問題はない。

 

2022年5月 1日 (日)

『ジョブ型雇用社会とは何か』の推移

71cahqvlel_20220501224701 岩波書店のサイトには、岩波ベストテンというコーナーがあって、毎週新書、文庫、児童書等々の分野別にベストテンが載ってます。その新書の欄で、拙著『ジョブ型雇用社会とは何か』が9月17日の刊行以来どういう風に推移してきたのかをまとめてみました。

9月13日~9月19日:4位、1位:長部三郎『伝わる英語表現法』

9月20日~9月26日:4位、1位:芝健介『ヒトラー』 

9月27日~10月3日:4位、1位:芝健介『ヒトラー』  

10月4日~10月10日:4位、1位:芝健介『ヒトラー』 

10月11日~10月17日:3位、1位:芝健介『ヒトラー』 

10月18日~10月24日:4位、1位:師茂樹『最澄と徳一』 

10月25日~10月31日:7位、1位:師茂樹『最澄と徳一』 

 11月1日~11月7日:4位、1位:師茂樹『最澄と徳一』 

 11月8日~11月14日:4位、1位:芝健介『ヒトラー』 

11月15日~11月21日:1位 

11月22日~11月28日:3位、1位:辻本雅史『江戸の学びと思想家たち』

11月29日~12月5日:4位、 1位:辻本雅史『江戸の学びと思想家たち』

 12月6日~12月12日:4位、 1位:辻本雅史『江戸の学びと思想家たち』

12月13日~12月19日:3位: 1位:芝健介『ヒトラー』

12月20日~12月26日:4位、1位:今野真二『うつりゆく日本語をよむ』

12月27日~1月2日:1位 

 1月3日~1月9日:1位

1月10日~1月16日:1位 

1月17日~1月23日:5位、1位:須田努『幕末社会』

1月24日~1月30日:5位、1位:須田努『幕末社会』

1月31日~2月6日:5位、1位:菊地暁『民俗学入門』 

2月7日~2月13日:4位、1位:菊地暁『民俗学入門』 

2月14日~2月20日:3位、1位:長谷川櫂『俳句と人間』

2月21日~2月27日:8位、1位:五十嵐敬喜『土地は誰のものか』

2月28日~3月6日:10位、1位:大木毅『独ソ戦』

3月7日~3月13日:7位、 1位:大木毅『独ソ戦』

3月14日~3月20日:番外、1位:小川幸司,成田龍一編『世界史の考え方』 

3月21日~3月27日:6位、1位:小川幸司,成田龍一編『世界史の考え方』 

3月28日~4月3日:7位、 1位:小川幸司,成田龍一編『世界史の考え方』

 4月4日~4月10日:5位、1位:小川幸司,成田龍一編『世界史の考え方』

4月11日~4月17日:8位、1位:小川幸司,成田龍一編『世界史の考え方』 

ここまでの8か月ほどの間、1回を除いてほぼベストテンに顔を出し、4回ほど1位になっているというのは、まあそこそこ評判がいいということなんでしょうね。各週の1位の本を見るといかにも売れそうなのが代わる代わるでてきて、そういうすごいのの合間を縫ってなんとか生き残ってきているように見えるのは正直ほっとする思いです。

 

2022年4月19日 (火)

久しぶりに新書らしい新書を読んだ

71cahqvlel_20220419193501 昨年出した『ジョブ型雇用社会とは何か』(岩波新書)はお蔭様でなお岩波新書のトップテンに顔を出し続けているようですが、ネット上でも引き続きいろんな方が評していただいています。

その中で、井上武史さんによる「地方公務員が読んでおきたい書籍の紹介」というnoteで、いろいろ紹介していただいた最後に、こういうコメントを付け加えていただいたのは、大変嬉しい思いがいたしました。

https://note.com/inotake555/n/n9685d28bcfc9

・・・・最後に、本書を読んで「久しぶりに新書らしい新書を読んだ」と感じました。最近の新書は内容の薄いものが多くなってしまいましたが、「最先端の研究成果を一般の人にも分かりやすく」という新書本来の姿を体現しています。その意味で、「新書とは何か」も学ぶことができたと感じています。新書の元祖とも言える岩波新書だからこそ、出せるものかもしれません。こうした新書が今後もどんどん出てくることを期待したいと思います。

私の本が「新書らしい新書」というのは、本当にありがたい言葉です。

 

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