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雑件

2021年12月23日 (木)

数学勢だけかとおもいきや、小学校算数勢だけだった話

まったくEUとも労働法とも関係ないけれども、世の中によくありがちな現象をいささか象徴的に示しているようで大変面白かったので

https://togetter.com/li/1819441("数学勢だけの習性のようです"(掛け算の順))

たぶん初めの人は、世の中はいささかおかしい「数学勢」とそれ以外すべてのまともな人からなると思い込んでいたようですが、実のところはむしろ、いささかおかしい「小学校算数勢」とそれ以外すべてのまともな人からなるというのが、より正確な病像であったということのようでありますね。

この話はもちろんこれだけの話なんですが、似たような状況は世の中のあちらこちらに結構転がっているような気がしないでもなく、威勢よく「ぼくのかんがえたさいきょうの」真理やら正義やらを振り回す前に、むこうが「数学勢」なんじゃなくって、こっちが「小学校算数勢」なんじゃないかと、ふと自省してみることも、それなりに意味のあることなのかもしれませんよ。

2021年9月15日 (水)

両方の旗を取られて・・・

もともと旧民主党には、小泉よりももっと構造改革!という(ネオ)リベラルな方向性と、格差是正だネオリベ反対だというソーシャルな方向性が、統一することなくねじれて併存していて、それこそ「敵の出方論」で都合良く出したり引っ込めたりしていたけれども、こういう事態になって、自民党の中の総裁候補が新自由主義からの転換を掲げたり、規制改革を掲げたりすると、どっちにしても埋没するんですね。

本音で言えば、もうひとりのナショナリズム全開でアベノミクス堅持の方に総裁になっていただいた方が選挙対策的にはありがたいんでしょうが、さすがにそれは・・・

2021年6月 4日 (金)

公衆衛生と健康の間

昨年来のコロナ禍で、医療分野の素人としてつらつら思ったこととして、世の中の風潮やそれに合わせた政策の流れが、かつて社会問題として深刻であり、国家の重要課題として取り組んでいた感染症対策などの公衆衛生という政策観点が薄れてきて、生活習慣病などの個人の健康管理に重点を置くようになってきたことが、今回のコロナ禍にこれほどの混乱を生じさせている一つの要因ではないのだろうかということです。

一部の市民団体がワクチン接種を目の仇にしてそれをマスコミが煽ったとか、一部の政治家が保健所をやたらに統廃合しただとか、エピソード的なことがいろいろと語られますが、それら表面に現われた諸現象を奥底で駆動していたのは、公衆衛生なんていう古くさい政策思想はさっさと脱ぎ捨てて、健康増進こそが21世紀の目指すべき姿だ、というような大きなうねりだったのではないのでしょうか。

それを象徴するように、かつて厚生省には医務局と並んで公衆衛生局というのがありましたが、今の厚生労働省で医政局と並ぶのは健康局という名前です。

こういうことを考える一つのきっかけとして、このシフトのミニチュア版としての、労働の場における衛生=健康対策のシフトがあります。こちらはなお組織名称は労働衛生課という昔ながらの名前ですが、やはりかつては職業病対策中心だったものが、21世紀になるころから職場の健康管理なんてことが重視されるようになってきました。これは、労災補償で過労死や過労自殺といった厚生サイドでは生活習慣病やメンタルヘルスといわれるような事柄が焦点になってくるという社会風潮のシフトを反映していたのですが、さらにマクロ社会的な公衆衛生から健康管理へというシフトをも反映していたように思います。こっちもときたま、アスベストのような古典的タイプの職業病(これはまさに塵肺の一種)が飛び出してきて、釘を刺すわけですが。

人口の高齢化や生活水準の高度化などで、古典的な公衆衛生の課題が切実さを感じられなくなり、人員や予算もあまり付かなくなり、代わって個人の健康増進が政策の目玉として打ち出されるようになるというのは、それ自体としてはやむを得ないというか、なかなかどうしようもないうねりなのだと思いますが、ときどき感染症が蔓延して釘を刺してくれないと、なかなか向きが変わらないのかも知れません。

 

2019年11月23日 (土)

「工業高校」と「工科高校」の違い

正直意味がよくわからないニュースです。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191122/k10012186251000.html (「工業高校」を一斉に「工科高校」に変更へ 全国初 愛知県教委)

愛知県の教育委員会が、県立の「工業高校」13校の名称を、再来年4月から一斉に「工科高校」に変更する方針を固めたことが分かりました。科学の知識も学び、産業界の技術革新に対応できる人材を育成するのがねらいで、工業高校の名称を一斉に変更するのは全国で初めてだということです。 ・・・

いやまあ、高校の名称をどうするかは自由ですが、その理由がよくわからない。

・・・関係者によりますと、すべての県立工業高校の名称について「工学だけでなく、科学も含めた幅広い知識を学ぶ高校にしたい」というねらいから、再来年の4月から一斉に「工科高校」に変更する方針を固めたということです。・・・

ほほう、「工業高校」だと科学は学べないとな。「工科高校」だと科学が学べるとな。

「工業高校」の「業」は「実業」の「業」ですが、「工科高校」の「科」は「科学」の「科」だったとは初めて聞きましたぞなもし。

東京工業大学は実業しか学べないけど、東京工科大学は科学が学べるんだね。ふむふむ。

というだけではしょうもないネタなので、トリビアネタを付け加えておくと、東京工業大学は前身は東京高等工業学校でしたが、それとならぶ東京高等商業学校は、一橋大学になる前は東京商科大学でした。一方が「業」で他方が「科」となった理由は何なんでしょうか。

ちなみに、東京高商と並ぶ神戸高等商業学校は、大学になるときには神戸商業大学と名乗っていますな。今の神戸大学の前身ですが、同じ商業系でもこちらは「科」じゃなくて「業」です。

さらにちなみに、神戸商科大学というのもあって、これは戦前の兵庫県立神戸高等商業学校が戦後大学になるときにそう名乗ったんですね。今の兵庫県立大学の前身です。

なんだか頭が混乱してきましたが、東京商科大学は戦時中東京産業大学と名乗っていたので、別に「業」を忌避していたわけでもなさそうです。

 

 

 

2019年1月17日 (木)

暴力団員であることを隠して就労して得た賃金は「詐取」なのか?

こういう記事が話題になっていますが、

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190116-00020480-tokaiv-soci

暴力団組員であることを隠して郵便局からアルバイト代を騙し取ったとして、60歳の男が逮捕されました。
 逮捕されたのは六代目山口組傘下組織の組員の男(60)です。男は、2017年11月29日、実際には暴力団組員であるのにもかかわらず、愛知県春日井市の郵便局で反社会勢力ではないと誓約書に署名したうえでアルバイトし、給料として現金7850円を騙し取った疑いが持たれています。
 警察によりますと、男はこの日だけ「ゆうパック」の集配アルバイトとして働きましたが、その後暴力団関係者であることを明かし、わずか4日後に自主退職したということです。
 警察が別の事件で男の組事務所を捜索したところ、男の口座に郵便局から給料が支払われていたことがわかり、犯行が発覚しました。
 調べに対し男は容疑を認めていて、警察は、男がアルバイトを始めた経緯などを調べています。

記事はこれだけで、これ以外に何か書かれていない事情があるのかどうかはわかりません。しかし、この記事の情報だけからすれば、当該暴力団員は虚偽の誓約書を書いて、さもなければ雇用されなかったであろうアルバイト雇用で就労したことは確かですが、雇用契約に定める労務を提供し、それに相当する賃金を稼得しただけであって、その賃金が「騙し取った」という表現がされるべきものであるかには、かなりの疑問を感じます。

採用時に正直に申告すべき事情を申告せず、虚偽の情報を提供することによって採用されるという事態は世の中には結構存在します。それが問題になるのは、そのことがばれて解雇されるという事態になって、その解雇が正当な理由のあるものかそうでないかという民事上の紛争として現れることが多いのですが、虚偽の申告に基づいて誤って採用してしまったからと言って、現に契約上の労務を提供したことに対して既に支払った賃金を詐取されたから返せ、というような訴訟は見たことがありません。

というか、いかに採用判断の根拠に錯誤があったからと言って、提供された労務とそれに支払われた賃金は少なくとも民事上は決済済みの話で、根っこに戻ってすべて無効になるわけではなかろうともいますし、もし万一元に戻って無効になるというのなら、無効な雇用契約に基づいて4日分の労務を受領しているのだから、その分の不当利得を返還しなければならないようにも思えます。

法律上の根拠をざっと見ても、少なくとも国家法である暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律には、暴力的要求行為の禁止として多くの行為が列挙されていますが、当然ながらその中に雇用契約を締結して労務を提供し報酬を得ることなどというのはありませんし、おそらく逮捕の根拠となっているであろう愛知県暴力団排除条例には、他の都道府県の条例と同様、事業者に「当該契約の相手方に対して、当該契約の履行が暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資することとなるものでない旨を書面その他の方法により誓約させること」の努力義務を課しているにとどまり、その誓約書に違反して締結された雇用契約を無効にしたり、いわんやその(それ自体は契約に従った)労務に対する報酬の支払いを無効にしたりする効果はないように思われます。

2018年11月28日 (水)

勝谷誠彦氏死去で島田紳助暴行事件を思い出すなど

Katuyaほとんど限りなく雑件です。

勝谷誠彦氏が死去したというニュースを見て、

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181128-00000060-spnannex-ent(勝谷誠彦氏 28日未明に死去 57歳 公式サイトが発表)

吉本興業で勝谷氏担当のマネージャーだった女性が島田紳助に暴行された事件の評釈をしたことがあったのを思い出しました。

これは、東大の労働判例研究会で報告はしたんですが、まあネタがネタでもあり、『ジュリスト』には載せなかったものです。

せっかくなので、追悼の気持ちを込めてお蔵出ししておきます。

http://hamachan.on.coocan.jp/yoshimoto.html

労働判例研究会                             2014/01/17                                    濱口桂一郎
 
中央労働基準監督署長(Y興業)事件(東京地判平成25年8月29日)
(労働経済判例速報2190号3頁)
 
Ⅰ 事実
1 当事者
X(原告):Y興業の従業員(文化人D(勝谷誠彦)担当のマネージャー)、女性
被告:国
Y:興業会社(吉本興業)
E:Y専属タレント(島田紳助)
 
2 事案の経過
・平成16年10月25日、Xは担当文化人Dに同行して赴いた放送局内で、面識のないEに話しかけたが、その際の態度を不快に感じたEがXに説教し、さらに立腹してEの控室に連れ込み、暴行を加えた(「Xの左側頭部付近を殴り、Xの髪の毛を右手でつかみ、3,4回壁に押さえつけたり、リュックサックで左耳付近を殴り、唾を吐きかけたりするなど」)。同日、警察に通報
・Xは同日から11月2日まで各病院で、「頚部、背中、左前腕捻挫」「頭部外傷I型、頸椎捻挫」「左上肢、背部打撲」「頸椎捻挫」「外傷性頭頸部障害、背部打撲」の診断を受けた。また11月9日には「急性ストレス障害」の診断を受け、平成17年1月「外傷性ストレス障害」(PTSD)に変更された(L意見書)。
・(本判決には出てこないがマスコミ報道によれば)平成16年12月9日、Eは傷害罪で略式起訴され、同日大阪簡裁が略式命令、罰金30万円を納付。Xは事件後休職、平成18年6月に休職期間満了で退職。平成18年8月5日、XはEとY興業を相手取って損害賠償請求訴訟を起こし、同年9月21日、東京地裁はEとY興業に1,045万円の支払を命じる判決を下した(判例集未搭載)。雇用関係確認も訴えたが認めず。双方控訴。平成19年9月22日、東京高裁で1,450万円を支払う旨の和解が成立。
・平成19年7月4日、Xは業務が原因で発症したPTSDとして監督署長に休業補償給付を請求。監督署長は平成20年7月2日、不支給処分(①)。平成19年7月4日、Xは業務が原因の外傷性頭頸部障害、背部打撲として休業補償給付を請求。平成20年7月2日、不支給処分(②)。平成19年8月16日、Xは業務が原因の外傷性頭頸部障害、背部打撲として療養補償給付を請求。平成20年7月2日、不支給処分(③)。
・平成20年8月28日、Xは上記3件の不支給処分を不服として審査請求。①については、平成21年7月21日、東京労働者災害補償保険審査官が棄却、8月19日に再審査請求、平成22年2月17日、労働保険審査会が棄却。②、③については、平成21年10月6日、東京労働者災害補償保険審査官が棄却、11月30日に再審査請求、平成22年8月4日、労働保険審査会が棄却。
・Xは、①について平成22年7月27日、②、③について同年11月15日、取消訴訟を提起。両事件は併合。
 
Ⅱ 判旨
1 本件事件(Eによる暴行)による災害の業務起因性
「本件事件は、・・・業務遂行中に発生したものといえる。」
「しかしながら、本件事件の発端についてみるに、XはY興業の社員(マネージャー)であり、EはY興業の専属タレントであるが、XはEの担当マネージャーではないことはもちろん、タレントとは異なる文化人マネジメント担当であり、Xの主たる業務上の接触先は,担当文化人やテレビ・ラジオのプロデューサーやディレクターであって(書証略)、XとEは、同じ会社に所属する社員と専属のタレントということのみで、具体的な業務上のつながりは認められない。」
「本件事件当日の具体的状況としても、・・・Xが、Dのマネージャーとしての担当範囲を超えて業務上のつながりがないEに対して何らかの業務上の行為を行うべき必要性は認められない。」
「これらの点からすれば、XはEに対して、東京広報部文化人マネジメント担当としての業務のために話しかけたものではなく、Eの上司であるMやNとの個人的つながりを持ち出して、私的に自己紹介しようとしたものであるとみるのが相当である。
 したがって、本件事件の発端となるXのEに対する話しかけ行為は、業務とはいえないというべきである。」
「また、XがEから暴行を受けるに至った経緯についてみても、・・・確かに、Eが立腹するに至った事情として、Y興業の社員であるXがM及びNを呼び捨てにしたことがあり、同人らは本件事件前後の時期においてY興業の幹部であったことは認められる。しかし、Xは両名を高校生の頃に面識のあった人物として名前を出したものであって、Xの発言内容自体は、本来のXの業務との関連性は乏しいし、Eが立腹した理由の一つがXがY興業の社員であることであったとしても、XのEに対する話しかけやこれに続くXとEとの口論はXの業務とは関連性がない。」
「以上の通り、本件事件の発端は、XがEに対して私的にX自身を自己紹介しようとしたところ、Eがその態度に不快感を覚えたというものであって、そのXの行為について業務性は認められないこと、暴行に至る経過において、XがM及びNを呼び捨てにしたことがあるが、その発言自体は、Xの業務との関連性に乏しいことなどからすれば、本件事件による災害の原因が業務にあると評価することは相当ではなく、Xの業務と本件事件による災害及びそれに伴う傷病との間に相当因果関係を認めることができないから、業務起因性を認めることはできない。」
2 精神障害による休業(①)の業務起因性
「客観的にみれば、本件事件におけるその心理的負荷が「死の恐怖」を味わうほどに強度のものであったとまで言えるかは疑問である。」
「L医師による、Xの供述に全面的にあるいはXの本件における供述以上の暴行態様を前提としたPTSDの判断については、疑問を呈さざるを得ない。」
「以上によれば、Xが本件事件後、PTSDに罹患していたとは認めがたい。そして、Xの時間外労働の内容及び本件事件後に生じた事情等を考慮しても前期判断は左右されるものではない。したがって、XがPTSDに罹患したことを前提として、本件処分①の違法をいうXの主張は採用することができない。」
3 外傷・打撲による休業・療養(②、③)の業務起因性
「以上からすると、Xの外傷に対する治療は、平成16年11月2日までに終了していると判断されるべきであり、同日以後の療養については、本件事件との因果関係は認められず、同日以降の療養について療養補償給付を求める本件請求③は支給要件に該当しないというべきである。」
「そもそも、休業補償給付が支給されるのは、療養のために労働をすることができず、労働不能であるがゆえに賃金も受けられない場合であることからすれば、療養が必要でなければ休業も当然必要ではないこととなるので、本件においては、休業補償給付の支給の要件を満たさないというべきである。したがって、平成16年11月2日以降の休業は、本件事件との因果関係が認められず、同日以降の休業について休業補償給付を求める本件請求②は支給要件に該当しないというべきである。」
 
 
Ⅲ 評釈 1に疑問あり。2,3は賛成。
 
1 本件事件(Eによる暴行)による災害の業務起因性
 本判決は、Xの遂行すべき業務範囲が「文化人D担当のマネージャー」であることから、その範囲外である専属タレントEへの話しかけを私的行為と判断している。しかし、被告主張にもあるように、「XがY興業所属の社員(マネージャー)であり、EがY興業の専属タレントであることから、このような両者の会話については業務性が肯定されるという見解もあり得る」のであり、もう少し細かな考察が必要である。
 事実認定において、判決はX側の「Xが業務遂行場所における業務遂行途上において、Y興業専属の大物タレントが一人で放置されていたことから声かけするのは職場における社員として常識的な行動である」との主張に対し、「本件事件当時、Eが特に担当マネージャー以外のY興業の社員からの声かけを必要とするような状況にあったことはうかがわれない」とか「XがEに話しかけた動機としては、職務上の立場とは無関係に、個人的な懐かしさの感情から話しかけたとみるのが相当である」と退けている。しかし、この論点の立て方では、Xがたまたまその時点で担当していたDのマネージャー業務以外は、Yの業務であっても特段の理由がない限り私的行為となってしまい、現実の日本における仕事のあり方とやや齟齬があるように思われる。X側が以下の論点をまったく提起していないので、いささか仮想的な議論になるが、本来はこういう議論があるべきではないか。
 判決文には示されていないが、XはDのマネージャー業務に限定してY興業に採用されたわけではないように思われる。本件事件当時Dのマネージャーを担当していたとしても、今後他の様々なタレントを担当する可能性はあったであろうし、その時のために、担当ではない時期から他のタレントに挨拶し、いわゆる顔つなぎをしておくことは、職業人生全体の観点からすれば将来の業務の円滑な遂行のための予備的行為としての側面があり、まったく個人的な行為とみることはかえって不自然ではなかろうか。現実の社会では、業務の輪郭はより不分明であって、Eに挨拶すること自体を厳密にXの業務範囲外と断定することには違和感がある。ちなみに、判決文ではEは「大物タレント」、Dは「文化人」と書かれており、それぞれのマネージャー業務は一見異なる種類の業務のように見えるが、実は両者ともY興業に属してテレビのバラエティ番組で半ば政治評論的、半ば芸能人的なコメントを行うタレントであって、一般社会的にはほとんど同種の業務と見なしうるように思われる。
 そしてこれを前提とすれば、将来担当する可能性を否定できないEが、過去幾多もの暴力事件を起こし、社内やテレビ局内でも暴力事件を起こしていたことから、本件事件による災害がEを専属タレントとして抱えて業務を遂行する過程に内在化されたリスクとのX側の主張も、「相当でない」と安易に退けることは疑問がある。
 もちろんこれに対しては、その時点での担当業務ではないにもかかわらず、将来担当したり関わったりする可能性のあるタレントと顔つなぎをしておきたいという意図で声かけをすることには、業務性は認められず、業務に関連した私的行為に過ぎないという反論もあり得る。ただ少なくとも、この論点を欠いたままの「個人的な懐かしさの感情」との判断には、いささか短絡的との感を免れない。
 
2 精神障害による休業の業務起因性
 現在、精神障害の認定基準は、「心理的負荷による精神障害の認定基準について」(平成23年基発1226第1号)及び「心理的負荷による精神障害の認定基準の運用等について」(平成23年基労補発1226第1号)によって行われているが、本件について給付請求、審査請求が行われていた時点においては、「心理的負荷による精神障害等に係る業務場外の判断指針について」(平成11年基発第544号)、平成21年4月6日以降は同通達の改正通達(平成21年基発第0406001号)、及びその関連通達によって行われていた。
 本件に対するこの通達の基準の当てはめについては、争点②についての被告側主張に詳細に述べられており、心理的負荷の強度はⅡ、総合評価は「中」であって、業務に起因するとは認められないとしている。この判断は基本的に是認しうる。
 また被告側主張では、訴訟提起後に発出された上記認定基準へのあてはめも行っており、そこでも総合評価を「強」とする「特別な出来事」はなく、「具体的出来事」としては「中」であって、業務起因性を否定している。この判断も是認しうる。
 また、X側のPTSDとの主張に対しても、詳細な反論を行っており、納得できるものがある。ちなみにL医師によるPTSDとの診断に対する疑念は、本人供述に基づく診断を基本とせざるを得ない精神医学について本質的な問題を提起しているようにも思われるが、ここでは深入りし得ない。
 なお、本件労災給付申請は事件発生の3年近く後に、民事訴訟の和解が近づいた時点で行われており、その動機にやや不自然なものも感じられる。
 
3 外傷・打撲による休業・療養の業務起因性
 これについても、被告側主張に詳細に述べられており、是認できるものである。
 

2018年11月14日 (水)

ドイツの極右、ポーランドの極右、日本の極右、韓国の極右

極端な自民族中心、優越と、他民族に対する侮蔑、攻撃を掲げる政治勢力は、世界中どこでも極右と言われる、はずです。

かつてナチスを生み、ポーランド等を侵略し、ユダヤ人等を虐殺したドイツという国でそのような主張をする人々であっても、

かつてそのナチスドイツに侵略され、住民を虐殺され、国土を破壊されたポーランドという国でそのような主張をする人々であっても、

どちらも極右という正しい呼び名で呼ばれます。かつて侵略された被害者国家ポーランドの排外ナショナリストは右翼じゃなくて左翼だと認めてくれるわけではない。

なぜか極東に来ると、そういう物の道理が通りにくくなる傾向があるようです。

9784569826646ひどい目に遭った国の排外ナショナリズムが左翼だというのなら、その被害者ナショナリズムのもっとも典型的な例は、おそらく竹田恒泰氏の『アメリカの戦争責任』(PHP新書)でしょう。

そこでいっていることのある部分は必ずしも歴史的事実の次元で間違っているわけではないけれども、だからといって、アメリカのリベラル派が竹田氏をアメリカ帝国主義の虚偽を曝露した正義の論者だと持ち上げたという話は聞いたことがありません。

それは当たり前でしょう。

極端な自民族中心、優越と、他民族に対する侮蔑、攻撃を掲げる政治勢力は、世界中どこでも極右と言われる、はずです。

2018年10月20日 (土)

倉重公太朗ディナーショー

Original 本日、倉重公太朗ディナーショーに出席してきました。いや、お手紙には、「当日は鏡割りをよろしく」とあったので、そうだと思っていたら、突然祝辞が回ってきて、とっさに「同志です!」みたいなことを喋ったような気がしますが、動転していてあんまり覚えていません、なんて。

ディナーショー?倉重さんって弁護士でしょ?と思ったあなた。いやいや倉重さんが今までいた安西法律事務所から独立して、来週から「倉重・近衛・森田法律事務所」として出発する、その記念のパーティというわけです。

いやしかし、ギンギンのロックスター張りの登場シーンから始まって、この演出はすごい。慶應の応援団はご愛敬でしたが、社労士の皆さんのロックバンドをバックに絶唱するにはなかなかしびれましたぜ。

2018年7月27日 (金)

先生と様

いやそりゃ、hamachan先生なら愛称になるけれども、hamachan様では人をおちょくっとんのかということになるわな。それならただのhamachanと言え、と。

あれ、そういう話じゃなかったのか。

2018年7月12日 (木)

これは焦った・・・

いやいや、さすがにそれはない・・・。

https://twitter.com/ryunoshin_tamo/status/1016970301219921920

日本型雇用システムとは、諸外国と比較して日本が大きく異なった労働システムを構築しているっていう意味で括っているので、、 濱口桂一郎先生が分類したところ広まった観念ですね。

ち、ち、ちょっとそれはなんぼなんでも。日本型雇用システムをめぐる議論には長い歴史があります。私はそれ自体には特に何も付け加えておらず、近年の労働政策との関係でそれに「ジョブ型」とか「メンバーシップ型」というラベルを貼って論じただけなので、わたしが「分類」しただの、それで「広まった」だのと言われると、偉い先生方の逆鱗に触れますのでどうかご容赦を。

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