雑件

そりゃそうなるよな

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161130/k10010790081000.html(自民と連合が5年ぶりに政策協議)

・・・自民党本部で5年ぶりに行われた政策協議には、自民党から茂木政務調査会長らが、連合からは、逢見事務局長らが出席しました。この中で、連合の逢見氏は、「大きな影響力を持つ自民党との意見交換は大変ありがたい」と述べ、労働者の雇用の安定やすべての世代が安心できる社会保障制度の確立などを要請しました。
これに対して茂木氏は、「連合の政策に最も近いのは自民党ではないかと自負している。労働界を代表する連合との意見交換を通じて、働き方改革などの実現につなげていきたい」と応じ、協議を続けていきたいという考えを伝えました。
このあと連合の逢見氏は、記者団に対し、「相撲でいえば、お互いの感覚が一致して、立ち会いができた。自民党とは政策面での距離感は無く、特に雇用や労働、社会保障の面での問題意識は、自民党も同じであり、来年は、もう少し早く行いたい」と述べました。

ねずみを捕らない、どころか、ねずみをいっぱい引き入れて家の中をしっちゃかめっちゃかにする白猫と、ちゃんとねずみをたくさん捕ってくれる黒猫がいたら、それはもちろんねずみを捕ってくれる猫の方がいい猫なんです。

もちろん、その黒猫は猫をかぶっているだけで、白猫を追い出したらもっと性悪になるかも知れないという議論はあり得るけれども、ねずみを捕らないダメな白猫に「猫猫たらずとも」忠誠を誓えというのは愚かな議論です。

労働組合とは政治団体でもなければ宗教団体でもなく、況んや思想団体でもないのですから。

そこのところが分かっていない議論が多すぎるのが困ったことですが。

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トランプとサンダース

と言うわけで、結局アメリカ大統領選はトランプの勝利となったようです。

改めて考えてみると、アメリカ国民の不満はマスコミ報道以上に大きいものがあったということで、それが民主党ではサンダース現象、共和党ではトランプ現象という形を取ったけれども、民主党はなまじヒラリー・クリントンが強すぎてサンダースが負けたけれども、共和党は主流派がばらばらだったおかげでトランプが勝ち、結局そっちに流れた、という理解で良いのでしょうか。

同じ不満派といってもより粗野で野卑で粗暴で排外的な方になってしまった感はありますが、それも運命ということなのでしょう。

ということで、ここで改めて6月にお送りいただいた『バーニー・サンダース自伝』を思い返しておきます。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2016/06/post-bdb8.html (『バーニー・サンダース自伝』)

223380 『バーニー・サンダース自伝』(大月書店)をお送りいただきました。ありがとうございます。

http://www.otsukishoten.co.jp/book/b223380.html

いちおう、民主党の候補者選でヒラリー・クリントンの勝ちを認めたあとの出版になりましたが、このアメリカ希有の「民主的社会主義者」のマニフェスト本として、読まれる値打ちのある本であることは間違いないと思います。

「革命の準備はいいか?」――庶民や弱者に味方し、大胆な経済政策と政治改革を掲げて全米の若者を夢中にしているサンダース。草の根の民主主義にこだわり、無所属をつらぬいてきた「民主的社会主義者」のユニークな政治家人生を記した自伝。

版元もかなり力が入っていると見えて、ここに無料サンプル版をアップしています。

http://www.otsukishoten.co.jp/files/_sanders_sample.pdf

実を言うと、これは今回の大統領選に向けたマニフェスト本ではなくて、今から20年近く前に出た「Outsider in the House」(下院のはぐれもの)を、タイトルに「White」を付け加えて「Outsider in the White House」(ホワイトハウスのはぐれもの)にして、まえがきと解説を加えて出版したものです。なので、本体部分は20年前の話なのですが、サンダースさんが一貫して変わらないことがよくわかります。

訳者まえがき――バーニー・サンダースとは何者か? 何が彼を押し上げたのか?

謝辞

まえがき(2015年の追記)

序章

1 あなたはどこかで始めるべきだ

2 ひとつの市での社会主義

3 長い行進はすすむ

4 手に入れたいくつかの勝利

5 悪玉を仕立て上げる議会

6 ヴァーモントじゅうを歩きまわって

7 最後のひと押し

8 私たちはここからどこへ行くのか?

あとがき:大統領選挙のはぐれ者(ジョン・ニコルス)

正直言って、社会民主主義勢力が大きなシェアを占めているヨーロッパに比べて、アメリカの政治ってあんまり面白そうでないという感じでちゃんと勉強してこなかったのですが、もう一遍じっくりと時間を取って勉強し直した方が良いかなと思い始めています。

(追記)

考えてみれば、民主党の中でサンダースがやろうとしたことは、長らく「ソーシャル」がなかったアメリカにおいて、「リベラル」を食い破って正真正銘の「ソーシャル」が表面に出ようとしてついに果たせなかったということであるのに対して、トランプのやろうとしたことは、「ネオリベ」と「コンサバティブ」の牙城のはずの共和党のただ中に、大変歪んだかたちではあるけれども、ある種の「ソーシャル」を求める声の嵐を巻き起こしたことにあるのかも知れません。

それがトランプであるという点に、同じように「ソーシャル」志向が歪んだかたちで噴出する例えばフランスの国民戦線などと比べても、アメリカという国の特殊性がよく表れているのでしょうけど。

(再追記)

そのクリントンに負けたサンダースが、クリントンに勝ったトランプに向けて、こう語っています。

http://www.sanders.senate.gov/newsroom/press-releases/sanders-statement-on-trump

“Donald Trump tapped into the anger of a declining middle class that is sick and tired of establishment economics, establishment politics and the establishment media.  People are tired of working longer hours for lower wages, of seeing decent paying jobs go to China and other low-wage countries, of billionaires not paying any federal income taxes and of not being able to afford a college education for their kids - all while the very rich become much richer.

“To the degree that Mr. Trump is serious about pursuing policies that improve the lives of working families in this country, I and other progressives are prepared to work with him. To the degree that he pursues racist, sexist, xenophobic and anti-environment policies, we will vigorously oppose him.”

ドナルド・トランプは、エスタブリッシュメント経済、エスタブリッシュメント政治、エスタブリッシュメントメディアに倦み疲れた没落しつつある中間層の怒りを利用した。人々は低賃金で長時間労働することに、実入りのいい仕事が中国や他の低賃金国にいってしまうことに、億万長者が連邦所得税をちっとも払わず子供たちが大学教育を受けられるようにしようとしないことに、要は富豪がますます肥え太ることに、倦み疲れているのだ。

トランプ氏がこの国の勤労者家族の生活を改善する政策を追及することに真剣である程度に応じて、私と他の進歩的な人々は彼と協力する用意がある。彼が人種差別的、性差別的、排外主義的、反環境的政策を追及する程度に応じて、我々は彼に激しく反対するであろう。

まさにそういうことですね。

(おまけ)

https://twitter.com/kurokawashigeru/status/796916674091884545

コメント欄は、元記事の重要なところ何も読み取らずに、難しそうだけども鈍感なコメントが繰り返されている。

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自分が無知な分野について本を書くときのやり方

自分が無知な分野について、いっちょまえに偉そうな本を書こうと思ったときは、あなたには二つの選択肢があります。

一つは、出版社が用意してくれたデータマンが主としてネット上で得られる(虚実取り混ぜた)情報をもとに用意してくれた元原稿に、好きだの嫌いだの、気にくわないだの死ねだのという小学生並みの感想文を書き加えて一冊の本に仕立て上げるという手法。

もう一つは、自分の極めて乏しい脳内情報を元に、あとは気分の赴くままに、何の根拠もないことを自信たっぷりに断言したり、確かに存在する高名な学者の本に書いてあると称して実は全然存在しない一節を『引用』してみたり、文句をつけそうなその分野の専門家に(中身とは関係のない)属性批判をして、一冊の本に仕立て上げるという手法。

どちらを選ぶかはあなたの判断ですが、前者の場合、そのデータマンがいい加減な仕事をする人であった場合、泥棒呼ばわりされるおそれがありますのでご注意下さい。

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山野晴雄さんの小林節氏評

最近マスコミを騒がせている元憲法学者の小林節氏の政治行動やその政治的意見については、本ブログで何かを論じようと言うつもりはありません。

ただ、職業教育・キャリア教育の関係で本ブログとも若干の関わりのある山野晴雄さんが、ご自身の体験を元に御自分のブログ「三鷹の一日」に書かれていることについては、氏の人格を評価する上で重要な情報であるように感じられましたので、紹介だけしておきます。

http://yamatea.at.webry.info/201605/article_8.html

山野さんはかつて桜華女学院で教えておられたそうですが、そこにワタミの郁文館高校から校長として乗り込んできたのが小林節氏だったそうです。氏がどういうことをしたと山野さんが書かれているかは上記リンク先を参照のこと。パワハラなどで多くのベテラン教員や若手教員が辞めていったと書かれています。その真偽について私がとやかく言う立場にはありませんが、こういう時期に、こういうエントリを書かずにはおれない気持ちを抱かせるような方であったのだな、ということはよく伝わってきます。まさに「国民怒りの声」でしょう。

なお、山野さんの拙著書評として、日本キャリアデザイン学会のメールマガジンに掲載されたこれがあります。

http://yamatea.at.webry.info/201312/article_5.html (『若者と労働-「入社」の仕組みから解きほぐす-』を読む)

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ブリュッセルでテロ

報じられているように、ブリュッセルで爆弾テロが起きました。3年間住んだ町であり、とりわけザベンテム空港は何回もお客さんを迎えに行ったり送りにいったりしましたし、EU本部近くも足繁く通ったところなので、映像を見ると皮膚がぞわっとくる感じです。

ベルギーの現地紙「Le Soir」のサイトの映像から

Bruxelles: à l'intérieur de l'aéroport après... 投稿者 Le_Soir

L'évacuation de l'aéroport de Zaventem suite à... 投稿者 Le_Soir

一方で、当時よくモロッコ系の人がやってるクスクス料理のレストランに行ってたので、彼らムスリムが置かれている状況も想像すると辛いものがあります。欧州系のレストランは子供を連れては入れないので、家族で外食する時クスクスはしょっちゅう行ってました。

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ニッポンの女議員比率はインド以下

OECDが一昨日「公的分野における男女平等勧告」(Recommendation on Gender Equality in Public Life)なるものを公表していますが、そこに載ってたこのグラフがなかなか興味深いです。

http://www.oecd.org/governance/oecd-countries-agree-to-improve-gender-equality-in-public-leadership.htm(OECD countries confirm their drive to improve gender equality in public leadership)

Women20in20parliaments20chart20eng

ふむ、日本の女議員比率はわずか10%で、インドの12%よりもさらに低い、と。

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脊髄反射の罪

佐々木俊尚さんがツイッターでプチ炎上しているらしいと聞き、見に行くと、なんとその火元は拙ブログの記事へのコメントでした。

「炎上」したのはこのツイートですが、

https://twitter.com/sasakitoshinao/status/698705056728649729

憲法を守っているだけでは国は運営できませんよ。

これは、「風鈴」氏のこのツイートに対するリツイートで、

https://twitter.com/bluemoon356756/status/698704777752936448

代替案?憲法を守れということですよ。

これはさらに佐々木さんのこのツイートに対するリツイートで、

https://twitter.com/sasakitoshinao/status/698646109544128512

官僚政治や保守支配を打破すれば民主主義がやってくるかと期待したら政治の均衡が失われただけだったという嘆き。悪者を倒すだけで代替案がなければそりゃそうでしょ。/宮本太郎山口二郎『リアル・デモクラシー』または憂しと見し世ぞ今は恋しき

そう、この佐々木さんのは本ブログのこのエントリへのコメントだったのです。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2016/02/post-2dac.html(宮本太郎・山口二郎編『リアル・デモクラシー』または憂しと見し世ぞ今は恋しき)

とすると、この「炎上」の原因を作った犯人も明らかです。

佐々木さんのツイートが、どういう文脈での言葉であるかを全く分からず、また分かろうともしないまま、脳みそをひとかけらも使わない脊髄反射で「代替案?憲法を守れということですよ」とリツイートした「風鈴」氏にあります。

いやもちろん、文脈によっては、「代替案?憲法を守れということですよ」という短い言葉が何よりも端的な寸言になり得るような状況もあり得ます。

しかし、少なくとも、拙ブログの上記エントリへのコメントとしての佐々木さんのツイートに対する言葉としては、これは全く意味をなさない。

憲法を守れって、誰に向かっていっているのか?

利益集団政治を批判して結果的にポピュリズム政治を招いた山口二郎氏らに対して?

改革ポピュリズムに乗って利益手段政治を叩いた小泉元首相らに対して?

さらにまた改革ポピュリズムを振り回し続けた(いる)みんなの党とか維新の党とか、もろもろの「改革」派政治家に対して?

それともそういう改革政治こそが憲法の趣旨に沿っているんだからもっとやれ、と。つまり利益手段の側に対して?

なんにせよ、ここで問題になっている構図において、「憲法を守れ」という言葉が、どういう意味を持ちうるのか、そこのところが一向に不明だし、おそらく「風鈴」氏はそんな難しいことは何も頭にはないのでしょう。

そういう、脳みそをひとかけらも使ってない脊髄反射に対して、佐々木俊尚さんがキレた。

キレて、つい舌っ足らずのリツイートをしてしまった・・・・。

というのが、このプチ炎上劇の実相ということであったようです。

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ご要望の向きもあるようですが

一部にご要望の向きもあるようですが、労働問題として取り上げるつもりは特にありませんのであしからずご了承ください。

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スマイル0円の陰惨な非経済的帰結

http://www.asahi.com/articles/ASJ144ST6J14TLTB00L.html(「笑顔ない」とコンビニ店員に重傷負わせた疑い 男逮捕)

 鹿児島県枕崎市内のコンビニで男性店員に「笑顔がない」などと言って蹴り、重傷を負わせ、土下座を強いたとして、鹿児島県警は4日、同市折口町、生花店経営牟田吉行容疑者(56)を傷害と強要の疑いで逮捕し、発表した。容疑を認めているという。

 枕崎署によると、牟田容疑者は3日未明、枕崎市内のコンビニ前の路上で、男性アルバイト店員(44)の腹部を蹴り、土下座を強いた疑いがある。男性店員は腎臓を損傷し、約1カ月の重傷。

ちなみに、経済的帰結についてはこちらを参照。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/12/post-107c.html(スマイル0円が諸悪の根源)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/11/post-24ed.html(スマイル0円が「ホスピタリティの生産性」?)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2015/05/post-cdcb.html(スマイルは0円か@日経)

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総合雑誌?

たまたま目に付いたのですが、

http://d.hatena.ne.jp/sakuranomori/20151216/p1

・・・「現代思想」のような雑誌を「総合雑誌」といいます。背伸びしたい(?)かつての大学生は「総合雑誌」によって、大学では出会うことのない学者や知識人などの思想を勉強して、あるいは、勉強するふりをしていました。しかし、私が大学生の頃すでに総合雑誌「離れ」が問題視されていて、むしろ講義を履修している先生の論考が掲載されているときだけ興味を持つような印象でした。そして他方で、コミック誌や趣味の雑誌ファッション、スポーツ、マネー、オタクカルチャーなど)はまだまだ健在でした。現代ではどうでしょうか。そもそも現代における知識人とはなんでしょう。

私の知る限り、総合雑誌とは『文藝春秋』『中央公論』『世界』『展望』といった政治経済系の評論を中心とする雑誌の謂であって、その亜種がいわゆるオピニオン誌であり、文学評論やら哲学やらのこ難しい屁理屈の一杯詰まった『現代思想』とかのたぐいは、ある時期にはニューアカ雑誌とか呼ばれていましたが、分類すれば『思想』とか『理想』などの哲学雑誌のたぐいであって、少なくとも総合雑誌などとは呼ばれていなかったことだけは間違いないか、と。

いや確かにここ数年、『現代思想』誌が時々教育問題とか労働問題といったトピックを、それもかつてのようなやたら哲学的ジャーゴンの一杯詰まった読んでもよく意味のわからない論文ばかりではなく、まさしく総合雑誌かな?と思われるような視角からの論文が結構載るようになったりしているので、まったく間違いではないと言えるようになってきているのかも知れませんが、少なくとも、バブル期に学生たちが総合雑誌離れした云々の話に持ち出すにはあまりにも不適当ではないか、と。

ある時期までの、そして現在においてもある程度までは、『現代思想』はまさしく「へたれ人文系インテリ」(@稲葉振一郎)の御用雑誌であった/あるというのが正確な認識であるように思われます。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/05/post-41d5.html (『現代思想』6月号「特集ベーシックインカム」)

ちなみに、同じ特集の中の栗原康氏の「大学賭博論 債務奴隷かベーシックインカムか」という文章が、なんというか、もう「へたれ人文系インテリ」(@稲葉振一郎)の発想そのものという感じで、大変楽しめます。

栗原氏にとって、大学とは、

>一つは予測可能な見返りのある大学、もう一つは予測できない知性の爆発としての大学、この二つである。

ところが、前者の大学において「就職活動のための授業カリキュラム」というのは、

>コミュニケーション能力、情報処理能力、シンボル生産能力、問題解決能力、自己管理能力、生涯学習能力・・・・・・・・

と、まさしくシューカツ産業が提示する人間力以外の何ものでもないようです。大学で本来学ぶことになっているはずの知的分野は、卒業後の職業とは何の関係もないというのが、絶対的な前提になっているわけですね。

つまり、栗原氏にとっては、大学が大学としてその掲げる学部や学科の看板の中身というのは、原理的に「予測可能な見返り」のあるものではなく、「予測できない知性の爆発」という賭博でしかない、というわけで、まあ典型的なへたれ人文系インテリの発想ということなんですが、なんでこれがベーシックインカム論の特集に入ってくるかというと、

>大学には、二つの道がある。一つは債務奴隷化、もう一つはベーシックインカムである。・・・・・・この賭に負けはない。自分の身を賭して、好きなことを好きなように表現してみること。・・・・・・・

と、好きなことを好きなようにやるんだから、その生活費をお前ら出せよ、という主張につながってくるからなんですね。

いうまでもなく、大学という高等教育機関はへたれ人文系の学問ばかりをやっているわけではなく、大学で学ぶ学問それ自体に職業的レリバンスが高い分野も多くあります。そういう高級職業訓練機関に学ぶ学生がきちんと訓練を修了し、高い技能を持った労働者として就職していけるように、その生活費の面倒を見ようというのは、別段ベーシックインカム論を持ち出さなくても、アクティベーションの考え方からも十分説明できますし、むしろより説得的に説明できるでしょう。

大学や大学院の授業が給付付き職業訓練であっていけないなどというのは、本質的に同じものである「教育」と「訓練」を勝手に役所の縦割りで区別しているからだけのことであって、その方が頭が歪んでいるのです。職業訓練を受けるために学生を債務奴隷にするなんて、(教育政策としてはともかく)労働社会政策としては歪んでいるわけですから。

ところが、栗原氏の議論には、そういう発想はないんですね。学生に生活費を支給すべき根拠は、その受講する職業訓練の社会的有用性ではなく、「好きなことを好きなように表現してみること」であるわけです。

まさに、好きなことをやるかわいい子どもに糸目を付けずに大盤振る舞いしてくれる豊かな親になってくれよ、それがあんたらの責任だ、というのがへたれ人文系ベーシックインカム論であるようです。それは、親の年功賃金によっていままで維持されてきた仮想空間を全面的に拡大しようという試みなのでしょうが、いうまでもなくそれが実現する見込みは乏しいでしょうね。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2013/04/post-4fd4.html (就活のリアル@『現代思想』4月号)

最近、むつかしげな哲学思想ばかりでなく現代社会のアクチュアルなテーマも時々取り上げるようになった『現代思想』が、「就活のリアル」という特集を組んでいます。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2013/04/5-0c3d.html (『現代思想』5月号特集「自殺論」)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2015/03/post-0d09.html (教育クライシス@『現代思想』2015年4月号)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2015/11/11-b07c.html (『現代思想』11月号「大学の終焉」のミニ感想)

正直言って、4年以上前に『月刊社会民主』に書いた文章の、この最後の言葉に付け加えるべき感想は、特に感じられませんでした。

・・・やや皮肉な言い方をすれば、こういう教育と労働市場の在り方にもっとも消極的であるのは、「学問は実業に奉仕するものではない」と称して職業的意義の乏しい教育を行うことによって、暗黙裏に日本的企業の「素材」優先のメンバーシップ型雇用に役立っていた大学教授たちであろう。彼らの犠牲者が職業的意義の乏しい教育を受けさせられたまま労働市場に放り出される若者たちであることは、なお彼らの認識の範囲内には入ってきていないようである。

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