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新しい労働社会

2021年2月25日 (木)

『新しい労働社会』第12刷

131039145988913400963_20210225221501 『新しい労働社会-雇用システムの再構築へ』(岩波新書)が刊行されたのは2009年7月。もう12年近く前になり、日本の労働の世界もだいぶ変化がありましたが、なお読み継がれて本日第12刷が出ました。

昨年は「ジョブ型」「メンバーシップ型」という言葉が、いささか誤解にまみれた形で流行しましたが、この概念を定式化したのは本書でした。

改めてこの間本書を愛読していただいた読者の皆様に心より感謝申し上げます。

はじめに
 
序章 問題の根源はどこにあるか-日本型雇用システムを考える
 1 日本型雇用システムの本質-雇用契約の性質
  職務のない雇用契約
  長期雇用制度
  年功賃金制度
  企業別組合
 2 日本の労務管理の特徴
  雇用管理の特徴
  報酬管理の特徴
  労使関係の特徴
 3 日本型雇用システムの外側と周辺領域
  非正規労働者
  女性労働者
  中小企業労働者
 
第1章 働きすぎの正社員にワークライフバランスを
 1 「名ばかり管理職」はなぜいけないのか?
  マクドナルド裁判
  管理職と管理監督者
  スタッフ管理職
  (コラム)組合員資格と管理職
 2 ホワイトカラーエグゼンプションの虚構と真実
  ホワイトカラーエグゼンプションの提起
  政府の奇妙な理屈付けと経営側の追随
  労働側のまともな反論
  「残業代ゼロ法案」というフレームアップ
  (コラム)月給制と時給制
 3 いのちと健康を守る労働時間規制へ
  消えた「健康」の発想
  過重労働問題と労働政策の転換
  まずはEU型の休息期間規制を
 4 生活と両立できる労働時間を
  日本型「時短」の欠落点
  ワークライフバランスの登場
  普通の男女労働者のための基準
  (コラム)ワークシェアリングとは何をすることか?
 5 解雇規制は何のためにあるのか?
  恒常的時間外労働と整理解雇法理
  遠距離配転や非正規労働者と整理解雇法理
  生活との両立を守る解雇規制こそ必要
 
第2章 非正規労働者の本当の問題は何か?
 1 偽装請負は本当にいけないのか?
  偽装請負追及キャンペーン
  「偽装請負」とはそもそも何か?
  経団連会長の指摘
  請負労働の労働法規制
 2 労働力需給システムの再構成
  登録型派遣事業の本質
  労働組合の労働者供給事業
  臨時日雇い型有料職業紹介事業
  労働力需給システムの再構成
  (コラム)日雇い派遣事業は本当にいけないのか?
 3 日本の派遣労働法制の問題点
  「派遣切り」の衝撃
  EUの派遣労働指令
  業務限定の問題点
  「ファイリング」の無理
  製造業派遣禁止論の無理
 4 偽装有期労働にこそ問題がある
  登録型派遣事業禁止論の本質
  EUの有期労働指令
  有期労働契約をどう規制すべきか
 5 均衡処遇がつくる本当の多様就業社会
  均衡処遇の必要性
  職能資格制度における「均衡処遇」
  期間比例原則の可能性
  賃金制度改革の社会的条件
  (コラム)職能資格制度と男女賃金差別
 
第3章 賃金と社会保障のベストミックス-働くことが得になる社会へ
 1 ワーキングプアの発見
  ワーキングプアの発見
  プアでなかった非正規労働者像
  生活できない最低賃金
 2 生活給制度のメリットとデメリット
  生活給制度はいかに形成されたか
  生活給制度のメリット
  生活給制度のデメリット
  日本的フレクシキュリティのゆらぎ
  (コラム)家族手当の社会的文脈
 3 年齢に基づく雇用システム
  年齢差別問題の再登場
  年長若年者への年齢差別問題
  学卒一括採用システム
 4 職業教育訓練システムの再構築
  公的人材システム中心の構想
  企業内教育訓練体制の確立
  職業指向型教育システムに向けて
  日本版デュアルシステムの可能性
  (コラム)教育は消費か投資か?
 5 教育費や住宅費を社会的に支える仕組み
  生計費をまかなうのは賃金か社会保障か
  二つの正義のはざま
  教育費や住宅費を支える仕組み
  (コラム)シングルマザーを支えた児童扶養手当とその奇妙な改革
 6 雇用保険と生活保護のはざま
  雇用保険と生活保護の断層
  日本型雇用システムに対応した雇用保険制度のほころび
  (コラム)登録型プレミアムの可能性
  トランポリン型失業扶助
  生活保護の部分的失業給付化
  働くことが得になる社会へ
 
第4章 職場からの産業民主主義の再構築
 1 集団的合意形成の重要性
  「希望は戦争」という若者
  誰が賃金制度を改革するのか
  非正規労働者も含めた企業レベルの労働者組織の必要性
 2 就業規則法制をめぐるねじれ
  労働条件の不利益変更は個別労働問題なのか?
  合理性の判断基準としての労使合意
  労働契約法の迷走 
 3 職場の労働者代表組織の再構築
  労働者代表組織のあり方
  過半数組合と労使委員会
  新たな労働者代表組織の構想
  (コラム)労働NGOとしてのコミュニティユニオン
 4 新たな労使協議制に向けて
  整理解雇法理の再検討
  日本型労使協議制の光と影
  (コラム)フレクシキュリティの表と裏
 5 ステークホルダー民主主義の確立
  三者構成原則への攻撃
  三者構成原則の現状と歴史
  ステークホルダー民主主義の確立に向けて 

2020年10月10日 (土)

京都大学経済学部図書館の「留学生へのおすすめ」

京都大学経済学部図書館の「留学生へのおすすめ」というのに、拙著『新しい労働社会』が顔を出しています。もう11年も前の本ですが、でも、世間で誤解誤用されている「ジョブ型」ってのを理解する上では少しは役に立つかもしれません。

http://www.econ.kyoto-u.ac.jp/library/wp-content/uploads/2020/10/2020list2.pdf

Kyodai

 

 

2019年1月31日 (木)

日本大学法学部の推薦図書に

131039145988913400963 日本大学法学部の推薦図書に、もう10年も前の拙著が顔を出しています。『新しい労働社会』(岩波新書)です。

https://www.law.nihon-u.ac.jp/library/recommend/6153/

推薦者は労働法の大山盛義教授。こう述べています。

昨年(2018年)に成立した,「働き方改革」法関連の,また外国人労働者の受け入れ拡大を目指した入管法改正関連のニュースに,どのくらい学生が関心を持って接していたのだろうか。
これらの法改正は,どこかの誰かの話ではなく,今現在働いている私たち自身に直接的に関わる事柄である。多くの学生は,おそらく「就職」して40年以上働くことになるであろうから,むしろ長期にわたって大きな影響を受けるのは,これから社会を支える若い世代ということになろう。
本書は,日本の労働社会の問題を歴史的かつ比較法的に,そして平易に解説しているため,働く私たちが置かれている現状を理解するのに役立つ。本書の出版は2009年であるため,直前のリーマン・ショック(2008年)の影響へ言及は少なく,それ以降の日本社会の変化を論じているわけではないが,著者が構想し論じた内容は,出版後の変化をも乗り越えて現在でも有用なものである。
「働き方改革」法や入管法改正によって,日本の「労働社会」が今後どのように変化していくのか(していくべきか),本書を手がかりにして考えてみるのもよいだろう。
(大山 盛義教授/5F東開架)

ありがとうございます。そう、働き方改革についての解説書は汗牛充棟、世に溢れていますが、なぜそれが日本に必要だったのか、そして何がまだ足りないのかを最も端的に述べているのは、この10年前の本ではないかと内心では思っています。

2018年8月 9日 (木)

『新しい労働社会』電子書籍化

131039145988913400963 拙著のうち、『若者と労働』と『働く女子の運命』はすでに電子書籍化していますが、それらよりも早く2009年に刊行した『新しい労働社会』(岩波新書)も、今月電子書籍化されるようです。

https://twitter.com/Iwanami_Shinsho/status/1027471378843234304

【毎月4点配信している電子書籍、8月は16日に配信開始です】
見田宗介『現代社会の理論――情報化・消費化社会の現在と未来』
濱口桂一郎『新しい労働社会ーー雇用システムの再構築へ』
池上俊一『フィレンツェ』
見田宗介『現代社会はどこに向かうか――高原の見晴らしを切り開くこと』

電子書籍化によって、また新たな読者を得られることになるならば、うれしいことです。

http://hamachan.on.coocan.jp/bookreviewlist.html

 

 

2018年4月28日 (土)

『新しい労働社会』第11刷

本日4月28日は、世界的には国際労働者祈念日(International Workers’ Memorial Day)であり、

 

https://www.ituc-csi.org/april-28-international-workers?lang=en

 

ここ日本では、連合のメーデー中央大会が開かれる日でしたが、

 

https://www.jtuc-rengo.or.jp/news/news_detail.php?id=1365

 

131039145988913400963

 

 

わたくしに関しては、岩波書店から『新しい労働社会』の第11刷の連絡が届きました。

 

この本、出たのは2009年ですから、もう9年近くになりますが、そこで論じたことがますます重要な政策課題となってきています。

 

第1章の労働時間問題についても、9年前はまだまだ自由な働き方という空疎な議論と残業代ゼロ反対というゼニカネ論ばかりが幅を利かせ、一番肝心の労働者の命と健康を守るための労働時間規制という本質を訴える声は細々としたものでしたが、この9年の間に議論の本筋はだいぶまっとうなものになってきたように思われます。ゼニカネではなく労働時間そのものの上限規制が法案に盛り込まれるなどということは、当時はとてもまだ現実化するとは思われていなかったことを考えると、この間の事態の進展に感慨深いものがあります。当時はほとんど知られていなかったインターバル規制も、徐々に普及してきて、努力義務として法案に盛り込まれるに至りました。まあ、いまだに安全衛生としての労働時間という認識よりも残業代ゼロというゼニカネにこだわる古い意識の人々の声ばかりがやかましいのは残念ですが。

 

また、第2章の非正規労働についても、同一労働同一賃金というスローガンの下で、ようやく賃金問題の本質にかかわる議論が行われるようになり、第3章で論じた社会保障や教育問題との関連も、高等教育の無償かとか奨学金問題がホットトピックになるように、かつてと比べると世の中に何が問題化がすっと通じる傾向が強まってきたと感じます。時代は変わらないように見えて、やはり少しずつ変わってきているし、9年前の拙著はその間、あるべき方向性を静かに指し示し続けてきたと自負しても罰は当たらないでしょう。

 

残念ながら第4章で取り上げた労使関係に関しては、この間法政策レベルではほとんど進展は見られなかったとはいえ、様々なレベルで問題意識が提起されてきたことは、これからの進展の土壌づくりになっていると信じたいと思います。

 

9年経っても、古びるどころか、今現在労働問題の議論に求められる問題意識を最もストレートに示し続けてきている本だと、いささかの自負心を持って言えるのは、正直言うとかなり意外でした。

 

この間、若者、中高年、女性と、各論的な本も(それぞれ違う版元から)出してきましたが、やはりこういう時論的な本の総論的な位置にあるのは本書なので、今回の増刷でさらに引き続き多くの方に読んでいただけるのはうれしい限りです。

 

 

2017年10月16日 (月)

自分の頭で考えるヒント

131039145988913400963 読書メーターで、もう8年前の本ですが、『新しい労働社会』に対してこういう評をいただきました。

https://bookmeter.com/reviews/67295834

最近は中身も分量も薄い新書が目立ちますが、本書はとても重厚な内容で労働問題を学ぶ人には必須の書ですね。2009年の発刊ですが、ここで指摘されている日本型雇用システムの制度疲労、賃金制度改革の必要性、ただし社会保障制度とセットでといった問題点は何一つ解決していません。日本は企業が育児や教育など本来は政府がやるべき部分までてあてしてきたが、それが限界を迎えている。そんな中、安倍政権がこの総選挙で打ち出した働き方改革がどのような社会につながるのかを、自分の頭で考えるヒントが本書にはあります。

「自分の頭で考えるヒント」との言葉は嬉しい限りです。

2017年4月29日 (土)

拙著評いくつか

最近もいくつか拙著への短評がネット上に載りましたのでご紹介。

131039145988913400963 まず、2009年刊行の『新しい労働社会』ですが、読書メーターでイケダアイさん。

https://bookmeter.com/reviews/63856872

「国際比較の観点」と「歴史的なパースペクティブ」で労働問題をまとめた一大叙事詩。著者の圧倒的な知識量と、どこかウィットに富んだ文章で、内容は決して簡単ではないけれどつい後を引くように読んでしまった。2009年初版だが、話題の同一労働同一賃金についてもかなりの頁が割かれていて、既に答えが書かれている気がする。雇用問題を勉強している人や、会社の労務管理、給与制度の設計に関わる人は絶対に読んでおいたほうがいい。

もう8年前の本ですが、当時よりもむしろいまの議論を先取りしていた本になっていると、本人は思っております。

Chuko 次は『若者と労働』について連続ツイート。

https://twitter.com/Takechi60439696/status/857249290455982080

濱口氏の"若者と労働「入社」の仕組みから解きほぐす"読了。数時間でさーと読んだが、少ないキーコンセプトを用いてすっきりとした議論がされいた印象。

本書を通して、現代日本のメンバーシップ型正社員から直ちにジョブ型正社員へ移行することは難しい印象を受けた。若年層をジョブ型正社員として採用することは難しくないように思うが、やはり中高年の正社員の処遇をどうするかはもめに揉める…または時間が解決する…後者だろうなぁ。

ドイツの某制度への言及も面白かった。僕は文系大学生への教育には知識が全くないのでコメントできないが、理系大学院生の教育にも関わる。大手企業へのインターンだけでなく、ベンチャー企業へのインターンがもっと盛んになればいいなぁと思ったり。

ブラック企業にも言及されていた。単なる倫理的な観点からの批判ではなかった点が新鮮、というか労働に関する仕組み作りをしている人はこう考えるのかぁ、と思える内容で本当に面白かった。 ネタバレは控えつつの感想…難しいなぁ。とにかくおすすめの本です

2016年10月 3日 (月)

「弁護士堀の随想」で拙著書評

131039145988913400963 元サラリーマンの弁護士の堀さんが雑多な事柄についての意見や感想を書かれているブログ「人と法と世の中:弁護士堀の随想」で、昨日今日と拙著『新しい労働社会』が取り上げられ、かなり詳しく書評をしていただいております。

http://arminius.cocolog-nifty.com/blog/2016/10/post-a2f8.html

http://arminius.cocolog-nifty.com/blog/2016/10/post-ed42.html

興味深いのは。本書への感想として次のようなことを綴られていることです。

とりとめがないかも知れないが、まずは本書の内容そのものについてのコメントというより、本書を読んで勝手に思い浮かべたこと等を少々。

まず、著者が指摘するような日本の「メンバーシップ型」とされる労働契約の特性を、うまく実情に即して法律の中で位置付けるロジックが、肝心の現代の日本の法制度・法理論においては乏しいようである。日本の労働問題については、法理論・法制度が実態をうまく反映しておらず、それゆえに判例で個別事案を解決する際に苦心しているというべきだろうか。既に雇用関係が破綻してしまって紛争化した段階になってから持ち込まれる司法での判断と、雇用関係が一応維持されて運用されている段階についての分析と、建前として抽象的に存在している法制度・法理論とが、それぞれ異なってくるのはやむを得ないのかも知れない。

労働契約は、民法上の契約理論をまず出発点としたうえで、これに社会政策的見地から修正を加えた労働法制によって規律されていることになっている。しかしこのような労働法制と、「団体加入」「組織への取り込み」という側面を持つ日本の「メンバーシップ型」労働契約の実情とが必ずしもうまく対応しているとは言い難い。

日本の「メンバーシップ型」労働契約から発生する紛争について、司法界や労働法学者は、紛争の性質に応じて、ある時は「自律的な個人間の契約」という側面を強調し、また別な時は社会政策的な修正の必要性を強調して、解決を図ってきたように思われるが、「メンバーシップ」的性質を正面から法制度としてとらえた立法的解決ができないものだろうかと思った。

いずれにしても、法理論・法制度と、現場での運用の実態(「生きた法」)との乖離については、著者は非常に強く意識しているものと思われる。(★注)

お気づきの通り、これはその後の拙著『日本の雇用と労働法』で中心的な論点として論じた点です。

そのことが、このエントリに追記されています。

(★(10月3日追記:同じ著者の「日本の雇用と労働法 」(P36-42)に、上記の私の感想に噛み合うような記載があった。同書についても後日感想を書く予定。)

この部分を読んで、この弁護士堀さんのセンスに脱帽しました。そう、法律学の素養を持って雇用システム論を読んでいくと、こういうところに思考が及んでいくのです。

ただ残念ながら法律学の素養のある人はあんまり雇用システム論に関心を持たないし、雇用システム論に関心を持つ人の多くは法律学のセンスが乏しいことが多いので、なかなかそういう議論が広がらないのですが。

2016年9月28日 (水)

heartbeatさんの拙著書評

131039145988913400963_2heartbeatさんの「Just read it !」というブログが、安倍総理の働き方改革に引っかけて、拙著『新しい労働社会』を詳しく紹介、書評していただいています。

http://just-read-it.book-lovers.net/better-society/hatarakikata-01/

・・・最初にご紹介するのは、濱口桂一郎著、「新しい労働社会 ― 雇用システムの再構築へ」(岩波新書)です。この本を、まず始めに読んでいただきたい。一度読んだ方でも、ときどき原点を振り返る必要ができたとき、また、さまざまな論点の関係性を整理したいときなどに、リファレンスとして再度目を通していただくと、そのたびに理解を深めてくれる教科書のような本です。新書というボリュームも座右に置いて負担になりません。

・・・本書は、これらのさまざまな労働問題の論点を、読みやすい簡潔な文章ですっきりと整理しています。どのように整理するかというと、現在の日本型雇用システムについて、それができあがった歴史的な背景をひもとき、また、欧米型の雇用との国際比較を試みます。濱口氏は労働官僚ですが、日本型雇用システムの問題点に気づき、独自の労働政策論を掲げ、とにかくきまじめに課題解決に取り組んでこられた。そのような印象を行間から感じます。・・・

そして私の議論を丁寧に一つ一つ取り上げて紹介していくのですが、とりわけ有り難いと感じたのは、人によっては異端扱いされかねない第4章の議論を、正面から受け止めていただいていることです。

・・・濱口氏は、この正規・非正規という労働者間の利害調整と合意形成に向け、「さまざまな困難があるにしても、現在の企業別組合をベースに正社員も非正規労働者もすべての労働者が加入する代表組織を構築していくことが唯一の可能性である」とうったえます。濱口氏のこの方法論に対し、リアリティがないと一蹴することはかんたんですが、混迷する雇用論議に一石を投じていることは確かです。

いったいだれが濱口氏の主張を嗤うことができるでしょうか。安倍総理の呼びかけを本気で受け止められない与党政治家、ミクロの対立構図に埋没しがちな野党、総論賛成でも各論ではおよび腰の企業経営者、組織率の退潮著しい労働組合、体系的議論が苦手なマスメディア、そして最大の既得権者である正規社員ひとりひとり・・・。それぞれが、日本型雇用システムの問題点について、見て見ぬふりをし、議論から逃げているようにさえ見えます。

もう7年前の本ですが、集団的労使関係こそが問題解決への王道だという考えがいまほど重要になっている時期はないのではないかと思っています。

2016年7月31日 (日)

7月の拙著短評あれこれ

7月に目に付いた拙著への短評をまとめてご紹介しておきます。

131039145988913400963 まず2009年に出した『新しい労働社会』(岩波新書)について、歴代作家書店店長による『憲法』と『日本のいま・これから』推薦書というコーナーで、小熊英二店長がこういうコメントを。

http://honto.jp/store/news/detail_041000019379.html

日本と西欧の雇用原理の違いから、未来の雇用原理を展望する。

112483 次に2011年の『日本の雇用と労働法』(日経文庫)について、神奈川建一(ケンザン中の人)がこうツイート。

https://twitter.com/KanagawaKenichi/status/752848017238036480

濱口桂一郎「日本の雇用と労働法」熟読中。日本の労働契約は、仕事に対する報酬ではなく、組織に属することに対する報酬を取り決めた契約であると解説する本。社会人になって数年経ったらぜひ読んで欲しい。どれだけ歴史の積み重ねが重いかわかるよ。

また、読書メーターでも、YTさんが、

http://bookmeter.com/cmt/57518200

『タテ社会の人間関係』や『どうして若者は3年目で辞めるのか』で述べられる日本型雇用システムが歴史的にどうやって形成されていったのかを歴史と裁判例から追って行くもの。所謂日本の大企業に勤める方は読むと日々の疑問が幾らか解ける。

Img_752f5d874047328e26f434ce08fbda5 昨年末の『働く女子の運命』には、かなり多くの短評が。先月末ですが「2016年参院選特別企画−有名教授陣が民主主義を再考する本を選書しました」というコーナーで、京都大学の国際法の教授である濱本正太郎さんに、「問題解明の見事なお手本」と褒めていただきました。

http://i-vote.jp/selection4election/2016/06/27/%E3%80%90%E6%BF%B1%E6%9C%AC%E6%AD%A3%E5%A4%AA%E9%83%8E%E6%95%99%E6%8E%88%E3%80%91%E6%BF%B1%E5%8F%A3%E6%A1%82%E4%B8%80%E9%83%8E%E3%80%8E%E5%83%8D%E3%81%8F%E5%A5%B3%E5%AD%90%E3%81%AE%E9%81%8B%E5%91%BD/

社会にある困った問題を解決しようとする場合、何よりもまず問題を理解しなければならない。それは、その問題を作り出している「悪者」を見つけることではない。では、どういうことか。「なぜ、女性は日本社会において働きづらいのか」という問題を徹底的に読者に理解させようとする本書は、問題解明の見事なお手本である。

その他、

http://scbookinfo.seesaa.net/article/439871165.html

今なおなぜ”女子”が働きづらいのか、明治期からの女子の働き方、日本の雇用(男性の)の歴史を概観することで、今の”女子”の置かれた状況をあぶりだす。

http://blog.goo.ne.jp/yuki_523/e/c2b8e1b5b359721ecb97e0b885140f09

タイトルに「女子」と書かれていますが男性の労働についても取り上げられていますし、男性にも読んでほしい1冊。

http://maiumy.exblog.jp/25493457/

これは労作、且つ重要作。

「(失われた20年は)それまでの日本型雇用システムを否定することなく、むしろその中核をより純粋に少数精鋭化しながら維持しつつ、もっぱらその周辺部を狙って規制緩和をしてきた」という流れの中で、いかに働く女性が虐げられてきたかの考察。

フェミニストならずとも、その分析の鋭さが面白い。

http://www2.hplibra.pref.hiroshima.jp/?page_id=1195

男女雇用機会均等法施行以後も,日本の企業等での女性の活躍はまだまだです。日本の女性はなぜ「活躍」できないのか。データや当事者の肉声を交え,「働きにくさ」の真相を解説しています。女性と比べると家事や育児負担が(少)ない男性にも,読んで考えてほしい一冊です。

http://ameblo.jp/fuyugare/entry-12185606384.html

メンバーシップ型とジョブ型の切り口で日本の労働問題を綺麗に整理する仕事の一環。男女雇用機会均等法の理念が目指してきた何かと、現実の落差を埋めるピースを提供する。端的に言えば、メンバーシップ型→職能給へ変換され、ジョブ型→職務給と翻訳して理解するというもの。この捻れを温存したままに、男女平等に取り扱うということを企業がどのように受け止めたか、そして男女ともに等しく劣悪な労働環境に貶める方向で理念が達成されうるのかという疑問符をつきつけるところで幕引き。 労働「諸」問題を考えるにワークライフバランスを取り戻すには、メンバーシップ型の有益性を残しつついかにしてジョブ型へ転換できるかを慎重に考えていかないといけない。

読書メーターでも、

http://bookmeter.com/b/4166610627

7/11 :inu , 難しい。どうすれば良いのか悩ましい。

7/13 :yurari , 昔よりはだいぶマシになってると思う。

7/17 :たろさん , 働く女子を巡る法規の変容や社会の変容について書かれた本。著者によれば第一次ワークライフバランス、すなわち労働時間の削減やマミートラックの解消が空洞化している中で、第二次ワークライフバランス、すなわち、時短勤務や育休だけが充実している問題点をあげている。ホワイトカラーエグゼプションにおいてもアメリカでの意味とは違い、少子化対策の改善と考えられている。日本の就業問題をとらえた本。

7/20 :Murakami, 現代まで続く女性労働者差別の歴史が良く分かった。

7/20 :cino , 欧米のジョブ型と日本のメンバーシップ型について書いてあったが日本以外のアジア他国はどうなのかなー

7/26 :Munedori , 労働の提供ではなく、労働力の提供。マミートラックがある理由がよく分かった。働く親(特に母)は会社にすべての時間を捧げられないから。でも、子供がいない人だって、親はいる。介護は育児以上に男性にも降りかかってくるだろう。どちらにしても、高度成長期時代に構築されたシステムは崩壊の道を辿ってるかと。

7/27 :じゅりあ , ゼミの文献として再読。

またブクログレビューでも、

http://booklog.jp/item/1/4166610627

7/9 : bukurose, 今なおなぜ”女子”が働きづらいのか、明治期からの女子の働き方、日本の雇用(男性の)の歴史を概観することで、今の”女子”の置かれた状況をあぶりだす。 欧米では日本より女性が働きやすくなっており、M字型も台形型になっているが、それはそう昔のことではなく60年代になってからだという。その源泉は賃金に対する考え方で、欧米では企業の中の労働をその種類ごとに職務(ジョブ)として切り出し、その各職務を遂行する技能(スキル)のある労働者をはめこみ、それに対して賃金を払う。経理のできる人、旋盤のできる人といったように。なので女性の労働問題は、女性の多い職種はおおむね賃金が安く、男性の多い職種(管理職とか)に女性も進出する、ということであったという。 それに対し日本は、会社のメンバーを募りメンバーはどんな職務内容でもやるというやり方。しかも賃金は労働者の生活を保障するべきものである、という生活給思想が根本にある。それは大正11年に呉海軍工廠の伍堂卓雄の発表した「職工給与標準の要」であるという。それは第二次大戦中、戦後の労働運動の中でも継承された。扶養手当の思想はここから始まっていたのだ。 そして85年に均等法ができるが、それは世界的に男女平等が進められた時代で、欧米はジョブ型に立脚して女性の雇用を進めたのに対し、日本は生活給という日本型雇用・会社のメンバーとして一丸で働くという立脚点で進められた点にねじれがある、というのだ。 日本型の女性労働の平等化は会社のためなら深夜でも外国でもいとわず、どんな仕事でもやります、という男性の土俵に女性も乗せるもの。均等法から30年、ワークライフバランスという言葉がむなしく響く。

7/20 : shiitake, 良い本。ハイパー知的刺激あった。

Chuko なお、『若者と労働』も含めて3冊まとめてのついーとがこちら。

https://twitter.com/ripplemirror/status/758651573740253184

メンバーシップ型社会(日本)とジョブ型社会(欧米)という切り口で新卒一括採用に批判的な内容だったが、この議論の主提唱者たる濱口桂一郎氏の議論を参照しているのか疑問符。若者にとってジョブ型社会の方が厳しいことは若者の失業率を一瞥すれば明々白々。

https://twitter.com/ripplemirror/status/758653249289269248

メンバーシップ型だからこそ白紙の若者でも企業が一定数採用し「OJT」を施している。この手の隣の芝生は青い的つまみ喰いこそ日本の労働問題を深刻化させている―というところまで「新しい労働社会」「若者と労働」「働く女性の運命」などを読めばわかるだろうに。

より以前の記事一覧