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2026年9月10日 (木)

前田一の会社組合礼賛論

09773_20260910094101 仁田道夫『労使関係からみる戦後という時代』(日本評論社)については、先日来いろいろと思いつくことを本ブログに書いていますが、

仁田道夫『労使関係からみる戦後という時代』

賀来才二郎について

もう一人、追加でコメントしておきたい人がいます。前田一(はじめ)です。

戦前、北炭で労務屋稼業をはじめ、『サラリマン物語』『続サラリーマン物語』『職業婦人物語』の三部作がベストセラーになり(タイトルに「ー」があったりなかったりするのは原著ママ)、ILO総会に行って強烈な反労働組合主義者になり、労働組合法案に対する反対運動で大活躍し、戦後は日経連の専務理事として労使対決時代の闘将といわれた人物です。

仁田さんの本の13ページほどで関心を持たれたら、是非彼の著書にも目を通して欲しいのですが、実は国立国会図書館のデジタルコレクションで大体読めます。

Aaa_20260910095401 サラリマン物語

Sss 続サラリーマン物語

Ccc 職業婦人物語

この三部作は面白い読み物ですが、彼の反労働組合イデオロギーを正面から打ち出した本については、仁田さんの本では触れられていません。実はこちらも国会図書館のデジコレで読めるので、もし関心があれば是非目を通しておいて欲しいのです。

Iii_20260910100901 労資共存への途

Qqq_20260910101101 時局労働読本

この『時局労働読本』という本、だいぶ昔に中央線沿線の古本屋で見つけて、買って読んだらけっこう凄い内容で読みふけった思い出があるんですが、目次はこんな風になっています。

第一章 既成勞働組合批判/13
 第一課 數字に太りゆく勞働組合/13
 第二課 指導精神より見たる勞働組合/19
 第三課 勞働者の向上と勞働組合/35
 第四課 勞働組合法制定を好まざる理由/48
第二章 獨自的存在としての會社組合/69
 第一課 所謂御用團體/69
 第二課 工場委員會制度/73
 第三課 會社組合の組織/79
 第四課 既成勞働組合との相違點/86
 第五課 會社組合の功績を正視せよ/92
 第六課 會社組合の事業/101
第三章 日本主義勞働運動の勃興/105
 第一課 日本主義運動の生成發展/105
 第二課 日本主義勞働運動の指導精神/130
 第三課 日本主義勞働陣營の展望/150
第四章 産業至上主義/171
 第一課 産業至上主義の指導精神/171
 第二課 産業至上主義の目指す勞資協調/188
第五章 勞働爭議對策/195
 第一課 日・英・米・獨の勞働爭議/195
 第二課 『勞働爭議法』制定の切要/200
第六章 勞働協約の問題/207
 第一課 勞働協約への關心/207
 第二課 我國勞働協約の實例/212
 第三課 勞働協約の法認問題/216
 第四課 勞働協約は産業平和策か/221
第七章 勞働者『代表』の再吟味/226
 第一課 代表選定の實情/226
 第二課 代表の資格審査/235
 第三課 代表問題の歸結/240

目次からも窺われるように、会社の外側の既成労働組合を批判し、「独自的存在としての会社組合」を礼賛する内容になっているのです。会社組合は御用団体だと批判されるけれども、会社組合の功績を正視せよ!という主張です。「謳歌すべし御用団体」という項では、このように論じています。「生白い学徒」だの「洋行帰りの新知識」という侮蔑的な表現から、前田の欧米型労働思想に対する敵意が垣間見えます。

Www

こんな風に、いろいろとほじくり返していくと、面白い代物が次から次に湧いてくるのがこの世界なんです。

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コメント

「洋行帰りの新知識」ねえ、もとぶらり庵は、わが師の師、大塚久雄先生が、どれほど今の状況を憂えておられるかと、かの戦後すぐの時代に思いを馳せまする。大塚先生は「洋行帰り」ではなかったけれど、日本はなぜこの戦争の泥沼に足を踏み入れて行ったのか、それは日本が近代国家になっていなかったからでは、との強烈な問題関心から西洋経済史の研究に入った方でした。つまり、強い反戦、戦争への反省の思いから、と、ものすごく短くまとめてしまいますが、ぶらり庵は考えています。
今、大塚史学、なんて言っても知っている方は少ないかもしれませんが。

実は、本ブログではかつて、大塚久雄についてもこんなことを書いたことがありまして・・・。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2023/07/post-c7c09c.html
(大塚久雄とナチスとユダヤ人)

大塚久雄といえば、戦後日本の進歩的文化人の代表格で、西洋経済史の権威で、日本の封建性を口を極めて批判した人として知られていますが、その彼が戦時中に極めて反ユダヤ的な言辞を弄していたことは、中野敏男が暴露するまで知られていませんでした。

このことを詳細に検証したのが恒木健太郎の『「思想」としての大塚史学』です。・・・・・

そうなんだ、それは知りませんでした。それに、hamachanの以前の記事も、その頃は読んでいなかったなあ。毛沢東の件も知りませんでした。
たしかに、大塚先生は、全く机の上だけで、しかも経済史のみで理論を組み立てた方だったように思います。なんて、これもきちんと検証せずに言ってはほんとはいけないなと思いつつですが、現地で実際を見て知ること、政治も含めて幅広く見ることはだいじですね。
ただ、大塚先生を擁護するわけではありませんが、キリスト教徒の彼は、彼なりの、日本の平和、反戦、近代化の理想はあったと思います。
それに、私の直接の師、それから、大塚先生の教えを受けて「大塚史学」のスクールを作った方々は、というか、むしろ、その人たちが、戦時中には学生で、戦後日本の平和、近代化を深く希求した方たちだったと思います。少なくとも、直接のわが師はそうでありました。

  かくして、この30余年間というもの、争議は絶無、まともな賃上げも全くできなくなり、「失われた30+α年」となったと。会社組合さまさまですね。泉下の前田先生もさぞお喜びになっておられることでありましょう(苦笑)。会社組合、万歳!

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