ディスカッションペーパー26-08『過半数代表者を通じた労使コミュニケーションの成立条件に関する一考察―労働組合のない企業における労使の意見交換会の事例研究―』
JILPTの岩月真也さんが、ディスカッションペーパー26-08『過半数代表者を通じた労使コミュニケーションの成立条件に関する一考察―労働組合のない企業における労使の意見交換会の事例研究―』を公表しました。
https://www.jil.go.jp/institute/discussion/2026/26-08.html
これは、製造業のエイベックスという1企業の過半数代表者の活動を丹念にたどった調査研究で、1事例とはいいながら、無組合企業における過半数代表者とはどういうことをしているのか、会社側はどのように対応しているのかということを、実に詳しく教えてくれます。
従業員代表制については、2000年代に労働契約法制の関係で労使委員会が議論されたけれども不発に終わり、2010年代には主として非正規労働者の均衡処遇の問題意識でJILPT研究会報告なども出たけれど、結局働き方改革ではほとんど不発で、派遣についてだけ労使協定方式という妙なものができただけに終わってますが、2020年代には今度は労働時間法制の緩和とリンクした形で三度目の議論が盛り上がりつつあり、その先行きがどうなるかはともかく、改めて無組合企業の過半数代表者の在り方の議論が高まると思われ、その意味でも、こういう超ミクロに分け入った研究というのは、貴重だと思います。
・・・同社の意見交換会の成立条件を考察した。その結果、意見交換会は、① 過半数代表者になることによる不利益が生じないこと、② 労使がお互いの立場に立って考える姿勢を有していること、③ 協議結果を全従業員へ公開していること、④ 意見交換会を通じて従業員の処遇・労働条件等の向上が図られること、⑤過半数代表者の負担が軽減されていること、という5つの条件を満たすことによって成立することが示唆された。
本事例から得られた知見を既存研究の議論に位置づけた結果、第1に、労使がお互いの立場に立って考える姿勢の重要性は、労働政策研究・研修機構(2013)が経営資源性を生み出す労使コミュニケーションの要件として提示した、労使の「相互尊重」と一致する見解であった。
第2に、同社の意見交換会は「習熟効果」(日本労働研究雑誌編集委員会 2004)および「成熟」・「深化」(加藤 2004)と同様の傾向がみられたことに加え、この背後には「労使による長年の努力」もうかがえた。さらに、その労使の努力の中身とは、同社の意見交換会の成立条件の5つを満たすための、過半数代表者、社長・役員、安全総務グループ担当者の協働であるという解釈を提示した。
第3に、過半数代表者が従業員の意見集約を行っている理由として、一定の時間外労働が発生している(労働政策研究・研修機構 2025)というだけでなく、その他様々な要望が存在するためであること、および先の意見交換会成立のための5つの条件が満たされているためであるとの解釈を提示した。
第4に、過半数代表者の選出に関する議論については、過半数代表者の選出手続きを適正化したうえで、過半数代表者を通じた処遇・労働条件等の変更が可能となる労使コミュニケーションの確保を図るという方向だけではなく、過半数代表者を通じて処遇・労働条件等の変更が可能となる労使コミュニケーションを確保したうえで、過半数代表者の選出手続きの適正化を図るという方向もありうるとの示唆を提示した。
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