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2026年8月 1日 (土)

朝ドラの派出看護婦会は労務供給事業

F9fmcqd_400x400_20260801104401 焦げすーもさんの疑問に答えると

朝ドラを全然追えてないけど、 これって看護師(婦)の労働者供給事業の話なの??

その通り。鈴木雅(ドラマでは大家直美)が始めた派出看護婦会は、後に大和俊子が始めた派出婦会と争いながら、1938年の改正職業紹介法によって労務供給事業と位置付けられ、戦後は1947年職業安定法によって労働者供給事業としてほぼ全面的に禁止され、その後有料職業紹介事業という形をとって、街のあちこちにある(あった)看護婦家政婦紹介所として生き伸びていったのです。その波瀾万丈の歴史の出発点。

とりあえず、学習指定文献(笑)として、『労働新聞』で書評した山下麻衣『「看護婦」の近代社会史』(朝日選書)を挙げておきます。

山下麻衣『「看護婦」の近代社会史』書評@『労働新聞』

81wewqv6xpl_sl1500_266x400 月イチの『労働新聞』書評。今回は山下麻衣『「看護婦」の近代社会史』(朝日選書)です。

https://www.rodo.co.jp/column/219552/

 4月から、NHKの朝の連続テレビ小説で『風、薫る』が放送されている。主人公の一ノ瀬りんと大家直美のモデルは大関和(おおぜきちか)と鈴木雅(すずきまさ)だ。
 ドラマにおける設定は歴史的事実とはかなりかけ離れているようだが、実在の2人は看護婦養成所を出て帝国大学医科大学附属医院に勤めた後、派出看護婦会を設立して、日本の看護婦の歴史を切り開いていった。本書はこの2人を中心に据えながら、明治初期から今日に至るまでの看護婦の歴史を描き出している。
 ただ筆者にとって、本書が描く派出看護婦会の誕生、発展、衰退、そして消滅と復活に至る有為転変の歴史は、人ごとは思えないところがある。というのも、派出看護婦会からすると資格のない女性たちによる商売敵に当たるのが、拙著『家政婦の歴史』で描きだした派出婦会であったからだ。
 大関和や鈴木雅に倣って続々と派出看護婦会が設立され、やがて大関の直訴によって東京府看護婦規則が制定され、遂に内務省令で看護婦規則が公布され、試験による免許制により質の悪い看護婦を排除することをめざした。しかし、派出看護婦に対する世間の目は冷たく、「社会の暗部」とまで見られていたという。資格のない見習看護婦を女中代わりに派出するという実態もあったようだ。そこで東京府は看護婦会取締規則を制定し、経営者に5年以上の看護婦経験を要求し、等級査定制度と見習看護婦の派出禁止が規定された。
 そういう中で、女中代わりの家事・介護労働力を臨時に派遣するニュービジネスとして派出婦会を立ち上げたのが、大和俊子(おおわとしこ)であった。彼女のビジネス・ヒストリーは拙著で詳しく書いたのでここでは省略するが、派出看護婦会の立場から見れば、これは自分たちが禁止しようとしている看護婦の資格なき付添婦の派出事業そのものであった。拙著では大和俊子は颯爽たる女性ヒーローだが、商売敵からは悪役(ヒール)に見えたであろう。
 本書はそこから戦後の職業安定法により派出看護婦会が解散に追い込まれ、その後看護婦家政婦紹介所として復活する姿を描いていくが、労働史の観点からすると若干注文をつけたいところがある。拙著で述べたように、戦前の派出婦会と派出看護婦会はいずれも1938年改正職業紹介法により労務供給事業と位置づけられ、それゆえに1947年職業安定法により労働者供給事業として禁止された。拙著で紹介した地方労働委員会でのいざこざも、派出看護婦会が中心であった。そして本書のいう「復活」も、本来のビジネスモデルたる労働者供給事業ではなく、派出先が使用者責任を負う職業紹介事業という「仮面」をかぶらざるを得なかったために、今日まで労働法上の問題を引きずっている。
 医療史の一部としての看護婦の歴史としては、労働法上の位置づけ如何というのは枝葉末節に属するのかもしれないが、筆者からすると、そこはもう少し緻密に論じてほしかったという思いが残る。

ちなみに、労務供給事業時代の看護婦派出の状況は以下の通り。

図表1 1940年の労務供給事業の供給業者数と所属労務者数

職種 供給業者数 所属労務者数
人夫 842 39,717
家政婦 700 24,643
雑役 504 24,780
職夫 265 28,770
仲仕 189 5,858
附添婦 146 7,443
看護婦 64 2,360
土工 60 5,235
大工 29 616
自動車運転手       27 1,810
湯屋従業人         23 3,401
妓夫妓女           13 3,392
料理人 8 405
店員 8 68
メッセンヂャー     4 516
左官 3 34
其の他 141 2,758
計   3,026 151,806

 

 

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