宮本太郎『社会保障改革の岐路』
宮本太郎『社会保障改革の岐路 信頼のセーフティネットは可能か』(岩波新書)をお送りいただきました。いつもありがとうございます。
https://www.iwanami.co.jp/book/b10170459.html
なぜ社会保障制度改革は失敗を繰り返してきたのか。「負担ばかりで見返りがない」という制度不信にどう応えることができるのか。私たちの生存と承認に深く関わるセーフティネットの在り方を多角的に検証し、そのあるべき原理を明快に論じる。ポピュリズムが席巻するなか、第一人者による地に足のついた骨太の政策論。
『生活保障』『共生保障』に続く岩波新書3冊目ですが、この本が届いたちょうどその日に、高市首相が食料品の消費税率を来年度から1%に引下げると言ったというニュースが駆け巡り、いやまさにそういうことなんだぞ!感がひしひしを感じられた一日となりました。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA300W00Q6A730C2000000/
高市早苗首相は30日、食料品にかかる消費税率を2027年4月から1%に引き下げる方針を決めたと説明した。首相の冒頭発言と記者団との質疑の要旨は以下の通り。・・・
なんでこういうことになってしまうのか。まさにこれまで高齢世代に比べて手薄だった現役世代の社会保障をこれから懸命に充実しようとしているまさにその時に、まさにそのための財源として確保しようと思っていたはずのその消費税を、国民の大多数の熱狂的な減税ポピュリズムに乗っかる形で、みすみす海の向こうに放り捨てようとしているまさにその時に、その政治心理学的メカニズムを、冷静に摘出していくのが、その近年の社会保障政策に二回にわたる政権交代をくぐり抜けながら一貫して関わってきた宮本太郎さんその人であるという、この上ない皮肉に充ち満ちた一冊です。
はじめに
第1章 不信に揺れる社会保障と雇用
1 給与明細とポピュリズム
2 社会保障とセーフティネット
3 雇用のセーフティネット――日本のセーフティネット(1)
4 社会保険のセーフティネット――日本のセーフティネット(2)
5 生活保護というセーフティネット――日本のセーフティネット(3)
6 雇用、社会保険、生活保護の関係
7 同時多発的な不信
第2章 生存と承認のセーフティネット
1 終わりから始まったセーフティネット
2 セーフティネットの制度拡張――包摂の重視へ
3 セーフティネットの機能拡大――承認の保障へ
第3章 デジタル社会の亀裂と承認格差
1 格差と亀裂の新しいかたち
2 承認格差のなかの孤独の拡がり
3 ソーシャルメディアが拡げる不信
第4章 改革はなぜ成就しないか
1 社会保障改革の困難
2 雇用保障の転換
3 改革が成就しないのはなぜか
第5章 雇用のデジタル転換と社会保障改革
1 三位一体の社会保障改革
2 AI時代のエッセンシャルワーク
3 所得保障と給付付き税額控除
4 対人支援サービスと地域共生社会
まとめと展望
参考文献
あとがき
« 『人事・組織改革とキャリアデザインを拓く: 高橋俊介オーラルヒストリー』 | トップページ | 朝ドラの派出看護婦会は労務供給事業 »
コメント
« 『人事・組織改革とキャリアデザインを拓く: 高橋俊介オーラルヒストリー』 | トップページ | 朝ドラの派出看護婦会は労務供給事業 »

さっそく、日経新聞の社説が出ましたね。
[社説]消費税減税は未来への責任放棄だ
( https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD283JY0Y6A720C2000000/ )
朝日新聞も
【社説】一線越えた首相の消費減税表明 社会保障の安定損なう無責任
( https://www.asahi.com/articles/ASV7Z30XJV7ZUSPT007M.html?iref=_opinion_opinion_list_n )
もちろん、全ての減税は善である、というのは不動の真理でありますから、このような謬論は無視して、粛々と減税を進められんことを期待していますよ(苦笑)。
投稿: SATO | 2026年7月31日 (金) 13時25分
はっきり言って、消費税を社会保障の財源にしようと思っていること自体が甘いと思います。消費税は法人税減税の財源でしかないのが現実です。
社会保障の財源が欲しいのなら、金融所得課税の総合課税化や相続税の税率引上げ、富裕税の創設などのほうがよほど現実的です。経済学者では、諸富徹氏が社会保障の財源として富裕層への課税強化を提唱されています。
諸富徹 「税と社会保障」 平凡社新書
https://www.heibonsha.co.jp/book/b647432.html
投稿: 国道134号鎌倉 | 2026年7月31日 (金) 22時16分
「財源」という言葉が出てくることが、もう、あり得ないです。
国の予算の問題を語る時、「財源」という概念が出てくるから、「この政策をやって、あの政策はやめよう」「予算を使った分の穴埋めとして、増税しよう」などという発想になるんです。
国の予算は、家計や、企業の予算とは、違います。
投稿: にっしー | 2026年8月 3日 (月) 17時35分
消費税減税を公約として各党が掲げてた時に、すでにわかりきっているこのことを報道しないのは、実現しっこないと高をくくっていたからでしょうか。
ずいぶん長い間消費税を無くせ、といいつづけている政党もあるかと思うのですが。
投稿: ちょ | 2026年8月 7日 (金) 00時16分
もう一つ。
「現役世代の社会保障」って、何ですか?
現役世代が、30年ぐらい経って、高齢者になった時の、年金のことですか?
現役世代が障害を負った時の障害保障の線もあるけど、現役世代が障害者になる確率は、ほとんど小さいし。
「現役世代は、今の高齢世代に、社会保障の財源を払う側」「今の高齢世代こそが、社会保障を受ける側」なわけで、今もらえない、30年以上先の自分の社会保障を充実させようなんて意識は、現役世代はなかなか持てないと思いますが。
投稿: にっしー | 2026年8月 8日 (土) 16時46分
にっしー殿
>「現役世代の社会保障」って、何ですか?
介護保険 は、「現役世代の社会保障」 にならないでしょうか?
>現役世代が障害を負った時の障害保障の線もあるけど、現役世代が障害者になる確率は、ほとんど小さいし。
後期高齢者(75歳以上)になると、転びやすく転ぶと骨折して寝たきりになり要介護状態になる確率が高いそうです。現役世代が後期高齢者になるのはかなり先だとしても、現役世代の親が後期高齢者になるのはそれよりもずっと近いと思います。後期高齢者の親が寝たきりで要介護状態になった場合でも、介護保険があれば金銭的余裕がなくても、 親を見捨てたり 自分だけで親を介護する 必要はありません。
また子育て世代に対しては、高校無償化 とか 給食費無償化 等の施策が行われています。子育て世代のほとんどは現役世代だと思うので、これらも「現役世代の社会保障」だと思います。
投稿: Alberich | 2026年8月 9日 (日) 20時00分