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2026年7月27日 (月)

労働政策フォーラム[物流における労働問題を考える─トラック業界の人手不足等を中心に─]@『ビジネス・レーバー・トレンド』2026年8月号

『ビジネス・レーバー・トレンド』2026年8・9月号に、去る5月29日に開催した労働政策フォーラム:物流における労働問題を考える─トラック業界の人手不足等を中心に─の報告とパネルディスカッションの記録が載っております。

https://www.jil.go.jp/kokunai/blt/index.html

持続可能な物流と働き方 ――トラック業界が直面する課題と今後の展望
国内貨物輸送では、輸送量(トンベース)の約9割を自動車での輸送が占めており、トラックを中心とした自動車輸送が、これからも国内貨物輸送の中心的な役割を担う。しかし、トラック運送業界では長年、他産業よりも長い労働時間や、全産業平均より5%~15%低い年間賃金、若年層割合の低さなどの課題を抱え、深刻な人手不足にも直面している。一方、2024年適用の自動車運転業務への時間外労働の上限規制は、労働者の働き方にも影響を及ぼしている。本号では、トラック運送業界が直面する課題と対応策などについて議論した労働政策フォーラムの内容を中心に、持続可能な物流と働き方の実現に向けた有効な方策について展望する。

労働政策フォーラム
物流における労働問題を考える─トラック業界の人手不足等を中心に─
5月に開催した労働政策フォーラムでは、深刻な人手不足が続くトラック業界について、法改正も含めた行政による取り組みの報告と、研究者からの現状分析報告に加え、物流企業の労使それぞれの取り組み事例を紹介しながら、持続可能な物流の姿と、処遇改善など労働問題への対応のあり方などについて、識者と関係者が議論した。(各報告およびパネルディスカッションの概要は調査部で再構成したものを掲載している。)

【基調講演】持続可能な物流の実現に向けて 首藤 若菜 立教大学 経済学部 教授

【研究報告】時間外労働の上限規制への対応──運輸業の事例 前浦 穂高 長野大学 地域経営学部 准教授/元 労働政策研究・研修機構 副主任研究員

【行政報告】国土交通省の取組報告 指田 徹 国土交通省 物流・自動車局 貨物流通事業課長

【事例報告①】2024年問題に対応したサステナビリティな物流を目指して 吉田 明宏 西濃運輸株式会社 執行役員 運行部 部長

【事例報告②】今、直面している実態・課題と未来 村山 大樹 仙台運送労働組合 中央執行委員長

【パネルディスカッション】物流における労働問題を考える─トラック業界の人手不足等を中心に─
パネリスト: 首藤 若菜 立教大学 経済学部 教授
吉田 明宏 西濃運輸株式会社 執行役員 運行部 部長
渡辺 俊幸 西濃運輸株式会社 運行部 運行課 東日本担当課長
村山 大樹 仙台運送労働組合 中央執行委員長
前浦 穂高 長野大学 地域経営学部 准教授/元 労働政策研究・研修機構 副主任研究員
コーディネーター: 濱口 桂一郎 労働政策研究・研修機構 労働政策研究所長

https://www.jil.go.jp/event/ro_forum/20260529/houkoku/06_discussion.html

濱口 今回は、大きく3つのテーマに分けて議論します。1つめは、働き方改革やいわゆる2024年問題のなかで、労働時間や労働条件などの観点から、トラック運転者の就業環境がどのように変わってきているのか、あるいは、変わらずにどんな課題が残っているのか、また、人手不足に対してどういった対応がされているのか、といったところをうかがえればと思います。

2つめは、国土交通省の指田さんに行政報告で非常に詳しくお話しいただきましたが、この間、物流に関するさまざまな法改正や対策が講じられてきており、これについてどう考えるかということを取り上げたいと思います。

そして3つめは、それらもふまえて、今後、物流業界が持続可能な業界として未来に向けて進んでいくうえで、どのようなことが必要なのかについて取り上げてまいります。・・・

論点1:トラック運転者の就業環境や人材確保について
荷役を分けることで、1人が運転する時間を短縮
働きやすさや職場のよい雰囲気づくりにも配慮
高齢化に伴い増加する慶弔休暇の取得には本社が現場をフォロー
すぐに中型免許を取得できない高卒従業員の育成も課題
繁忙期の異なる事業所を統合することで生産性を向上
社員からの紹介で採用する制度も活用
外国人の採用については会社側が慎重な姿勢
西濃運輸ではグループで約600人の外国人従業員が働く
中長期的にも外国人ドライバーの活用は大きなポイントに
中小事業者でも荷役を分割するような工夫は可能か
中小企業が人材を確保して体制を維持するには独自性が有効
運送会社が荷主の声を聞き過ぎるのも要因か
運送会社が増え過ぎて荷主の言うことを聞く会社だけが儲かる構造に
難しい荷主との運賃の引き上げ交渉
トラックGメン・倉庫Gメンの配置で無理なことは言われなくなった
論点2:物流業界の法改正・政策対応について
価格転嫁にどう対応しているのか
どれぐらい還元できるかは話し合いで合意する
担当者が自社のことをどれだけ理解しているかにかかってくる部分も
「配送=サービス」という誤った印象を与える「送料無料」の表記
付随した業務を無料で行うような商慣行の是正もいまだ残る論点
適正原価、最低運賃の考え方には賛成
難しいのは、何を適正とみなすか
わかりやすい運賃体系を荷主企業にいかに示せるかがポイント
共同配送では荷待ち時間の精査が難しい場合も
根本的な問題は、かかっているコストが最終価格に上乗せされないということ
ルールづくりが難しく面倒で、収受しないことになっている実態も
ざっくりと請求できるようにすべきかも今後の検討課題に
論点3:今後、物流業界が持続可能な業界となっていくには
ドライバーへの還元を政策的にどう担保するか
人口減少社会のなかで効率化だけですべてを解決できるか
一産業だけで賃上げによって人材を確保していくのは難しい
個社だけの取り組みでは限界がある
他社も巻き込みいろいろな取り組みを行うことが物流業界の持続につながる
いまの人数で回せる仕事をすることも1つの方法
顧客と物流業界がお互いウィン・ウィンの関係であるべき
賃金・労働時間のツケを物流業界に回してきた面も

最後の首藤さんのまとめがとてもよいので、やや長めに引用しておきますが、是非リンク先にいってすべてお読み頂ければと思います。

濱口 最後のそれぞれのパネリストの発言に対するコメントも含め、本日の総括コメントを首藤さんにいただければと思います。

物流業界の課題が人手不足につながったのではないか

首藤 今の濱口さんのご意見には私も強く賛同します。人手不足が物流持続可能性のための非常に大きなボトルネックだというふうに考えられていますが、この業界をみていて思うのは、物流課題の原因に人手不足があるのではなくて、結果的にそうなっているのではないかということです。

要するに、最も大きな原因は、トラック運送をどう使ってきたのかという問題があって、できるだけ安く、早く、柔軟に、便利に、としてきた結果、人手不足が起きていると私も思っています。ですので、人手不足にどう対応するかということが盛んに議論されるけれども、人手不足を緩和させていくためには、やはりトラック運送のあり方自体を見直していくことが必要なのだと思います。

労働条件だけでなく、取引慣行・サプライチェーンのあり方など全体を見直すべき時期に

2024年問題などもそうですが、結局、きっかけは労働規制だったと思います。労働時間を短くしないといけないという話から始まったわけですけれども、労働条件だけを改善しようとしても、いわゆる労働市場のなかだけで解決できる問題ではないので、取引の慣行やサプライチェーン全体のあり方、そういったものまで見直さないといけないというように広がってきたのが、この業界の実態なのだと私は思っています。

ドライバーの成り手がいなくて困っている状況にあるわけですが、難しいのは、荷主企業側からみると、トラックの運賃は当然安ければ安いほどいいわけです。できるだけ買いたたいたほうがいいし、荷待ちだってできるだけ待ってくれたほうが便利なので、できるだけ待たせたほうが便利でよいという話になります。

しかし、その個社の合理性をみんなが追求していくと、社会全体でみたら、運賃がみんな安くて、ドライバーの賃金も安くなって、荷待ちが長いから長時間労働になって、人がいなくなって、物流が止まるというところに陥る。物流が止まると、みんな困るという話になります。

業界で起きた「合成の誤謬」を社会全体で改善する

「合成の誤謬」という用語があって、経済学でいう、ミクロで見ると合理的だけれども、マクロで見ると不合理だという状況が起きている問題です。「合成の誤謬」をどうやって是正していくのかを考えると、やはりマクロな社会全体の仕組みをどうしていくのかという観点からの法規制が必要だということで、今回さまざまな法改正がされてきたのだと思います。

物流はもう社会インフラでもあって社会全体の非常に重要な課題なので、運送会社はもちろん、労働組合も使用者も、荷主も消費者である私たち一人ひとりも、理解を深めていって、対応していけるとよいと思っているところです。

濱口 首藤さんが言われたように、人手不足がゆえに起こっているというだけではなく、むしろそういったことが人手不足をもたらしている、それがお互いにある種の悪循環をつくり出し、社会全体の大きな問題になってきたというのが、まさに今、起こっている問題だろうと思います。そういう意味では、労働政策フォーラムで、物流業界の問題を重点的に取り上げる回を今回行ったことは、実は一業界の問題に過ぎないのではなく、社会全体、全員の問題だということをメッセージとして伝える意味があったのではないかと思います。

今日はかなり長時間にわたって、こちらが当初考えていたのではないようなところまで話が時に飛びながらも、この物流業界が抱えているさまざまな構造的な問題が摘出できたのではないかと思っております。皆さん、このフォーラムにご参加いただいて本当にありがとうございました。

 

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