大内伸哉『労働政策の再創造』
大内伸哉さんから『労働政策の再創造』(弘文堂)をお送りいただきました。ありがとうございます。
https://www.koubundou.co.jp/book/b10168194.html
「なぜ人は働くのか!?」 本書は、生成AIの登場によって、人々が労働社会の抜本的な変化に直面するなか、不確実な未来社会に向けて政府はどのように対応すべきかを考察します。
AIの労働と人間の労働は何が違うのか、生物としての人間の労働とは何か。そこから思考の旅を始め、労働を〈生きるための営み〉と〈社会制度〉の両面から捉え直し、エネルギー論や思想史をたどりながら、AI共生社会における「自由」と「生存」の新たな均衡を模索します。
それを踏まえつつ、現在の労働政策の行き詰まりの理由を指摘し、未来志向の労働政策の方向性を具体的に提起しています。
一言で言って、大変大風呂敷を広げた本です。普通の労働法学者だったら絶対に書かないような本というべきか。
第1編 労働政策の基礎理論
第1章 労働政策とは何か
第2章 労働政策の基本概念の再考
第2編 「労働」の歴史からみた労働政策
第3章 生物学的視点とエネルギーからみた労働
第4章 社会制度的視点からみた労働
第3編 労働政策の再構築
第5章 日本の雇用システム
第6章 日本の労働政策
第4編 AI時代の社会政策・労働政策
第7章 政策の基礎理念と具体的提言
第8章 AIリスクにどう立ち向かうか
おそらく、労働界隈の人から見て一番大風呂敷に見えるのは第2編でしょう。ここでは、まさに人類史的視点から労働の歴史を論じています。ただ、私自身にとっては、ごくシンプルな形ではありますが、似たような試みをしたことがあり、その意味ではあまり違和感はありませんでした。今から22年前に出した『労働法政策』の第1章として「労働の文明史」というエッセイ風の文章を20ページ強書いたことがあり、金子良事さんから「場外ホームラン」だと批評されたことがあります。2018年に『日本の労働法政策』を出すときには、ただでさえページ数が膨大になりすぎていたので、この部分は全部カットしてしまいましたが、労働法政策を超マクロ的に考える上では、こういう人類史的文明史的視座は必要だと思っています。
第3篇は一番すっと入るところでしょう。ここで論じられている日本型雇用システムと日本の労働政策についての整理は、いくつか異論はありますが、おおむね私と認識はそれほど異ならないように思います。
なんといっても最大の論点は第4編のとりわけ第7章でしょう。ここでは、現在の労働政策、社会保障政策を抜本的に、それも政府がやたらに口走る全然抜本的じゃない口先だけの「抜本的」とは異なり、本当に根っこから全部変えてしまえというような「提言」を連発しています。
そのうち、多くの労働法学者が反発を感じるであろう雇用労働と自営業の区別をなくしてしまい、普遍的な制度にしてしまえという話は、大改正ではあるものの、大きな流れからするとそういう方向に進んでいかざるを得ないであろうな、という話だと思います。
それよりも読んでいて、一番違和感を感じ、「をいをい、ちょっと待て、それでいいんか」と思ったのは、何でもかんでも全部AIに委ねてしまえと言わんばかりのスタンスでした。とりわけ、第4編第7章第2節1の(1)で提起されている「公的マッチング・プラットフォーム構想-雇用仲介のデジタル化」のところは、「いやいや、これって、ビッグブラザーじゃないのか」という感を禁じ得ませんでした。
恐らく大内さん自身もそこはわかっていて、第8章はそれに対する説明を一生懸命しているのですが、ここはなかなか納得しがたいところではありましょう。
いろんな意味で、議論を誘発するネタが満載の本ですので、
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公正取引法と(労働だけに限らない)指揮命令法に分化、吸収?
投稿: ai | 2026年6月13日 (土) 14時36分