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2026年5月15日 (金)

田村伸子編『ジェンダー法と要件事実』

09697 田村伸子編『ジェンダー法と要件事実』(日本評論社)をお送りいただきました。

https://www.nippyo.co.jp/shop/book/9697.html

裁判実務で磨かれているジェンダー法の領域に、要件事実論がいかに寄与しているのか。「ジェンダー法と要件事実」の現在を探る。

本書は、昨年送っていただいた『労働法と要件事実』と同様、創価大学法科大学院要件事実教育研究所が昨年11月に開いた「ジェンダー法と要件事実講演会」の講演、コメント、質疑応答を収録したものです。

はしがき
ジェンダー法と要件事実・講演会 議事録
[講演1]池田弘乃
ジェンダー法と基本的権利
1 性と法
2 3つの訴訟の検討
3 少数者と権利
[講演2]寺原真希子
ジェンダー関連訴訟において主張立証活動を行ってきた立場から
第1 はじめに
第2 選択的夫婦別姓訴訟の概要
第3 「結婚の自由をすべての人に」訴訟(同性婚訴訟)の概要
第4 実際の主な主張立証活動
第5 立法目的の認定方法について
第6 立法事実の評価要素としての国民の意識/社会的承認について
第7 不利益性の重大性の認定・評価手法について
第8 司法の立ち位置について
[講演3]松田和樹
平等・性別・家族
──自由への制約や、異なる取り扱いへの正当化可能性をめぐって
今日の話の流れ
理論枠組みとしての平等主義的リベラリズム
性別割り当ての行方
婚姻・家族の行方
[コメント1]三浦徹也
[コメント2]吉良貴之
[質疑応答]
[閉会の挨拶]
要件事実論・事実認定論関連文献
要件事実論・事実認定論関連文献2025年版……永井洋士・山崎敏彦
Ⅰ 要件事実論
Ⅱ 事実認定論 

ここで大きく取り上げられている判例は、性同一性障害特例法違憲決定、「結婚の自由をすべての人に」訴訟、「セックスワークにも給付金を」訴訟です。

このうち最後のものについては、本ブログで何回もケチをつけてきたことはご存知の通りです。ただ、それは行政法上の「許可」と「届出」についての警察庁や裁判所の理解が全くひっくり返っているぞという話なので、ジェンダー法的観点からのものではなかったのですが。

許可制は健全で届出制は不健全?

・・・性風俗業がいかなるものであるかについてはここでは論じませんし、持続化給付金の対象にすべきかどうかもとりあえずここでの論点ではありません。

しかし、「本質的に不健全」であるがゆえに許可制ではなく届出制とするのだ、というこの政府が裁判所で論じたてているらしい論理というのは、どう考えてもひっくり返っているように思われます。

そもそも、行政法の教科書を引っ張り出すまでもなく、許可制というのは、一般的禁止を特定の相手方に対して解除するという行政行為です。なぜ一般的に禁止しているかといえば、それはほっとくと問題が発生する恐れがあるからであり、何か問題が起きたら許可の取り消しという形で対処するためなのではないでしょうか。

それに対して、届出制というのは一般的には禁止していないこと、つまりほっといても(許可制の事業に比べて)それほど問題は発生しないであろう事業について、でもやっぱり気になるから、念のために届出させて、何かあったら(届出受理の取り消しなとということは本来的にありえないけれども)これなりにちゃんと対応するようにしておこうという仕組みのはずです。

そして、労働法政策においても、たとえば有料職業紹介事業は許可制ですが、学校や公益法人等の無料職業紹介事業は届出制ですし、派遣も今は許可制に統一されましたが、かつては登録型派遣は許可制で、常用型派遣は届出制でした。これらはどう考えても、前者の方が問題を起こしやすく、いざというときに許可の取り消しができるように、後者はあんまり問題がないだろうから、届出でええやろ、という制度設計であったはずです。

それが常識だと思い込んでいたもんですから、このデリバリーヘルス運営会社の起こした持続化給付金訴訟において、政府が上述のような全くひっくり返った議論を展開しているらしいということを知って、正直仰天しています。

性風俗営業とコロナ給付金

・・・うわぁ、東京地裁の裁判官は、警察庁の言う「このような営業について、公の機関がその営業を営むことを禁止の解除という形での許可という形で公認することは不適当であると考えて、届出制にし・・・」云々というわけのわからない理屈を全くそっくりそのまま認めてしまっているよ。

この裁判官は、法学部で行政法の総論をきちんと勉強したことがあるのかな。そもそもここにあるように、許可制というのは「一般的禁止の解除」なんだが、性風俗でないダンスホールやパチンコ屋のような風俗営業はそんなに悪いものじゃないから一般的に禁止して簡単に許さないけれども、ソープやヘルスのような性風俗産業はそもそもけしからんものだから一般的に禁止しないで誰でも認めるという大前提に立つことになるんだが、日本国の全分野で整合的であるべき法理論としてそれでいいのかな。

許可制は健全で届出制は不健全?(再掲)

・・・大学の法学部で一通り行政法を勉強したはずの霞が関の役人だけではなく、日本国の法律のエキスパート中のエキスパートであるはずの最高裁判所の裁判官たちが揃いも揃って、

そして、本件特殊営業については、風営法において種々の規制がされているところ(第4章第1節第2款)、これは、本件特殊営業が上記の特徴を有することに鑑み、このような規制をしなければ、善良の風俗や清浄な風俗環境を保持し、少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止することができないと考えられたからにほかならない(同法1条参照)。また、風営法が本件特殊営業を届出制の対象としているのは(31条の2)、本件特殊営業については、その健全化を観念することができず、風俗営業(同法2条1項)に対するものと同様の許可制をとること、すなわち、一定の水準を要求して健全化を図ることを前提とした規律の下に置くことは適当でないと考えられたことによるものと解される。

などという訳の分からない屁理屈を並べて満足しているように見えるさまは、些か唖然とせざるをえません。

類似の事業を営む者に対して、一方には許可制をとり、他方には届出制をとるという立法政策を説明するにあたって、行政法には統一的な基準というものはかけらも存在せず、そのときそのときに勝手にやっているのだ、それでいいのだ、と嘯くならともかく、日本国の行政について一般的に通用する許可制と届出制についての共通判断基準というのがあるのであれば、それはここで最高裁が堂々と謳い上げたこの基準ということになるはずですが、それでいいのですかね。

そうすると、最高裁の法理からすると、有料職業紹介事業は「一定の水準を要求して健全化を図ることを前提とした規律の下に置く」ために許可制にしているけれども、学校や公益法人等の無料職業紹介事業は「その健全化を観念することができ」ないから届出制にしているんですかね。思わず、「なるほど!」と言ってしまいそうですが。

 

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コメント

規制しなかった、と”ない”条文については一般省庁の不作為として認定するけど、”既にある”条文にはなかなか手こずっておりますな、法曹関係者の方々は。先に結論ありきで論理を作ってるのがよくわかりますね。

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