メンバーシップ型労働省からジョブ型ILOへ
全基連が刊行している『中央労働時報』の3月号に、長谷川真一さんが「国際交流の現場経験から考える労働の論点」というエッセイを寄稿されています。
長谷川さんは労働省の大先輩であり、労働行政における国際派のリーダー格の方ですが、ここでは、若き日のILOに派遣された頃の思い出を書かれていて、ジョブ型とメンバーシップ型の教科書的なエピソードになっているので、紹介しておきたいと思います。
・・・私は労働省に入省して4年間「メンバーシップ型」の発想に染まりきったところで「ジョブ型」のILOに行ったので、彼我の違いに戸惑い、ストレスも大きく、慣れるのに時間がかかった。その時印象が強かった点をいくつか書いてみたい。
私がILOに派遣されることが決まったとき、労働省人事当局から仕事についての希望を聞かれた。労働省は2年間のILO勤務で国際経験を積んでくれば良いと考え、ILOでの仕事の成果については何も期待していなかったわけである。私も「留学」のようなつもりで考え、「労働省の今までの4年間で雇用政策と労働基準の仕事をしたが、ILOなら中心は労使関係だ。この機会に労使関係の仕事の経験をしよう」と考え、ILOの中心的部局である「労働法・労使関係部」を希望したところ、それが通って末席の専門家として配属された。
一方、ILO側の私の直属上司のアメリカ人の課長は、私が4年間日本で労働法・労使関係の行政経験を経ていると考えて、いろいろな仕事を依頼してきた。ここに最初のミスマッチがあった。
初めて国際機関にいって私が強く感じたことは、「最初から一人前で扱われる」「他人は訓練してくれない。頼れない」ということである。
日本の官庁に限らず、会社も含めた組織では、大学を出た若者は、先輩が指導的助言して育てていくことが普通で、入省(入社)する若者もそれを予想(期待)しているのであるが、国際機関は、そもそも「空席」があって人を採用するときに「職務(job)と責任、それに見合う労働条件」は明確であり、採用される若者はそれをこなせることが前提である。即戦力であることが当然なのである。
日本の組織では、他人が困っていたり、忙しかったりすると、自発的に助けたり、手伝ったりすることがあるが、国際機関ではまずそういうことはないと思った方がいい。それぞれの職員の役割、職務と責任は明確であり、他人の領域には手を出さない。自分の仕事をきちんとやれば、後は何をしようが関係はない、ということである。
先輩だからといって訓練指導をしてはくれないし、むしろ競争相手となる。もちろん上限関係はあるが、日本のような先輩後輩関係はない。
ILOに行って、同僚との関係のよそよそしさに、最初は戸惑った。こちらから尋ねなければ、仕事のアドバイスは得られない。日本なら当然先輩が注意をしてくれる問題を知らないで失敗し、あとで同僚に不平を言ったとき、「それはあなたが質問しなかったのだから仕方がないでしょう」といわれて愕然としたものである。
一方、自分の職務に属する仕事については、干渉を受けたりすることもなく、尊重される。自分は自分、他人は他人で、慣れてしまえば、それはそれでやりやすい面はある。付き合い残業などが起こりにくい世界である。・・・・
こうしたことは、恐らく山のような人々が経験してきたことでしょう。でも、そういう方々が日本に戻ると、日本型組織に順応して生きていくことになるのです。
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「でも、そういう方々が日本に戻ると、日本型組織に順応して生きていくことになるのです」…。最後のHamachan先生のこの印象的なコメントですが、私の生きている世界〜外資系グローバル企業の日本法人、東京オフィス勤務〜では、以前からも縷々こちらで述べていますとおり、見える景色や様相はだいぶ異なります。すなわち「日本に戻った後に、例えば真のグローバル外資系企業に身を置くなどすることで「別の生き方」を選びとること(日本型組織に再順応しないこと)もできるのです」と…。海外からニッポンに戻ったからといって、必ずしも以前と同じ生き方を選択しなくてもよいのです。(ご参考「世間とは何か」「教養とは何か」阿部謹也著)
投稿: ある外資系人事マン | 2026年4月22日 (水) 19時21分
元国営企業に勤めていましたがここに書かれているような教育も自発的支援もない。かと言って自分の領域だけをこなせばいいというわけでもない。年齢の上下にうるさい。等両方の悪いところを取ったような職場だったことを思い出しました。同僚も同じことに悩んでいました。
そういう経験をしていると、本来のメンバーシップ型?の職場はどれだけ手厚い環境なんだと羨ましいと同時に呆れてしまいます。
こういったことが当たり前の環境にいればジョブ型が理解できないのも、その逆の私がジョブ型をある意味で理想的な環境に見てしまった時期があるのも頷けます
投稿: 匿名 | 2026年4月24日 (金) 12時46分