フォト
2026年4月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30    
無料ブログはココログ

« 「ジョブ型」とはどういうことか@『日本労働研究雑誌』2026年4月号 | トップページ | 谷口功一さんがYoutubeで拙著を書評 »

2026年3月26日 (木)

加藤喜之『福音派』@『労働新聞』2026年4月6日号

718pexgszl253x400 『労働新聞』2026年4月6日号に加藤喜之『福音派』(中公新書)の書評を寄稿しました。

https://www.rodo.co.jp/column/215883/

 去る2月28日、アメリカとイスラエルはイランに対して「壮絶な怒り」作戦として空爆を開始し、ハメネイ最高指導者を殺害した。イランは周辺諸国に攻撃を加え、ホルムズ海峡を閉鎖し、世界情勢の先行きはますます不透明になっている。

 今回の攻撃に対しては、トランプ大統領の支持者のなかでも賛否が分かれている。イラン攻撃を熱烈に支持しているのは、福音派と呼ばれるキリスト教原理主義者たちだ。彼らはキリスト教シオニズムと呼ばれ、イスラエルを守るためにイランを叩けと主張してきた。こうして突如としてクローズアップされた福音派とは一体いかなる集団なのか。それを教えてくれるのが、昨年出たばかりの本書である。

 副題に曰く、「終末論に引き裂かれるアメリカ社会」。そう、アメリカは引き裂かれつつあるのだ。なにしろ、4割ものアメリカ人が世界は終わりつつあると信じており、その割合は、人口の25%を占める福音派では6割を超えるのだから。彼らは、世界は善と悪と二分されるという世界観に立ち、敵を悪魔として攻撃することは神の御心に適うことであり、たとえ法令に反していようとも正義として推し進めることを厭わない。

 その出発点は20世紀前半のディスペンセーション主義であり、できる限り聖書の記述を文字どおりの意味で読もうとする。世界の終わりには反キリストという悪魔的な支配者が現れ、キリストが再臨すると、この反キリストと最終戦争(ハルマゲドン)を戦うことになる。これを全米に広げたのが、50年代に活躍したビリー・グラハムというラジオ伝道師だ。その後、ハル・リンゼイの『今は亡き大いなる地球』、フランシス・シェーファーの妊娠中絶禁止論、ジェリー・ファルウェルの結成したモラル・マジョリティ、テレビ伝道師のパット・ロバートソンといった人々が登場し、カーター、レーガン、ブッシュといった大統領と絡み合いながら、着実に地歩を広げていった。

 そして、白人とイスラエルの味方として登場したのがトランプだ。性的に放縦なトランプは本来福音派のお眼鏡に適う者ではないが、福音派の圧倒的多数はトランプを支持した。それは、彼らの信じる終末論を実現するためには、イスラエルが不可欠だからだ。それゆえ、彼らはトランプ政権によるアメリカ大使館のエルサレム移転を歓迎した。彼らにとって、パレスチナの土地はすべて神がユダヤ人に約束した土地なのだ。

 とはいえ、キリスト教シオニズムにとってユダヤ人はあくまでも道具に過ぎない。イスラエルのメギドの地で最終戦争(ハルマゲドン)が始まり、イエスが再臨するとき、奇跡を目撃したユダヤ人たちは遂にイエスを信じるようになるというのだ。

 本書には、戦後日本人が主として向かい合ってきた近代的で合理的なアメリカ人とはまったく異なる相貌が描き出されている。アメリカとはこういう国だったのか、という思いが湧き起こらない人はいないであろう。

 

« 「ジョブ型」とはどういうことか@『日本労働研究雑誌』2026年4月号 | トップページ | 谷口功一さんがYoutubeで拙著を書評 »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 「ジョブ型」とはどういうことか@『日本労働研究雑誌』2026年4月号 | トップページ | 谷口功一さんがYoutubeで拙著を書評 »