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2026年3月

2026年3月29日 (日)

谷口功一さんがYoutubeで拙著を書評

谷口功一さんがYoutubeの「とっとり研究所」で拙著を書評されています、それも、なんと30分近くかけて、丁寧に拙著の言わんとするところを解説していただいておりまして、恐縮千万であります。

https://www.youtube.com/watch?v=cDpUKfU4Xog

Maxresdefault_20260329195501

動画の冒頭で谷口さんも語っていますが、実はわたくしは谷口さんとは、今から20年近く前に日本学術会議立法学シンポジウム報告「労働法学の観点から」で共演させていただいたことがあります。

https://www.scj.go.jp/ja/event/pdf/39-s-1-1.pdf

Ppp_20260330090201

そういう縁のある方に、こうして動画で書評していただいたというのは、大変嬉しくまた有り難く感じております。

本書は、新聞記事を史料として使った歴史書であるということ、をちゃんと伝えていただいたことにも、感謝しております。

2026年3月26日 (木)

加藤喜之『福音派』@『労働新聞』2026年4月6日号

718pexgszl253x400 『労働新聞』2026年4月6日号に加藤喜之『福音派』(中公新書)の書評を寄稿しました。

https://www.rodo.co.jp/column/215883/

 去る2月28日、アメリカとイスラエルはイランに対して「壮絶な怒り」作戦として空爆を開始し、ハメネイ最高指導者を殺害した。イランは周辺諸国に攻撃を加え、ホルムズ海峡を閉鎖し、世界情勢の先行きはますます不透明になっている。

 今回の攻撃に対しては、トランプ大統領の支持者のなかでも賛否が分かれている。イラン攻撃を熱烈に支持しているのは、福音派と呼ばれるキリスト教原理主義者たちだ。彼らはキリスト教シオニズムと呼ばれ、イスラエルを守るためにイランを叩けと主張してきた。こうして突如としてクローズアップされた福音派とは一体いかなる集団なのか。それを教えてくれるのが、昨年出たばかりの本書である。

 副題に曰く、「終末論に引き裂かれるアメリカ社会」。そう、アメリカは引き裂かれつつあるのだ。なにしろ、4割ものアメリカ人が世界は終わりつつあると信じており、その割合は、人口の25%を占める福音派では6割を超えるのだから。彼らは、世界は善と悪と二分されるという世界観に立ち、敵を悪魔として攻撃することは神の御心に適うことであり、たとえ法令に反していようとも正義として推し進めることを厭わない。

 その出発点は20世紀前半のディスペンセーション主義であり、できる限り聖書の記述を文字どおりの意味で読もうとする。世界の終わりには反キリストという悪魔的な支配者が現れ、キリストが再臨すると、この反キリストと最終戦争(ハルマゲドン)を戦うことになる。これを全米に広げたのが、50年代に活躍したビリー・グラハムというラジオ伝道師だ。その後、ハル・リンゼイの『今は亡き大いなる地球』、フランシス・シェーファーの妊娠中絶禁止論、ジェリー・ファルウェルの結成したモラル・マジョリティ、テレビ伝道師のパット・ロバートソンといった人々が登場し、カーター、レーガン、ブッシュといった大統領と絡み合いながら、着実に地歩を広げていった。

 そして、白人とイスラエルの味方として登場したのがトランプだ。性的に放縦なトランプは本来福音派のお眼鏡に適う者ではないが、福音派の圧倒的多数はトランプを支持した。それは、彼らの信じる終末論を実現するためには、イスラエルが不可欠だからだ。それゆえ、彼らはトランプ政権によるアメリカ大使館のエルサレム移転を歓迎した。彼らにとって、パレスチナの土地はすべて神がユダヤ人に約束した土地なのだ。

 とはいえ、キリスト教シオニズムにとってユダヤ人はあくまでも道具に過ぎない。イスラエルのメギドの地で最終戦争(ハルマゲドン)が始まり、イエスが再臨するとき、奇跡を目撃したユダヤ人たちは遂にイエスを信じるようになるというのだ。

 本書には、戦後日本人が主として向かい合ってきた近代的で合理的なアメリカ人とはまったく異なる相貌が描き出されている。アメリカとはこういう国だったのか、という思いが湧き起こらない人はいないであろう。

 

2026年3月25日 (水)

「ジョブ型」とはどういうことか@『日本労働研究雑誌』2026年4月号

Tjjols_no789202604 『日本労働研究雑誌』2026年4月号は例によって「初学者に語る労働問題」という特集を組んでいて、ラインナップは以下の通りですが、

https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2026/04/index.html

法学

残業代は出ないという決まりがあっても,残業代は請求していいのか 新屋敷 恵美子(九州大学准教授)

アルバイト先の備品をうっかり壊したら,全額賠償しないといけないのか 細谷 越史(香川大学教授)

ストライキで客先に大損害がおきたら,組合は賠償しないといけないのか 榊原 嘉明(獨協大学教授)

経済学

AIが進展すると人は仕事を失うのか 宮本 弘曉(一橋大学経済研究所教授)

関税引き上げで国内労働者の雇用を守れるか 伊藤 恵子(千葉大学教授)

地域間の労働需給格差は賃金で解消できるか 太田 聰一(慶應義塾大学教授)

経営学

戦略的人的資源管理から人的資本経営はどう見えるのか 西村 孝史(東洋大学教授)

ウェルビーイングが注目されるのはなぜか 大石 繁宏(シカゴ大学教授)

AIによる人事評価はどのように職場に受け入れられるか 杉谷 陽子(上智大学教授)

労使関係

なぜ企業別組合は転勤による雇用区分設定と処遇格差を正当化してきたのか 金井 郁(埼玉大学教授)

退職するしか不満を伝える方法はないのか 上田 眞士(同志社大学教授)

フリーランスは労働組合をつくって会社と交渉できるのか 呉 学殊(JILPT特任研究員)

社会学・教育学・心理学

移民労働者の増加は日本の労働社会にどんな影響をもたらすのか─新しい移民労働者受け入れ制度に着目して 髙谷 幸(東京大学准教授)

氷河期世代問題─なぜ氷河は生じ,溶けなかったのか 小熊 英二(慶應義塾大学教授)

「ジョブ型」とはどういうことか 濱口 桂一郎(JILPT労働政策研究所長)

新卒一括採用制度は公平な機会といえるか 吉田 航(国立社会保障・人口問題研究所研究員)

なぜかわたくしもエッセイを一つ寄稿しております。

 「ジョブ型」というのは奇妙な言葉である。「job」という英語が元になっているけれども、ジョブ型に当たる言葉(job-type)は存在しない。日本ではジョブ型雇用とか、ジョブ型人事とか、ジョブ型賃金とか、ジョブ型を冠した言葉が氾濫しているけれども、job-type employmentjob-type personnel managementjob-type pay systemなどという言葉は(日本のジョブ型論を紹介する文脈以外では)ない。英語に限らず、他の外国語にもない。なぜか。雇用にしろ、人事にしろ、賃金にしろ、職務(job)に基づいているのは大前提であり、職務に基づかない雇用も人事も賃金も想定しがたいからだ。それゆえ、「ジョブ型」という形容詞は労働に関わるいかなる言葉に冠しても冗長であり、無意味となる。・・・・・

なお、この中で必読は小熊英二さんの「氷河期世代問題─なぜ氷河は生じ,溶けなかったのか」です。小熊さんは世の常識に反して、「氷河期世代問題とは、新規学卒労働力の学歴構成変化に対応した雇用レジームの調整過程であった」と主張しているのです。その論拠はなにか?是非手に取って読んでいただきたい論考です。

 

2026年3月24日 (火)

西村健・小尾晴美編著『入門 労働経済』

Isbn9784589044532 西村健・小尾晴美編著『入門 労働経済』(法律文化社)をお送りいただきました。ありがとうございます。

https://www.hou-bun.com/cgi-bin/search/detail.cgi?c=ISBN978-4-589-04453-2

労働経済学には、これから社会に出て様々な職業に就いて働き、賃金を得、市場経済の中で生きていく若者にとって必須で重要な知識が詰まっている。本書では、労働市場と経済の仕組み、関係する制度・法令の趣旨(意義)、課題や問題点をわかりやすく解説する。

中身は以下のようにまさに入門書ですが、

序 章 日本の労働市場を概観する
第1章 正社員の働き方
第2章 賃金
第3章 多様化するキャリアと人材育成
第4章 労働時間に関する法制度
第5章 女性の働き方とワーク・ライフ・バランス
第6章 中高年・高齢者の雇用
第7章 非正規雇用の量的拡大と基幹化
第8章 外国人労働者と労働市場・雇用システム
第9章 統計データからみる自営業層の姿
第10章 労働組合と労使関係
第11章 多様な労働者と法制度
終 章 働き方の未来

章によってだいぶ差はありますが、結構踏み込んだ記述があったりします。

鈴木恭子さんが担当されている第2章の賃金は、次のような小見出しになっていて、

1 「賃金」とはなにか
① 労働市場と様々な制度
② 報酬体系の中の賃金
2 賃金はどのように決まるか
① 報酬体系を理解する上でのポイント
② 何を基準に賃金の単価を決めるか
(A) 「職務基準」の賃金
(B) 「人基準」の賃金
③ どのように賃金を計算するか
(a) 「時間比例」によるもの
(b) 「成果」によるもの
3 賃金はどのように上がるか
① 国際的にみた賃金水準の推移
② 賃金はどのようなときに上がるか
③ 人事制度に基づく賃金決定
4 日本の労働市場で賃金はどのように分布しているか
① 賃金の分布と賃金格差
② 賃金の男女格差と雇用形態間格差
③ その他の賃金格差
5 これからの賃金に大切なこと
① 同一労働同一賃金
② 最低賃金制度
③ 社会的保護と賃金
Column 「春闘」と賃金の上昇

賃金の「決め方」と「上げ方」を中心に、賃金格差も加えての、わずか21ページの中で見事に解説しきっています。

 

企画業務型裁量労働制の基本的問題@WEB労政時報

WEB労政時報に「企画業務型裁量労働制の基本的問題」を寄稿しました。

https://www.rosei.jp/readers/article/90590

 高市早苗首相は20251021日の内閣発足とともに、上野賢一郎厚生労働相に対し、「心身の健康維持と従業者の選択を前提にした労働時間規制の緩和の検討」を指示し、その後2026220日の第221回国会の施政方針演説において、「裁量労働制の見直し(中略)に向けた検討を進めます」と、裁量労働制の見直しを明言しました。さらに、同年311日には日本成長戦略会議労働市場改革分科会において裁量労働制の拡大に向けた議論が始まったところです。

 裁量労働制については、過去に何回も論じてきました。このHR Watcherでも、2013730日付の「裁量労働制のボタンの掛け違い」を始め、繰り返し論じてきたところです。議論の本質的なところは、その時とほとんど変わっていないのですが、そもそも裁量労働制、とりわけ企画業務型裁量労働制にはいかなる基本的問題があるのかという、最も根本的なところを抜きにした議論ばかりが世にはびこっていることを考えると、改めてこれを繰り返し論じておく必要があると思います。そのためには、まずは企画業務型裁量労働制が適用される対象として想定されている日本の総合職サラリーマンとはいかなる存在であるのかというところから論じる必要があります。・・・・・・

 

 

2026年3月23日 (月)

月刊Hanadaプラスで梶原麻衣子さんが拙著書評

Chukogaikoku_20260323201601 月刊Hanadaプラスの「読書亡羊」というコーナーで、梶原麻衣子さんに拙著『外国人労働政策』を書評していただいております。

https://hanada-plus.jp/articles/1865

この月刊Hanadaプラスというのは、月刊WILLと並ぶあの「右翼雑誌」の月刊HanadaのWEB版で、書評されている梶原麻衣子さんというのは、まさにそのWILLやHanadaで編集者を務め、その舞台裏を『右翼雑誌の舞台裏』という本に赤裸々に描き出したその梶原さんであります。

というわけで、どんな風に書評されているのか恐る恐る覗いてみましたが、おおむね本書の趣旨を好意的に読んでいただいたようでほっとしております。

なぜ外国人労働者を受け入れる制度が「研修」を前面に出し、当人たちを「実習生」などと呼んできたのか。右に「事実上の『移民』であることをごまかすためではないか」という人がいれば、左には「『研修』名目、『実習生』であるという建前で外国人を安く使い倒し、搾取するためだろう」という人もいる。

実際のところ、なぜこんな制度になってしまったのか。

その謎を解き明かすのが濱口桂一郎『外国人労働政策――霞が関の権限争いと日本型雇用慣行が招いた混迷の30年史』(中央公論新社)だ。

「なぜ」の答えは、この副題にある。

つまるところ、外国人労働政策の迷走の理由は二つあり、一つは労働政策を担う労働省(後に厚生労働省)と、外国人の入管業務を担う法務省の間での縄張り争い。もう一つは、「真っ白な新人を採用して一から育てる」という雇用慣行と外国人受け入れ時のミスマッチにあったという。

著者の濱口氏は労働省出身の元霞が関官僚。となると「労働省びいきで、縄張り争いを展開した法務省を悪玉にしているのではないか」と心配されるところだが、そんなことはないフェアな筆致で、当時の経緯を謎解きのように紐解いている。

そして最後のところもわたくしの問題意識を的確にとらえていただいており、嬉しく思いました。

だが本書は〈混迷の三〇年は終わりを告げました、とこの話を終えるわけには行きません。実はまだ問題が残っていました〉と述べる。

それは、省益争いに端を発して「サイドドア」的な仕組みから始まってしまった外国人労働政策が、それゆえに「労働ではない」から始まって「あくまでも研修」「国際貢献の一環」などとされてきた問題を払拭しきれていなかったことである。

このズレは省益争いのみならず、本書が指摘する「日本型雇用環境と外国人労働・在留資格のミスマッチ」から生じたものでもある。

詳しくは本書をお読みいただきたいが、つまるところ「労働市場では、ある程度の技能を持っている人間を能力に応じて雇用する」という海外で主流のジョブ型と、「大学卒業時点では真っ白な白紙で、丁稚宜しく雑巾がけから始める」という日本型雇用のミスマッチにより、外国人を雇用する際に「その技能に合わせて相応の待遇で迎え入れる」という発想が抜けていたことに帰結するのだ。

移民や外国人労働者の問題はこうした議論から実に40年近く経った現在に至って、ようやく多くの国民が関心を抱くイシューになってきた面もある。結論ありきの賛否を唱える前に、まずは本書で議論の過程を抑えておきたい。

 

 

 

 

金沢大学能登半島地震と法研究会編・早津裕貴編集代表『災害をめぐる法と政策を考える』

09691 金沢大学能登半島地震と法研究会編・早津裕貴編集代表『災害をめぐる法と政策を考える 能登半島地震・奥能登豪雨を通じて』(日本評論社)をお送りいただきました。

https://www.nippyo.co.jp/shop/book/9691.html

令和6年に能登で発生した地震と豪雨。「現場の声」をもとに、研究者をはじめ多分野にわたる専門家が法的支援のこれからを考える。

目次は下記の通りですが、第6部の「復旧・復興の現場を支える人々」が被災地対応の最前線に立つ公務員を取り上げています。早津さんの最終章の一つ前に、JILPTの前浦さんが「被災自治体職員の離職意向の背景──自治労石川県本部のアンケート調査を基に」を書いていて、こう述べています。

これまでの災害対応は、自治体職員の努力で何とか乗り切るという方法が採られてきた。しかし、本章の分析結果が示すことは、これまでと同じやり方では、今後は対応しきれなくなるということである。もちろん、能登半島で発生した自然災害からの復興は最優先事項であるが、それと同時に、被災地の復興に関わる取組みの一つに、被災自治体の離職防止を位置づけ、平時からその対応策を構築しておく必要があるのではないか。

これを受けて、編者の早津さんも最後にこう述べています。

被災地では多くの公務員もまた奮闘している。しかし、「公務員叩き」といった風潮も存在した中で、公務員にかかる予算・人員は削られる傾向にあり、被災自治体も、応援職員を送り出す職場も、平時からギリギリの人員体制で公務を支えているのが現状である。

もちろん、人口減少が続く自治体では、財政難の中で安易に人員増に踏み切ることができない事情もあろう。しかし、日本社会全体の問題として、日々の国民・住民の生活とは切っても切り離せない「公務」の持続可能性を考えた場合に、はたして公務員の置かれた状況が今のままでよいのかどうか、どこか「公務員なのだから、どんなにしんどくても頑張って当たり前」と傍観してしまっていないかどうか、読者の皆さまも、この機会に改めて考えてみていただければ幸いである。

 

 

 

 

山川隆一・中野雅之・町田悠生子編『企業コンプライアンスと労働判例』

7477 山川隆一・中野雅之・町田悠生子編『企業コンプライアンスと労働判例』(経済法令研究会)をお送りいただきました。

https://www.khk.co.jp/book/mag_detail.php?pid=53436

論 考
1 企業コンプライアンスと労働判例の意義
明治大学教授 山川 隆一
2 企業コンプライアンスと「労働におけるビジネスと人権」
岩田合同法律事務所/弁護士 中野 雅之
3 人的資本経営と労働法
五三・町田法律事務所/弁護士 町田悠生子
判例・裁判例
4 ハラスメント防止措置の構築の意義と損害賠償責任への影響――まいばすけっと事件
(東京地判平成30・11・2)
東京大学准教授 日原 雪恵
5 苦情相談窓口と子会社従業員への対応――イビデン事件
(最一判平成30・2・15)
東京大学准教授 土岐 将仁
6 内部告発者・公益通報者への対応――大津漁業協同組合事件
(水戸地判令和6・4・26)
弁護士法人色川法律事務所/弁護士 有岡 一大 
7 間接差別と人事制度の設計――AGCグリーンテック事件
(東京地判令和6・5・13)
竹林・畑・中川・福島法律事務所/弁護士 津田洋一郎
8 職場のダイバーシティとLGBT対応――国・人事院(経産省職員)事件
(最三判令和5・7・11)
根本法律事務所/弁護士 根本 義尚
9 労働条件変更への同意と変更内容の説明――山梨県民信用組合事件
(最二判平成28・2・19)
中山・男澤法律事務所/弁護士 中山 達夫
10 従業員の業務にかかる費用負担制度――住友生命保険(費用負担)事件
(大阪高判令和6・5・16)
岩田合同法律事務所/弁護士 福地 拓己
11 退職後の競業による退職金不支給制度の設計――日本産業パートナーズ事件
(東京高判令和5・11・30)
明治学院大学准教授 植田  達
12 労働時間管理と労働時間の認定――三菱重工業長崎造船所(会社側上告)事件
 (最一判平成12・3・9)
岩田合同法律事務所/弁護士 藤原 宇基
13 事業場外労働みなし制度の「労働時間を算定し難いとき」の意義――協同組合グローブ事件
(最三判令和6・4・16)
岩田合同法律事務所/弁護士 豊岡 啓人
14 固定残業代の制度設計――熊本総合運輸事件
(最二判令和5・3・10)
弁護士法人色川法律事務所/弁護士 有岡 一大
15 職種限定・勤務地限定社員の配転の制度設計――社会福祉法人滋賀県社会福祉協議会事件
(最二判令和6・4・26)
中山・男澤法律事務所/弁護士 中山 達夫
16 降格・降給と賃金規程の整備・周知――住友不動産ベルサール事件
(東京地判令和5・12・14)
東京大学講師 石黒  駿
17 病気休職者の復職手続の運用――シャープNECディスプレイソリューションズほか事件
(横浜地判令和3・12・23)
岩田合同法律事務所/弁護士 藤原 宇基
18 懲戒処分と懲戒規定の周知・整備――フジ興産事件
(最二判平成15・10・10)
岩田合同法律事務所/弁護士 北川 弘樹
19 労働災害と取締役の会社法上の責任――大庄ほか事件
(大阪高判平成23・5・25)
竹林・畑・中川・福島法律事務所/弁護士 津田洋一郎
20 解雇に関する規定と手続――ブルームバーグ・エル・ピー事件
(東京高判平成25・4・24)
岩田合同法律事務所/弁護士 市川 一樹
21 非正規労働者の均衡待遇――ハマキョウレックス事件
(最二判平成30・6・1)
国士舘大学准教授 亀田 康次
22 高齢者の再雇用制度と労働条件――東光高岳事件
(東京高判令和6・10・17)
国士舘大学准教授 亀田 康次

労働法における企業コンプライアンスに関わる問題について、短めの論考と充実した判例紹介が詰まっています。

 

EUクオリティ・ジョブ法に向けて労使への第一次協議@『労基旬報』2026年3月25日

『労基旬報』2026年3月25日に「EUクオリティ・ジョブ法に向けて労使への第一次協議」を寄稿しました。

 去る2025年12月4日、欧州委員会はEU運営条約第154条に基づく労使団体への第一次協議を開始しました。テーマは「労働条件、労働安全衛生及び労働者の権利の行使を改善するEU行動-クオリティ・ジョブ法」です。このクオリティ・ジョブ法というフレーズは、フォン・デア・ライエン欧州委員長の2025年施政方針演説で初めて使われ、欧州委員会の2026年作業計画において、2026年に立法提案すると予告されたものです。ということは、この第一次協議に引き続き、2026年の中盤には第二次協議が行われ、年末までには何らかの形の立法案が提出されるという日程表になります。
 この第一次協議文書に対して、欧州労連(ETUC)は2026年1月28日に、40ページに及ぶ膨大な回答を公表しています。また欧州経団連(ビジネス・ヨーロッパ)も同年1月27日に19ページに及ぶ回答を公表しています。以下ではこれら労使団体の回答の内容も含めて見ていきます。
 さて、協議文書(C(2025)9944)には、大きく4つないし5つの分野が取り上げられており、クオリティ・ジョブという言葉の包括性とも相まって、極めて総花的な印象を与えるものになっています。以下、協議文書に沿って、その提起する論点を見ておきましょう。
 まず、第1に挙げられているのが職場のアルゴリズム管理と人工知能(AI)です。AIについては2024年7月に制定されたEUのAI規則が包括的な規制を行っており、これについては日本でも紹介されていますが、ここで論点となっているのは職場におけるAIの利用についてであり、とりわけアルゴリズム管理の問題です。この問題については、本紙2025年8月25日号に寄稿した「欧州議会の『職場のアルゴリズム管理指令案』勧告案」で述べたように、欧州議会が人間による監視と再検討に重点をおいた指令案の提案を要求しています。既にプラットフォーム労働指令では、雇用型非雇用型を問わずプラットフォーム労働に限定された形でアルゴリズム管理の規制が立法されていますが、これを他の全ての雇用非雇用の労働形態に及ぼそうというものです。
 欧州労連の回答は、AI規則とGDPRの規制とプラットフォーム指令の規制とにはギャップがあり、このギャップを埋めるべきというものです。職場で使われるAIシステムは「ハイリスク」に分類されるにもかかわらず、AI規則は作業編成、権力の不均衡、集団的権利、労働安全衛生といった中核的労働法問題に対処することができず、またAI規則やGDPRは一般的な製造物安全やデータ保護といった問題のための仕組みで、職場におけるアルゴリズム管理の利用への特定の労働基準の設定には及ばないので、拘束力あるEU立法が必要だというのです。
 これに対して欧州経団連の回答は、AI規則とGDPRで十分であり、それ以上の不必要な立法介入はEUにおけるAIの活用を遅らせ、その競争力を損うことになるだけだと警告しています。プラットフォーム労働指令におけるアルゴリズム管理規制の規定の方が過剰であり、今後のEU立法のベンチマークにすべきではないという立場です。
 次に第2に挙げられているのが労働安全衛生です。EUは労働安全衛生に関して膨大な立法を擁していますが、ここで論点に挙がっているのは職場における安全衛生最低基準指令(89/654/EEC)とディスプレイスクリーン器具による作業に係る安全衛生最低基準指令(90/270/EEC)の二つの指令です。これらはいずれも安全衛生枠組指令に引き続いて今から40年近く前に制定されたものですが、2024年の労働安全衛生諮問委員会の意見により、その見直しが求められています。前者については、「職場」の定義として、使用者の施設構内だけではなく、在宅勤務や使用者の施設外も含めることや、心理社会的及び人間工学的リスクをも対象とすべきとしています。また後者については、ワークステーションの定義を拡張し、据付けまたは携帯の装置(ラップトップやタブレットなど)のようなデジタルツールも含めるべきとしています。
 欧州労連の回答は、まず心理社会的リスクと人間工学的リスクについて述べ、「メンタルヘルス」というような個人の問題に帰着させるような用語ではなく「心理社会的リスク」という使用者の責任を強調する用語を採用していることに賛同しています。また協議文書に載っていない問題として、有害物質や労働安全衛生保護の人的適用範囲の問題を挙げています。とりわけ家事使用人が労働安全衛生規制から適用除外されていることに対しては、適用拡大すべきとしています。さらに高温作業の問題や、ジェンダーに基づく暴力とハラスメントの問題もここで取り上げています。
 これに対して欧州経団連の回答は、上記職場指令とディスプレイスクリーン指令の見直しには賛同していますが、それを超える見直しには経済的コストを考慮する必要があり、反対の姿勢を示しています。
 第3の論点は下請です。下請自体は合法的なビジネスモデルですが、とりわけ建設業や運輸流通業では、下請連鎖の中で労働者保護や安全衛生がないがしろにされがちです。この問題については、EU労働法では2014年の海外送出指令実施指令(2014/67/EU)が最低賃金や社会保険料に関して発注者の連帯責任を規定しているだけですが、加盟国は追加的な措置をとることができます。これの拡大が示唆されています。
 この問題について、欧州労連は数ページにわたって各国の状況を詳細に記述した上で、海外創出労働者に限らず国内労働者も対象とした一般的な労働法規制として、労働仲介業と下請連鎖についての拘束力ある立法を要求しています。これに対して刑集経団連は、既存の規制で十分であり、下請連鎖に新たな法規制を持ち込むことには企業の競争力と生産性を弱めるものだと反対しています。
 第4は「公正な移行」というタイトルで、脱炭素社会への移行をめぐる問題が取り上げられていますが、ここでは団体交渉と労使対話という集団的労使関係の枠組の重要性が説かれている程度です。欧州労連も、リストラクチャリングの規模を踏まえて、労使対話と団体交渉を強調し、変化のマネジメントを説いています。欧州経団連も非法制的な対応を強調しています。
 第5は以上とも重なりますが、「実施と労使対話の役割」を取り上げ、労使対話と団体交渉の重要性を最三強調しています。この点は欧州労連や欧州経団連も同じですが、欧州労連の回答はその中に「非標準形態の雇用と誤分類の防止」という項目を入れ、労働者性の問題をもここで取り上げるよう求めています。一方欧州経団連は、近年個別の違反ケースが政策の根拠にされる傾向があることを批判しています。
 協議文書はその最後で、労使団体に対して対話する気があるかと問いかけており、欧州労連は「欧州労使対話を強く支持する」けれども、「本協議で提起された問題に関してEU運営条約第155条に基づく対話を始める必要な条件が現在存在しているとは考えていない」と述べ、また欧州経団連はいくつかの論点について「労使対話を始める可能性をさらに探る用意がある」と述べています。とはいえ、上述のように両者の立場は極めて乖離しているので、実質的な対話ができる領域は限られていると思われます。恐らく今年の半ばには、欧州委員会からより具体的な立法提案の内容を含んだ第二次協議が行われることになると思われます。
 なお、欧州経団連の回答文書には付属としていくつかの立法提案が載っていますが、その中には本協議で全く触れられていない労働時間指令に関わるものがあります。本稿ではやや脇道になりますが、ちょっと触れておきましょう。EUの労働時間指令(2003/88/EC)は1日11時間の休息時間、一週48時間の最長労働時間などの規制を設けていますが、使用者の労働時間記録義務の規定はありません。」ところが、2019年5月14日の欧州司法裁判決(CCOO vs Deutsche Bank)は、使用者に労働者の毎日の労働時間を記録する義務があると判示したため、EU域内の多くの企業が過剰な負担を負っており、同指令を改正して、かかる義務が存在しないことを明示するよう求めています。労働時間指令の見直しは繰り返し試みられて結局行き止まりの儘となっており、経営側がかなり憤懣を抱いていることが窺われます。

 

2026年3月20日 (金)

本日の読売新聞にちょびっと登場

本日の読売新聞に「転勤制度、続けますか?」という記事が載っており、

https://www.yomiuri.co.jp/national/20260319-GYT1T00385/

転勤制度を維持するかどうかについて、各企業の対応が分かれています。テレワークの活用などで転勤の規模を縮小させる動きがある一方で、高額の手当を支給して継続している企業もあります。働き方の多様化が進む中、転勤はどうなるでしょうか。

その中に、わたくしの言葉もちょびっとだけ登場しています。

https://www.yomiuri.co.jp/national/20260319-GYT1T00385/3/

 転勤は戦前、全国に勤務地がある官僚や軍人の勤務に取り入れられていました。戦後、多くの企業が事業を拡大する中、社員に幅広い仕事をさせて能力向上を図ることなどを目的に、転勤が普及していきました。

 労働政策研究・研修機構労働政策研究所の濱口桂一郎所長は「勤務していた部署が会社の都合でなくなった場合でも、転勤などの配置転換があれば、家族を養い続けられるので、社員側も受け入れていった」と背景を説明します。

 転勤の受け入れを社員の義務と定めた法令はありません。ただし、多くの会社が「就業規則」などで、社員に転勤を命じることがあると規定しています。

 バブル景気が始まる1986年に、会社の転勤命令を幅広く認める判例が示されました。塗料会社の男性社員が家族と別居になることを理由に転勤を拒んで解雇され、職場復帰を求めた「東亜ペイント事件」です。最高裁は、転勤命令は特段の事情でない限り権利の乱用にならないと判断しました。

 一方、出産や育児を経て働く女性が増え、転勤のあり方を問う声が多くなりました。国は2001年、育児・介護休業法を改正し、転勤で育児や介護が困難になる場合の配慮義務を規定。06年には男女雇用機会均等法を改正し、合理的な理由なく、全国転勤を総合職の採用要件にすることを禁じました。

 24年施行の改正労働基準法施行規則は企業に対し、社員を採用する際には転勤の可能性を必ず伝えるように定めました。(社会部 柏木万里、野崎達也)

 

 

2026年3月18日 (水)

管理職多すぎやろ…「名ばかり管理職」が大増殖したホントの理由@ダイヤモンドオンライン

Asahi2_20260318075501 昨日に引き続き、ダイヤモンドオンラインに「管理職多すぎやろ…「名ばかり管理職」が大増殖したホントの理由」が載っておりますが、これも拙著『管理職の戦後史』(朝日新書)の一部を抜粋編集したものです。

https://diamond.jp/articles/-/385048

 日本的な「管理職」概念の特殊性をよく示している小咄から始めましょう。おそらく読者もどこかで耳にしたことがあると思いますが、大企業の部長経験者が面接に来て、「あなたは何ができますか?」と聞かれて「部長ならできます」と答えた……という小咄です。

これのどこが笑い話なのか?と欧米人なら聞くでしょう。

 ビジネススクールを出て管理職として働いてきた人が「部長ならできます」というのは、メディカルスクールを出て医師として働いてきた人が「医者ならできます」というのや、ロースクールを出て弁護士として働いてきた人が「法務ならできます」というのと、本質的に変わりはないはずです。

 しかし、日本では変わりがあるのです。なぜなら、日本の労働社会では、管理職というのはいかなる意味でも職種ではないからです。

 では日本型雇用システムにおいて管理職とは何なのか?その答えは読者の方が重々ご承知ですよね。少なくとも、上の笑い話をみておかしさが分かった人は知っています。・・・・・・

 

2026年3月17日 (火)

派出看護婦とは何だったのか?@『労基旬報』2017年1月25日号(再掲)

F9fmcqd_400x400_20260317153101 焦げすーもさんが、来年の朝ドラに関わってこんな疑問を呈しているので、

朝日選書4月。「NHK朝ドラ26年度前期「風、薫る」は明治期の看護婦2人がモデル。鈴木雅、大関和らが設立した派出看護婦会というビジネスは隆盛の後、なぜ消えていったのか。…」 ⇒山下麻衣 『「看護婦」の近代社会史 誇りが拓いた自立への道』

派出看護婦会 「家政婦の歴史(濱口桂一郎)」が取り上げた「派出婦会」との異同が気になる。

今から9年以上前に『労基旬報』に寄稿したこれを再掲しておきますね。

派出看護婦とは何だったのか?@『労基旬報』2017年1月25日号

 派出看護婦といっても、今では知らない人の方が多くなったかも知れません。戦後はむしろ「付添看護婦」という言い方のほうが普通ですが、1997年の新看護体制の導入まで、入院患者とともに病院に寝泊まりして身の回りの世話をする女性たちが一個の職業として存在していたのです。民営職業紹介事業として「看護婦・家政婦紹介所」という看板が掛けられていたところの「看護婦」というのがほぼこれに当たります。今では消滅した職業ですが、その歴史をたどるといろいろと興味深いことが見えてきます。

 看護史研究会『派出看護婦の歴史』(勁草書房)によると、そもそも日本における看護婦の歴史は病院看護婦ではなく派出看護婦から始まるのです。1891年、鈴木まさが東京本郷に創立した慈善看護婦会がその出発点で、「医師又は患家より依頼あるとき看護婦並に産婆を派出する」のがその事業でした。その後京都、大阪にも看護婦会が作られていき、派出看護への需要が高まるにつれ、看護婦会が独自に看護婦の養成を始めます。一方、看護婦会が急増し、営利本位に流れていく状況を見て、行政も規制に乗り出し、1900年東京府は看護婦規則を発令、看護婦試験に及第した者のみが免状を得て看護婦の業を営むことができることとしました。それまで看護婦という業務は何ら規制されていませんでした。同規則の理由に「各営業者間に私設せる所謂看護婦会又は看護婦養成所と称する場所に於ては一般に速成を主とし極めて不完全なる養成を為し其大部分は殆ど看護婦の仮名を借るものたるに過ぎず」といわれるような実態があったのです。看護婦会の経営者たちによる同業団体の設立が進められていき、1902年には大日本看護婦協会が設立されました。

 一方東京府を皮切りに他府県でも次々と看護婦規則が発令され、1915年には内務省令として看護婦規則が制定されるに至ります。この看護婦規則は看護婦試験と免許制度を規定するものでしたが、各府県の施行細則の中では看護婦会の取締に関する規定が設けられました。そこでは、看護婦会の開設には許可を要すること、看護婦会の経営者は看護婦会組合に加入しなければならないことなどが定められていました。看護婦会に入会すると、会長自宅の二階や離れの宿舎で生活し、患家や病院からの申込みに応じて、会長の指示に従い派出されました。当時の「職業婦人就業案内」にも派出看護婦が登場しています。一方、大正デモクラシーで労働運動が高まりを見せる中で、派出看護婦のストライキもいくつか起こっています。さらに1922年には労働婦人同盟本部に看護婦同盟が結成されたということです。

 行政による看護婦会の取締も1930年から強化され、同年改正の東京府看護婦会取締規則では、看護婦会でなければ看護婦の派出をしてはならないこと、看護婦会は畳2畳につき会員5人の面積以上の寄宿設備を備えること、看護婦又は准看護婦でなければ派出してはならないことなどを定めました。しかしこれをかいくぐるように派出婦会が登場してきて、家事のみならず病人の付添も行うようになったため、同年内務省衛生局は「付添婦取締に関する件」という通牒を発し、「近時付添婦等と称し病院或は患家に於て看護婦と同様の業務を為す者漸次増加の傾向有之哉に聞及び候処、右は公衆衛生上弊害あるものと認めらるるに付充分取締相成」と指示しています。

 敗戦後GHQの厳命で労働者供給事業は(労働組合を除き)全面的に禁止されることとなり、戦前来の看護婦会も一切の業務をやめて解散しなければならなくなりました。これに対し、看護婦会経営者らはさまざまな運動を展開しました。まず第1は、従来の看護婦会を職業安定所の「委託寮」に指定し、派出看護婦から下宿料を徴収することで解散を免れるというやり方です。もっとも職安による派出看護婦の紹介はうまくいかず、病院と看護婦会の結びつきが強かったので、制度は変わったといいながら、派出看護婦は今まで通り委託寮主から派出先の指示を受け、ただ形式的に手続のための職安に出かけるという実態だったようです。

 第2は職業安定法で唯一許された労働組合の労働者供給事業として生き残る道です。1948年に名古屋の双葉臨床看護婦労働組合が第1号として許可を受け、続いて東京で田園調布派出看護婦家政婦労働組合が設立されています。ちなみにこの田園調布の組合は今日もなお労働者供給事業として事業を行っています。しかし、政治的な運動の結果1948年に職業安定法施行規則が改正され、有料職業紹介事業の対象職種に「看護婦」が追加されたことから、それ以後有料職業紹介事業として付添看護婦という職種が確立していきます。1950年には「家政婦」も対象職種に追加され、「看護婦・家政婦紹介所」として経営されることが殆どでしたが、その「看護婦」というのはもっぱら付添看護婦のことでした。

 この職業が消滅したのは、冒頭に述べた1997年の新看護体制の導入によってです。厚生省が付添看護の廃止に踏みきったのは患者の保険外負担をなくし、看護の質を改善するためということでした。付添婦を雇用するのは患者個人で、その料金を払った患者にその一部が付添療養費として償還されますが、それが基準看護病院に入院する患者との間で不公平だという論拠です。その時、『看護学雑誌』1996年5月号から1997年1月号まで8回にわたって吉田昌代氏による「付添看護とは何だったのか」という文章が連載されました。彼女は自ら看護婦家政婦紹介所に行き、その紹介で付添婦として働きながら、その就労の実態を生々しく伝えています。床に寝るという劣悪な労働環境、実質24時間体制という労働時間、眠剤に頼る生活で珍しくもない過労死等々とその苛酷さを綴りながら、やはり一番おかしいのではないかと訴えているのは、労働法上家事使用人に分類されるので労働基準法の適用がないという点です。彼女はこう問います。「付添婦の雇用については、実態と法律とがあまりにもちぐはぐである。病院で働く付添婦を見て、彼女たちが家事使用人である、と認識する人は果たしているだろうか「付添婦の労働実態は労基法違反である」労働省に突きつけた矛先は「家事使用人」という屁理屈でかわされてしまった狐につままれた気分で釈然としない。付添婦を守ってくれる労働者保護法は、日本には存在しないのか。付添婦には、最低限の人権さえ保障されていない」と。付添看護の廃止によってこのような劣悪な労働環境は11万人の雇用機会とともに消滅したのです。改めて、この約1世紀にわたって存在していた職業とは一体何だったのかと再考してみるべき時期かも知れません。

ちなみに、この「風薫る」は再来週の3月30日から始まります。

https://www.nhk.jp/g/ts/XWRG4KR6Z2/

Xwrg4kr6z2editor_ca684b2af098910cdfa4bca

 

 

水町勇一郎『労働法 第11版』

L24404 水町勇一郎さんの超絶分厚くない方のそれでも結構中身の詰まったテキスト『労働法 第11版』(有斐閣)をお送りいただきました。まことに正確に2年おきに刊行されているシリーズです。

https://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641244047

第10版以降2年間の法令改正をフォローするとともに,130件を超える新判例を解説。好評の事例もアップグレードした。学修に,実務に,研究に。社会と法のダイナミックな変化を取り込んで,理論的な道筋を明確に,労働法の全体像とエッセンスを描き出す。

このテキストの特徴は、主要判例を固有名詞だけどこかで聞いたような名前に変えて事例として掲げているところです。

事例52

 荒木鐵工所で働いている神吉さんは、ある政治団体への勧誘活動を非公然に行っていたところ、同社の同僚で同じ政治団体に加入していた石崎さんが突然失踪した。同社は、石崎さんの失踪について調査を行う中で、石崎さんと神吉さんが同じ政治団体に加入していることを示す資料を入手した。同社の人事部長である笠木さんは神吉さんと面談し、その資料を神吉さんに提示したところ、神吉さんは茫然自失の態でしばし沈黙した後、突然退職する旨を告げ、慰留も拒み、「一身上の都合」と記入した退職届を提出した。人事の最終決裁権者である笠木人事部長は、この退職届を受領した。翌日、神吉さんは弁護士と相談し、同社宛に退職の意思表示を撤回する旨の内容証明郵便を送付した。退職の撤回は認められるか?

なんだか社内の人々の顔が生々しく思い浮かんできてしまいますが、いやもちろんこれは大隈鐵工所事件(最三小判昭和62年9月18日労判504号6頁)の固有名詞だけ変えたものです。普通の判例紹介ではたとえば、

退職届の撤回に関する基本的な判例は大隈鐵工所事件(最三小判昭和62918日労判5046頁)である。本件は、鉄工業を営むYの社内で同期入社の同僚と共に政治団体の活動を行っていたXが、同僚の失踪について上司から事情聴取されたときに、自分は関係ないと述べてA人事部長に退職届を提出し、その翌日にその撤回を申し入れたが拒否されたという事案である。本判決は、「A部長がXの退職願を受理したことをもって本件雇用契約の解約申込に対するYの即時承諾の意思表示がされたものというべく、これによって本件雇用契約の合意解約が成立したものと解するのがむしろ当然」と判示した。

というような無味乾燥な感じになるので、生々しさは格別です。

 

 

 

 

 

 

管理職ツラすぎるだろ…働き方改革の「生けにえ」になった課長たちのブラック労働残酷物語@ダイヤモンドオンライン

Asahishinsho2_20260317090201 ダイヤモンドオンラインに、「管理職ツラすぎるだろ…働き方改革の「生けにえ」になった課長たちのブラック労働残酷物語」というおどろおどろしいタイトルの文章が載っておりますが、これは拙著『管理職の戦後史』(朝日新書)の一部を抜粋編集したものです。

https://diamond.jp/articles/-/385047

働き方改革のおかげで、労働環境は確かによくなった。そのいっぽうで、制度の網からこぼれ落ちた人がいる。管理職だ。部下の残業を減らせと言われ、その分の穴埋めの仕事を行い、マネジメントも請け負う…。過労死しても決しておかしくない、管理職の現状とは?※本稿は、労働政策研究・研修機構労働政策研究所長の濱口桂一郎『管理職の戦後史 栄光と受難の80年』(朝日新聞出版)の一部を抜粋・編集したものです。

 

2026年3月16日 (月)

社会保険労務士の法政策@『季刊労働法』2026年春号(292号)

292_h1347x500_20260316153701 先週末にお知らせしたように、『季刊労働法』2026年春号(292号)が刊行されました。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2026/03/post-7f5de2.html

わたくしの連載「労働法の立法学」は、今回は「社会保険労務士の法政策」です。

 労働法政策に関わる専門職としてはもちろん弁護士が重要な役割を果たしており、とりわけ労働関係においては日本労働弁護団に所属するいわゆる労働側の弁護士と、経営法曹会議に所属するいわゆる経営側の弁護士が様々な領域で活躍していることは周知の通りですが、それに加えて労働関係の専門職として社会保険労務士が存在し、やはり各分野で活躍しています。日本労働法学会の会員名簿を瞥見しても、研究者に加えて弁護士や社会保険労務士の名前が連なっています。そこで今回は、その根拠法である社会保険労務士法の制定から今日までの法政策の推移を概観し、今日におけるその役割を考えてみたいと思います。・・・

1 労務管理士と社会保険士
2 社会保険労務士法の制定
3 その後の法改正
4 21世紀の法改正
(1) 2002年改正
(2) 2005年改正
(3) 2014年改正
(4) 2025年改正

 

 

『2026年版 労働関係法規集』

Houkishu2026 『2026年版 労働関係法規集』(労働政策研究・研修機構)が発売されました。

https://www.jil.go.jp/publication/ippan/houkishu.html

持ち運び可能な労働関係法令集の決定版─実務にも学修にも最適な法規集─

社会生活に必要な労働関係法令をコンパクトサイズに収めました。2025年の法改正を反映し、実務や講義において参照頻度の高い法令や省令等を中心に整理しました。カスハラ・就活セクハラ・フリーランスの安全衛生に関する法律なども収録しています。企業人事担当の方、労働組合の方をはじめ、一般の皆様にもご利用いただけます。

近年労働法制が複雑多様化する中で、本書も毎年どんどん膨れ上がっていく一方でしたが、今回は思い切ってかなりのスリム化を断行しました。その結果、昨年の2025年版は1319頁だったのが、今年の2026年版では1190頁と大幅にスリム化し、本来の「携帯版」に近づいたのではないかと思います。

2026年版の特徴

  • 収録内容を厳選し、昨年版よりスリム化
  • 常に手元で参照することを想定し、携行性と実用性を両立
  • 政令・省令・告示等を含め、実務で必要となる法令を体系的に収録

こたつさん復活

Nsl0gnzh_400x400 こたつさんが復活して、拙著『管理職の戦後史』の記述に疑問を呈されていますが、

『管理職の戦後史』に「(申告を契機に)1957年5月に大分労働基準監督署の臨検を受け、6月に労基法違反として書類送検されました。」(100頁)とあるが、昔はそんなスピードだったの…?

少なくとも典拠とした『銀行労働調査時報』79号にはそう書いてあります。

Aaa

 

2026年3月14日 (土)

毎日新聞で『外国人労働政策』の書評

Chukogaikoku_20260314082101 本日の毎日新聞の書評欄に、松原隆一郎さんによる拙著『外国人労働政策』の書評が載っています。

https://mainichi.jp/articles/20260314/ddm/015/070/011000c

高市早苗首相が2月末の参議院本会議で外国人労働者の在留資格である「特定技能2号」につき、「受け入れ人数の上限を設定していない」と答弁した。在留更新無制限、家族同伴可であるこの枠の「上限を首相が撤廃した」と早とちりした一部保守層が、「移民開始宣言」だと批判している。・・・

という昨今の話から始まり、

 ・・・外国人労働者の在留資格はなぜかくも複雑なのか。本書はその経緯を詳述、とりわけ1980年代以降、「使用者、労働者、公益を代表する三者構成」や「労働者への許可」といった労働政策の原則抜きで在留資格が設定された点に注目する。働きに来た人々に「労働者ではない」資格を与え、矛盾を取り繕うために複雑化したのである。

 なぜ労働政策の原則は骨抜きにされたのか。その解明が本書の主題で、第一には「法務省と労働省の権限争い」がある。1989年の入管法改正で「日系人」、もしくは原則として就労が認められない「研修生」に在留資格が認められた。2016年の「技能実習法」で技能実習生として就労資格と正当な報酬が与えられるまで、法務省の入国管理局が外国人労働者を管理する権限を握り、労働省の職業安定局は外された。両省の暗闘は公文書には記されないものの新聞には断片的に報じられており、丹念に再構成している。・・・

と、本書の内容を説明していきます。

ただ、正直言ってやや思い込みで細かなところを飛ばしながら読まれてしまったようで、本書には書いていないし、事実にも反することがいくつも出てきます。これだけの分量で全国紙に書評をしていただいたのは有り難いことではあるのですが、この書評「だけ」を見て、この本ではこんなことを主張しているのかなどと思わないようにしていただければと思います。

 

 

 

 

 

 

 

2026年3月13日 (金)

『季刊労働法』2026年春号(292号)

292_h1347x500 労働開発研究会のHPに『季刊労働法』2026年春号(292号)の案内が出たので、こちらでもご紹介。

https://www.roudou-kk.co.jp/books/quarterly/14719/

特集:集団的労働条件決定と労働組合の組織的・手続的規律

今号では、労働協約の規範的効力や拡張適用を素材に、集団的労働条件決定のあり方を多角的に検討します。労働組合の内部運営に対する法的規律、行政法学から見た労働協約の位置づけ、協約締結過程の意思形成規律など、組織的・手続的側面に焦点を当て、憲法・行政法・労働法の視点から分析します。

企画趣旨 甲南大学教授 篠原 永明

労働組合の内部運営の法的規律と団結権保障 甲南大学教授 篠原 永明

行政法学から見た労働協約 岡山大学准教授 田代 滉貴

労働協約の締結過程と労働組合の意思形成に対する立法的・司法的規律 関西大学教授 植村 新

第1特集は集団的労使関係法ですね。タイトルしか分かりませんが、最近のプレカリアートユニオン事件判決なんかが取り上げられているのでしょうか?

第2特集では、制度改革が続く教員の働き方に注目します。2025年給特法改正の意義と限界、新給特法における労働時間規制の課題、学校現場が抱える構造的問題、公務災害・損害賠償請求訴訟の最新動向を取り上げ、制度と現場の双方から教員の労働環境のゆくえを展望します。

【第2特集】教員の働き方―制度改革と保護のゆくえ

2025年給特法改正の両義性 神戸大学教授 堀口 悟郎

新給特法にみる労働時間規制の「過少」と「過剰」―主務教諭導入は学校現場に何をもたらすか― 大阪大学准教授 髙橋 哲

学校教員をめぐる問題の全体像―教員不足をもたらす要因の構造とは 慶應義塾大学教授 佐久間 亜紀

公立学校教員の長時間労働による過労死等にかかる公務災害・損害賠償請求訴訟の動向 弁護士 海道 宏実

第2特集は給特法ですね。これも以前歴史的経緯を掘り下げたことがあるので、興味深いです。

■特別企画■ AI・アルゴリズム管理の時代におけるPWR概念の展開

AI・アルゴリズム管理の時代におけるPersonal Work Relation概念の展開―企画の趣旨と解題 九州大学准教授 新屋敷恵美子 東京大学教授 神吉知郁子

職場におけるAI時代の立法:TUCによる「AI法案」プロジェクト AI・雇用政策コンサルタント(前TUC雇用権政策担当) メアリー・タワーズ 訳:法政大学准教授 藤木 貴史

個人的労働関係の法的規制と職場におけるアルゴリズム管理 ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン教授 ニコラ・カウントゥリス 訳:九州大学准教授 新屋敷 恵美子

さらに特別企画としてアルゴリズムが取り上げられています。これも避けて通れない最先端のテーマです。

■論 説■

フランスにおける法定の有償ボランティアの発展過程―2000年3月14日の法律におけるvolontariat civilの位置づけを中心に― 早稲田大学社会科学総合学術院助手 原田 さゆり

合理的配慮義務と職場環境配慮義務・安全配慮義務、労務管理のあり方―三菱UFJ銀行事件その他裁判例の分析と考察 京都大学法科大学院非常勤講師・元客員教授 弁護士 吉田 肇

労災認定・労災保険料の認定を巡る雇用者の訴訟―最判令和6年7月4日への重大な疑問― 弁護士・神戸大学名誉教授 阿部 泰隆

■要件事実で読む労働判例―主張立証のポイント 第15回■

労災事件の要件事実―サンセイほか事件・東京高裁令和3・1・21労判1239号28頁を素材に 弁護士 草開 文緒

■労働法の立法学 第77回■

社会保険労務士の法政策 労働政策研究・研修機構労働政策研究所長 濱口 桂一郎

■判例研究■

バックグラウンドチェックにより判明した経歴詐称を理由とする採用内定取消しの有効性 アクセンチュア事件(東京高判令和6・12・17労判1333号58頁) 同志社大学大学院法学研究科博士後期課程 木内 大登

大手法律事務所におけるカウンセル弁護士の労働契約法上の労働者該当性 西村あさひ法律事務所事件(東京高判令和7・9・25労旬2091号78頁) 北海道大学教授 池田 悠

教員から事務職員への配転命令ならびに無期・有期労働者間の基本給格差の合理性 学校法人明徳学園事件(第一審: 京都地判令7・2・13労判1330号5頁  第二審: 大阪高判令7・10・14判例集未搭載) 昭和女子大学教授 奥貫 妃文

■重要労働判例解説■

スポットワーク事業者による賃金立替払いの法的性質と兼業時の労働時間通算の可否 タイミー社事件(東京地判令7・3・27LEX/DB 25622821) 東洋大学准教授 北岡 大介

特殊業務手当廃止の合理性と労契法10条の判断枠組み 国立精神・神経医療研究センター事件(東京地裁立川支部判令5・2・1労判1301号31頁(一部棄却)東京高判令7・3・27労判1333号5頁(原判決変更・一部認容)) 富山県立大学教養教育センター教授 大石 玄

わたくしの連載は、今回は「社会保険労務士の法政策」です。たぶん、今までそんなことを取り上げた論文はなかったんじゃないかと思います。

 

 

 

2026年3月11日 (水)

普通選挙をやめて参政権くじ引き制にしよう!?

G112604500 昨日、拙著『外国人労働政策』の書評が載っているということで送っていただいた『月刊公明』4月号ですが、パラパラと他の記事も読んでみました。もちろん先の総選挙を受けて「自民圧勝を読み解く」記事が多いのですが、読んでいくと、こんなえっと驚くタイトルの記事に目がとまりました。

https://komeiss.jp/products/detail.php?product_id=431

 富裕層や利益団体に有利な普通選挙はやめるべきだ 山口晃人

え?普通選挙をやめろってか。

山口氏によれば、普通選挙には3つの問題点があると。第1は有権者の政治的無知。第2はそれが及ぼす政党や政治家の行動への悪影響。第3に政治的知識を豊富に有する有権者であっても適切な政治的意思決定を下せるとは限らない。

いや確かに昨今の政治を見ていると、無知な有権者が愚かな政治家に熱狂するシーンはこれでもかこれでもかと押し寄せてくるので、思わずそうだねとうなずきかけてしまいますが、でも普通選挙の代わりに山口氏が提示するのは参政権くじ引き制だというんですね。

これは、全ての有権者が投票するのではなく、選挙ごとにくじ引きで選ばれた一部の人々だけに、政治に関する情報提供を行った上で投票を認める制度構想だそうです。

いやなんぼなんでもそれは無茶でっしゃろ、と思うのですが、山口氏はこれを「普段は政治から距離を置き、たまたまくじ引きで選ばれたときだけ投票するくらいが政治との適切な距離感なのではないか」というのです。

確かに、「政党やイデオロギーとの一体化」は色々問題を起こします。この言葉はじんわりと沁みますね。

・・・特に深刻なのは、政党との一体化が強まるにつれ、対立する政党の政治家や支持者が愚か者や悪魔のような存在に見えてしまうことだ。本来的には、良き隣人であるはずの同胞市民をそのように認識してしまうようになるとすれば、政治参加は決して望ましいこととはいえない。

 

欧州経団連が賃金透明性指令に異論

先日、欧州経団連(ビジネス・ヨーロッパ)が、既に成立し、今年6月に国内法転換期限が来る賃金透明性指令に対して「時計を止めろ(Stop the clock)」と叫んで、その修正を求めています。

https://www.businesseurope.eu/publications/the-pay-transparency-directive-stop-the-clock-a-prerequisite-for-simplification/

BusinessEurope calls for a “Stop the Clock” regarding the transposition of the Pay Transparency Directive (PTD). Additional time is required to ensure a proportionate, coherent and workable implementation for both Member States and employers, while also allowing for the identification and consideration of potential simplification measures.

Given that the current transposition deadline is 7 June 2026, BusinessEurope members urge the colegislators to grant a two-year extension. Such an extension would provide Member States and employers with adequate time to adapt systems, procedures and legislation to the requirements of the Directive, ensuring a proportionate and effective transposition across the EU.

説明文書を読んでいくと、結局、労働協約で賃金を決めれば、指令に違反していないと推定するような規定を設けろという話のようです。

https://www.businesseurope.eu/wp-content/uploads/2026/03/2026-02-24-Pay-Transparency-Directive-Stop-the-clock.pdf

In many Member States, job classification frameworks established through Collective Agreements (CAs) already apply objective and gender-neutral criteria such as skills, responsibility, effort, and working conditions. These systems have been developed jointly by social partners precisely to guarantee fairness and transparency in pay determination, also delivering gender-neutral pay structures.

Given CAs role in ensuring pay equity, companies applying such CAs could be presumed compliant with several of the obligations contained in the Pay Transparency Directive (PTD). To reflect this reality, and as is further explained below, a presumption of compliance should be established in the PTD for companies adhering to collective agreements. Not only would this result in a massive administrative burden reduction in the specific case of the PTD but, it would also constitute an incentive to engage in collective bargaining and thereby, in the long term, increase collective agreement coverage throughout the EU.

This is very much in line with both the European social market model and the EU’s simplification agenda.

この話、実は労使関係を重視し、できるだけ物事を団体交渉、労働協約で決めさせたがる伝統的な労働社会政策の立場と、いやいや労働組合のおっさんらが一番信用できない、そんなんじゃなくてちゃんと同一価値労働同一賃金になるようにきちんとやらせろという男女平等派の立場とのずれというか乖離が一番露呈しているところではあるんですね。

(参考)

賃金透明性と執行機構を通じて男女同一労働又は同一価値労働に対する同一賃金の原則の適用を強化する欧州議会と理事会の指令(賃金透明性指令)
Directive (EU) 2023/970 of the European Parliament and of the Council of 10 May 2023 to strengthen the application of the principle of equal pay for equal work or work of equal value between men and women through pay transparency and enforcement mechanisms
採択:2023年5月10日
 
第1章 総則
 
第1条 主題
 本指令は、EU運営条約第157条に規定する男女同一労働又は同一価値労働の原則(「同一賃金原則」)及び指令2006/54/EC(男女均等待遇指令)第4条に規定する差別禁止の適用を、とりわけ賃金透明性及び執行機構の補強を通じて強化するための最低要件を規定する。
 
第2条 適用範囲
1 本指令は公共部門及び民間部門の使用者に適用される。
2 本指令は、EU司法裁判所の判例法を考慮しつつ、各加盟国で効力を有する法、労働協約及び/又は慣行において定義される雇用契約又は雇用関係を有する全ての労働者に適用される。
3 第5条に関しては、本指令は雇用への応募者に適用される。
 
第3条 定義
1 本指令においては次の定義が適用される。
(a) 「賃金」とは、現金か現物給付かを問わず、労働者がその使用者から当該雇用に関して直接又は間接に(「補足的又は変動的部分」も含め)受け取る通常の基本的又は最低の賃金又は給与及びその他のあらゆる報酬をいう。
(b) 「賃金水準」とは、年間賃金総額及びこれに対応する時給総額をいう。
(c) 「男女賃金格差」とは、当該使用者の男女労働者の間の平均賃金の水準の差異であり、男性労働者の平均賃金水準に対する百分率で示される。
(d) 「賃金中央値水準」とは、労働者の半数がそれよりもより多くの賃金を得、他の半数がより少ない賃金を得るような賃金水準をいう。
(e) 「男女賃金中央値格差」とは、女性労働者の賃金中央値水準と男性労働者の賃金中央値水準の差異であり、男性労働者の賃金中央値水準に対する百分率で示される。
(f) 「四分位賃金帯」とは、労働者をその賃金水準に従って最低から最高まで並べたときの4つの等しい数の各労働者集団をいう。
(g) 「同一価値労働」とは、第4条第4項にいう非差別的かつ客観的で性中立的な基準に従い、同一の価値であると判断された労働をいう。
(h) 「労働者範疇」とは、非恣意的な方法でかつ本指令第4条第4項にいう性中立的な基準に基づき、適用可能な場合には各加盟国の国内法及び/又は慣行に従い労働者代表と協力して、当該労働者の使用者により分類された同一労働又は同一価値労働を遂行する労働者をいう。
(i) 「直接差別」とは、比較可能な状況において、ある者が性別に基づき他の者が取り扱われるか、取り扱われてきたか、又は取り扱われるであろうよりも不利に取り扱われる状況をいう。
(j) 「間接差別」とは、当該規定、基準又は慣行が適法な目的により客観的に正当化されかつその目的を達成する手段が適当かつ必要でない限り、表面的には中立的な規定、基準又は慣行がある性別の者に他の性別の者と比較して特定の不利益をもたらす状況をいう。
(k) 「労働監督機関」とは、国内法及び/又は慣行に従い、労働市場において管理及び監督の機能に責任を有する機関をいう。国内法が規定する場合には、労使団体がこれらの機能を遂行することができる。
(l) 「均等機関」とは、指令2006/54/EC(男女均等待遇指令)第20条に基づき指定された機関をいう。
(m) 「労働者代表」とは、国内法及び/又は慣行に従い労働者代表をいう。
2 本指令において、差別には次のものが含まれる。
(a) 指令2006/54/EC(男女均等待遇指令)第2条第2項にいうハラスメント及びセクシュアルハラスメント、並びに人がかかる行為を拒否するか又は受け入れるかに基づくいかなる不利益待遇もかかるハラスメント及び待遇が本指令に規定する権利の行使に関連するか又はその結果である場合。
(b) 性別に基づいて人を差別するよう指示すること。
(c) 理事会指令92/85/EEC(母性保護指令)にいう産前産後休業に関連するいかなる不利益待遇。
(d) 父親出産休暇、育児休業又は介護休業に関するものを含め、指令(EU)2019/1158(ワークライフバランス指令)にいう性別に基づく労働者へのいかなる不利益待遇。
(e) 性別と、指令2000/43/EC(人種・民族均等指令)及び指令2000/78/EC(一般均等指令)の下で保護される他のいかなる差別事由との組合せに基づく差別である複合差別
3 第2項第(e)号は、性別以外の他の保護される差別事由に関連して本指令にいうデータを収集する追加的な責任を使用者に対して負わせるものではない。
 
第4条 同一労働及び同一価値労働
1 加盟国は、使用者が同一労働又は同一価値労働に対する同一賃金を確保する賃金構造を有することを確保するために必要な措置をとるものとする。
2 加盟国は、均等機関と協議して、本条に規定する基準に則って労働の価値の評価及び比較を支援し指導するための分析用具又は方法論を入手できるようにしかつ容易に利用できるようにすることを確保するために必要な措置をとるものとする。これら用具又は方法論は、使用者及び/又は労使団体が性別に基づくいかなる賃金差別をも排除する性中立的な職務評価及び職務分類制度を容易に確立し利用することができるようなものとする。
3 適当な場合は、欧州委員会は欧州男女均等機構(EIGE)と協議して、性中立的な職務評価及び職務分類制度に関するEUレベルの指針を更新することができる。
4 賃金構造は、労働者が労働の価値に関して比較可能な状況にあるかどうかを、存在する場合には労働者代表と合意した客観的かつ性中立的な基準に基づいて評価することができるようなものとする。これら基準は直接であれ間接であれ労働者の性別に基づかないものとする。これら客観的な基準は技能、努力、責任及び労働条件、並びに適当であれば特定の職務又は職位に関連する他のいかなる要素をも含むものとする。これら基準はまた、性別に基づく直接または間接のいかなる差別も除き、客観的かつ性中立的な方法で適用されるものとする。とりわけ関連する対人能力(ソフトスキル)が過小評価されないものとする。
 
第2章 賃金透明性
 
第5条 採用前の賃金透明性
1 雇用への応募者は、使用者となるべき者から、次の情報を受け取る権利を有するものとする。
(a) 客観的かつ性中立的な基準に基づき当該職位に帰せられる初任給額又はその範囲、及び
(b) 適用される場合には当該職務に関して企業により適用される労働協約の関連する規定。
 かかる情報は、採用面接に先立って、欠員募集広告における公示のように、情報を踏まえて賃金に関する透明な交渉をすることができるような方法で提供されるものとする。
2 使用者は応募者に現職及び前職での賃金を尋ねてはならない。
3 使用者は、同一労働又は同一価値労働に対する同一賃金の権利(「同一賃金の権利」)が掘り崩されることのないよう、欠員募集広告及び職務名が性中立的で採用手続が非差別的な方法で遂行されるよう確保するものとする。
 
第6条 賃金決定及び昇給方針の透明性
1 使用者は、労働者の賃金、賃金水準及び昇給を決定するのにいかなる基準が用いられるのかを労働者が容易に入手可能にするものとする。これら基準は客観的かつ性中立的であるものとする。
2 加盟国は、第1項の昇給に関する義務から労働者50人未満の使用者を適用除外することができる。
 
第7条 情報入手権
1 労働者は、第2項及び第4項に従い、自身の個別賃金水準と、自身と同一労働又は同一価値労働に従事する労働者範疇についての男女別の平均賃金水準に関する情報の提供を求め入手する権利を有する。
2 労働者は、国内法及び/又は慣行に従い、その労働者代表を通じて第1項にいう情報の提供を求め入手する可能性を有するものとする。均等機関を通じて当該情報の提供を求め入手する可能性も有するものとする。
 受け取った情報が不正確又は不完全であるときには、労働者は自ら又はその労働者代表を通じて、提供されたいかなるデータに関しても追加的かつ合理的な明確化と詳細の提供を求め、実質的な回答を受け取る権利を有する。
3 使用者は全ての労働者に対して、毎年、第1項にいう情報を入手する権利及び当該権利を行使するために労働者がとるべき手段について情報提供するものとする。
4 使用者は、請求がなされてから2か月を超えない合理的な期間内に、第1項にいう情報を提供するものとする。
5 労働者は同一賃金原則を執行する目的でその賃金を開示することを妨げられないものとする。とりわけ、加盟国は労働者に対してその賃金に関する情報を開示することを制限するための契約条項を禁止する措置を設けるものとする。
6 使用者は、本条に基づき自身の賃金又は賃金水準に関する情報以外の情報を入手したいかなる労働者に対しても、当該情報を同一賃金の権利を防御すること以外のいかなる目的のためにも用いることのないように求めることができる。
 
第8条 情報の利用可能性
 使用者は、本指令第5条、第6条及び第7条に従い労働者又は応募者といかなる情報をも共有する場合にも、その特有の必要性を考慮して障害者にも利用可能な形式で提供するものとする。
 
第9条 男女賃金格差の報告
1 使用者は本条に従い、その組織に関する次の情報を提供するものとする。
(a) 男女賃金格差、
(b) 補足的又は変動的部分における男女賃金格差、
(c) 男女賃金中央値格差、
(d) 補足的又は変動的部分における男女賃金中央値格差、
(e) 補足的又は変動的部分を受け取っている男女労働者の比率、
(f) 四分位賃金帯ごとにおける男女労働者の比率、
(g) 通常の基本給及び補足的又は変動的部分ごとに見た労働者範疇ごとの男女賃金格差。
2 労働者250人以上の使用者は、2027年6月7日までに及びその後は毎年、第1項に規定する情報を提供するものとする。
3 労働者150人以上249人以下の使用者は、2027年6月7日までに及びその後は3年に1回、前年に係る第1項に規定する情報を提供するものとする。
4 労働者100人以上149人以下の使用者は、2031年6月7日までに及びその後は3年に1回、前年に係る第1項に規定する情報を提供するものとする。
5 加盟国は、労働者100人未満の使用者が第1項に規定する情報を自発的に提供することを妨げないものとする。加盟国は国内法事項として、労働者100人未満の使用者に対して賃金に関する情報を提供するよう求めることができる。
6 情報の正確性は、適用された方法論を利用可能である労働者代表との協議を経て、使用者の経営陣によって確証されるものとする。
7 本条第1項第(a)号から第(g)号までにいう情報は、第29条第3項第(c)号に従いかかるデータを収集し、公表する責任を有する機関に通知されるものとする。使用者は第1項第(a)号から第(f)号までにいう情報をそのウェブサイトに公表するか又は他の手段により一般に入手可能にするものとする。
8 加盟国は、第1項第(a)号から第(f)号までに規定する情報を、使用者から税務機関や社会保障機関に提供されたデータのような行政データに基づいて自ら収集することを決定できる。この情報は第29条第3項第(c)号に従って公表されるものとする。
9 使用者は第1項第(g)号にいう情報をすべての労働者及びその代表に提供するものとする。使用者は当該情報を労働監督機関及び均等機関にその要請により提供するものとする。入手可能であれば、過去4年間の情報も要請により提供されるものとする。
10 労働者及びその代表、労働監督機関並びに均等機関は、使用者に対し提供されたいかなるデータに関しても、いかなる男女賃金格差に関する説明をも含めて、追加的な明確化及び詳細のために質問をする権利を有するものとする。使用者は合理的な期間内に実質的な回答を提供することによりかかる要請に対応するものとする。男女賃金格差が客観的かつ性中立的な要素により正当化されない場合、使用者は合理的な期間内に、労働者代表、労働監督機関及び/又は均等機関と密接に協力してその状況を是正するものとする。
 
第10条 共同賃金評価
1 加盟国は、第9条に従い賃金報告の義務を負う使用者が、次のすべての条件を満たす場合に、労働者代表と協力して、共同賃金評価を実施するよう確保する措置をとるものとする。
(a) 賃金報告が、いかなる労働者範疇において男女労働者の間に少なくとも5%の平均賃金の水準の差異を示し、
(b) 使用者がかかる平均賃金の水準の差異を客観的かつ性中立的基準により正当化することがなく、
(c) 使用者がかかる正当化されない平均賃金の水準の差異を賃金報告の提出の日から6か月以内に是正しない場合。
2 共同賃金評価は、客観的かつ性中立的な要素により正当化することができない男女労働者間の賃金の差異を確認し、是正しかつ予防するために実施されるものとし、次の事項を含むものとする。
(a) 各労働者範疇における男女労働者の比率の分析、
(b) 各労働者範疇ごとの男女労働者の賃金水準及び補足的又は変動的部分の平均値に関する情報、
(c) 各労働者範疇における男女労働者間の平均賃金水準格差の確認、
(d) 平均賃金水準におけるかかる格差の理由及び、もしあれば労働者代表及び使用者によって共同して確立された客観的かつ性中立的な正当事由、
(e) 産前産後休業又は父親出産休暇、育児休業並びに介護休業から復帰した後に、これら休業期間中に労働者範疇に賃金改善が生じた場合には、当該賃金改善から利益を受けた男女労働者の比率、
(f) 客観的かつ性中立的基準に基づいて正当化されない場合は、かかる差異に取り組む措置、
(g) 過去の共同賃金評価からの措置の有効性の評価。
3 使用者は共同賃金評価を、労働者、労働者代表が利用可能にするとともに、第29条第3項第(d)号に従いこれを監視機関に通知するものとする。共同賃金評価はその要請により均等機関及び労働監督機関に利用可能にするものとする。
4 共同賃金評価による措置を実施するときには、使用者は国内法及び/又は慣行に従い、労働者代表と密接に協力して、合理的な期間内に、正当化されない賃金格差を是正するものとする。労働監督機関及び/又は均等機関はこの手続に参加するよう求められることができる。かかる行動には、性別に基づくいかなる直接又は間接の賃金差別が排除されることを確保するために、既存の性中立的な職務評価及び職務分類制度の分析又はそれが欠如している場合には確立を含むものとする。
 
第11条 労働者250人未満の使用者への支援
 加盟国は労働者250人未満の使用者及び労働者代表に対し、本指令に規定する義務を遵守するための技術的支援及び訓練の形式で支援を提供するものとする。
 
第12条 データ保護
1 第7条、第9条及び第10条の下でとられる措置に基づき提供されるいかなる情報も個人データの処理に関わる限りにおいて、規則(EU)2016/679(一般データ保護規則)に従って提供されるものとする。
2 第7条、第9条又は第10条に基づき処理されるいかなる個人データも、同一賃金原則の実施以外のいかなる目的にも使用してはならない。
3 加盟国は、第7条、第9条及び第10条に基づく情報の開示が直接であれ間接であれ識別可能な同僚労働者の賃金の開示につながる場合には、労働者代表、労働監督機関又は均等機関のみが当該情報を入手するものと規定することができる。労働者代表又は均等機関は労働者に対して、同一労働又は同一価値労働を行う労働者の実際の賃金水準を開示することなく、本指令の下で可能な請求に関して助言するものとする。第29条に基づく監視の目的では当該情報は制限なく入手可能とするものとする。
 
第13条 労使対話
 労使団体の自律性を妨げることなく、また国内法及び慣行に従い、加盟国は、適用可能であればその要請に基づき、本指令の下の権利と義務について討議することを通じて、労使団体の効果的な関与を確保する十分な措置をとるものとする。
 加盟国は、労使団体の自律性を妨げることなく、また国内慣行の多様性を考慮して、主として一方の性別の労働者によって遂行されている職務の評価に関する賃金差別及び不利益に取り組む措置に関する労使団体の役割を促進し、団体交渉の権利の行使を奨励する十分な措置をとるものとする。
 
第3章 救済と実施
 
第14条 権利の擁護
 加盟国は、同一賃金原則が適用されないことにより自らの権利が侵害されたと考える全ての労働者に、調停を利用した後に、同一賃金原則に関する権利及び義務の実施のための司法手続が利用可能となるように確保するものとする。かかる手続は、差別が申し立てられた雇用関係が終了した後であっても、労働者及びその代理人として活動する者にとって容易に利用可能なものとする。
 
第15条 労働者の代理又は支援の手続
 加盟国は、国内法により規定された基準に従い、男女間の均等を確保することに合法的な利益を有する団体、組織、均等機関及び労働者代表又はその他の法的主体が、同一賃金原則に関する権利又は義務を実施するいかなる行政上又は司法上の手続についても関与できるように確保するものとする。これらは同一賃金原則に関するいかなる権利又は義務の侵犯の被害者であると主張する労働者にも、その承認を得て、その代理人又は支援者として行動することができる。
 
第16条 補償の権利
1 加盟国は、同一賃金原則に関するいかなる権利又は義務の違反の結果として被害を被ったいかなる労働者も、その被害に対して加盟国によって決定された完全な補償又は賠償を請求し取得する権利を有するように確保するものとする。
2 第1項にいう補償又は賠償は、抑止的かつ被った被害に比例的な方法で、受けた損失及び被害を加盟国が定めるところにより現実的かつ有効な補償又は賠償を確保するものとする。
3 補償又は賠償は、被害を被った労働者を、性別に基づく差別をされなければ、あるいは同一賃金に関する権利又は義務のいかなる違反もなければ、その者がそうあったであろう地位に置くものとする。加盟国は、補償又は賠償に、バックペイ及び関連するボーナス又は現物給付の完全な回復、逸失機会、道徳的偏見、複合差別を含みうる他の関連する要素に依って引き起こされたいかなる被害の補償も、遅延利息とともに含まれることを確保するものとする。
4 補償又は賠償は上限額を設定することにより制限することはできない。
 
第17条 他の救済
1 加盟国は、同一賃金原則に関する権利及び義務の違反の事案において、裁判所又は他の権限ある機関が、国内規則に従って、原告の請求によりかつ被告の負担において、次のものを発することができるように確保するものとする。
(a) 当該違反を差し止める命令、
(b) 同一賃金原則に関する権利及び義務を遵守する措置をとるべしとの命令。
2 被告が第1項に基づき発せられたいかなる命令も遵守しない場合には、加盟国は、適当であれば、権限ある機関又は国内裁判所が、命令の遵守を確保する観点から、再度罰金を科すことができるよう確保するものとする。
 
第18条 立証責任の転換
1 加盟国は、その国内司法制度に従い、同一賃金原則が適用されなかったために自らの権利が侵害されたと考える労働者が、裁判所又は他の権限ある機関において直接又は間接の差別が存在したと推定しうる事実を立証すれば、賃金に関して直接又は間接の差別が存在しなかったことを立証すべきは被告とすることを確保するために適当な措置をとるものとする。
2 加盟国は、申し立てられた直接又は間接の賃金差別に関する司法上又は行政上の手続において、使用者が第5条、第6条、第7条、第9条及び第10条に規定する賃金透明性義務を実施していない場合、かかる差別が存在しないことを立証すべきは使用者とすることを確保するものとする。
 本項第1文は、使用者が第5条、第6条、第7条、第9条及び第10条に規定する義務の不履行が明らかに意図せざるものであり軽微な性格のものであることを立証した場合は適用しない。
3 本指令は、加盟国が同一賃金に関するいかなる権利及び義務を実施するために設けられた手続においても原告により有利な証拠法則を導入することを妨げない。
4 加盟国は事案の事実調査をするのが裁判所又は権限ある機関である手続には第1項を適用する必要はない。
5 国内法により異なる規定をしない限り、本条は刑事手続には適用しない。
 
第19条 同一労働又は同一価値労働の立証
1 男女労働者が同一労働又は同一価値労働を遂行しているか否かを判断する場合、労働者が比較可能な状況にあるか否かの判断は男女労働者が同一の使用者の下で労働している状況に限らず、賃金条件を決定している単一の源泉にまで拡大されるものとする。単一の源泉は、労働者の比較のために有意な賃金の要素を規定している場合に存在する。
2 労働者が比較可能な状況にあるか否かの判断は、当該労働者と同時に雇用されている労働者に限られないものとする。
3 真の比較対象者が存在しない場合、統計又は労働者が比較可能な状況において取り扱われたであろうとの比較を含め、訴えられた賃金差別を立証するために他のいかなる証拠をも利用することができる。
 
第20条 証拠へのアクセス
1 加盟国は、同一賃金の申立てに関する手続において、国内法及び慣行に従い、国内裁判所又は権限ある機関が被告に対して、その管理下にある関連するいかなる証拠をも開示するよう命令することができるように確保するものとする。
2 加盟国は、国内裁判所又は権限ある機関が、同一賃金の申立てに関連するとみなしたときに機密情報を含む証拠の開示を命令する権限を有することを確保するものとする。かかる情報の開示を命じたときには、国内裁判所は国内の手続規則に従い、かかる情報を保護する有効な措置を自由にとることができるように確保するものとする。
3 本条は、加盟国が原告にとってより有利な規則を維持し又は導入することを妨げない。
 
第21条 出訴期間制限
1 加盟国は、同一賃金に関する申立ての提起の期間制限に適用される国内規則が、かかる期間の開始時と継続期間及びそれが停止又は中断される条件を決定するように確保するものとする。これら規則は、当該期間制限が原告が違反を知り又は合理的に知ることが期待できた時よりも前に開始しないように考慮しつつ、期間制限の開始時期、その期間及びその中断又は停止の条件を規定するものとする。加盟国は、違反がなお継続中であるか又は雇用契約が終了前である限りにおいて、期間制限が開始しないものと決定することができる。
2 加盟国は、原告が裁判所に訴えを提起し又は直接使用者に若しくは労働者代表、労働監督機関若しくは均等機関を通じて申立を行うことにより行動を起すと同時に、期間制限が停止し、又は国内法に従い中断することを確保するものとする。
3 本条は申立ての期間満了に関する規則には適用しない。
 
第22条 法的費用
 加盟国は、被告が賃金差別の請求で勝訴した場合に、裁判所が国内法に従い、敗訴した原告が裁判所に訴えを提起する合理的な根拠を有していたか否かを判断し、敗訴した原告が訴訟費用を負担しないように命じることができることを確保するものとする。
 
第23条 制裁
1 加盟国は同一賃金原則に関する権利及び義務の違反に適用される効果的、比例的かつ抑止的な制裁の規則を定めるものとする。加盟国は、当該規則が実施されるようあらゆる措置をとるものとし、かつ遅滞なく欧州委員会に当該規則及び当該措置並びにこれらに影響するいかなる修正をも通知するものとする。
2 加盟国は、第1項にいう制裁が同一賃金原則に関する権利及び義務の違反に対し真に抑止的な効果を保証するよう確保するものとする。これらには国内法に基づいて設定される罰金を含むものとする。
3 第1項にいう制裁は、複合差別を含む違反の状況に適用されるいかなる関連する増悪的又は軽減的要素をも考慮に入れるものとする。
4 加盟国は、同一賃金に関する権利及び義務の違反が反復された事案に対して特別の制裁が適用されるよう確保するものとする。
5 加盟国は、規定された制裁が実際に効果的に適用されるよう確保するためにあらゆる必要な措置をとるものとする。
 
第24条 公契約及び営業権における同一賃金
1 加盟国が指令2014/23/EU(営業権契約授与指令)第30条第3項、指令2014/24/EU(公共調達指令)第18条第2項及び指令2014/25/EU(公益事業体調達指令)第36条第2項に従ってとる適当な措置には、公契約又は営業権の実施において、事業者が同一賃金原則に関する義務を遵守することを確保する措置を含むものとする。
2 加盟国は、公契約及び営業権の実施において同一賃金原則の遵守を確保するために、適当であれば契約機関が制裁及び終了条件を導入することを考慮するものとする。加盟国の機関が指令2014/23/EU(営業権契約授与指令)第38条第7項第(a)号、指令2014/24/EU(公共調達指令)第57条第4項第(a)号、又は指令2014/24/EU(公共調達指令)第57条第4項第(a)号と連動して指令2014/25/EU(公益事業体調達指令)第80条第1項に従って行動する場合、事業者がいかなる適当な方法によっても、賃金透明性義務を遵守していないか又は客観的かつ性中立的基準に基づき使用者により正当化されないいかなる労働者範疇の5%を超える賃金格差があることに関連して第1項にいう義務の違反があると証明できる場合には、公共調達手続への参加から当該事業者を排除することができ、又は加盟国から排除するよう求められうる。これは、指令2014/23/EU(営業権契約授与指令)、指令2014/24/EU(公共調達指令)及び指令2014/25/EU(公益事業体調達指令)に規定するいかなる他の権利及び義務をも妨げない。
 
第25条 迫害及び不利益待遇からの保護
1 労働者及びその労働者代表は、同一賃金に関するその権利を行使したこと又はその権利の保護のために他の者を支援したことを理由に不利益待遇を受けることがないものとする。
2 加盟国はその国内法制において、同一賃金に関する権利又は義務の遵守を実施するための企業内の苦情申立又はいかなる法的手続に対する報復として、労働者代表を含め、労働者が使用者による解雇その他の不利益待遇から保護するのに必要な措置を導入するものとする。
 
第23条 指令2006/54/ECとの関係
 本指令第3章は、指令2006/54/EC(男女均等待遇指令)第4条に規定する同一賃金原則に関するいかなる権利又は義務に関係する手続にも適用するものとする。
 
第4章 通則
 
第24条 保護水準
1 加盟国は、本指令に規定するよりも労働者に有利な規定を導入し又は維持することができる。
2 本指令の実施はいかなる状況下でも、本指令の対象分野における保護の水準を引き下げる根拠とはならないものとする。
 
第28条 均等機関
1 労働監督機関又は労使団体を含め労働者の権利を実施する他の機関の権限に抵触しない限り、指令2006/54/EC(男女均等待遇指令)に従い設立された国内均等機関は本指令の適用範囲内に事項に関する権限を有する。
2 加盟国は国内法及び慣行に従い、同一賃金に関する事項に関して、均等機関、労働監督機関又は労使団体の間の密接な協力及び調整を確保する積極的な措置をとるものとする。
3 加盟国は均等機関に対し、同一賃金の権利の尊重に関してその機能を効果的に遂行するのに必要な十分な資源を提供するものとする。
 
第29条 監視及び意識啓発
1 加盟国は、同一賃金原則の実施及び利用可能な全ての救済の実施について、一貫しかつ調整された監視及び支援を確保するものとする。
2 各加盟国は、本指令を実施する国内の法規定の実施を監視し支援するための機関(「監視機関」)を指定し、かかる機関の適切に運営されるのに必要な手配をするものとする。監視機関は国内の既存の機関又は構造の一部とすることができる。加盟国は、第3項第(b)号、第(c)号及び第(e)号に規定する監視及び分析の機能が単一の中央機関によって確保される限り、意識啓発及びデータ収集の目的で複数の機関を指定することができる。
3 加盟国は、監視機関の任務として次の事項を含むように確保するものとする。
(a) 公共部門及び民間部門の企業及び組織、労使団体並びに一般大衆に対して、同一賃金に関する事項における複合差別に対処することを含め、同一賃金原則及び賃金透明性の権利について意識啓発すること、
(b) 男女賃金格差の原因を分析し、賃金不平等を評価する用具を考案し、とりわけ欧州男女均等機関の分析作業と用具を利用すること、
(c) 第9条第7項に基づき使用者から受領したデータを収集し、第9条第1項第(a)号から第(f)号までにいうデータを容易に利用でき利用者に分かりやすい方法で、使用者間、業種間、関係加盟国の地域間での比較ができるように、迅速に公表すること。入手可能であれば過去4年間の情報も利用可能とすること、
(d) 第10条第3項に基づき共同賃金報告を収集すること、
(e) 裁判所に提起された賃金差別の訴え及び均等機関を含む権限ある公的機関に提起された申立ての件数及び種類に関するデータを集計すること。
4 加盟国は、2028年6月7日までに及びその後は2年に1回、第3項第(c)号、第(d)号及び第(e)号にいうデータをまとめて欧州委員会に提供するものとする。
 
第30条 団体交渉及び団体行動
 本指令は、国内法又は慣行に従って労働協約を交渉し、締結し及び実施する権利並びに団体行動をする権利に対していかなる面でも影響を及ぼさないものとする。
 
第31条 統計
 加盟国は、欧州委員会(欧州統計局)に毎年、男女賃金格差を未調整の形式で算定した各国更新データを提供するものとする。この統計は、性別、産業部門、労働時間(フルタイム/パートタイム)、経済的管理(公的所有/私的所有)及び年齢によって分類され、毎年算定されるものとする。
 第1項にいうデータは、参照年たる2026年の数値を2028年1月31日から提出するものとする。
 
第32条 情報の普及
 加盟国は、本指令に従って採択された規定及び効力を有する既存の関係規定を、全ての適当な手段により、その領域内にわたって関係者の関心を喚起するものとする。
 
第33条 実施
 加盟国は、本指令が追求する結果が常に確保されるために必要なあらゆる手段をとることを前提に、労使団体の役割に関する国内法及び/又は慣行に従い、本指令の実施を労使団体に委任することができる。これには次の事項が含まれる。
(a) 第4条第2項にいう分析用具及び方法論の開発、
(b) 効果的、比例的かつ抑止的な罰金と同等な金銭的制裁。
 
第34条 国内法転換
1 加盟国は、2026年6月7日までに本指令を遵守するのに必要な法律、規則及び行政規定の効力を発生させるものとする。これは直ちに欧州委員会に通知するものとする。
 欧州委員会に通知する際、加盟国はまたそれに国内法化規定の労働者250人未満企業の労働者と使用者に対する影響の評価の結果の概要及びかかる評価が公表された参照先を添付するものとする。
2 加盟国が第1項にいう規定を採択する際には、本指令への言及規定を含めるか又は官報掲載時にかかる言及を行うものとする。かかる言及を行う方法は加盟国によって規定されるものとする。
 
第35条 報告及び再検討
1 2031年6月7日までに、加盟国は欧州委員会に対し、本指令がどのように適用され、実際にどのような影響が生じているのかに関する情報を通知するものとする。
2 2033年6月7日までに、欧州委員会は欧州議会及び閣僚理事会に対し本指令の実施に関する報告を提出するものとする。この報告は、とりわけ第9条及び第10条に規定する使用者の規模要件とともに、第10条第1項に規定する共同賃金報告の義務が生ずる5%要件について検討するものとする。欧州委員会は適当であれば必要とみなす立法改正を提案するものとする。
 
第36条 効力発生
 本指令はEU官報における公示の20日後に効力を発生する。
 
第37条 名宛人
 本指令は加盟国に宛てられる。

 

中田邦博/鹿野菜穂子編『基本講義 消費者法[第6版]』

09654 中田邦博/鹿野菜穂子編『基本講義 消費者法[第6版]』を、執筆者の一人である弁護士の板倉陽一郎さんよりお送りいただきました。

https://www.nippyo.co.jp/shop/book/9654.html

正直全く不案内な分野ではありますが、板倉さんが執筆されている第20章の「デジタルプラットフォームと消費者」については、フリーランスも含めた労働法の観点と密接に絡み合う領域でもあり、勉強させていただこうと思います。

 

 

 

2026年3月10日 (火)

『月刊公明』4月号に拙著書評

G112604500  『月刊公明』4月号に、是川夕さんが拙著『外国人労働政策』の書評を寄稿されています。

https://komeiss.jp/products/detail.php?product_id=431

是川さんは云うまでもなく『ニッポンの移民』(ちくま新書)で知られる外国人問題の専門家ですが、その目に拙著はどのように映ったのでしょうか。

 技能実習制度がなぜできたのか。この極めてシンプルな問に正面から答えると同時に、その理由を企業や政治家、政府など特定のアクター(主体)の意図に還元せず、当時の行政内部での政策過程、および勢いを増していた日本型雇用への評価の高まりから説明したのが本書である。・・・

その説明は概ね妥当だと判断していただきました。

 私も外国人労働者政策を専門としており、同時期の制度形成については近著『ニッポンの移民』(ちくま新書)で扱ったが、濱口氏の「意図せざる結果」としての技能実習制度の創設、その背景にある行政官のセクショナリズム、日本型雇用の影響という見方は妥当であり、その学術的意義は大きいと考える。
 さらに本書は戦後日本の労働政策上にこれらを位置づけ、今後の外国人労働者政策を具体的な制度論として示した点が類書に例を見ない画期的な点だ。
 最後に80年代後半の労働省と法務省の対立の最終局面において、在日韓国民団が労働省案による在日コリアンへの就職差別悪化の恐れを主張したことで、この対立が法務省側の勝利に終わったことは興味深い。当時の政府を含めた世論が在日韓国民団の側に近かったことを示すものであり、現代の私たちにとっても教訓に満ちたものといえるだろう。

最後のところについては、そもそも当時の労働官僚が外国人という問題を取り上げる際に在日韓国人の問題を全く考えておらず、民団の抗議を受けて初めて気がついたという状況であったことが大きかったのではないかと思います。

Chukogaikoku_20260310120201

 

 

 

2026年3月 8日 (日)

橋本陽子他『法の歴史と法解釈の基礎』

9784502530913_430 西川洋一・大西楠テア・岡孝・長谷川貴陽史・橋本陽子『法の歴史と法解釈の基礎』(中央経済社)を、著者の一人である橋本陽子さんよりお送りいただきました。

https://www.biz-book.jp/isbn/978-4-502-53091-3

法の歴史と法解釈の技法に焦点を当てた法学入門書。西欧法の歴史と日本における継受の軌跡を紐解き、法解釈の技法を学ぶことで、歴史的素養を身につけることを目指す。

古代ローマ法から始まって、西洋法制史、近代法学史、近代日本の法継受のさま、末弘厳太郎と川島武宜そして法解釈の技法、と普通の法学部生だとあんまり勉強しないようなややニッチな基礎法学の話題を、この出版社から刊行するのか、と感じました。

第1章 ヨーロッパにおける法発展のいくつかの特徴 西川 洋一
はじめに
1 法律学の勉学はなぜ難しく感じられるのか
2 歴史的存在としての「法」をいかにとらえるか
第1節 ヨーロッパの法の3つの源流:ローマ共和政から初期中世まで
1 古代ローマ法とその展開
2 カトリック教会法の形成
3 非ローマ世界における法の展開
第2節 12世紀における法の構造変化
1 教会改革と法の革新
2 大学と学識法の成立
3 新しい法学普及の歴史的意味
第3節 「ヨーロッパ的な」法・国家構造の発展
1 領域的・属人的妥当原理にもとづく複合的法秩序の形成
2 政治秩序の構造化
第4節 近代への緩やかな歩み
1 政治構造の緩慢な近代化
2 近世法の多層的構造

第2章 近代法学の成立と現代比較法 大西 楠テア
はじめに
第1節 近代私法学の成立
1 フランス民法典の編纂と近代市民法
2 法典論争―歴史法学派の誕生
3 パンデクテン法学
4 ドイツ民法典の制定と利益法学の台頭
第2節 近代公法学の成立と展開
1 ドイツ帝国の成立と公法学方法論の刷新
2 イェリネックと非実証主義国法学
3 ワイマール期からナチス期にかけての国法学
第3節 現代比較法学
1 比較法学の歴史
2 比較法の方法
3 比較法の意義
第4節 ヨーロッパ統合と法
1 ヨーロッパ統合史
2 EU法の基本構造
3 EU法と加盟国法の関係
第5節 グローバル社会の出現と近代法の変容

第3章 西洋法の継受と民法の制定 岡 孝
第1節 出発点
1 不平等条約の問題点
2 1875年(明治8年)太政官布告第103号裁判事務心得第3条
3 江藤新平司法卿のもとでの試み
4 大木喬任司法卿がボアソナードに民法起草を依頼
5 ボアソナードとは
第2節 旧民法の制定過程
1 民法編纂局時代
2 井上馨外相による条約改正交渉
3 条約改正案に対するボアソナードの反対
4 司法省法律取調委員会時代
5 旧民法前半部分の公布
6 旧民法後半部分の編纂
7 旧民法後半部分の公布
第3節 法典論争――旧民法施行延期の流れ
1 民法典論争の発端――法学士会の意見書
2 「民法出でて忠孝滅ぶ」
3 旧民法と明治憲法との関係
4 旧民法の問題点
5 断行派の延期派に対する批判の具体例
6 延期派の勝利
7 延期法案はすぐには法律にはならなかった
第4節 泰西主義に従った明治民法典の編纂
1 欧米列強から要求された泰西主義とは
2 法典調査会の設置と機構改革
3 法典調査の方針―旧民法修正の方針
4 編別構成の変更―パンデクテン方式の採用
5 比較法の所産
6 民法典の公布・施行
第5節 西洋法継受の際の議論
1 土地と建物は一体か別物か
2 未成年養子
3 まとめ――西洋法継受に際しての起草者の主体的な選択

第4章 社会の現実と法 長谷川 貴陽史
はじめに
第1節 末弘厳太郎
1 大正デモクラシー
2 末弘厳太郎
3 末弘厳太郎の法解釈方法論
第2節 川島武宜
1 敗戦と復興―末弘から川島へ
2 川島武宜
3 川島武宜の法解釈方法論
4 川島武宜に対する評価と批判
5 民事訴訟の法意識―川島説に対する批判と擁護
6 その後

第5章 法解釈入門 橋本 陽子
はじめに
第1節 法規範の適用(三段論法)
1 三段論法とは何か
2 規範の発見
3 包摂
4 法律効果
第2節 法解釈の方法―概説―
1 「真の法規範」の発見
2 法解釈の方法
3 法の継続形成
第3節 法解釈の4つの基準(「サヴィニーのカノン」)
1 サヴィニーの見解
2 4つの解釈基準(「カノン」)
3 主観説と客観説
4 ドイツの判例におけるカノンの適用例
5 一般条項の解釈
第4節 様々な解釈方法
1 文言解釈(文理解釈)
2 拡張解釈
3 縮小解釈
4 反対解釈(argumentum e contrario, argumentum e silentio)
5 もちろん解釈(argumentum a fortiori)
6 類推解釈
7 反制定法解釈(contra legem)
第5節 裁判例の検討
1 タトゥー施術は医業か
2 マイニングを行わさせるプログラムと不正指令電磁的記録保管罪
3 中小企業退職金共済法14条1項1号にいう配偶者
4 労基法の適用が除外される「家事使用人」の意義

一番最後に出てくる裁判例が、例の渋谷労基署長事件なんですね。

 

2026年3月 6日 (金)

丸善ジュンク堂書店のPR誌『書標』に拙著の書評

Honnoshirube202603 丸善ジュンク堂書店のPR誌『書標』に拙著『外国人労働政策』の書評が載りました。

https://cdn.shopify.com/s/files/1/0858/8266/7312/files/2026honnoshirube.03.pdf

Chukogaikoku_20260306203901 最近の選挙でも争点に上がってくる外国人政策。しかし、日本が今まで移民に対しどう対応してきたのか、何ともわかりにくく感じることはないだろうか。三〇年以上前から労働力として外国人が求められる状況がありながら、法的に受け入れるのは定住者としての日系人と表向きは労働力ではない研修生という枠組みが続き、そのひずみにより多くの人権問題が起こってきた。ここ数年でだいぶ整理されてきたとはいえ、まだ矛盾を抱えている。なぜこのような奇妙な状態になってしまったのか。当時の報道などを引きながら、元労働省に属し、労働政策の第一人者である著者が解き明かす。見えてくるのが当時の法務省と労働省の権限争いと、実情を鑑みずに作られた制度設計。自分の立ち位置から見えることを全てとし、立場の違う提言は排除する… …人権も国力も関わるこの問題、当時の愚を繰り返さぬようにしたい。

本屋さんのオススメに入れていただいたというのは、とてもうれしいことです。

 

 

本田恒平『非正規雇用の政治経済学』

672274 本田恒平さんから初の単著となる『非正規雇用の政治経済学 外部労働市場拡大をめぐる政労使関係 1985-1999』(ミネルヴァ書房)を直接手渡しで頂きました。

https://www.minervashobo.co.jp/book/b672274.html

労働者派遣法の制定に始まる1980から90年代の非正規雇用の拡大はどのようにして実現したのか。従来日経連の報告書「新時代の『日本的経営』」などに着目して、使用者側が主導したとされることが多かった一連の政策過程について、本書では政・労・使それぞれの動向を丁寧に追跡、三者が果たした役割を解き明かしながらその全貌に迫っていく。現代日本の雇用流動化の起点に迫る本格的研究。

まずもって、労働政策の政策過程を緻密に分析するという、日本ではあまりきちんと行われてこなかった分野に、ここまで真っ正面から取り組んだ業績を、若い本田さんがまとめられたことを喜びたいと思います。私自身が、今まで何回もやや大雑把な形で向かい合ってきた領域であるだけに、読みながら「こういうのが読みたかったんだよ」という気持ちが湧いてきました。

その上で、年長者であり、本書が対象としている期間を、労働政策に関わる者として、また労働政策の研究者として目の当たりに見てきた者として、いくつかコメントを。

◎ 現代日本における非正規労働の拡大はいかにして始まったのか。関係者へのインタビュー調査も交えながら、その起点となった政策過程の全貌を解き明かす。
◎ 日経連の報告書「新時代の『日本的経営』」の役割を重視する従来の通説を覆す。

あとがきにあるように、本田さんは1995年生まれであり、この年は日経連の「新時代の『日本的経営』」が出た年です。つまり、本田さんは「新時代の『日本的経営』」と同い年なんですね。そのこともあってか、この「新時代の『日本的経営』」が非正規化をもたらした諸悪の根源であるというような言説に対して、そうではないということを一つ一つ積み重ねるように論証していきます。

ただ、その時代を同時代人として生きてきた私からすると、それこそ引用されている高梨昌の発言ではないですが、そんなこと読めば分かるだろう、という感じもするんですね。

同時代人の記憶では、1990年代には「新時代の『日本的経営』」はほぼもっぱら正社員の話だと受け止められていたように思います。当時はやりの成果主義や裁量労働制といった問題と重なる形で、それまでの能力主義から成果主義へ、年俸制へという正社員に対する要求水準の高度化、濃縮化の半面として、あの人口に膾炙した3類型の図が出てきたわけで、この報告書をよく読むと、高度専門能力活用型にしても雇用柔軟型にしてもあんまりきちんと紙数を割いて論じられていないのです。

もちろん、90年代後半期は本書が取り上げている派遣法等の規制緩和が進められていた時期ですが、そういう外部労働市場の緩和論と「新時代の『日本的経営』」はやや別次元で、むしろ同時代のもう一つの労働規制緩和論であった裁量労働制の方と密接につながっていたように思います。

では、非正規労働者増大の諸悪の根源が「新時代の『日本的経営』」であるというような言説はいつから広まったのかというと、もちろん、いついかなる時も経営側の悪口を言い続けている人々というのはいますが、そういうのを別にすれば、2000年代半ばの格差社会論が急激に盛り上がった時期だったのではないかと思います。それに先行する数年間は構造改革や規制緩和がもてはやされ、マスコミもそういう論調であったのが、急に手のひらを返すように、格差社会が問題だというキャンペーンが始まりました。そこで、何ごとにも健忘症のマスコミが都合良く見つけてきた「諸悪の根源」が、ほぼ10年前に出されていた「新時代の『日本的経営』」であった、というのが、同時代を見てきた私の印象です。

もう一つ、その時期には、非正規の増加の原因をもっぱら派遣法改正に求め、その「戦犯」として高梨昌さんなどを追いかけ回すという一部マスコミの行動が目に余る状況でもありました。当時、マスコミの軽薄さを痛感した人々は多かったのではないかと思います。

こうした時期は、もちろん本田さんはまだ生まれたばかりであり、また小学校に通っていた時期です。なので、その後のでっち上げられた「通念」を素直に受け入れていた本田さんが、それに反する事実発見に力がこもるのはすごくよく分かります。ほんの10年、20年といった時間の流れの中でも、集団的な記憶の書き換え、都合の良い記憶の捏造というのは起るものであるということを、この追及はよく示しているのでしょう。

もう一つの本書が熱心に追及しているのは、労働市場の規制緩和は、労働組合の少なくとも一部が積極的に推進していたんじゃないかという事実です。これまた同時代人としてはかなり強く認識していたはずのことなんですが、いつのまにか集団的記憶として希薄化されて、本田さんのような若い世代に受け継がれていたことについて、よく調べてみたら実はこうだったんじゃないか、と改めて政策過程分析によって浮かび上がらせるという構成になっています。

なので、一読まさにその通り、と感じつつ、少し付け加えたい点もあります。本書では主要な規制緩和派の産別としてゼンセンと電機連合を挙げており、その動機として、ゼンセンは大店法廃止、電機連合は空洞化を挙げています。それはマクロな背景としてはそうかもしれませんが、ゼンセンの場合、既にこの頃には非正規の組織化を大々的に進めており、非正規労働者を組織化のブルーオーシャンとして積極的にとらえるスタンスであったことが重要ではないかと思います。実際、この後ゼンセンは人材サービスゼネラルユニオンを結成し、派遣・請負分野を組織化していこうとしていきます。なので、それまでの正社員中心の企業別組合的行動様式の延長線上ではなく、未組織分野の組織化というビジネスモデルに適合的な環境の造成という観点から、他の組合が手出しができないような労働市場の形成を目指すその行動様式を見ていく必要があると思われます。

とまあ、老境に差し掛かりつつある人間の繰り言を書き並べましたが、いずれにしても、労働関係の多くの方々に本書が読まれることを心から希望したいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

日経新聞の経済教室に寄稿「ジョブ型雇用の現在地 制度の土台は日本型のまま」

本日の日本経済新聞の経済教室に、「ジョブ型雇用の現在地 制度の土台は日本型のまま」を寄稿しております。

ジョブ型雇用の現在地(上) 制度の土台は日本型のまま

「ジョブ型」というのは奇妙な言葉である。jobという英語が元になっているけれども、ジョブ型に当たる英語(job-type)は存在しない。

日本ではジョブ型雇用、ジョブ型人事、ジョブ型賃金などとジョブ型を冠した言葉が氾濫しているけれども、job-type employmentのように該当する英語は(日本のジョブ型論を紹介する文脈以外では)ない。英語に限らず他の外国語にもない。・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

2026年3月 5日 (木)

沖縄タイムズに拙著の書評が

Chukogaikoku_20260305142301 沖縄タイムズの2月28日号に、拙著『外国人労働政策』の本格的な書評が載っていました。評者は、『移民の経済学』(中公新書)を書かれている青山学院大学の友原章典さんです。

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1783970

 本書は、日本における近年の外国人受け入れ制度の変遷を整理した労作だ。とりわけ多くのページが「外国人労働問題の中心を占め続けてきた」とする「ブルーカラー外国人労働者」の考察に割かれている。

 ブルーカラー労働者である外国人を、就労ではないというゆがんだ形で受け入れてきた問題点。本書ではその制度的問題は、(旧)労働省対法務省という霞が関の権限闘争に起因すると分析する。その上で、日本型雇用システムに基づいた思想もそうした制度設計に影響したという。・・・

歴史書として謎解きを試みた本書の趣旨をきちんと受け止めていただいていますが、おそらく移民問題研究者としての関心の在処の違いもあり、問題はそこじゃない、と感じられたのでしょう。

・・・最近議論となっている生活者としての外国人の側面には踏み込まない本書。生活者という視点の欠如が現在の混乱をもたらしているという議論に興味のある読者には期待外れの内容かも知れない。・・・

という批判(この「読者」は友原さんご自身でしょう)も書かれています。

 

 

 

 

 

 

 

本日、武田砂鉄ラジオマガジンに出ました

Chukogaikoku_20260305142301 本日午前中、文化放送の武田砂鉄ラジオマガジンに出て、拙著『外国人労働政策』についてお話をしてきました。

https://x.com/rm_joqr/status/2029360087345795264

その音声は、ここで聞けるようになっているようです。

https://www.youtube.com/watch?v=ruihfX2BrSo

 

 

 

2026年3月 3日 (火)

荒木尚志『劳动法(第五版)』

S35409326 荒木尚志著、仲琦『劳动法(第五版)』(法律出版社)をお送りいただきました。

https://book.douban.com/subject/38246784/

今は中労委の会長をされている荒木尚志先生の分厚い教科書を、弟子の仲琦さん(JILPT)が中国語に訳した大著です。

本书为日本各大高校的法律专业本科及法学硕士的指定劳动法教材,日本司法资格考试劳动法学科指定教材,同时也是日本劳动法律师和人事相关从业者处理实务问题时广泛参考的系统和权威的劳动法书籍。本书从2009年初版发行以来,历经多次改版,反映了日本新的实务问题和劳动立法动态。本书深入浅出地梳理了日本劳动法的整体理论框架,对成文法中并无反映的判例法理及重要法律问题的相关学说进行了详尽的点评,作者更以历次劳动法律起草人和修订人的身份,就各个相关立法的立法背景、法律修订时劳资双方争论之焦点等作出了权威解读,同时从比较法角度阐明了日本劳动法相较德、法、美、英等国的特点和形成原因。此外,本书还就现行立法未能完善应对的劳动法律问题也进行了点评和展望,可谓现阶段日本劳动法专业理论和实务书籍的巅峰力作。

本书作者荒木尚志教授将本书特点概括为:撰写本书之际,作者力图将其打造成能够同时满足劳动法实务家、政策制订者、学习劳动法的学生、法学硕士学生,以及一般读者的需要的,鱼与熊掌兼得之新时代劳动法理论体系书。为了达成这一目标,本书有以下特色:

第一,以劳动法的框架部分为正文,将分散的论点以独立小项的形式进行讨论。第二,像上课写板书那样,以图示的形式通俗易懂的表现理论和制度的关系。第三,大量使用前后相互引用,让读者通过自学也能理解劳动法复杂的体系和理论间的关联性。第四,引用判例之际,尽可能写明案例背景,让读者明白理论与实际是怎样结合的。第五,客观把握日本劳动法的现状,通过国际比较的方式对今后的方向性进行探讨。第六,对于还没有得到充分讨论的理论及实务上重要的论点,积极展开讨论,对于今后的立法政策的方向也有涉及。

というわけで、眺めていると(眺めるしかできませんが)、この概念は中国語でこう言うのか、というのが色々見えてきて面白いです。

第一部分 劳动法总论
第一章 劳动法的形成和发展
第一节 何谓劳动法
第二节 劳动法的形成和发展
一、市民法原理的修正
二、日本劳动法的发展
三、劳动法学的发展和现代的课题
第二章 劳动关系的特色、劳动法的体系、劳动条件规制系统
第一节 劳动关系的特色和劳动法
一、劳动关系的特色
二、劳动关系的特色和劳动法
第二节 劳动法的体系和宪法
一、劳动法的体系
二、劳动基本权
三、宪法的人权规定和劳动人权法
四、使用者的营业自由、财产权的保障和劳动法
第三节 劳动条件规制体系
第二部分 个别劳动关系法
第三章 个别劳动关系法总论
第一节 劳动保护法和(广义的)劳动合同法
第二节 作为劳动保护法的基本法的劳动基准法
一、劳动基准法的目的和基本理念
二、相关法令的分离独立和规制的再编
三、作为劳动保护法的基本法的劳动基准法
第三节 劳动基准法、劳动合同法上的劳动合同和民法上的劳务供给合同
一、劳动合同和民法上的雇佣、承揽、委任
二、劳动合同和雇佣合同
第四节 劳动基准法、劳动合同法的适用范围
一、《劳动基准法》的适用范围和适用除外
二、《劳动合同法》的适用范围和适用除外
第五节 劳动基准法、劳动合同法的劳动者
一、劳动者属性的判断基准
二、具体的劳动者属性判断
三、劳动者属性判断的视角
第六节 劳动基准法、劳动合同法上的使用者
一、劳动合同上的使用者
二、作为《劳动基准法》的责任主体的使用者
第七节 个别劳动关系法的实施保障
一、《劳动基准法》的效力、实施保障手段
二、《劳动合同法》的效力、履行确保手段
第一篇 劳动保护法
第四章 劳动者的人权保障(劳动宪章)
第一节 劳动条件规制的理念和劳动条件的对等决定
第二节 不当人身拘束的禁止
一、强制劳动的禁止
二、赔偿预定的禁止
三、预借金相抵的禁止
四、强制储蓄的禁止等
第三节 中间盘剥的禁止
第四节 公民权行使的保障
第五节 免予职场骚扰的保护
一、职场的骚扰规制
二、职权骚扰
第六节 劳动关系中个人信息、隐私的保护
一、劳动关系和个人信息、隐私
二、《个人信息保护法》和劳动关系
三、个人信息、隐私侵害的法律责任
第五章 雇佣平等、工作生活平衡法制
第一节 均等待遇
一、均等待遇原则
二、被禁止的歧视理由
三、均等待遇的违反
第二节 雇佣方面的残疾人歧视禁止
一、残疾人雇佣率制度和残疾人歧视禁止
二、残疾人歧视禁止
三、提供合理顾虑
四、纠纷解决制度
五、歧视禁止规定、合理顾虑提供义务在私法上的效果
第三节 男女雇佣平等法制
一、男女薪金歧视的禁止
二、男女平等对待法理(公序法理)
三、《男女雇佣机会均等法》的制定和发展
四、《男女雇佣机会均等法》的规制内容
第四节 育儿照护休业法
一、育儿休业
二、照护休业
三、子女的看护休假
四、照护休假
五、所定外劳动的限制(免除加班)
六、关于加班、深夜从业限制,所定劳动时间缩短(短时间勤务)措施,调动等的顾虑
七、禁止针对利用育儿、照护支援措施的不利对待
八、育儿休业取得情况的公布义务
第六章 薪金
第一节 薪金制度和法律规制
第二节 薪金请求权的成立
一、双务合同下作为义务履行的劳务提供
二、基于合意的薪金请求权
三、劳务履行不能和薪金请求权
第三节 《劳动基准法》上的薪金
一、《劳动基准法》上的"薪金"定义的意义
二、劳动的代偿
三、使用者向劳动者支付之物
第四节 各种薪金制度的法律问题
一、奖金
二、年薪制
三、退职金
四、企业年金
第五节 《劳动基准法》上的薪金规制
一、平均薪金
二、薪金支付四原则
三、非常时期支付
四、休业补贴
五、计件工资的保障给付
六、时效
第六节 最低工资法
一、最低薪金规制的内容
二、最低薪金的决定方式
第七节 薪金债权的履行确保
一、《劳动基准法》上的强制履行
二、民商法上的优先受偿权
三、破产程序中的薪金保护
四、《薪金支付确保法》
第七章 劳动时间
第一节 劳动时间规制的整体情况
一、劳动时间规制的开展
二、劳动时间规制的体系
第二节 劳动时间、休息、休息日规制的原则
一、法定劳动时间
二、休息时间
三、休息日
第三节 时间外劳动、休息日劳动规制
一、法定时间外劳动、所定时间外劳动
二、允许时间外、休息日劳动的情形
三、时间外和休息日劳动义务
四、加班费
第四节 劳动时间的弹性规制——变形劳动时间制、弹性时间制
一、以1个月以内为单位期间的变形劳动时间制(《劳动基准法》第32条之2)
二、以1年以内为单位期间的变形劳动时间制(《劳动基准法》第32条之4)
三、1周单位的非定型变形劳动时间制(《劳动基准法》第32条之5)
四、弹性时间制(《劳动基准法》第32条之3)
第五节 劳动时间的概念和计算
一、劳动时间概念的多义性
二、劳动时间性判断框架
三、"《劳动基准法》上的劳动时间"概念
四、劳动时间计算方法的规制
第六节 拟制劳动时间制
一、职场外劳动(《劳动基准法》第38条之2)
二、裁量劳动制
第七节 高度专业人才制度
一、制度的宗旨和概要
二、对象业务
三、对象劳动者
四、导入程序
第八节 劳动时间、休息、休息日规制等的适用除外
一、农业、畜牧、水产业从事者
二、管理监督者、处理机密事务者
三、监视、断续劳动从事者
第八章 年次带薪休假
第一节 年休权的宗旨
第二节 年休权的成立
一、持续工作6个月
二、全劳动日八成以上出勤
三、休假天数
四、休假的分割赋予
第三节 年次带薪休假权的法律构造
一、学说的发展和二分说的确立
二、计划年休的创设和年休权的新整理
三、使用者的年休赋予义务的创设
第四节 年休取得时期的特定
一、根据时季指定权和时季变更权进行特定
二、计划年休制度
三、基于使用者的年休赋予义务的时季指定
第五节 年休权的法律效果
第六节 年休的用途
一、年休自由利用的原则
二、以争议目的利用年休
第七节 未消化年休的处理
第八节 年休取得和不利对待
第九章 年少者、孕产妇等
第一节 概述
第二节 年少者的保护
一、未成年人的劳动合同签订和薪金请求权
二、年少者相关规制
三、对儿童的规制
第三节 孕产妇等的保护
一、从女性保护到母婴保护
二、危险有害业务的从业限制
三、产前产后休业、向轻松业务的转岗、劳动时间
四、育儿时间
五、生理日的从业困难者休假
第十章 安全卫生、劳动灾害
第一节 安全卫生规定
一、《劳动安全卫生法》的制定
二、《劳动安全卫生法》的概要
第二节 劳动灾害及其补偿制度
一、对于劳动灾害的三大救济制度
二、劳灾补偿制度的特征
第三节 劳灾保险制度的概要
一、适用范围
二、保险费
三、劳动基准法的灾害补偿和劳灾保险法上的保险给付
四、复数事业劳动者的劳灾保险给付、劳灾认定
五、保险给付程序
六、时效
第四节 业务灾害的认定
一、"业务上"的判断
二、事故性伤病、死亡
三、业务性疾病(职业病)
四、负担过重造成的脑、心脏疾患以及精神障碍
五、例示疾病以外的"明显的业务起因的疾病"
第五节 通勤灾害
第六节 劳动灾害和损害赔偿
一、民事上的损害赔偿(劳灾民诉)
二、安全顾虑义务
三、劳灾补偿、劳灾保险给付和损害赔偿的调整
第二篇 劳动合同法
第十一章 劳动合同的基本原理
第一节 劳动合同的指导原理
一、合意原则、对等决定原则
二、均衡考虑的原则
三、工作和生活协调的顾虑原则
四、信义诚实的原则
五、禁止权利滥用的原则
六、劳动合同内容的理解促进
第二节 劳动合同中的权利义务
一、主要义务
二、附随义务
三、职务发明和劳动者的权利
第十二章 雇佣保障(劳动合同终止的法律规制)和雇佣体系
第一节 雇佣保障和雇佣、劳资关系体系的关系
第二节 解雇
一、民法中的解雇自由和解约告知期间
二、针对特定期间、特定事由的解雇禁止
三、解雇预告
四、解雇权滥用法理
五、整理解雇
六、解雇权滥用的举证责任
七、解雇权滥用的效果
第三节 解雇、期限届满以外的劳动合同终止事由
一、劳动者的解约(辞职)
二、合意解约
三、退职的意思表示
四、退休
五、当事人的消灭
第四节 劳动合同终止的法律规制
一、退职时的证明
二、财物的返还
三、年少者的返乡旅费
四、劳动保险、社会保险手续
第十三章 劳动关系的成立、开始
第一节 录用的自由和招聘、录用相关法律规制
一、签订合同的自由
二、招聘方法的自由
三、选择、调查的自由
四、法律对于录用的限制
第二节 劳动合同的成立和劳动条件明示
一、劳动合同的成立
二、劳动条件明示义务
三、合同签订过程中的信义则违反责任(合同签订上的过失)
第三节 录用内定
一、录用内定法理
二、录用内定中的法律关系
三、录用内定
第四节 试用期间
第十四章 就业规则和劳动条件设定、变更
第一节 就业规则法制和就业规则的功能
第二节 就业规则的订立、变更相关程序
一、就业规则的订立、申报义务
二、记载事项
三、听取过半数代表的意见
四、周知义务
第三节 就业规则对于劳动合同的效力
一、就业规则对于劳动合同的功能和效力
二、就业规则的最低基准效(强行直接规制的效力)
三、违反法令、集体合同的就业规则和变更命令
四、就业规则的效力和秋北巴士事件大法庭判决
第四节 劳动合同法制定前的就业规则论
一、就业规则的法律性质
二、就业规则不利变更的拘束力
三、就业规则订立、变更程序和判例法理的效力
第五节 《劳动合同法》中通过合意或就业规则设定、变更劳动条件
一、通过合意设定劳动条件的原则
二、劳动合同成立时的就业规则的合同内容补充效(《劳动合同法》第7条)
三、根据合意变更劳动条件的原则和就业规则
四、根据就业规则变更劳动条件(《劳动合同法》第10条)
五、新订立就业规则和《劳动合同法》第10条的关系
六、根据就业规则变更劳资惯例
第六节 个别劳动条件变更法理
一、合意原则和个别的劳动条件变更
二、变更解约告知
第十五章 人事
第一节 雇佣系统和人事、人事权
第二节 教育训练
第三节 人事制度和升职、升格、降格
一、人事制度和升职、升格、降格
二、可否采取法律规制
第四节 调职、出向、转籍
一、调职
二、出向
三、转籍
第五节 休职
一、伤病休职(疾病休职)
二、事故缺勤休职
三、起诉休职
第十六章 企业组织的变动和劳动关系
第一节 绪论
第二节 合并
一、合并中的权利义务的继承(包括继承)
二、劳动合同的继承
第三节 事业让渡
一、事业让渡中的权利义务的继承(个别继承)
二、劳动合同的继承
第四节 公司分割
一、公司分割的定义
二、公司分割和劳动合同的继承问题
三、劳动合同继承法
四、集体合同的继承
五、劳动合同继承相关程序
第五节 公司的解散
一、公司解散和劳动关系
二、公司解散的自由(真实解散)和伪装解散
三、事业让渡解散和劳动关系
第十七章 惩戒
第一节 服务规范、企业秩序和惩戒
第二节 惩戒权的根据
一、判例和学说的发展
二、判例的立场及其定位
三、惩戒处分的司法规制
第三节 惩戒事由
一、违反劳动合同上的主要义务
二、违反附随义务
第四节 惩戒处分的种类
一、谴责、告诫
二、减薪
三、出勤停止(自宅反省、惩戒休职)
四、降格(降职)
五、惩戒解雇、谕旨解雇
第五节 惩戒权行使的滥用审查
第十八章 非典型(非正规)雇佣
第一节 非典型(非正规)雇佣和长期雇佣体系
第二节 有期雇佣劳动
一、期限的规定和法律规制、法律效果
二、合同期间的上限规制
三、有期合同的中途解约
四、有期合同的默示的更新
五、有期劳动合同向无期劳动合同的转换
六、拒绝更新相关的判例法理(雇佣终止法理)
七、不合理的劳动条件差异的禁止
第三节 短时间劳动
一、短时间劳动者的多样的定义及其实际情况
二、短时间劳动者和劳动法制、社会保险、税制
三、《短时间劳动法》的制定、修订和2018年《短时间有期雇佣劳动法》
第四节 短时间有期雇佣劳动法
一、对象劳动者
二、劳动条件明示、就业规则
三、短时间有期雇佣劳动者和通常劳动者的均衡、均等规制
四、均衡待遇的努力义务、实施义务、顾虑义务
五、向通常劳动者的转换
六、雇佣管理上应采取的措施相关的说明义务
七、行政上的履行确保、纠纷解决
第五节 劳动者派遣法
一、劳动者派遣规制的变迁
二、劳动者派遣和劳动者供给、业务处理承包
三、《劳动者派遣法》规制的视点
四、劳动者派遣事业的规制
五、派遣劳动者的保护
第十九章 个别劳动纠纷处理制度
第一节 概述
第二节 行政的个别劳动纠纷处理制度
一、以罚则、行政监督确保履行
二、个别劳动关系纠纷解决促进法
三、劳动委员会的个别劳动关系纠纷的调整程序
四、都道府县的劳政主管部局的咨询、斡旋等
第三节 法院的纠纷解决
一、劳动审判
二、民事通常诉讼
三、保全诉讼
四、小额诉讼
第四节 国际劳动关系和劳动保护法、劳动合同法的适用
一、劳动事件的国际裁判管辖
二、适用法规的决定
三、外国人劳动者
第三部分 集体劳动关系法
第二十章 工会
第一节 工会的种类
一、根据组织对象劳动者的分类
二、根据工会的组织单位、结合的分类
三、工会的现状
第二节 工会的法律概念和要件
一、工会的自由设立主义
二、合法工会、规约不备工会、宪法工会
三、合法工会
四、资格审查
第三节 工会的性质和工会加入、退出、组织强制
一、工会的任意团体性和工会民主主义的要求
二、加入资格
三、退出的自由
四、组织强制
第四节 工会费
一、工会费缴付义务
二、从工资中扣费
第五节 工会的统制权
一、统制权的意义、根据及其司法审查
二、统制权的界限
第六节 工会财产的归属和组织变动
一、工会财产的归属
二、工会的解散、组织变更
第二十一章 团体交涉
第一节 团体交涉的意义和功能
一、团体交涉的意义
二、团体交涉的功能
第二节 团体交涉的当事者、负责人
一、劳动者方当事者
二、使用者方当事者
三、劳动者方负责人
四、使用者方负责人
第三节 团体交涉义务
一、义务团体交涉事项、任意团体交涉事项
二、义务团体交涉事项的范围
三、团体交涉义务的内容
第四节 拒绝团体交涉的救济
一、劳动委员会的行政救济
二、法院的司法救济
第二十二章 集体合同
第一节 集体合同的成立要件
一、当事人
二、要式性
第二节 集体合同的效力
一、规范性效力和债务性效力
二、规范性效力
三、债务性效力
第三节 集体合同的扩张适用(一般拘束力)
一、职场单位的扩张适用
二、地域单位的扩张适用
第四节 集体合同的终止
一、集体合同的终止事由
二、集体合同终止后的劳资关系
第二十三章 团体行动
第一节 团体行动的法律保护
一、争议行为的法律保护
二、工会活动的法律保护
三、争议行为的概念
第二节 争议行为的正当性
一、争议行为的主体
二、目的
三、程序
四、形态
第三节 没有正当性的争议行为和法律责任
一、损害赔偿责任
二、惩戒处分
第四节 争议行为和薪金
一、争议行为参加者的薪金
二、争议行为不参加者的薪金
第五节 争议行为和第三者
第六节 使用者的争议对抗行为
一、运营继续
二、工场封锁
第七节 工会活动
一、关于工会活动正当性的一般基准
二、具体判断
第八节 劳动争议的调整
一、劳动委员会
二、争议调整程序
第二十四章 不当劳动行为
第一节 不当劳动行为制度的概要
一、不当劳动行为制度的意义
二、不当劳动行为制度的沿革
三、不当劳动行为制度的目的
第二节 不当劳动行为的主体
一、不当劳动行为中的使用者概念
二、对使用者的归责
第三节 不当劳动行为的成立要件
一、不利对待
二、团体交涉拒绝
三、支配介入
四、复数工会的并存和不当劳动行为
第四节 不当劳动行为的救济程序
一、概述
二、初审程序
三、命令的内容
四、再审查程序
五、取消诉讼(劳动委员会命令的司法审查)
六、不当劳动行为的司法救济
第四部分 劳动市场法
第二十五章 劳动市场法总论
第一节 劳动市场(雇佣)政策及其发展
一、被动的劳动市场(雇佣)政策和积极的劳动市场(雇佣)政策
二、日本的劳动市场政策的发展
第二节 劳动市场法和劳动法学
一、围绕勤劳权的议论
二、"雇佣保障法"论
三、立于勤劳权和合同自由的紧张关系之上的劳动市场法论
四、市场机制活用论
五、保障职业生涯权的构想
六、广义的劳动市场法构想
第三节 劳动市场法的体系
一、从雇佣对策法到劳动政策综合推进法
二、劳动市场法的体系
第二十六章 劳动市场法各论
第一节 职业介绍等雇佣中介服务规制(《职业安定法》)
一、外部劳动市场的原则规定
二、职业介绍的规制
三、招聘
四、劳动者供给事业的禁止
第二节 雇佣保险制度(《雇佣保险法》)
一、雇佣保险制度
二、失业等给付
三、育儿休业给付
四、雇佣保险二事业
第三节 求职者支援制度(《求职者支援法》)
一、《求职者支援法》的制定
二、特定求职者
三、求职者支援训练(认定职业训练)
四、职业训练听讲给付金
五、就职支援
第四节 职业能力开发(《职业能力开发促进法》)
第五节 特定领域的雇佣政策
一、年轻人雇佣(《青少年雇佣促进法》)
二、高龄者雇佣(《高龄者雇佣安定法》)
三、残疾人雇佣(《残疾人雇佣促进法》)
四、外国人雇佣
五、地域雇佣(《地域雇佣开发促进法》)
第二十七章 雇佣体系的变化和雇佣、劳动政策的课题
第一节 雇佣社会变化的各个方面
一、长期雇佣体系和雇佣关系、劳资关系、劳动市场政策
二、围绕雇佣体系的环境变化与雇佣体系的变革
三、劳动者的变化:多样化、个别化的进展和劳动法
四、使用者的变化:公司治理和劳动法
第二节 雇佣体系的变化和法的作用
一、规则(规范)的多样化
二、法律规制的实效性确保
事项索引

さて、冒頭に著者紹介(作者简介)が載っているのですが、それを見ておや?と思ったのが、

1959年 熊本县生人

1983年 东京大学法学部毕业

1985年 东京大学大学院法学政治学研究科修士课程完成

1985年 东京大学法学部助手

1988年 东京大学法学部助教授

1990~1991年 美国哈佛大学法学院访问学者

1991~1992年 比利时天主教鲁汶大学客座教授

2000~2001年 英国剑桥大学访问学者

2013~2014年 美国哈佛大学访问学者

2014~2015年 德国法兰克福大学访问学者

2001~2025年 东京大学大学院法学政治学研究科教授

2025年至今 中央劳动委员会会长

美国哈佛大学がアメリカのハーバード大学であり、英国剑桥大学がイギリスのケンブリッジ大学であるのはすぐわかります。德国法兰克福大学はドイツのフランクフルトのゲーテ大学ですね。では比利时天主教鲁汶大学は?これはベルギーのルーバンカトリック大学のことですね。




 

 

 

 

労働組合の組織率16.0%@『労務事情』2026年3月1日号

66bd523e8aeb4bb39632a88543f7e65e 『労務事情』2026年3月1日号に「労働組合の組織率16.0%」を寄稿しました。

https://www.sanro.co.jp/book/b10160546.html

昨年12月に発表された令和7年労働組合基礎調査では、労働組合組織率の下落傾向に依然として歯止めがかからず、16.0%になりました。・・・・・・

 

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