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2026年2月18日 (水)

高市首相は(上限規制緩和ではなく)裁量労働制緩和を選択

朝日新聞が「高市首相、裁量労働制の見直し表明へ 拡充念頭か、施政方針演説原案」と報じていますが、

https://www.asahi.com/articles/ASV2K3QTNV2KULFA017M.html

  働き方改革の見直しをめぐり、高市早苗首相が、特別国会の施政方針演説で裁量労働制の見直しを表明する方向で調整していることがわかった。就任時に指示した「労働時間規制の緩和検討」から具体策に踏み込む形で、裁量労働制の拡充などを念頭に検討を加速する狙いがあるとみられる。

 判明した原案では、経済成長戦略の一環として、時間外労働に上限規制などを設けた「働き方改革」について、「働き方改革の総点検においてお聞きした労働者の方々の声を踏まえ、裁量労働制の見直し」を打ち出す。

実は、昨年就任したばかりの高市首相が厚労相に労働時間規制の緩和を指示したときに、その緩和って具体的にどの労働時間規制の緩和なの?という疑問がありました。

誰の労働時間規制を緩和したいのか?

昨晩、都内某所で某氏と会話。高市総理は「労働時間規制の緩和検討」を指示したけれども、一体誰のどういう労働時間規制を緩和したいのだろうか?

これが連合と経団連が労政審でぶつかる話であるなら、話は簡単。ブルーカラー向けの労基法の労働時間規制がふさわしくない自律的に働くホワイトカラーの労働時間規制を緩和せよ、という話だ。実際、過去30年にわたって、裁量労働制、ホワイトカラーエグゼンプション、高度プロフェッショナル制度と、この話は繰り返され、高プロがほとんど空振りになってしまったので、もう一遍裁量労働制を大きく拡大しようというのは、経団連が最近も言っている。そういう話なら、そういう話として対処できる。でも、高市総理の頭にあるのはたぶんそういう話じゃない。

地方の中小企業、それもトラックなどの運輸業や建設業は、5年の猶予期間が切れて昨年4月から上限規制がかかっているが、ただでさえ人手不足で回らないうえに、数少ない労働者を長く働かせて何とか回そうとすると、上限規制に引っ掛かるからそれ以上働けません、とくる。実は、いま日本の地方の中小企業、とりわけ運輸、建設業といった業種の事業主は、裁量労働制だのエグゼンプションだのと言った東京のきれいなオフィスにいる連中の話なんか関心ない。そんな話はどうでもいいから、この上限規制を何とか緩めてくれと悲鳴を上げている。

で、保守本流ではない高市総理の耳に入ってくる「労働時間規制の緩和」を求める声ってのは、経団連流の裁量労働だのエグゼンプションじゃなくって、こういう地方中小企業の、とりわけ運輸、建設業の上限規制を何とかしろという声である可能性が高いのではないだろうか。

てな話をしてました。

これは、高市首相肝煎りの日本成長戦略会議においても、上限規制の緩和を求める日本商工会議所と、裁量労働制の緩和を求める経団連の間に、はっきりとした断絶が見られたのです。

日本成長戦略会議における二つの労働時間規制緩和論

昨日、官邸で第2回日本成長戦略会議が開催されました。注目すべきは、大企業を代表する経団連と中小企業を代表する日本商工会議所から、それぞれ全くベクトルの異なる二つの労働時間規制緩和論が示されていることです。

経団連の筒井会長は、従前繰り返し求めているように、裁量労働制のさらなる拡充を求めています。

一方、日本商工会議所の小林会頭は、働き方改革で導入された時間外休日労働の上限規制の緩和を求めています。

今回の報道は、この経営側内部の対立が、裁量労働制の緩和を求める経団連の側の勝利になりつつあるということのようです。

批判派はなんでもかんでも味噌も糞もまぜこぜに労働時間規制緩和反対とだけしかいわないので、こういうきめの細かい分析が抜け落ちてしまうのですが、政治過程分析で大事なのはこういう所なんですよ。

これは、今後仕事が下ろされてくる厚労省サイドからすると相対的には望ましい展開といえます。というのも、上限規制はそもそも過労死するような長時間労働はだめだという話なので、緩和するというのはダイレクトに過労死させてもいいのか、という話になってしまい、なかなか理屈が立ちにくいのに対して、裁量労働制は確かに総合職ホワイトカラーが実際に裁量的な働き方をしている面があり、かつ労働時間ではなく成果で評価すべきだという議論が本人にも正当性を持って受け入れられる面があるので、長時間労働による健康障害を防止する措置を講じつつ、というあれこれを付け加えながら、一定の正当性のある法政策を講じることができる可能性があるからです。

そもそも論からいうと、なぜ裁量労働制やエグゼンプションがかくも大問題になってしまうのかというと、拙著『管理職の戦後史』でも論じたように、ホワイトカラーがマネージャー、スペシャリスト、アシスタントの3階級にきれいに分かれ、前2者はエグゼンプトであり、後者はノンエグゼンプトであり、そのやっている仕事は別々であるジョブ型社会に対して、日本的なメンバーシップ型社会では、総合職サラリーマンというのはみんな、課長でなくてもなにがしかマネージャー的な仕事をし、専門職でなくてもなにがしかスペシャリストがするような仕事をし、でもやっぱりヒラなのでクラーク的な単純作業に従事しているというアマルガム的存在だからです。

人事部の職員で、高級な「現行の人事制度の問題点やその在り方等について調査及び分析を行い、新たな人事制度を策定する業務」ばかりを行い、「人事記録の作成及び保管、給与の計算及び支払、各種保険の加入及び脱退、採用・研修の実施等の業務」などという低級な業務は一切やらないなどという鼻持ちならない奴は一人もいないでしょう。でも、企画業務型裁量労働制の指針では、そういう奴しか適用できないことになっているのです。ジョブ型社会であればまことにもっともな厳格な業務内容による区分が、全部ごたまぜの大部屋日本式メンバーシップ型サラリーマンには、まことに適用しにくいものになってしまうわけで、これは雇用システム論の根本にも関わる話でもあるのですね。

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コメント

なんかこれでいうと結局総理がやりたいようなことを一番簡単に実現できるのって管理監督者要件の緩和な気もするんですよね。実態にもあうだろうし。

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