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2025年11月25日 (火)

朝日新聞の枝葉末節症候群

本日の朝日新聞の1面トップは「裁量労働制は上限規制の「適用外」 厚労省が自民会合で不正確な説明」という記事ですが、正直言って、何がそんなにけしからんのかよく分からないというか、労働時間の一番大事な肝心要の話をそっちのけにして、法形式論の枝葉末節にばかりこだわっているかの如き印象を受けました。この記事を礼賛している「識者」諸氏に対しても以下同文です。

裁量労働制は上限規制の「適用外」 厚労省が自民会合で不正確な説明

 実際に働いた時間ではなく、一定時間働いたとみなして賃金を払う裁量労働制について、厚生労働省が自民党の会合で、残業など時間外労働の上限規制が適用されるにも関わらず、「適用されない」との文書を示し、制度を不正確に説明していたことがわかった。適用外との説明は「働かせ放題」との誤解を広げる恐れがある。

 朝日新聞が入手した資料や関係者への取材で明らかになった。今回の説明には、経済界や政府・自民党で労働時間の規制緩和を求める動きが強まる中、裁量制を適用外と説明することで、時間外労働の上限規制そのものの見直し圧力をかわす意図があったとみられる。 

いや確かに、法学部やロースクールの授業であれば、裁量労働制を適用除外などと言ったら「馬鹿者」と叱られます。労働時間規制が適用除外の管理監督者と異なり、裁量労働制とは労働時間規制の適用除外ではなく、みなし労働時間制であるというのは、最も重要なことだからです。みなし労働時間制というのは適用除外ではなく、労働時間規制の適用の仕方が実労働時間ではなく、あらかじめ何時間とみなした時間数で規制するだけだからです。

しかしながら、あえて言えばそれは法律家の頭の中だけで峻別されているのであって、実際に何時間働こうがそれとは関係なくあらかじめ何時間とみなしておいた時間だけ働いたものと看做すというのは、現場の感覚から言えば適用除外と何ら変わりはありません。

そのみなされるべき時間数にはもちろん、適用除外じゃないので上限規制とやらはかかりますよ。でも、その上限はあくまでもみなし時間にかかるんであって、実際に働いた時間にかかるわけではないのであって、だからみなし労働時間制ってのは実のところ適用除外の看板を書き換えたものにすぎないとも言えるわけです。

この新聞記事は何に対してかくも激高しているのかよく分かりかねるのは、裁量労働制に上限規制がかかっているじゃないかぁ!たとえば1日10時間とみなしているんだから、適用除外じゃないじゃないかぁ!と叫ぶことにどういう意義があるのかさっぱり分からないことです。だから裁量労働制はいいじゃないか、といいたいのかと思いきや、全く逆で、裁量労働制はけしからんと言いたいらしい。気分だけは伝わるけれども、怒るポイントがあまりにも的外れで、ここは法学部やロースクールのお勉強の場じゃないんだけど、とつい言いたくなります。

ちなみに、裁量労働制には健康福祉措置というのがあり、また労働安全衛生法上の労働時間の状況把握義務というのはかかりますが、いうまでもなくそれらは適用除外であるかどうかとはまた別の話です。働き方改革の時にあれだけ大騒ぎをした高度プロフェッショナル制度にも、同様の制度がありますが、こちらは労基法上はみなし労働時間制ではなく適用除外です。

そして、何よりも訝しいのは、一番肝心要の管理監督者の適用除外ということに対して、この記事を書いた記者の方々はほとんど関心の外であるらしいことです。東京管理職ユニオンが騒いだり、マクドナルド事件で判決が出たりすると、急に思い出したように「名ばかり管理職」がどうたらこうたらと山のように書き立てるわりに、そうでないときにはほとんど関心がないのだということがよく分かります。

そもそも、名ばかり管理職が問題になるのも、非管理職が裁量労働制とかホワイトカラーエグゼンプションとして(事実上ないしは法律上)適用除外が目指されるのも、日本のメンバーシップ型雇用社会が上は経営者から上級管理職、中間管理職、現場監督者、ベテランのヒラ社員、普通のヒラ社員、末端のヒラ社員に至るまで、どこにも明確な線引きができないずるずるとつながった連続体を成しているからで、そういう本質論から目をそらして、法学部やロースクール向けの法形式論だけで議論してみても、何ら事態の解決にはつながらないと思いますがね。

Asahishinsho2_20251125105301 というわけで、日本の労働時間規制の本質論に切り込んだ拙著『管理職の戦後史』(朝日新書)でも読んでいただけると有り難いです。

 

 

 

 

 

 

 

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コメント

勤務社労士です。
本件について、激しく同意(少し古いですね。)したので、コメントいたします。
記事を読んで、結局朝日新聞が何を問題視しているのかよくわかりませんでした。
裁量労働制で労働時間をみなした時点で、実労働時間が何時間になろうがみなした時間が労働時間かと認識していますので、そのみなした時間で上限規制にかかるようなケースは普通あり得ません。たしかに実労働時間と乖離したみなし時間を設定することで、規制を逃れようとすることはあるのかもしれませんが、ならばその点を指摘すればいいだけの話で。
「適用除外」が誤りかと言われれば、それは誤りではありますが、朝刊1面を使ってバッシングするようなレベルなのか?と腑に落ちない気持ちです。

ところがなぜか、この記事へのコメントを見ても、そういう見方があんまりないようで、不思議でなりません。馬鹿素直に、記者の訳の分からない怒りにそうだそうだと同調しているばかり。

ようやく、大河内満博さんが、同じような感想を呟いているのを見つけましたが、

https://x.com/tomofullmoon/status/1993510078796943764

なんだか心が寒くなります。

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