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2025年10月 8日 (水)

是川夕『ニッポンの移民』

G2pvn0fbiaiomze 本日、連合の第19回定期大会のレセプションに顔を出した後(ちなみに、現下の政治情勢下で、各政党の代表がどんな挨拶をするか楽しみにしていたのですが、それはなしになったようです。やっぱりね)、書店で是川夕さんの『ニッポンの移民——増え続ける外国人とどう向き合うか』(ちくま新書)と、移民の特集を組んでいる『世界』11月号を買って、さっそく読ませていただきました。

https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480077103/

是川さんの本は、外国人問題を努めて冷静に、客観的にとらえようとする姿勢が一貫しており、とくにこれまで「移民政策の不在」とまで言われてきた日本の外国人政策について、結果としてむしろかなりいい線を言っていたのではないかという積極的な評価をされています。

実を言えば、結果的にかなりうまくいったという評価にはそれほど異論はないのですが、それを積極的に評価できるかという点では、いささか、というかむしろかなりの違和感があります。

わたしは外国人問題の論者が言うような意味での「移民政策の不在」というよりも、統一的統合的なマクロ外国人労働政策が不在であったのではないかと思いますし、そこにこそ日本の外国人政策の問題があったのではないかと思っています。

日系人や技能実習生が結果的にこの間の日本の労働市場において必要とされる労働需要を満たす労働力となったことは確かでしょうが、それがそういう観点から設計されたものではなかったこともまた明らかであって、結果オーライだからそれでいいじゃないかというわけでもないのではないかと思います。

このあたりについては、来年早々にも私自身の著書『外国人労働政策の正体』(仮題)を刊行する予定ですので、その時に詳しく論じるつもりですが、2018年に特定技能という正規のフロントドアが設けられるまでは、日本の労働市場のマクロ的状況からこの産業で人手不足になるからこれくらいの外国人を入れる必要がある云々といった仕組みは全く存在しませんでしたし、実は特定技能制度も法律の文言上はそうなっているとはいえ、実態としては法律ができる前に関係業界が業所管官庁を通じて官邸に陳情して決めるということになっていたわけで、国民の眼の前で透明な形で、労働市場の状況から外国人労働者の導入を正々堂々と論じるという、本来あるべきプロセスはなされていなかったのです。

本書の最初と最後で、是川さんは、最近の排外主義の傾向に対して大変危機感を露わにしておられます。その気持ちは共有するところは多いのですが、でもこの問題に今まで関心を持ってわざわざ調べようと思うような奇特さを持ち合わせていない一般国民からすると、おれたちの知らないところで、何やら怪しげな連中が勝手にこそこそと外国人を入れやがって、という風に見えてしまうのも、全く不合理とばかりは言えないのではないかと思われるのです。

その意味で、わたしは日本の外国人労働政策は、統一的統合的なマクロ外国人労働政策が不在であったし、そのことが様々な問題の原因になっているという意見です。なぜそうなってしまったかという「謎解き」は、上記書籍で詳しくやる予定ですので、ご期待ください。

Middle_32bedbe341734d5d936b8563417bc3b5 その意味では、一緒に買った『世界』の小井土彰宏さんの「移民政策の「失われた三〇年」を超えて」は、やや私の考えに近いと感じました。

 

 

 

 

 

 

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コメント


総理の連合挨拶ご感想をいただきたいです

https://www.kantei.go.jp/jp/103/actions/202510/07rengou.html

 戦前1906年、まだ明治の時代かもしれません。倉敷紡績という会社がございまして、この社長になられて、その後、現在のクラレを創業された大原孫三郎(まごさぶろう)さんという実業家がおられましたが、この方が優れたのが『労働理想主義』というものでございました。『従業員の幸福なくして事業の繁栄はない』このように訴えたのであります。当時は女工さんというか、要は女子従業員の方々の労働環境は非常に厳しかったのでありまして、その時代に、もう100年以上前の話ですが、『従業員の幸福なくして事業の繁栄はない』ということを唱えながら業績を伸ばしたということがございました。
 私は三島由紀夫という小説家がすごい好きで、学生の頃からよく読んでいたのですが、『絹と明察』という小説を御存じの方もあるかもしれません。昭和30年代の小説です。1954年、昭和29年に、近江絹糸の労働争議というのがありました。ここは初めての人権争議というものでございました。この争議において、女子従業員の方々が外出、結婚、教育の自由がないというような労務管理が行われとったわけでありますが、この是正、そういう方々の待遇改善、そういうものを組合が求めて全面的に勝利したというのを描いておるのが、三島の『絹と明察』という小説でございます。新潮文庫で出ていますから、どうぞお暇があればお読みください。
 昔の話だよと、今は関係ないんだよと、いうことかもしれません。ですけれども、私は昭和54年に学校を出て、とある銀行に入りましたが、高校に入ったのは昭和47年のことでございました。ストライキのピークは1974年、昭和49年です。私、高校3年生でした。そのときにストライキというのは5,200件あったんだそうです。参加した人は362万人いたんだそうです。1週間学校休みになりました。じゃ、直近去年2020年はどうであったかというと、ストライキは何件があったか、27件です。全国で、ピークの0.5パーセント。ストライキに参加した人は何人だったか、935人。ピークの0.03パーセントということであります。
 それはそれでいいことだと、いろいろな労使の脅威というのがあって、ストライキとかそういう手段に訴えなくても、いろいろなことが改善していく、社会生活もきちんと安定する、それはそれですばらしいことでありますが、日本国憲法に団結権、団体交渉権、団体行動権、労働三権というのが明記をされておるわけでございまして、これが労働者の大切な権利であるということは何ら変わりはございません。
 雇用は守られても、コストカット型の経済が長く続くということが続いてまいりました。これを転換して、高付加価値創出型経済の実現をどう図るかということは、変わらぬ必要なことだと信じております。労働者の権利を守り、その福祉の向上を図る労働組合の役割は極めて重要であります。人材稀少社会でございます。その中にあって、働く人一人一人をどうやって大事にしていくかということ、そして未組織と労働者もどのようにして大事にしていくかということを考えていかなければなりません。
 しかし、50年に学校を出て会社に入りました。お前の代わりは幾らだっているんだって何度言われたことか。今、お前の代わりなんかどこにもいない。人材希少時代というのはそういうことであります。額に汗して働く方々が、明日の心配がない暮らし、これを実感していかねばなりません。

働きに来るならいざ知らず、社会福祉の恩恵にあずかり、一族郎党を呼び寄せ、働きもしない方々が増えることを懸念しておるのです。労働は美徳、は普遍的な価値ではありません。欧州でも、当初は労働力として移民を奨励したが、家族の呼び寄せを認めてから悪化の一途と聞きました。またこの「家族」の範囲も明確ではありません、日本のように戸籍がある国は少数派です。

 石破さんはやはりキリスト教社会主義者なのでしょうか。
 大原孫三郎さんはまさに石破さんと同じプロテスタントのクリスチャンでキリスト教精神を経営に取り入れた事で知られます。
 欧米の労働運動も元々はキリスト教社会主義者たちが関わっていたはずですね。
 もし日本社会党がマルクス主義者に乗っ取られず、戦前の無産者政党のように片山哲、鈴木義男氏のようなキリスト教社会主義者が主導する政党であれば石破さんそっちに参加していたかもしれないですね。

目指す方向性をあきらかにしてグランドデザインを示し、そこから個別具体的な政策を展開する、というのは規範的には、というか欧米型民主主義のありかたとしてはそれが望ましいとされていると思うのですが、現実の日本政治においては最もタブーとされていることではないだろうか?というのを日々感じております。

というか「現状維持」というグランドデザインが唯一絶対とされており、あらゆる問題を弥縫策として対処するというのがこの社会における「規範」なのではないか?と。なので「結果的に」労働者なり移民なりが一定公平に扱われている、という以上のことはここでは望めないのではないだろうか。

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