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2025年9月18日 (木)

非正規公務員問題の根源は・・・

290_h1347x500_20250918085701 先週予告していた『季刊労働法』2025年秋号(290号)は、「非正規公務員制度を問う」が特集で、日本労働弁護団の弁護士たち(城塚健之、岡田俊宏、市橋耕太、平井康太、青柳拓真)による立法提言の解説に、行政法学者の下井康史さん、ご存じ非正規公務員問題の伝道者上林陽治さん、人事院から京都大学に移った嶋田博子さんによる論説という充実した特集になっています。

特集 非正規公務員制度を問う―立法提言を基点とした横断的考察

非正規公務員をめぐる議論の推移と本特集の趣旨 金沢大学准教授 早津 裕貴

日本労働弁護団 非正規公務員制度立法提言について―公務員法研究会を受けて― 弁護士 城塚 健之 弁護士 岡田 俊宏 弁護士 市橋 耕太 弁護士 平井 康太 弁護士 青柳 拓真

日本労働弁護団「非正規公務員制度立法提言」における行政法上の問題点 千葉大学教授 下井 康史

非正規公務員制度改革の実効性評価 ―日本労働弁護団提言の検討を通じて 立教大学コミュニティ福祉学部特任教授 上林 陽治

政策実務から見た「非正規公務員制度立法提言」の将来像―「従前の例」を乗り越える道筋が示せるか― 京都大学教授 嶋田 博子

上林さんの論は既に何回も紹介してきているので、ここでは嶋田さんの論文を読んで、今更ながら日本の公務員法制のねじれっぷりをしみじみと感じました。

嶋田さんは、まず初めに「1 官吏身分の付与(戦前)vs.仕事に人を充てる(戦後)」というタイトルの節から始めます。そう、戦前の官吏は「まず身分付与、その後ポストに就ける」という(私の用語法でいえば)純粋メンバーシップ型であり、その一部の官吏以外の大勢は私法上の雇傭契約であったのにたいし、戦後アメリカ型の「まず仕事・職があり、そこに人を充てる」という(私の用語法でいえば)純粋ジョブ型にがらりと変わったはずでした。

ところが、次の節では「2 職階制を骨抜きにした『従前の例』」で、法律の条文は純粋ジョブ型のままで、上から下まで公務員はみんな身分化してしまったのですね。

その矛盾のはけ口が「3 『常勤的非常勤』を生み出したもの」で描かれる官吏身分のない者を日々雇用という建前で使い続けるという仕組みであり、その挙げ句が「4 平成期における『人・身分による別』の顕在化」であったわけです。

というような話は、私も時折論じてきましたが、やはり公務員人事のプロフェッショナル中のプロフェッショナルの言葉として語られると、重みが違いますね。

非正規公務員問題の原点(『地方公務員月報』2013年12月号)

 近年、「非正規公務員」問題に対する関心が再び高まってきている。二〇〇七年一一月二八日の中野区非常勤保育士再任用拒否事件をはじめとして、非常勤という名のもとに事実上長期間就労していた職員の雇止めに対して、民間の有期雇用労働者と同様の解雇権濫用法理の類推適用はできないとしつつも、それに代わる損害賠償を命ずる判決が続出している。本稿では、そういった近年の動向自体は取り扱わない。上林陽治『非正規公務員』(日本評論社)はじめ、非正規公務員の現状と裁判例、政策の動きを詳細に分析した本は少なくない。ここで考えてみたいのは、なぜ非正規公務員などという現象が発生するのかという根本問題を、公務員制度の基本に立ち返って、歴史的に振り返ってみることである。
 
1 「公務員」概念のねじれ
2 公務員は現在でも労働契約である
3 国家公務員法の原点の発想
4 非正規公務員の発生と拡大
5 公務員制度調査会の提案
6 非正規労働者と非正規公務員
7 ジョブ型公務員

公務員とジョブ型のねじれにねじれた関係(『試験と研修』64号)

 2020年には突如として「ジョブ型」という言葉が流行し、2年後の今になっても「ジョブ型」を売り込もうとする経営コンサルたちの駄文が紙媒体でも電子媒体でも続々と湧いてきている。十数年前に日本とそれ以外の諸国との雇用システムの違いを表す学術的概念として筆者が作ったこの言葉が、インチキな成果主義を売り込む薄っぺらな商売ネタにされているのを見るのは、いささか辛いものがある。本来の「ジョブ型」がいかなるものであり、そしていかなるものではないのかは、昨年9月に上梓した『ジョブ型雇用社会とは何か』(岩波新書)に詳述したので、是非そちらを見ていただきたい。本稿はそれを前提にして、公務員制度とジョブ型雇用とのねじれにねじれた関係について述べていく。本誌の主たる読者層は公務員人事にかかわる人々であろうから、思い当たる節は山のようにあるはずである。
 
1 純粋ジョブ型で作られた(はずの)公務員制度
2 「能力主義」を掲げてジョブ型制度を廃止した2007年改正
3 公務員定年延長のパラドックス
4 非正規公務員というねじれの極み

 今日、「ジョブ型雇用を日本、特に公務に導入する際の課題」を論じる必要があると考える人々が一体いかなる「ジョブ型」を想定しているのかは、なかなか興味深い論点である。「ジョブ型」を本来の意味で理解している限り、上述のような議論以外にはあり得ないはずであるが、上記拙著で批判した経営コンサル流のインチキ「ジョブ型」を真に受けていると、またぞろ「成果主義」を掲げて本来ジョブ型の公務員制度を叩くという意味不明の「改革」を繰り返す虞なしとしない。読者諸氏がそのような落とし穴に嵌まらないよう、本稿が一服の清涼剤の役割を果たせるならば、これに過ぎる喜びはない。

職階制-ジョブ型公務員制度の挑戦と挫折(『季刊労働法』2020年春号(268号))

 日本の公務員制度についての労働法からのアプローチは、長らく集団的労使関係制度の特殊性(労働基本権の制約)とその是正に集中してきました。それが国政の重要課題から消え去った後は、非常勤職員という非正規形態の公務員が議論の焦点となってきています。しかし、正規の公務員については、終身雇用で年功序列という日本型雇用システムのもっとも典型的な在り方を体現しているというのが一般的な認識でしょう。最近話題となった小熊英二『日本社会のしくみ』(講談社現代新書)では、日本型雇用の起源を明治期の官庁制度に求め、その任官補職原則が戦後日本の職能資格制度という形に残ったと指摘しています。日本社会の大きな流れとしては、この認識は全く正しいと言えます。ただ、まことに皮肉なことですが、立法政策史の観点からすると、それとは正反対の徹頭徹尾ジョブに基づく人事管理システムを法令上に書き込んだのが、戦後日本の公務員法制であったのです。「職階制」と呼ばれたこの制度は、驚くべきことに、1947年の国家公務員法制定時から2007年の同法改正(2009年施行)に至るまで、60年間も戦後日本の公務員制度の基本的オペレーティングシステムとして六法全書に存在し続けてきました。しかし、それが現実の公務員制度として動かされたことは一度もなかったのです。今回は、究極のジョブ型公務員制度というべきこの職階制の歴史をたどります。
 
1 1947年国家公務員法
2 1948年改正国家公務員法
3 職階法
4 S-1試験
5 職種・職級の設定
6 格付作業
7 間に合わせの任用制度
8 間に合わせの給与制度
9 職階制の挫折
10 その後の推移
11 職階制の廃止

 今日、非正規公務員問題を始めとして、公務員制度をめぐる諸問題の根源には、さまざまな公務需要に対応すべき公務員のモデルとして、徹底的にメンバーシップ型の「何でもできるが、何もできない」総合職モデルしか用意されていないことがありますが、それを見直す際の基盤となり得るはずであった徹底的にジョブ型に立脚した職階制を、半世紀間の脳死状態の挙げ句に21世紀になってからわざわざ成仏させてしまった日本政府の公務員制度改革には、二重三重四重くらいの皮肉が渦巻いているようです。 

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コメント

誤解といえば、これもそうなのでしょうか。

「仕事(=ジョブ)に値段をつけることは不可能」

shueisha.online/articles/-/254… #スマートニュース

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