経済同友会の「雇用型自律労働契約」
本日、経済同友会が「経済成長と多様な個人の活躍を支える「雇用型自律労働契約」の導入を~労働法制の令和モデルへの見直し~」という提言を発表しています。
https://www.doyukai.or.jp/policyproposals/2025/250522a.html
https://www.doyukai.or.jp/policyproposals/uploads/docs/20250522c.pdf
流動化する労働市場において、イノベーション創出に取り組む企業や多様な働き方を求める個人の活躍を後押しするためには、「働き方のOS」である労働法制の改革が不可欠です。これまでの画一的・硬直的な時間管理による働き方とは別に、意欲ある人材が自律性を発揮し、成果に応じた報酬を前提に柔軟に働ける新しい雇用の選択肢が求められています。
本提言では、労働時間と成果・賃金が結びつく業務を対象とする労働基準法に基づいた従来通りの雇用に加え、労働時間と成果が比例しない業務に従事する意欲ある人材を対象に、自律性・柔軟性・成果責任に基づいた新しい雇用契約である「雇用型自律労働契約」の導入を提言しております。「令和モデル」の労働法制として、選択可能な二つの雇用が併存する労働法制へと転換を図ることで働く個人の潜在力を引き出し、企業と社会の持続的な成長を実現できると考えます。
また併せて、不当解雇時の金銭解決ルール、会社分割時の労働契約継承に関する課題への解決策についても検討を行い、データベース整備など透明性・予見性を向上すべきと提言しています。
要するに、新しいエグゼンプションの提案なのですが、今までのと違うのは、労働基準法だけでなく、根っこの労働契約法に根拠規定を設けようという点です。
• 労働契約法:雇用型自律労働契約の位置づけを明確化
• 労働基準法:第41条に新たに第四号を追記し、労働時間等規定の適用除外
• 労働安全衛生法:新たな健康確保措置の導入
労働契約法をどうしようというのかというと、
⚫ 雇用型自律労働契約の位置づけを明確にするため、労働契約法の見直しを行う。具体的には、就業規則と雇用契約の関係を定める同法7条などを見直すとともに、雇用型自律労働契約の標準的なルールとなるガイドラインの整備などを行う。
労働契約法第7条はこれですが、
第七条 労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。
やや意味がとりにくいところがありますが、就業規則という集団的な枠組みが適用されない個人別の労働契約という趣旨なのでしょうか。ただ、それと労働基準法の労働時間規制の適用除外とは直ちに論理的にはつながらないようにも思えます。就業規則の義務のない10人未満事業所の労働者にも、労働基準法自体は普通に適用されます。
もしかしたら、労働協約が適用されない協約外職員みたいなイメージなのかもしれませんが、就業規則はそういうものではないでしょう。
なお、文中に何箇所も「ジョブ型」という言葉が出てきて、それがこの「雇用型自律労働契約」に近いようなイメージがふりまかれているのですが、いや近ごろインチキなコンサルが売り歩く「じょぶがた」はともかく、欧米諸国のごく普通の労働者たちのごくふつうのジョブ型ってのは、自動車工場のブルーカラー労働者が典型的なガチガチの働き方であって、ノンエグゼンプトの典型なんですがね。
そういうガチガチのジョブ型からむしろ遠いのが、マネージャーやスペシャリストのようなエグゼンプトであって、そういうのをもっと拡大しようとしているんじゃないんでしょうか?そちらはむしろそれなりに筋の通った話だと思いますが。
この手の話を見るたびに、話がねじれにねじれて、まるで逆転してしまっているので、まことに憑かれます。
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コメント
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ジョブ型で働く人が成果を出さなかったら、その人にそのジョブをアサインした側の責任、ということが常識になるまでにはまだだいぶかかりそうですね。
投稿: ちょ | 2025年5月22日 (木) 23時47分
個人と「業務委託」して働かせるやり方を合法化してほしい、というように見えました。
投稿: 京都人 | 2025年5月23日 (金) 10時45分
「ごくふつうのジョブ型ってのは、自動車工場のブルーカラー労働者が典型的なガチガチの働き方であって、ノンエグゼンプトの典型なんですがね。」
まさに。hamachan先生も嫌というほど体感されていると思いますが、(典型的な)ジョブ型の働き方の対象にあまり当てはまらない職務の人たちが、自分たちの働き方改革の一環として「じょぶがた」の旗を熱心に振っている…という事象を目にして、何だかなと思うことが多々あります。
投稿: もんぶらん | 2025年5月23日 (金) 17時49分
新しいタイプの「フリーランス」ですかね~。
投稿: balthazar | 2025年5月23日 (金) 19時09分