労働基準法上に「民主集中制」という概念は存在しない
漫画評論家の紙屋高雪さんこと元共産党職員の神谷貴行さんが共産党を解雇された事件については何回か取り上げてきましたが、
まあ、「我が社の社員はみんな同志みたいなもんじゃ、労働基準法なんか関係ないワイ」とうそぶいていたワンマン社長が、言うことを聞かないからとクビにした社員に訴えられて、しぶしぶ労働者性を認めざるを得なくなり、監督署にせっつかれて就業規則や36協定を届け出なくてはならなくなるなんてことは、世の中にはそれこそゴマンとある訳ですが、労働者の味方を標榜している天下の日本共産党もそのワンマン中小零細企業の仲間入りをしたようです。
その神谷さんのブログに、昨日こういうエントリがアップされました。
神谷さんは就業規則と36協定の情報開示を求めたのですが、就業規則本体は不開示だったようです。
でも、面白いのは、労働基準法第90条に基づき、「労働者の過半数で組織する労働組合がある場合にはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見」を労働基準監督署に届け出る際に添付しなければならない、というその「意見書」は開示されたようで、その写真が載っているのですが、これが実に不可思議な代物になっています。
労働法をちょいとでも勉強した人ならすぐに気がつくと思いますが、意見書というのは過半数代表が使用者に対して出すものであって、その出された意見書を使用者が就業規則に添付して監督署に届け出るものです。
ところが、この意見書の宛名は「福岡中央労働基準監督署長殿」になっていますね。うーん、天下の日本共産党は労働基準法の基礎の基礎が分かっていないようです。
「労働者の過半数を代表する者の選出方法」が「投票による選挙」になっていますが、さてはて、どこでどういう選挙をして、どういう方を選出されたのか、まさか労働基準法施行規則第6条の2で定められている「監督又は管理の地位にある者でないこと」や「使用者の意向に基づき選出されたものでないこと」に反していませんよね、と、労働法クラスタなら心配になるところです。
使用者とは異なる立場の人が法に則って適切に「選挙」されているのであれば、自分が意見書を提出する相手(自分と対峙する使用者)と、その相手方が当該意見書を添付して就業規則を提出する相手(監督署)をごちゃ混ぜにするなんてことはあり得ないはずですが、どうも、この日本共産党に雇用される労働者の過半数代表という方は、自分が書いた意見書の提出相手は監督署だと心底から思い込んでしまっているようで、労働者の代表なのか使用者の代表なのかよく分からないところがあります。その意味でも、この墨塗になっているところが気になりますね。なんにせよ、まことに残念ながら、労働基準法上に「民主集中制」という概念は存在しないのですよ。
でも、それよりもっと面白いのは、神谷さん曰く「日本共産党の103年の歴史でもおそらく初めてであろう36協定」です。
これ、労働法の授業で間違い探しをやらせたくなるような、なんとも不思議な内容になっています。
詳しくは、リンク先の神谷さんのブログで説明されていますが、史上初の36協定の出来がかくもスバラ式代物になってしまっているというのは、なんともはやではあります。
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コメント
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日本共産党が今なお奉じているらしいマルクス・レーニン主義によると、マルクス・レーニン主義国家でない国家は帝国主義者、あるいは労働者を搾取するブルジョアどもが支配する国であり、真の労働者階級を代表するマルクスレーニン主義者にとっては敵視すべき対象である、と言ってましたか?
だからブルジョアどもが支配する日本国政府の作った法律はたとえ労働者階級のための法律であっても我々共産党の解釈によってのみ運用されるべきである。ゆえにこのブログに書かれた文章になっても全く問題ないのである!
・・・と言いたいのでしょう(^^;
共産党の国会議員様が来賓として毎年来ていたある省庁の職員組合の大会において組合本部の出した運動方針に支部代表から一切質問が出ず、全会一致で可決されてしまうという椿事が毎年繰り返されていた事態を見ていた私にはそう思えてしまうのです(笑)
投稿: balthazar | 2025年5月 9日 (金) 18時50分
そういや労働省の中の人zenroudouの専従者はどうなんでしょうね
投稿: ちょ | 2025年5月13日 (火) 23時03分