川口美貴『労働法〔第9版〕』
川口美貴『労働法〔第9版〕』(信山社)をお送りいただきました。
https://www.shinzansha.co.jp/book/b10133435.html
毎年改訂の最新2025年版。要件と効果、証明責任を明確化。新たな法改正・施行と、最新判例・裁判例や立法動向(2025年2月分まで)、学説の展開状況に対応。長年の講義と研究活動の蓄積を凝縮し、講義のための体系的基本書として、広く深い視野から丁寧な講義を試みる。全体を見通すことができる細目次を配し、学習はもとより実務にも役立つ労働法のスタンダードテキスト第9版。
昨年の今頃も言いましたが、まさに完全に年鑑と化している川口労働法です。
そして、川口さんと言えばその独自の労働者概念で有名ですが、その膨大な労働者概念に関する記述の中に、職業安定法上の労働者概念はやはり出てきません。
というか、この1100ページに及ぶ大冊の中に、労働市場法制は全く出てこないのです。そこは見事に割り切っているようです。
ただ、その結果、膨大な判例の中でおそらく唯一川口さんの労働者概念とほぼ同一の徹底した経済的従属性基準を貫いている昭和29年の最高裁の判例(「[職安法]5条にいわゆる雇用関係とは、必ずしも厳格に民法623条の意義に解すべきものではなく、広く社会通念上被用者が有形無形の経済的利益を得て一定の条件の下に使用者に対し肉体的、精神的労務を供給する関係にあれば足りるものと解するを相当とする」 )が、本書に収められている膨大な判例の中に顔を出さないという大変皮肉な事態になっています。
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