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2025年3月 6日 (木)

「能力」の正体

Cover_image_25197_cbf01f6821 勅使川原真衣さんの『格差の“格”ってなんですか? 無自覚な能力主義と特権性』(朝日新聞出版)をぱらぱらと読んでいたら、二重三重に皮肉な話が出てきて、思わず苦笑いが胸の奥からえぐく出てくる思いがしました。

第3章の「能力-二の句が継げない「カルチャーフィット」」に出てくる話ですが、勅使川原さんが働いていた某外資系企業での体験談。

「おいおい、この子、落とすところだったよ。プラチナ住所。気づかなかった?ダメだよ、こういうのをちゃんと見なきゃ」

プラチナ住所?意味が分からなかった。

「実家住所にさ、〇〇〇ヒルズって書いてあるでしょう?」

離れたところで作業していた人もいそいそと見えるところに集まる。不合格にすべきでない人をしていたのなら大変な落ち度だ。後学のために皆、真剣に確認する。

「わお、ほんとだ、失礼しました」と謝る人もいる。すかさず、「これは高級マンションの中でも最高級。ハイソの中のハイソ」と採用責任者。「賃貸でもファミリータイプならここは、家賃は月200万円はしますよね」と相場情報を付言する人までいる。そして、採用責任者はこう取りまとめ、「リーダーシップ」を発揮した。

「これは親がなにがしだ。ってことだよ。いいか。この『成功者』のご子息、落としちゃだめだよ。面接に呼ぼう。ウチ(の会社)ときっと合うと思うなぁ。評価項目の『カルチャーフィット』(企業文化との親和性)のとこそ、◎に変えておいて」

私もご多分に漏れず、恥ずべきことだが、その場にいた誰一人、「この採用プロセスって問題ないんでしょうか」とは言わなかった。

ふーむ、「カルチャーフィット」ですか。いかにも横文字風ぽいけれど、その実はまことにメンバーシップ型にふさわしい「官能性」そのものの概念ですが(要は「わが社の空気になじめるか」ってこと)、それがこの外資系企業の新卒採用の現場ではもう一ひねりして、ハイソなお金持ち階級のご子息様をお迎えするためのもっともらしい道具にされてるわけですね。

著者紹介によれば、勅使川原さんは東大院で教育社会学を学んだあとボストンコンサルティングやヘイグループで働いていたようですが、人さまの会社に偉そうにジョブ型がどうとかこうとか説いている外資系企業が、その中ではこういう採用方針でやってるってのは、なかなか興味深い話ではありますな。

 

 

 

 

 

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コメント

>勅使川原さんは東大院で教育社会学を学んだあとボストンコンサルティングやヘイグループで働いていたようですが、
>人さまの会社に偉そうにジョブ型がどうとかこうとか説いている外資系企業が、その中ではこういう採用方針でやってるってのは、なかなか興味深い話ではありますな。

外資系コンサル企業の採用方針に関しては全くの素人の感想です。

倫理的には問題があるかもしれませんが、「個人の能力」といった場合に「本人の能力」の他に「有力者との関係(七光り)」は考慮されないのでしょうか?
単純なジョブ型、例えば ”自動車工場で車体にハンドルを5分以内に取り付ける” というジョブであれば、親がどんなに有力者でも車体への取り付けに10分かかる人は採用されないと思います。しかしコンサル会社の社員というジョブであれば、親が大企業の経営者である人は(本人の能力ではなく親との関係によって) ”※※円以上のコンサル契約を獲得する” というジョブ要件を満たすと判断されて採用される事があるかもしれません。
純日本企業ですが広告代理店やテレビ局の社員には大企業(有力スポンサー)の経営者の関係者も多いそうです。

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