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2025年3月28日 (金)

勅使川原真衣『学歴社会は誰のため』

9784569858814 勅使川原真衣さんの新著『学歴社会は誰のため』(PHP新書)をお送りいただきました。ありがとうございます。

https://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=978-4-569-85881-4

■長年の学歴論争に一石を投じる!

 学歴不要論など侃侃諤諤の議論がなされるのに、なぜ学歴社会はなくならないのか。誰のために存在するのか。

 背景にあるのは、「頑張れる人」を求める企業と、その要望に応えようとする学校の“共犯関係”だった?

 人の「能力」を測ることに悩む人事担当者、学歴がすべてではないとわかっていてもつい学歴を気にしてしまうあなたへ。

 教育社会学を修め、企業の論理も熟知する組織開発の専門家が、学歴社会の謎に迫る。

 ■本書の要点
●学歴は努力の度合いを測るものとして機能してきた
●ひろゆき氏の学歴論は本質を捉えている?
●日本の学歴主義の背景にあるメンバーシップ型雇用
●仕事は個人の「能力」ではなくチームで回っている
●「シン・学歴社会」への第一歩は職務要件の明確化

 ■目次
●第1章:何のための学歴か?
●第2章:「学歴あるある」の現在地
●第3章:学歴論争の暗黙の前提
●第4章:学歴論争の突破口
●第5章:これからの「学歴論」──競争から共創へ

学歴社会論はそれ自体が一定の売れ行きを見込めるマーケットであるだけでなく、誰もが自分の経験から一家言を持ち、それでもってあれこれ一席ぶてるテーマでもありますが、本書は、教育社会学を学んで組織コンサルタントをされている、まさに教育と労働の狭間を見つめている方としての、マクロとミクロがほどよく混ざった一冊になっています。

実を言えば、日本型雇用社会において「学歴社会」を論じようとすると、一方には日本以外のジョブ型社会共通の、社会的制度として教育資格付与システムによってジョブを遂行するスキルがあると社会的に認定されることによって社会的にある一定のポジションを占めてしまえることそれ自体の、いわば格差再生産増幅装置としてのユニバーサルな意味での学歴社会の問題と、もう一方には、そういう学歴は無用なんだよね、仕事ができるってことが大事なんだよね、という触れ込みで、しかしその仕事ができるってのは難しい受験勉強に耐え得た学歴の人なんだよね、という回路を経て、ジョブ型学歴社会とは少しずれながらある面ではより強固に社会的総意として確立してしまっている日本的な学歴社会の問題と、この二つを同時に相手にする二正面作戦をしなければいけなくなるので、なかなか手強いのです。しかもそれを「能力」というあまりにも雑駁な言葉でお互いに分かったようなつもりで論じ合うという悲惨な状況が長年続いてきているために、それを解きほぐすだけで大汗をかくことになります。

産業化が進行し、雇用という働き方が一般化した社会において、お互いをよく知らない他人同士が「能力」を頼りに協力し合う組織を作っていくという近代社会では、その「能力」をいかに定義するかこそが、社会を成り立たせる根幹的なシステム設計になりますが、だからこそそこが最大の問題の発生箇所にもなるのでしょう。

例によってコンサル先の企業のいろいろな事例が紹介されていますが、いずれも「あるある」感が満載です。役員会で社長に言われて「尖った人材」を採用しなくちゃと相談に来た某企業の人事担当役員さんとかね。

 

 

 

 

 

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