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2025年3月27日 (木)

佐野嘉秀・池田心豪・松永伸太朗『人的資源管理』

659237 佐野嘉秀・池田心豪・松永伸太朗『人的資源管理 事例とデータで学ぶ人事制度』(ミネルヴァ書房)をお送りいただきました。ありがとうございます。

https://www.minervashobo.co.jp/book/b659237.html

人的資源管理の基礎理論の解説から、社員の格付けや賃金管理、配置転換や昇進等の事例紹介、各国との比較、さらにはデータに裏づけられた実態にも迫る。キャリア形成やワークライフバランスの将来設計にも役立つ入門書。

本書は三人の著者名が並んでいますが、ざっと通読した感じでいうと、佐野さんがメイン著者で、池田さんと松永さんはサブ著者といった感じです。

というのは、目次は下にコピペしていますが、おおむね各章とも、第一節のはじめにと第二節の理論編を佐野さんが執筆していて、第三節の事例編を松永さん、第四節のデータ編を池田さんという分担なのですが、第三節、第四節ともほぼ二ページ程度ずつなのに対して、第二節はどれも一〇ページを超える長さであって、読む文章の量からいうと、七,八割は佐野さんの分になります。

はじめに

第1章 人的資源管理の考え方:経営のための働く人の管理
 1 人的資源管理とは何か
 2 経営のための働く人の管理
 3 事例で理解する:雇用システムの比較
 4 データで確認する:社員は仕事の何に満足しているか

第2章 人的資源管理のコンテクスト:経営と社員の期待に応える
 1 人的資源管理のコンテクストとは何か
 2 経営と社員の期待に応える
 3 事例で理解する:コンテクストとしての「均衡処遇」
 4 データで確認する:企業と社員は何を話し合っているのか

第3章 社員格付け制度:序列を決める
 1 社員格付け制度とは何か
 2 社員の序列を決める
 3 事例で理解する:技能形成と社員格付け制度の改定
 4 データで確認する:企業は何を基準に給料を決めているのか

第4章 雇用区分:グループに分けて管理する
 1 雇用区分とは何か
 2 雇用区分を分けて管理する
 3 事例で理解する:生命保険業における雇用区分の再編
 4 データで確認する:なぜ非正社員を雇用するのか

第5章 採用管理:人を募集して雇う
 1 採用管理とは何か
 2 社員を募集・選考して雇う
 3 事例で理解する:採用基準とコンピテンシー評価
 4 データで確認する:企業は人物の何をみて採用しているのか

第6章 要員管理:人数を適切に保つ
 1 要員管理とはなにか
 2 社員の人数を適切に保つ
 3 事例で理解する:百貨店における要員管理
 4 データで確認する:終身雇用は時代遅れか

第7章 労働時間管理:働く時間を管理する
 1 労働時間管理とは何か
 2 働く時間を管理する
 3 事例で理解する:労働時間の長さと仕事管理
 4 データで確認する:日本企業では休暇を取りにくいか

第8章 教育訓練:人を育てる
 1 教育訓練とは何か
 2 企業として人を育てる
 3 事例で理解する:OJTと「工程設計力」
 4 データで確認する:企業は教育訓練にいくら使っているのか

第9章 配置転換:社内で人を動かす
 1 配置転換とは何か
 2 社員の配置を変える
 3 事例で理解する:企業は転勤に何を求めているのか
 4 データで確認する:転勤にはどのような不便があるのか

第10章 昇進管理:管理職へと選抜する
 1 昇進管理とは何か
 2 上位の役職・格付けへと選抜する
 3 事例で理解する:女性管理職育成と女性社員の意識
 4 データで確認する:女性活躍時代の昇進管理

第11章 人事評価:社員の貢献を評価する
 1 人事評価とは何か
 2 社員の貢献を評価する
 3 事例で理解する:グローバル化と人事評価の公正性
 4 データで理解する:優秀な部下は優秀な上司になれるか

第12章 賃金管理:賃金の配分を決める
 1 賃金管理とは何か
 2 賃金の配分を決める
 3 事例で理解する:ゾーン別賃金表と賃金水準の収斂
 4 データで確認する:男女の賃金格差はなぜ生じるのか

第13章 福利厚生:社員の生活を支援する
 1 福利厚生とは何か
 2 社員の生活を支援する
 3 事例で理解する:法定外福利としての団体長期障害所得補償保険
 4 データで確認する:人件費には福利厚生費も含まれる

第14章 多様な人材と就業形態の管理:人々と働き方の多様性を取り込む
 1 人々と働き方の多様性を取り込む
 2 多様な属性の社員の人的資源管理
 3 派遣社員とフリーランスの人的資源管理

参考文献
索 引

内容はおおむね標準的なものですが、最後の章ではちょっと違和感を感じました。それは、「壮年男性中心的な社員の人的資源管理の曲がり角」を指摘した次の項で、多様な人材の活用を「倫理的善悪と経済的損得」という観点から論じているのですが(ここだけは池田さんの執筆)、性別役割分業もかつては倫理的にむしろ正しいものであったのであり、それが社会の変化に合わなくなってきたということなのであって、それを「倫理的善悪」という普遍的通時間的な含意をもつ言葉で語ってしまうのかいかがなものか、と。むしろ、古い感覚で専門的能力のある女性を活用しないことの経済的不利益という意味では「経済的損得」でもあるし、まあ、こういう入門書レベルの用語法にどこまでかみつくかという問題もありますが、違和感を感じたことは記しておきたいと思います。

 

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コメント

職場の上司と部下なのですから、感想があるなら直接いえば良いものを、わざわざ公の場で「違和感」を表明する理由は何でしょう?ふだんは話をしない仲ということでもないのですから、この件についても今度ゆっくりお話できたらと思います。

私は、ご本を献呈されたときには、できるだけ早く、本ブログで紹介し、その際できるだけ中身に関わるような感想を書くようにしています。人によっていろいろと考えはあるでしょうが、それがお送りいただいた方へのお礼の表わし方だと思っているからです。

共著の場合は、その辺の兼ね合いがなかなか難しくて、結果的に池田さんの書かれたところにだけ文句をつけるような形になってしまいましたが、別に本来面と向かって言うべきことを、あえてブログに書いたというつもりはありませんでした。

「倫理的善悪」の問題は、是非きちんと論じ合いたいと思います。

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