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2025年3月18日 (火)

介護分野に特定最賃!?

共同通信の記事で、これは東京新聞から

介護分野へ特定最低賃金を検討 首相「政治主導で判断」

290047c5a1b07d3dc649c9c534b54a37_1-1 石破茂首相は17日の参院予算委員会で、介護などを担うエッセンシャルワーカーや成長産業分野での人材確保に向け、特定の産業に適用される「特定最低賃金」の導入を検討する考えを示した。「賃金が上がっていかないと、この国の経済は持たないとの強い認識を持っている。政治主導できちんと判断したい」と述べた。
 特定最低賃金は、都道府県ごとに適用される地域別最低賃金よりも、高く定めることが必要と認められた産業に適用する。首相は地方の賃上げ実現のため、施政方針演説で言及した全都道府県での「地方版政労使会議」の開催にも意欲を示した。国民民主党の田村麻美氏への答弁。

おお、これは踏み込んだ答弁ですね。UAゼンセン出身の田村麻美さんが質問したのですね。さすがです。

この問題については、昨年の『賃金とは何か』の最後のあたりで触れておりました。

81tj1p4qhol_sy466__20250318100501 3 特定最低賃金、公契約条例、派遣労使協定方式の可能性

 と、これで終わりにしてしまったら、いくらなんでも希望がなさすぎるのではないかと、読者から抗議が来そうです。もちろん、空っぽの箱をいかにもたいそうなものであるかのように舌先三寸で売り歩く行商人のような真似をする気はないのですが、職種別の賃金設定システムをある程度世の中に拡げていく手がかりとして、現に存在するいくつかの制度を検討してみたいと思います。
 まずは、半世紀以上にわたって経営側や規制改革サイドから無駄だから廃止せよと責め立てられながら、それをかいくぐって何とか生き延びてきた産業別最低賃金、現在の特定最低賃金です。二〇〇七年以後二〇年近くにわたる地域別最低賃金の大幅な引上げの煽りで、東京都をはじめとして特定最低賃金が地域別最低賃金に追い越され、無意味なものになってしまうという状況が広がっています。四〇年近く前に金子美雄が語った産業別最低賃金の意義は、当時からさらに組織率が下落(二〇二三年に一六.三%)する中で一層高まっています。しかしそれを実現する労働組合の力はさらに低下する一方です。では明るい展望はないのでしょうか。
 二〇二〇年から二〇二二年まで世界中を襲ったコロナ禍で改めて注目されたのは、私たちの日常生活を維持するための枢要な業務を担いながら低賃金や低い労働条件の下にある労働者たち、いわゆるエッセンシャルワーカーでした。その範囲は論者によって様々ですが、医療、介護福祉、保育、教育、自治体・公共交通機関などの公共サービス、ガス・水道・電気・通信など生活インフラ、物流、生活用品を扱うスーパーやドラッグストア、コンビニなどの小売業などが挙げられます。こうした特定の労働者層にターゲットを絞った賃金の底上げのためには、せっかく制度として維持された特定最低賃金を活用することが考えられてもよいのではないでしょうか。
 実は二〇一八年に日本医療労働組合連合会(日本医労連)が、看護師と介護職員にかかる特定最低賃金の申出を行っています。これは、同年七月二六日の中央最低賃金審議会にかけられ、申出者数が看護師で全体の九.五%、介護職員で全体の〇.八%に過ぎず、三分の一以上の合意の要件を満たしていないとして諮問の対象外とされています。現行制度を前提とすればその通りですが、一方で医療介護行政において、看護師や介護職員の処遇改善加算が行われてきていることを考えると、マクロ社会政策的な発想による対応があってもよいように思われます。

(追記)

あっという間に話が急展開しておりますな。

介護に特定最低賃金を検討で一致 待遇改善へ自公幹事長

自民党の森山裕、公明党の西田実仁両幹事長は18日、東京都内で会談し、介護分野の待遇改善に向け、特定の産業を対象とする「特定最低賃金」の適用を検討することで一致した。森山氏は記者会見で「介護の現場は職業意識だけでやれる話ではない。給料体系の中で特別に考えていくのは大事なことだ」と述べた。
 特定最低賃金は、都道府県ごとに設定する最低賃金よりも高くすることが必要と認められた産業が対象。労働者側と経営者側の申し出に基づき、都道府県の地方審議会が必要性を判断し、金額を決める。現在は鉄鋼業や自動車小売業などに適用されている。

 

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コメント

医労連がかつて産業別最賃について申し立てを行ったことはあまり話題となりませんでした。そもそも広く運動的に告知もされていなかったと記憶しています。組織化できている労働者数が少なかったことであまり強気に取り組むことができなかったのかもしれませんね。

素人の感想ですが


>森山氏は記者会見で「介護の現場は職業意識だけでやれる話ではない。給料体系の中で特別に考えていくのは大事なことだ」と述べた。

森山氏が仰る事は全くその通りだと思います。しかし介護現場の賃金を上げると介護コストが上昇します。内部努力で全て吸収出来れば良いですが、そうでないと外部が負担する事になります。
その場合の負担先としては
 1) 利用者(被介護者)
 2) 介護保険
 3) 公的資金(税金)
が考えられますが、どこが負担しても揉めそうな気がします。
これが例えばトラック運転手であれば、
  物流は社会のインフラなので物流分野の待遇改善に向けトラック運転手に対する「特定最低賃金」の適用を検討する
となった場合はそれによるコスト増の負担先は、1) 利用者 になると思います。トラック運転手の場合はコスト増を利用者がすべて負担する事により利用が抑制される事になっても問題にする方は少ないと思いますが、介護の場合は利用者(被介護者)の負担増により利用が抑制される事に反対する方は多いと思います。


>特定最低賃金は、都道府県ごとに設定する最低賃金よりも高くすることが必要と認められた産業が対象。労働者側と経営者側の申し出に基づき、都道府県の地方審議会が必要性を判断し、金額を決める。現在は鉄鋼業や自動車小売業などに適用されている。

つまり鉄鋼業や自動車小売業は”都道府県ごとに設定する最低賃金よりも高くすることが必要と認められた産業”という事でしょうか?鉄鋼業は理解できなくもない(鉄は国家なり!)ですが、自動車小売業も鉄鋼業と同様だと認められているという事でしょうか?

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