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2025年3月25日 (火)

なぜ公労使で労働立法をつくるのか@『日本労働研究雑誌』2025年4月号

777_04 本日、『日本労働研究雑誌』2025年4月号が刊行されました。

https://www.jil.go.jp/institute/zassi/new/index.html

特集は「その裏にある歴史 」で、次のようなラインナップです。

法学

なぜ労基法上の労働者と労組法上の労働者に違いがあるのか 鎌田 耕一(東洋大学名誉教授)

なぜ定年後に労働条件が切り下げられるのか 櫻庭 涼子(一橋大学大学院教授)

なぜ労働者派遣が労働者供給と区別されて合法化されたのか 本庄 淳志(静岡大学教授)

経済学

なぜ国が休業者に助成を行うのか 佐々木 勝(大阪大学大学院教授)

なぜ初任給はほぼ横並びなのか 上野 有子(一橋大学教授)

なぜ企業は従業員の人的資本に投資すべきか 小野 浩(一橋大学大学院教授)

労使関係

なぜ企業別組合が主流になったのか 呉 学殊(JILPT特任研究員)

なぜ多くの企業が同時期に賃上げ交渉をおこなうのか 李 旼珍(立教大学教授)

なぜ公労使で労働立法をつくるのか 濱口 桂一郎(JILPT労働政策研究所長)

経営学

なぜ属人給が残り続けているのか 金子 良事(阪南大学准教授)

なぜ企業が労働者の安全や健康に配慮するのか 堀江 正知(産業医科大学教授)

なぜ人事部は多くの権限を有するのか 青木 宏之(香川大学教授)

社会学・心理学・教育学

なぜ日本の労働者は長時間残業するのか 田中 洋子(筑波大学名誉教授)

なぜ日本の大企業では新卒一括採用がおこなわれているのか 大島 真夫(東京理科大学准教授)

なぜ学校が職業紹介をできるのか 濱中 義隆(国立教育政策研究所高等教育研究部長)

わたくしは、「なぜ公労使で労働立法をつくるのか」というのを書いております。

 労働法政策が他の政策分野と異なる特徴の一つとして、立法過程において労使団体の関与が規範とされている点がある。いわゆる「三者構成原則」である。これは今から100年以上前に国際労働機関(ILO)が設立されたとき以来の国際的な基準であり、戦後日本においても労働行政における審議会の公労使三者構成として確立し、今日でも労働政策審議会の構成として維持されているが、21世紀になってから規制改革サイドから三者構成原則に対する批判が相次いでいる。一方、20世紀末以来の政治改革論の帰結として政策決定における官邸主導の傾向が強まり、官邸の会議体で結論が決まり、その旨が閣議決定されてから、厚生労働省の三者構成審議会で形式的な審議が行われるという事態が進んでいる。本稿では、三者構成原則の始まりとその展開を跡づけつつ、近年の動向をやや詳しく見ていく。
 
1 ILOの三者構成原則

2 戦前日本と三者構成原則

3 終戦直後の三者構成原則

4 日本的三者構成システムの展開

5 規制緩和の波と三者構成原則

6 規制改革会議による三者構成原則批判

7 働き方に関する政策決定プロセス有識者会議

8 官邸主導と三者構成原則の空洞化

・・・・ もっとも、その後の立法過程では2015年に国会に提出されていた高度プロフェッショナル制度を盛り込むことをめぐって、審議会や場外、国会等でかなりのやりとりが見られた。これはもともと、労働側が全く入らない官邸の産業競争力会議において「労働時間と報酬のリンクを外す新たな労働時間制度の創設」が提起され、閣議決定された「日本再興戦略2014」で「時間ではなく成果で評価される制度への改革」が明記され、労政審から労働側の反対を付記した建議がなされ、それに沿って2015年に厚労省が法案を国会に提出したものの、3年間塩漬けにされていたものである。労働側としては、推進すべき時間外・休日労働の上限規制と阻止すべき労働時間規制の緩和とが合体されることにより、単純な対応が困難になり、神津会長が安倍首相に直接談判して、高度プロフェッショナル制度の導入要件を一部修正させるという行動に出たが、それが傘下産別の一部や他の労働団体からの批判を浴びることとなり、政労使合意を諦めざるを得なかった。
 これは三者構成原則の観点から見ても大変興味深い政治過程であったといえよう。十数年にわたって拡大強化されてきた官邸主導の政策過程の中で、排除されてしまいかねない労働側がいかに官邸主導の政治過程に入り込んでいくかが試された事例であった。都合のいいときだけ選択的恣意的に労働側を政策決定に関わらせる政治状況下にあって、単なる「言うだけ」の抵抗勢力に陥ることなく、その意思をできるだけ政治過程に反映させていくためにはどのような手段が執られるべきなのかを、まともに労働運動の将来を考える者には考えさせた事例であった。

 

 

 

 

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