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2025年3月31日 (月)

オリンパスのブロン

Vlrythniegzocei1uhbytnfbb1bcut09 昔読んだ星新一のショートショートに「ブロン」てのがあって、博士がメロンのように大きな実がブドウのようにたくさんなる果物を作ろうとしたら、ブドウのように小さな実がメロンのように少ししかならなかった、て話。

で、今話題のオリンパスなんだけど、日本の『エコノミスト』誌によると

オリンパス子会社「ジョブ型」雇用導入で200人が大量降格――訴訟提起や自殺未遂も

大手医療機器メーカー、オリンパスの販売子会社で「ジョブ型」雇用制度の導入に伴い、大量の降格人事が発生し、問題となっている。40~50代の中堅社員約200人が、基本給を決める人事上の「等級」で新入社員相当に引き下げられ、製品運搬や回収などの単純作業を担う部署に配置転換される事例も多発した。一部の社員は、「ジョブ型雇用に名を借りた事実上のリストラ」として、降格の取り消しとパワーハラスメントに対する損害賠償を請求する訴訟を起こしたほか、精神的な苦痛から自殺未遂を起こす社員も発生している。・・・・

いやちょっと待ってくれ。ジョブ型ってのは、ジョブで給料が決まるけれども、そもそもジョブは合意で決まる。というか、値札の貼ってあるジョブにヒトをはめるのが採用なのであって、社員を勝手にどんな仕事にも配置転換できるはずはない。「製品運搬や回収などの単純作業を担う部署に配置転換される事例も多発」しているのなら、それはまごうことなく100%のメンバーシップ型のはずだが、オリンパスでは配置転換万能の独自の「ジョブ型」をやっているらしい。

これを何と呼ぶべきか頭が痛いところだが、メンバーシップ型で配置転換が自由にできるけれども、配置転換先のジョブで給料が決まるところはジョブ型というまことに都合のいい代物らしい。ジョンバーシップ型とでも呼ぶべきかも知れないが、そこで思い出したのが星新一の「ブロン」というわけ。

ジョブ型とメンバーシップ型のいいところを合わせてよりいいものを作ろうという話はあるけれど、下手すると「ブロン」になっちゃうよ、という教訓話かな。

15401001 『オリンポスのポロン』ならぬ「オリンパスのブロン」でした。

 

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コメント

あれとこれを合わせたらどうなる?が星新一の思考原理だったと編集者談を読んだことがありますが
これまで通りの総人件費率を上げたくない企業はこうした発想になるんですね

バートランド・ラッセルがあるパーティーで女優と話していた際に「私の頭脳とあなたの魅力が合わされば素晴らしい子が生まれるだろう」と冗談を言ったら、その女優に「逆ならどうなるのかしら?」と返されたという逸話を思い出しました。
20数年前に見事に失敗した「成果主義を」と同じように、年功序列をやめて中高年社員の賃金を抑制することで人件費の抑制を図ったり、キャリアを無視した配転によってプライドをずたずたに切り裂くことで中高年社員を退職に追い込むことが狙いなのですね。
それを「ジョブ型」というなんだか新しい言葉に言い換えただけと…

一方で、新卒君は新卒君で、「配属先を希望通り」に「配属先で活躍できるように育成をするべき」というブロンなのかもしれません。

「長期的に活躍人材になれるようゆっくり時間をかけて育てて欲しい」の回答合計が64.2%となり、全体の6割を超えています。
https://www.benesse-i-career.co.jp/news/20250318_2release.pdf

メンバーシップ雇用幻想はいまだ健在なり、ですかねえ。

「誰でも偉くなれるチャンスがある」「年を取れば誰でも給料を上げてもらえる」と言う夢を新入社員に見せて引き留めを図る企業が多いようだから無理もないか。
今年の入社式では俳優さんやスポーツ選手を呼んだ企業があった事が話題になりました。
そのように引き留めを図った企業は20数年後、手のひらを返して冷酷にも「やっぱりジョブ型でないとダメ」と「なんちゃってジョブ型雇用」を悪用して容赦なくリストラ(^^;

20数年後もそう言う事を続けている日本の企業社会はさすがに想像したくはないです(^^;

オリンパスの記事はマーケの人間をレイオフするために配転権使って嫌がらせしてるだけっぽいように思いました

社員の力をなるべく引き出して企業の利益を増やすためではなく人件費抑制のため、という当初の目的が間違っていれば、どのような制度を実施しても社員に見透かされて失敗になるでしょう。

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