「雇用と法」2012年度試験問題
こんなのも出てきました。
法政大学社会学部で「雇用と法」という講義を担当していた頃のものです。
問1 次の各文のかっこ内に当てはまるものを下のa~dの中から選び、答案用紙の所定の位置に記入すること。
(1)日本の民法は、雇用契約を(①)と定義しているが、現実の労働社会では(②)として認識されている。
a 労働に従事することと報酬の支払いを対価とする契約
b 特定の仕事を完成することとその報酬の支払いを対価とする契約
c 会社の一員としての地位を設定する契約
d 生涯にわたって一定の金銭を給付する契約
(2)日本の法律上で「社員」とは(③)のことであるが、現実の社会では(④)を意味する言葉として用いられている。
a 正規労働者
b 学生
c 出資者
d 主婦
(3)日本の判例法理では、企業が経営上の理由で整理解雇する場合、人員削減の必要性、(⑤)、(⑥)、労働組合や労働者への説明・協議の4つの要件を満たす措置を講ずる必要がある。
a 労働基準監督署長の許可
b 解雇を回避する努力(残業の抑制、新規採用の停止、配転・出向・転籍、非正規労働者の雇止め、希望退職募集など)
c 再就職のための教育訓練
d 対象者選定の妥当性
(4)戦後日本では、技能者養成については(⑦)を中心とする思想で法制が作られたが、現実には(⑧)が中心となった。
a 徒弟制
b 企業内のオンザジョブトレーニング
c 公的職業教育訓練施設
d 労働組合
(5)日本の労働基準法は現在、(⑨)については絶対的な労働時間の上限を設けているが、(⑩)については一定以上の時間外労働の免除を請求できるだけである。
a 女性
b 18歳未満の年少者
c 育児・介護をする労働者
d 65歳以上の高齢者
(6)男女雇用機会均等法が施行されたため、企業は(⑪)を導入したが、現在でも男性に(⑫)を認める企業はほとんどない。
a コース別雇用管理
b 男女別雇用管理
c 総合職
d 一般職
問2 次の各文のうち各設問の趣旨に沿って正しいものを一つ選び、答案用紙の所定の位置に記入すること。
(1)現在の日本の判例法理に照らして正しいものはどれか。
a 求人票に明示した初任給はいかなることがあっても守らなければならない。
b 企業は客観的に合理的な理由がなくても内定を取り消すことができる。
c 企業は学生運動に従事していたことを理由として試用期間中の労働者を本採用拒否することはできない。
d 採用内定を受けた者は在学中でも内定企業に雇用される労働者である。
(2)現在の日本の判例法理に照らして正しいものはどれか。
a 共働きで子どもが重病であれば、労働者は転勤命令に従う必要はない。
b 他の職には一切就かせないという合意がない限り、企業には職種変更を命ずる権利がある。
c 病気のため建設現場で作業できなくなった現場監督は解雇することができる。
d 看護師は公的資格を要する職業であるので、医療事務職への配置転換を拒否することができる。
(3)日本の労働運動について述べた次の文で、正しいものはどれか。
a 日本の労働組合の大部分は頻繁にストライキを行う。
b 日本の労働組合の大部分はホワイトカラーとブルーカラーが別々の組合を組織している。
c 日本の労働組合の大部分は地域社会に本拠を置くコミュニティ・ユニオンである。
d 日本の労働組合の大部分は非正規労働者を組織していない。
(4)現在の日本の判例法理に照らして正しいものはどれか。
a 正社員の整理解雇は、臨時的社員を削減した上で行われるべきである。
b 企業は非正規労働者に対してはいつでも契約更新を拒否することができる。
c 正社員と非正規労働者の間に賃金格差が存在することは許されない。
d 非正規労働者には労働組合を組織する権利はない。
(5)日本の賃金制度について述べた次の文で、正しいものはどれか。
a 職能資格制度における「職務遂行能力」とは、潜在能力ではなく実際に出した成果によって測られるものである。
b 終戦直後に確立した電産型賃金体系は年齢と扶養家族数に基づく生活給であった。
c 成果主義が普及してくるにつれ、不当労働行為事件では大量観察方式がよく使われるようになってきた。
d 1950年代には、労働組合側が職務給の導入を主張したが、経営者側が年功制の維持を強く主張した。
問3 「雇用と法」の講義に対する感想、疑問、反論など、自由に記述せよ。
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大変久しぶりの投稿です。今朝スタバで軽く解いてみましたが、合格ラインは何割でしょうか?
Q1 ① a, ② c, ③ c, ④ a, ⑤ b, ⑥ d, ⑦ c, ⑧ b, ⑨ b, ⓾ c, ⑪ a, ⑫ d.
Q2. (1) b, (2) b, (3) d, (4) a, (5) a
Q3. 本設問と回答群がわが国の「雇用と法」のアンチテーゼあるいは一種のパロディに感じられてしまうのは私だけでしょうか。Critical minds injure their master…批評家精神は己自身を蝕むように…。
投稿: ある外資系人事マン | 2025年2月19日 (水) 09時05分