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2025年2月27日 (木)

右翼はいかにして文化戦争で労働者階級をハイジャックしたか?

U421983467603d3dbe852549f0bec7a10076ab57 久しぶりにソーシャル・ヨーロッパの記事を紹介。

How the Right Hijacked the Working Class for Culture Wars

右翼はいかにして文化戦争で労働者階級をハイジャックしたか?

The alliance between reactionary forces and the working class is not built on shared economic interests but on a manufactured sense of cultural identity.

反動勢力と労働者階級の同盟は経済利益の共有ではなく製造された文化的アイデンティティの感覚に基づいている。

In an age defined by culture wars, political divisions increasingly revolve around identity rather than material concerns. The focus has shifted from economic struggles to issues of recognition and status. Unlike the post-war era’s material politics—marked by fair wages, strong social safety nets, and democratic expansion—the culturalisation of politics does not lead to tangible material change. While cultural politics have achieved significant progress in advancing the rights of women and ethnic minorities, they also risk devolving into performative status battles, often driven by a longing for the comfort of tribal belonging.

文化戦争で定義される時代、政治的分断は次第に物質的利益よりもアイデンティティをめぐるものになってきた。焦点は経済的闘争から承認と地位の問題にシフトしてきた。公正な賃金、強力なセーフティネット、民主的拡大によって特徴付けられる戦後期の物質政治の時代と異なり、政治の文化化(カルチュラリゼーション)は目に見える物質的変化をもたらさない。文化政治は女性や少数民族の権利の伸長に顕著な進歩を達成したが、それはまたしばしば部族的所属の慰安を求めることによって、パフォーマンス的な地位の闘いに転化するリスクがある。

This transformation recasts political issues as cultural ones, not only diverting attention from material concerns like wages and social security, but also reshaping fundamentally economic matters into cultural narratives. The latest casualty of this shift is the worker—once defined by economic conditions, now reimagined as a cultural identity. In this process, the category has regained prominence, drawing renewed attention and recognition. Yet, this resurgence fails to deliver what is truly needed: a politically potent class consciousness.

この転換は政治問題を文化問題に最鋳造し、賃金や社会保障のような物質的関心から注意をそらすだけではなく、本質的に経済的な物事を文化的なナラティブに再形成する。このシフトの直近の災禍は労働者だ。かつては経済的条件によって定義されていたが、今や文化的アイデンティティとして再認識されている。このプロセスにおいて、このカテゴリーは再び目立つものとなり、注意と認識を新たにした。しかし、この再興は真に必要なもの:政治的に強力な階級意識を提供できない。

・・・

Under neoliberalism, the concept of the working class was first ignored, then dismissed. Economic classes were rebranded as “social layers,” and eventually, as merely individuals seeking success in the lottery of social mobility. Neoliberalism denies the fundamental contradiction between capital and labour.

ネオリベラリズムの下では、労働者階級の概念は最初は無視され、次いで退けられた。経済的階級は「社会階層」と呼び換えられ、遂には社会的移動の籤における成功を求める諸個人にすぎなくなった。ネオリベラリズムは資本と労働の基本的矛盾を否定する。

The right, however, has reintroduced the term “worker”—but only in a politically toothless, tribal sense. Where the left traditionally saw politics as a contest of material interests, the new right reduces it to a culture war.

しかしながら右翼は、「労働者」と言う用語を再導入する。ただし、政治的に無力な部族的意味においてだ、左翼が伝統的に政治を物質的利益の競争として見てきたのに対し、新右翼はそれを文化戦争に収縮する。

In right-wing discourse, the worker is not a structural position but a cultural figure: the honest, conservative, religious, often male labourer. He wears overalls, drinks beer, and rejects gender-neutral language. This nostalgic, populist ideal of the “common man” is a deliberate political construct—one designed to make material politics impossible.

右翼の議論では、労働者は構造的な位置ではなく文化的な形態である。正直で、保守的で、信仰厚く、しばしば男性の肉体労働者だ。彼はオーバーオールを着て、ビールを飲み、ジェンダー中立的な言い方を拒否する。このノスタルジックでポピュリスト的な「コモン・マン」の理想は、練り上げられた政治的工作物であり、物質的政治を不可能にするために構築されたものだ。

・・・・

という調子で続くのですが、正直、その通りと思う部分と、いやいやそもそも文化政治を持ち込んで物質政治を希薄化させたのは、右翼よりも先に文化左翼の側だったんじゃねえのか?という疑問がつきまとう部分があって、同意しきれないところが多い文章です。

それこそ、「労働者」を右翼側にハイジャックされたのは、左翼がそれを軽視し、あまつさえ否定的なまなざしで見たからであって、この文章はその時系列をわざとごっちゃにしているように思われます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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コメント

すでに、大統領選挙の敗北直後の昨年11月7日に、アメリカ左翼の闘将、おなじみバーニー・サンダース上院議員は、「労働者階級の人々を見捨てた民主党が当の労働者階級から見捨てられても、大して驚くには当たらないはずだ」と公式声明を出していました(サンダース氏、米民主党の大統領選敗北に驚きなし 「労働者階級見捨てた」と批判 https://www.cnn.co.jp/usa/35225842.html)。

つい最近は、トランプ政権による「貧困層向けの予算(公的健保「メディケイドなど)を削減し、寡頭支配層に対する大規模減税を行う「逆ロビン=フッド」行為をくい止め、逆転させるには、「民主党支持者が多い州であれ、共和党支持者が多い州であれ、両党の支持者が拮抗する州であれ」全ての州の「働く人々」が立ち上がり、イーロン・マスク等の億万長者のための政府ではなく、全ての「人民の、人民による、人民のための政府」をもう一度創りだす必要がある、という趣旨で、共和党の強固な地盤である、中部ネブラスカ、アイオワ両州で開催された討論集会に主賓として参加しています。
(Bernie Sanders Is Sending a Piercing Message About Musk and the Oligarchy
https://www.thenation.com/article/politics/bernie-sanders-elon-musk-oligarchy-speech/)
 右翼の地盤においても、どれだけ覚悟を持って、巻き返しに出ることができるか、が今問われている、ということなのだと思います。

人を批判するロジックは「自分ならそうする」というのが如実に出ますね。いわゆる「自己紹介」というやつです。

文化エリートサヨクとビジネスエリートウヨクのどちらを支持しても、(下層)労働者は結局周辺部や蚊帳の外に追いやられる未来しか見えないのが辛い所です。

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