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2025年1月10日 (金)

「日本の強みは人事異動とOJT」は嘘。幻想を捨て、一から日本型の能力開発を@リクルートワークス研究所インタビュー

リクルートワークス研究所が最近立て続けにアップしている「 日本の雇用のあり方を考える」インタビューに、わたくしの番も回ってきました。

「日本の強みは人事異動とOJT」は嘘。幻想を捨て、一から日本型の能力開発を

日本と海外の雇用システムに詳しく、政策や企業実務に影響を与えてきた濱口氏に、Global Career Survey(GCS)2024 の報告書『「日本型雇用」のリアル』についての感想や解釈を伺うとともに、OJTや人事異動を中心にした日本の能力開発の課題に関して示唆をいただいた。

歯に衣を着せずに相当にズバズバ発言しておりますので、心してお読みください。

——Global Career Survey 2024の結果をご覧になって、率直にどう思われましたか。
 
一番おもしろかったのが、皆さんもそうだと思いますがOJTに関してです。これぞ日本の特徴だ、強さだと言ってきたのが全然そうじゃなかったじゃないか、というのがおもしろくて。・・・・・
——ホワイトカラーの人たちは、何をもってOJTと感じているのでしょうか。
 
はっきり言って、皆さん薄々感じているんじゃないですか。2年か3年おきに人事異動で新しい職場に飛ばすのをOJTと称しているだけじゃないかって。・・・・・・
——先ほど先生がおっしゃった人事異動も、実際に経験がある人が非常に少なかった。頻繁な配置転換を通してジェネラリストを育成しているという日本の特徴が実際には見られなかったことは、どのように受け止められますか?
 
これもおもしろいデータでした。パート有期法第8条に、“通常の労働者”という概念があります。正社員として業務や配置が転々と変わっていくのが通常の労働者で、そうでないのが短時間労働者とか有期労働者と書いてあります。企業の方に人事権があるかどうかの違いを言っているわけです。でも実際には異動していなかった。・・・・・・
——先ほど、ホワイトカラーには能力評価システムが存在しないという話がありました。なぜないのでしょうか。
 
厚生労働省でも、繰り返し作っていますが、全部失敗してきています。企業で使われないのです。役に立たないから使わないのでしょうね。・・・・・・
——最後に、日本企業にとってここからどういう道があるのか、希望があるとしたらどんなことなのか、伺いたいです。
 
日本はもう駄目だ、駄目だと言われながら、日本には人事異動とOJTの強みがあって、この良さをちゃんとうまく使っていけばやがて復活するだろうという、恐らく唯一の希望が、今回のこの調査で、見事に粉々にたたきつぶされた(笑)。・・・・・・

 

 

 

 

 

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コメント

 今年も楽しく拝見しています。
  リクルートワークス研究所の国際比較調査は、興味深くかつ貴重です。私もヒアリングを受けましたが、
 人事異動の設問に関しては、下記の課題があることを指摘しました。
この調査は、職種変更と転居を伴う勤務地変更に関して、本人同意か、会社主導かを尋ねていますが、回答結果に関しては、調査屋の観点からすると、評価が難しいと話しました。
 第1は、職種変更の設問は、職種の範囲(職種分類では大分類か中分類か小分類かなど))を特定しないと国際比較できないことです。職種の範囲をどう想定するかで、異動の有無が変わります。例えば、人事職能の中で採用担当から教育担当への変更を職種変更と考えるか、人事職能の中での異動なので、職種の変更でないと考えるかです。職種を大分類で考えるか、小分類で考えるか、職種変更の有無が異なります。
 第2に、転居を伴う勤務地変更ですが、事業所間異動があっても転居があるどうかは、事業所の地域的な配置に依存します。例えば、東京メトロなどは、ほとんどの事業所は通勤圏内にあるため、居住地変更のない事業所間異動が主になります。
 第3に、残念なことは、配属職場の異動に関して尋ねていない点です。レポートする上司が変わる職場の異動とも言えます。
 ご参考まで。

佐藤先生、コメントありがとうございます。

わたくしは調査設計にはほとんど気が行かず、もっぱら示された結論にのみ反応してしまったために、やや単純な反応になってしまったのかも知れません。

諸外国との比較についてはおそらくかなりの問題がありそうですが、日本の労働者がどれくらいOJTを受けているのかとか配置転換を経験しているのかといったことについては、我々の思い込みにかなり反する結果が出てきているのは、それとして受け止めるべきだとは思いました。


OJTに関しては同意見です。私も同様なコメントをしました。調査ですが、異動に関する設問以外は、妙味深いです。

『季刊労働法』の2024年秋号に載せた「企業内教育訓練への支援政策」で、技能者養成制度や事業内職業訓練への援助から、生涯能力開発助成金へ、さらにOJTの賞賛へと流れていく日本の能力開発政策の歴史をたどってみたことがありますが、80年代のOJT礼賛論がどれくらい地に足の着いたものだったのか、あるいはブルーカラー職場の実態とホワイトカラー職場がごっちゃになっていなかったのかなど、いろいろと問題がありそうだと感じました。

ブルーカラーはいわゆる仕事表などでOJTを可視化できていますが、ホワイトカラーの仕事表はごく一部の企業のみです。ホワイトカラー、特に営業職などブルーカラーと同じような仕事表を作成して、育成している企業もありましたが、定着していません。ホワイトカラーのOJTは、新人の育成を除いて、部門の管理職任せです。育成を考えた、部下への仕事配分やアドバイスは、管理職次第になります。この点は今後の研究課題です。

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