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2024年11月10日 (日)

大竹文雄@『文藝春秋』vs.濱口桂一郎@『中央公論』

昨日発売された『文藝春秋』と『中央公論』の12月号は、当然のことながら政局関連の記事を載せていますが、その中でいずれも自民党総裁選で話題になった解雇規制の問題を取り上げています。

4910077011242 『文藝春秋』12月号は、大竹文雄さんの「解雇規制が大量の非正規を生んだ」です。

 先日の自民党の総裁選で、河野太郎氏が「解雇の金銭補償の導入」に言及し、小泉進次郎氏も「解雇規制の見直し」を訴えたことで、「解雇規制の見直し」が一つの争点になりかけました。ところが「企業がクビにしやすくなる」「国際的に見れば日本の解雇規制は厳しくない」といった批判の声が上がると一気にトーンダウン。総裁選後はまったく議論されなくなってしまいました。
 厚生労働省の「解雇規制」をめぐる議論に労働経済学者の立場から関わった者としては、非常に残念です。これまでに積み上げられた議論を踏まえた上で提言していれば、これほど簡単に引っ込める必要はなかったはずでした。「なぜ解雇規制の見直しが必要なのか」という、そもそもの前提から理解してもらう説明がなく、人々に漠然とした不安を与えただけで終わってしまいました。
 厳しい言い方になりますが、政治家の仕事は、複雑なことでも上手に表現して人々を説得することであるはずです。中途半端な形で提言するなら、初めから出さない方がよかった。これまで少しずつ機運を高めるように慎重に議論してきたのに、それを台無しにしたと言っても過言ではありません。・・・・・

61lvdan9yul_sy466__20241110081201 一方、『中央公論』12月号は、すでに本ブログで告知したように、わたくしめが「政治家もメディアも解雇規制を誤解している――問題は法ではなく雇用システム」を寄稿しております。

 去る9月27日に自由民主党の総裁選挙で石破茂氏が総裁に選出され、10月1日の臨時国会で内閣総理大臣に指名されて石破茂内閣が発足した。石破首相は臨時国会会期末の9日に衆議院を解散し、27日投開票の衆議院議員選挙で自民党は連立政権を組む公明党と合わせても過半数を割る大敗を喫したが、比較第一党には留まり、連立の組み替えなどを模索している。
 今回の自民党総裁選ではさまざまな論点が議論の俎上に載せられたが、その中でも政治家やマスメディアの関心を惹いたものの一つに、解雇規制をめぐる問題があった。とりわけ総裁選が始まった当初は最有力候補と目されていた小泉進次郎氏が、結果的に石破、高市早苗両氏の後塵を拝して3位に終わった原因の一つとして、彼が立候補表明時に「労働市場改革の本丸である解雇規制の見直し」を掲げたことが指摘されている。
 小泉氏は「現在の解雇規制は、昭和の高度成長期に確立した裁判所の判例を労働法に明記したもので、大企業については解雇を容易に許さず、企業の中での配置転換を促進してきた」と述べ、「人員整理が認められにくい状況を変えていく」と訴えたことで、多くの批判を浴びた。また、結果的に候補者9人中8位と惨敗した河野太郎氏も、解雇規制の緩和や解雇の金銭解決を主張していた。
 この間、マスメディアではやや通り一遍の解説がいくつか掲載されはしたが、この問題の本質を雇用システム論を踏まえて論じたものは少なかったように思われる。本稿は、この問題を考えるうえで必要最小限の論点を提示し、世上にはびこる「解雇規制をめぐる誤解」を解きほぐそうとするものである。・・・・

大竹さんもわたくしも、解雇に関する実際の立法政策に研究者として関わってきた者ですので、読み比べてみるのも一興かもしれません。

 

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コメント

 定期購読している中央公論に載せられたhamachan先生の論文読ませていただきました。
 メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用の雇用システムの違いを踏まえての解雇規制について分かりやすく書かれていると思いました。

 論文末尾で会社側の都合による一方的な解雇に対する金銭補償の立法化問題、そして2002年の労働弁護団の金銭補償についての提言にも触れられていますね。

 http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2018/07/2002-cec5.html

 この金銭補償案がいまだに立法化されていないのは残念です。
 立法化されていれば労働問題の長期化による労使双方への負担は減少したでしょうし、労働者の他企業への転職も促進され、労働者に有利な雇用流動化が進んだかもしれない。
 労働組合は金銭的解決を武器に団体交渉を活性化させ、それにより労働組合運動が活性化したかもしれない。

 私の元勤め先の不当解雇裁判闘争も金銭解決の法理を類推適用することで早期解決が図れたかもしれない。

 …などと想像してしまいました。

実は、最初の原稿では、この日本労働弁護団の金銭補償案についても詳しく解説していたんですが、指数の関係でごく簡単に触れるにとどめました。

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