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2024年10月30日 (水)

中村二朗・小川誠『賃上げ成長論の落とし穴』

9784296120321b なかなかに刺激的なタイトルです。ここ数年来、政府を先頭にしてみな口々に賃上げ、賃上げと叫んでいる姿に、水をぶっかけてやろうと言わんばかりのタイトルですね。

https://bookplus.nikkei.com/atcl/column/032900009/100100706/

【賃金の長期停滞は真実ではない】
 持続的な賃上げによる経済の好循環が声高に主張されているが、その根拠はどこにあるのだろうか。失われた30年間で日本の賃金は本当に停滞し続けてきたのか。画一的な数値をみていただけでは、賃金の動向を掴めないのではないか。

 政策、雇用の安定、雇用慣行、共働き世帯の増加……

 賃金は複雑な要因が絡み合い決定されているのにも関わらず、こうした要因を無視すれば事実認識を誤る。今後、経済構造が大きく変化するなかで、真因を認識せずに賃上げを実行すれば経済に負の効果を与えかねない。

 この懸念に対し本書では、労働研究の第一人者と元政策担当者がタッグを組み、多面的な視点から賃金を分析し、賃金のこれまでとこれからを徹底解説する。

 本書は、90年代以降の30年間の賃金を巡る政策、企業の取り組み、働き方について学びたい人のための1冊。

本書はなかなかコメントしづらいのは、共著者の小川誠氏は職業安定局長などを歴任した元労働官僚ですが、実は私の同期であり、結構親しい仲でもあることもあります。

ただ、本書を最後まで通読すると、タイトルや帯の文句から想像されるほど攻撃的に賃上げ論を批判しまくっているわけでもありません。

冒頭の「はじめに」で、「本書で分かったこと」が次のように列挙されています。なるほどと思うか、いやいやと思うか、いずれにしても、この本をちゃんと読みこんでから論じる必要がありそうです。

① 言われているような20年から30年にもわたるような国際的にみて長期的な賃金の停滞はみられない。賃金の停滞があることを特に強調するならば、それはリーマンショック以降の10年程度の期間である。

② 一方で、日本の正規雇用者(特に男性)の平均的賃金の動向は、他の雇用者に比べて確かに停滞している。これは、企業内における正規雇用者の高齢化などが大きく影響していることが考えられる。しかし、年功的賃金の下では、50代以下の各雇用者は勤続年数の増加に伴い賃金も上昇している。

③ 日本的な雇用慣行の枠組みが徐々にではあるが変化してきており、年功的賃金の下でも同期社員間の賃金格差拡大、退職金の減少などが傾向として生じている。

④ 非正規雇用者などの雇用の多様化は、共働き世帯の増加などにより家計における収入源の多様化をもたらし、「家計のポートフォリオ」と呼べるような家計内でのリスク分散が進んでいる。結果として世帯単位での夫婦の賃金を足し合わせた勤労収入は、リーマンショック後も増加している。

 

 

 

 

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