三柴丈典『生きた産業保健法学』
三柴丈典『生きた産業保健法学』(産業医学振興財団)をお送りいただきました。
https://www.zsisz.or.jp/shop/book/2024/09/post-6.html
産業保健実務に必須の "生きた法知識" を豊富な判例から平易にひも解く!
◆産業保健スタッフや人事労務担当者が身に付けるべきリスク管理の法知識を、過去の判例から明瞭に解説。
◆職場での健康情報の取扱いについて、予備知識・基本原則からスタッフ間での情報共有のあり方、記録の本人への開示、条件整備の必要性まで、Q&A形式で実務目線から明快に回答。
◆ハラスメントや休職・復職判定、合理的配慮提供義務、海外勤務と健康管理、化学物質の自律的管理など、職場の現代的課題への適切な措置と対応方法を、判例を読み解く中から提示・解説。
◆近年増加する産業医をめぐる裁判例を未然防止・適切な事後解決の観点から詳細に解説。
「生きた法」とは、"法の作り手の思いと使い手の悩みをくむ営み"を意味する。平たく言えば、法をめぐる人と組織に焦点を当てることである(はしがきより)。『産業医学ジャーナル』2016年39ー6~2022年45ー2に連載され好評を博した「産業保健と法」を大幅に加筆・修正し、新たな書き下ろしも加えた一冊。
今や産業保健活動に欠かせない「法の知識・洞察・現場実務への応用」をめぐるバイブル、ついに刊行!
冒頭近くで出てくる判例が神奈川SR経営労務センターほか事件で、巻末近くで出てくる判例がシャープNECディスプレイソリューションほか事件であることからも窺われるように、三柴さんの問題意識は単なる安全衛生法制では対応不可能な産業保健法学の必要性にあります。
昨今、産業医業務の多くは、メンタルヘルスと生活習慣病に関わる問題への対応になっている。中でも、発達や性格傾向が職場環境に適応しない労働者への対応が懸案となり、ときに訴訟になで発展する。・・・
筆者の私見では、本件で、産業医には、組織の構造と構成メンバーをよく観察した上で、戦略的な動きをとる必要があったと考える。仮に最終的には退職させるという結論をもっていたとしても、そこに至るまでの手順を示唆せず、短兵急に組織の運営者が望んでいると思われる結論だけを伝えると、かえって労使双方に不利益を与えることがある。・・・。
結局、科学的・論理的な蓄積のある分野の専門性を深めた上で、関係分野の情報や人と対話しつつ、自ら現場でも人間関係や組織関係の軋轢と克服を多く経験し、戦略的思考を磨かなければ、そうした解決策にはたどり着かないのではなかろうか。
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