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2024年8月19日 (月)

新人声優さんの拙著書評

81tj1p4qhol_sy466__20240819104901 (確か前は女性声優さんと名乗っていたと思いますが)新人声優さんが拙著『賃金とは何か』について書評をして下さっています。

濱口桂一郎さんの『賃金とは何か』を読んだ

日本では会社ごとの賃金があり、そしておおまかには在籍年数に応じて役職定年までは毎年昇給していく、という給与システムはごくあたり前のこととして受容されている(と思う)が、そうしたシステムはどのように作られてきたか、ということを労働行政の賃金マフィアとでも言うべき一群の人達の視点を中心に書いている歴史書。

「どのように」みたいな話は本に書かれているので、読んで頂ければいいとして、この本の白眉と言える部分は以下の3箇所だと思っている。

というわけで、本書の中から3か所をスライドにして貼っていただいています、

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これらのセリフがそこまで「白眉」と言えるのかどうか、著者の自分自身いささか疑問もありますが、まあでもここまで見事なプレゼン資料にしていただいたのは感謝です。

最後の2パラグラフはご自身で「完全な与太話」と言われていますが、その内容(日本のアニメの奇形的発展の原因は年功賃金制にあり)の妥当性如何については、私は全く判断するだけの材料を持ち合わせていませんので一切コメントは控えますが、ただその冒頭の記述については、若干誤解があるように見えるので、その点だけ指摘しておきます。

新人声優さんは「日本の年功制賃金は「若い男性に金を与えれば共産化するから若いうちは貧乏にさせとけ」という発想がベースの一つにあったことが本書に記されている」と書かれているのですが、いやこれは論理の裏の裏をとればそういうことになるとも言えますが、少なくとも直接的にはそういうことはいっていません。というか、これは呉海軍工廠長の伍堂卓雄海軍中将の「職工給与標準制定の要」の一節ですが、そこで伍堂が言っているのは、家族を扶養する中高年の職工が家族を養えないような低賃金では思想が悪化して共産主義に走る恐れがあるから、そこを手厚くしろ、若いのに多額の賃金を払っても酒色に費やすだけだから無駄だぞ、という理屈です。

若い男性に金を与えたらそいつらが共産化するというのではなく、女房子供抱えた中高年に金をやらないとそいつらが共産主義化すると言っているのであって、だから仕事の値打ちに関わらず若い奴は薄給にして中高年に手厚くしろというわけです。結果的には、その次のセンテンスである「このような賃金制度のもとで若い男性は「生活するだけでやっと」という賃金しか得られない、ということになった」に素直にそのままつながるので、裏の裏で元に戻って、その後の「完全な与太話」には全く影響を与えないのですが、お金をたくさんもらうとなぜか共産主義に走るというのはどう見ても理屈が逆なので、一応指摘だけしておきます。

(追記)

やっぱりそこんところに疑問を感じる人が出てきているようです。

で、「若い男性に金を持たせると共産化する」ってのがよく分からないのでもう少し解説ほしいのと、メンバーシップ型こそだいぶ社会主義的じゃない?と思ってしまうのと。

上述のように、若い男性に金を持たせたら、その金を持った若い男性が共産化するなんて莫迦な話は言ってなくって、若い男性に高い給料を払ったら女房子どもを抱えた中高年男性が低賃金で生活できなくなってそいつらが共産主義に走るぞ、って話です。

だから、共産化を防ぐためのある種社会主義的な発想であるわけです。

それが戦時中の皇国勤労観を通じて終戦直後の電産型賃金体系に流れ込んでいるわけですよ。

 

 

 

 

 

 

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