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2024年8月26日 (月)

城塚健之『労働条件変更の法律実務』

649854 城塚健之『労働条件変更の法律実務』(旬報社)をお送りいただきました。これから続々と刊行される予定の「 最新テーマ別[実践]労働法実務」というシリーズの第1弾ということです。

第1巻は、労働条件変更のさまざまな場面を労働者側の視点で解説。
労働紛争の大部分は使用者による「労働条件変更」から始まるため、労働紛争の全体をカバーしたシリーズの総論的な位置付けとなる。特に重要なテーマとして「個別合意」「就業規則」「労働協約」を重点的に取り扱い、その他の論点はシリーズ続刊で詳述する。

第1章 はじめに
第2章 労働条件が変更される場合とは
第3章 個別合意による変更
第4章 就業規則による変更
第5章 労働協約による変更
第6章 人事考課
第7章 年棒・賞与・仕事の割当
第8章 降格
第9章 配転(職務変更)
第10章 懲戒処分
第11章 退職金の不支給・減額
第12章 権利行使と賃金の減額・不支給等
第13章 定年後再雇用・企業年金
資料 重要判例要旨、判例一覧、裁判実務書式例など

まさしく実務書ですが、最初のはじめにのところで、労働弁護士としての裏話を書かれています。

城塚さんが担当されたハクスイテック事件は、成果主義賃金制度の導入をめぐって争った事件ですが、結果は一審、二審とも敗訴で、「その後、この判決は、使用者側弁護士から,さまざまな媒体においてリーディングケースとして紹介される羽目になり、肩身の狭い思いをした」そうなんですが、「しかし、実は、原告となったOさんにとっては少なくないメリットがあった」というのです。

それは、「会社は、裁判所に不利益性が小さいことをアピールするためであろうが、労使間で紛争が始まってから、数次にわたって、基準となる賃金を引き上げた」からで、「野球で高めの球を打つと飛距離が伸びるのと一緒で、裁判の結果を待たず、Oさんの賃金は長期的に見てかなりのアップとなった」のだそうです。

ふむ、こういうのは(会社側から見て不本意な)自己実現的予言というべきなのか、(労働者側から見て想定外の望ましい)自己破壊的予言というべきなのか分かりませんが、物事はそうそう単純なものではないということだけはよく分かります。

 

 

 

 

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コメント

> 原告となったOさんにとっては少なくないメリットがあった
> 不利益性が小さいことをアピールするためであろうが、労使間で紛争が始まってから、数次にわたって、基準となる賃金を引き上げた

例えば、ですが、就業規則で新たに定年制を設けることは、その点だけを取るならば明確な不利益変更ですが、
一概に無効とは言えず、その他の変更もひっくるめて総体として不利益でなければ有効と判断するのが通例と
いうことでしょうかね。そうすると、労働者ごとに、その判断はかなり異なって来るはずです。その点を衝き、
訴え出た労働者の給与を引き上げて、その分、その他の労働者の給与を引き下げ帳尻を合わす、ということが
可能となりますが、もしそうであれば、これは日本の労働法の根本的なバグのようなものではないでしょうか。
「賃金が上がるから、賃金が上がらない」も含む、しかも、必ずしも労働問題だけに限らない広範な一般的な
カテゴリーに属する欠陥を日本の社会は抱え込んでしまっているのかもしれません。

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