山下ゆさんの拙著評
ネット界の書評家といえば山下ゆさんが筆頭でしょう。私も今まで何回も著書を書評していただいてきてますが、今回『賃金とは何か』も取り上げていただきました。山下ゆさんの採点は8点です。
http://blog.livedoor.jp/yamasitayu/archives/52398441.html
日本型の雇用をメンバーシップ型雇用として欧米のジョブ型雇用と対比させながら論じてきた著者が日本の賃金の歴史について論じた本。
日本の賃金の特徴については『ジョブ型雇用社会とは何か』(岩波新書)の第3章でも論じられていますので、単純に日本の賃金の特徴を知るのであればそちらのほうがいいかもしれません。
一方、本書はさらに細かく日本の賃金の歴史が深掘りしてあり、そして多くの人が気になっている「日本の賃金が上がらない理由」というものがわかるようになっています。
「上げなくても上がるから上げないので上がらない賃金」という謎掛けのような言葉が最後に登場しますが、本書を読めばその意味がよくわかると思います。
と、読者に謎を残したまま、拙著のたいへん詳しい紹介を重ねていきます。
最後のパラグラフで、こう述べられています。
このように読みどころの多い本ですが、第1部と第2部で2回歴史をたどる形になっているので少し読みにくさはあるかもしれません。自分も1回目に読んだときはずいぶんゴチャゴチャしているなと思いましたが、この記事を書くために読み直してみると第1部と第2部のつながりがよくわかりました。
そして、戦時体制のもとでビルトインされた制度の根深さ(個人的は産業報国会→企業別組合という流れの影響力の強さを改めて感じた)というのも感じました。
第1部と第2部の構成はなかなか難しいところでした。理屈から言えば、「決め方」と「上げ方」は別の話であり、いやむしろそれがごっちゃになっているのちゃんと別の話だという理路を理解してもらうのが本書の大きな目的でもあるのですが、ところがお読みになった方はわかるように、その理屈の上では別々のはずの話がごちゃごちゃに入り混じりねじれてしまっているところに戦後日本賃金史の最大の特徴があるのですから、読んでいくと第1部の話が第2部で繰り返されているようないないような訳の分からん感覚にとらわれてしまうでしょう。
それをどこまできちんと腑分けして解説できたのか不安も残りますが、山下ゆさんが2回目に読み直されて「第1部と第2部のつながりがよくわか」ったとのことですので、とりあえず安心しました。
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