AmazonでSocialさんによるレビュー
Amazonのカスタマーレビューで、Socialさんによる『賃金とは何か』のレビューがアップされました。「熱心に語られるも何かとなかったことにされる職務給ちゃん、今度はどうか? 」というタイトルです。
https://www.amazon.co.jp/dp/4022952741#customerReviews
日本を代表する労働法政策研究者である著者の、朝日新書からの初の著作となる本書のテーマは「賃金」。
雇用システム論の基礎の基礎の解説後は、何とも複雑怪奇な賃金の世界を、明治以降の歴史年表片手に探検するような読書体験が得られる。
生活給思想は戦前と戦後に現実化したが、職務給思想(「職務給」は当たり前すぎて英訳がないそうだ。)は熱心に唱道されるも、不況のたびに腰折れして実現したとはいえない。現在は、官製春闘の次のキャンペーンとして、政府主導で「ジョブ型」人事の導入と合わせて職務給への移行の旗振りが行われている。果たして今度は腰折れせずにいられるだろうか・・・といった感想を、この本を読めば得られる。
現実社会の改革は白地に”映える”ポンチ絵を描くことではあり得ない。雇用システムと連動する社会保障が生活保障部分をより多く分担することになる等は想像に難くないし、さらに我が国のそこかしこに無意識的に埋め込まれている生活給を前提とする仕組みにも影響するだろう。政労使は、一国レベルでの影響の精査をすべきと考えるがどうか。
解決策は、今を生きる世代が叡智を結集して自ら考えなければならない。本書は、その内容に正答を期待すべきものではないが、私たちが置かれている複雑な現状を観察していくための素養を読者に与えてくれる。
「現実社会の改革は白地に”映える”ポンチ絵を描くことではあり得ない」という表現に、そこはかとない霞が関風の香りも感じられますね。
ここに書かれているように、本書は、そしてこれまで書いてきた多くの著書も、決して「その内容に正答を期待すべきものではな」く、「私たちが置かれている複雑な現状を観察していくための素養を読者に与え」ることを目指して書かれています。願わくは、多くの読者がその趣旨を読み取っていただけることを。
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