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« 『賃金とは何か-職務給の蹉跌と所属給の呪縛』(朝日新書)見本到来 | トップページ | 政省令等からみるフリーランス新法@『先見労務管理』7月10日号 »

2024年7月 4日 (木)

内閣府(とりわけ幹部)に労働法研修を(追記あり)

毎週送られてくる『労働新聞』。私の書評の番でないときは、だいたい「ふーん」といいながらめくっていくんですが、今回(7月8日号)には驚愕しました。「今週の視点」の「驚愕のアイデアが優勝飾る」という記事。

https://www.rodo.co.jp/news/179307/

内閣府が全職員を対象に開いた賃上げに関する政策コンペで、「残業の業務を従業員が個人事業主としてこなし、手取り増を図る」という施策が優勝した。労働者性をめぐるこれまでの議論を完全に無視しており、実現可能性には疑問符がつく。厚生労働省にはぜひ「指揮命令が必要な業務だから労働者を雇う」という基本のキを、内閣府に教授してもらいたい。

あまりのことに、内閣府のサイトに飛んで行ってみたら、確かにありましたぞなもし。

「賃上げを幅広く実現するための政策アイデアコンテスト」を開催しました

今般、内閣府全職員を対象に、「賃上げを幅広く実現するための政策アイデアコンテスト」を開催しました。

 今年の春闘で昨年以上の賃上げ率が示される中、今後、物価高を超える賃上げを実現し、「賃金が上がることが当たり前」という前向きな意識を全国に広げ、社会全体に定着させていくことが重要です。
 こうした問題意識の下、本コンテストでは、内閣府の職員のみならず、他省庁・地方自治体・民間企業からの出向者等の参加を得て、賃上げを幅広く実現するための政策アイデアを募りました。

 応募アイデア総数の36件の中から、アイデアの新規性や詳細度、実現可能性の観点からの評価と、応募者からのプレゼンテーションにより、以下の優勝および優秀アイデアが決定されました。

その優勝したアイディアというのはこれです。

https://www.cao.go.jp/others/jinji/cntest/winner.pdf

001_20240704140901002_20240704141001
いや、もちろんこのアイディアを思いついて応募した内閣府の若い職員を責める気持ちは全くありません。若いうちはいろいろと考えを広げるのはいいことです。それとともに色々と勉強していけばいい。でもね、経済財政諮問会議や規制改革推進会議を抱え、ここ20年以上にわたって労働政策を大幅に左右するだけの権限を振るってきた内閣府の幹部職員の方々が、このアイディアを素晴らしいと褒め称えて優勝させていることについては、そこまで大目に見るわけにはいかないように思われますぞ。

「思ヒテ学バザレバ即チ殆シ」ってのは、若者に対しては「だからもっと勉強しような。だからといって考えることに臆病になるなよ」という意味合いで使われるんだと思うのですが、若くない方々にはもう少し厳しめの意味合いになりそうな気がします。

少なくとも、「アイデアの新規性や詳細度、実現可能性の観点からの評価と、応募者からのプレゼンテーションにより」決定したと書かれている以上、内閣府の幹部諸氏には、このアイディアがどれくらい実現可能性があると判断したのか詳細にお聞きしたいですね。なんてったって、優勝アイディアですからね。

まさか次の規制改革推進会議で、「労働者の時間外労働はフリーランスということにしてやるべし」なんてのが入り込んでくるんじゃないでしょうね。

(追記)

先週紹介したこの記事ですが、ここにきてようやくネット上でも話題になってきたようです、

内閣府のコンテストで「残業時間から突然個人事業主に変身し、業務委託契約になる」という案が、優勝しているらしい「過労死待ったナシ」

240613_04

(再追記)

というわけで、遂に朝日新聞の澤路毅彦記者が記事にしました。

脱法行為?賃上げアイデア「残業時間は個人事業主に」 内閣府が表彰

 残業時間はすべての会社員を個人事業主に――。こんな提案を内閣府が政策コンテストで優勝アイデアとして表彰したことがわかった。労働法規制や社会保険料の支払い義務を免れるための「脱法スキーム」を推奨しているともうけとられかねない内容だ。・・・・

 澤路さんのつぶやき:

濱口さんのブログで気がつきました。揚げ足取りが本意ではありませんが、さすがに驚きました。脱法行為?賃上げアイデア「残業時間は個人事業主に」 内閣府が表彰:朝日新聞デジタル

優秀賞の中には「物価上昇と連動した最低賃金改定システムの導入」というのがあります。こういうシステムの国はあるので、決して新しいものではありませんが、よっぽど内閣府らしいアイデアではないかと思いまし

(再三追記)

朝日新聞が社説で取り上げたようです。

(社説)内閣府コンペ 新藤大臣の見識を疑う

 この役所に政策の立案を任せて大丈夫なのか。そんな疑念を持たざるをえない事態だ。責任者である新藤義孝経済再生担当相に、早急に説明を求める。・・・ 

社説なので署名はありませんが、もちろん書いたのは澤路さんでしょう。

これには堪らないと、内閣府は諸々の情報をお蔵入りさせてしまったようです。

「賃上げを幅広く実現するための政策アイデアコンテスト」を開催しました

これらのアイデアの概要については、一定の周知期間が経過し、個人情報が含まれること等を考慮の上、掲載を終了しました。

 

 

 

 

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コメント

いや、これはすさまじいですね。

文科省が気の狂った政策ばかり出してくるのには呆れていましたが、内閣府よお前もか。

まあ提案の背景のところを見ると、民間企業からの出向者が提案したようなので(しかし累進課税を無駄だと感じる役人の爆誕はすごい)、さすがにプロパーの職員がこんなにアホなアイディアを出したとは思いたくない。

これを優勝させた幹部の見識は疑わざるをえませんが。


一連の行政改革の結果の役所の現状がこれだとすれば、やはり根本的に改革の方向性が誤っていたと考えざるをえませんね。

 年金行政に携わっていた身分としてはですね。
「お前社会保険料は無駄って…。賦課方式の年金の方が絶対本人にとっても社会全体にとってもお得だろうが!とっくに厚生労働省はそんなおバカな論理は論破しておるわい!」と言ってやりたいです。

 この阿呆には年金について一週間ぐらいの研修を受けさせるべし!

累進税を否定している段階で、大目玉を食うべき話ですが、「優勝」とは・・・。
国家の自己否定なんですかね?

これも、管理職たる能力がない者が非管理職の時に評価されて管理職になってしまう、メンバーシップ制度の弊害なのでしょうか

「地方で9年間中小企業の保険営業を担当して学んだ」
「社会人として20年以上つとめる中で感じていた…」
とあるので、「若い職員」ではないなというのと(この年齢でこの発想で霞が関でやっていくのはかなり難しいとおもいます。内閣府ならそれでいいのかもしれないけど)、まあいかにも生保営業の発想だなと思いましたね。

何にせよ社会保険料を無駄と言いきってるアイデアを優勝にしてしまうその感覚にはあきれるほかありません。

この提言の背景とされる「中小企業の経営者のシビアな感覚」に一言しておきたい。

日本では通産省以来伝統的に中小企業に手厚い保護政策がとられてきた。また税制の歪みにより中小零細企業のオーナー層はさまざまな節税策を駆使して税金をあまり払っていないのは周知のことである。

私は中小企業保護政策は中小企業に勤める労働者の利益には必ずしもなっておらず、むしろ大企業と中小企業オーナー層を利するところが大きく、かえって中小企業保護政策をやめた方が賃上げに資するのではないかと考える。


大企業による下請け搾取が最近でも問題になっているが、一方で搾取が可能なのは中小企業保護政策によって搾取される余力が中小企業に存在し、結局大企業は中小企業保護政策にフリーライドしている側面があるともいえる。中小企業オーナー層は大企業による搾取に耐えても企業オーナーという社会的地位を維持し、法人という箱を利用して税制上のメリットを利用できるなど決して一方的な被害者とは言えない。大企業の正社員は優越的な立場による超過利潤で中小企業の従業員より高い賃金水準を得ているともいえる。

中小企業保護政策をやめれば、中小企業の倒産が増えるであろうし、大企業はそもそも下請け搾取が不可能になる。そうすると下請けに出していた業務の一定割合は自前で行わなければならず、中小企業労働者の一定分を吸収することになる。彼らの待遇は従前より好転するだろう。

結局、中小企業保護政策は、それがなければ大企業に雇われてより良い待遇を享受できる労働者層を犠牲にして大企業と中小企業オーナー層が利益を得ることを可能にしていると考えられる。

ただ、倒産した中小企業の労働者の全てが大企業に吸収されるわけではない。失業する労働者層が一定割合で出てくるのは避けられない。この層を公的部門で雇用する必要がある。実際、欧米はそのような構図になっているのだろう。逆に言えば、日本の低失業率と公務員の少なさは、中小企業保護政策によって生産性の低い中小企業に労働者を押し付けることで実現しているともいえる。


財務省の神田財務官がイタチの最後っ屁ともいえる提言をしたようだが、原発再稼働はともかく、なんだかピントがずれているように思えてならない。生産性が低いから投資が集まらないのではなく、(アメリカ以外の国は基本的に)国内需要が頭打ちだから国内投資がなされず資金が海外に流出し生産性が伸びず、基軸通貨国であるアメリカに資金が流入してそれが巨大テック企業の投資を支えるという構図であろう。国内企業が頑張ればなんとかなるという問題ではない。相変わらず労働移動によって賃金が上がるというようなロジックが背景にあるようだが、話は逆で、賃金の上昇が見込めるから労働者は移動するのである。神田氏の(というより主流の経済学者やエコノミストはおおむね)言ってることは、アメリカでは雨が降るとみんな傘をさすので、日本でも雨を降らせるためにみんなで傘をさそうと言っているが如くである。神田氏は財務省をやめた後は雨乞屋にでも転職するのであろうか。


ただ上述したように中小企業保護政策を放棄すれば、賃金が上がる可能性はある。それは失業率の増大とセットでだが。少なすぎる公務員を増やす必要があるが、そこまで神田氏は見通して言っているのであろうか。


中小企業保護政策の放棄の影響は甚大であろう。中小企業は地域社会の支え手なので、地域の衰退は避けられまい。地域の独自の文化も失われるだろう。まあ、人口減少下では時間の問題ではあるが。

たしかに人手不足が顕在化している現状は中小企業保護政策を放棄して政策転換する絶好の時機ではあるだろう。税収が拡大して公務員を増やす余裕も生まれるだろう。ただ、中小企業オーナー層には大打撃であるし、中小企業の金融がオーナーの個人保証に依存している日本では、首をくくるオーナーが大量に出てくるだろう。それは必ずしも悪徳経営者ではなく、面倒見の良い好人物もたくさん含まれることになる。

ちなみに地味に影響するのは野球であるように思われる。野球はお金のかかるスポーツであって、中小零細企業オーナー層の子弟が担い手となることでその裾野が支えられているので、野球が弱くなるかもしれない。代わりに欧州のようにサッカーが強くなるかもしれないが。野球もサッカーも強い国なんてあるのだろうか。

まあ、中小零細企業の後継者不足が言われる現状ではもはや既存の社会のあり方を維持するのは不可能であろうが。


野球かサッカーか、それが問題だ。

 もう一回ツッコミ。

 この方、会社に20年以上勤めているのであれば、ねんきん定期便を見れば、将来もらえる年金額はそんなに悪くなさそうですが・・・。

 それから今厚生労働省では個人事業主にも厚生年金の適用を拡大する動きが本格化しているようです。
 多分このおっさん、社会保険料が無駄と感じているのであれば、個人事業主になって納付督促を必死に断りまくれば国民年金保険料を踏み倒せるようになるからその点でもお得だとでも思っているのでしょうか(^^;
 あいにくですが、最近の日本年金機構は悪質な滞納者には容赦ないと聞いてますが…。
 どこかのタレントさんが貯金差し押さえられて慌てて保険料を納付したことが話題になりましたしね。

 年金行政を舐めない方が良いですよ(^-^)

いやまあ、先月出た厚労省の年金検討会報告では、当面企業規模要件の撤廃と個人事業所(法人じゃない事業主という意味)に雇われる労働者への適用拡大がメインで、個人事業主自身の適用の話は当分先送りでしょう。

それよりもむしろ、こういう御仁の発想をおびやかす可能性があるのは、この方が所属する内閣府に設置された規制改革推進会議が先月まとめた規制改革推進計画に、こういう記述があることでしょう。

厚生労働省は、労働者性の有無についての国の判断が、現状では、労災事故や労働紛争に関する訴訟等の提起前には明らかにならない事案があることや労働基準法第104条に基づき労働基準監督署へ労働者性に関する違反事実の申告等を行っても労働者性の判断に至らない事案が半数近くに上るとの調査結果もあることを踏まえ、労働者性がある働き方をする者が就業開始後早期に労働基準法等の保護を受けられ、また、社会保険料等の負担の有無に起因する競争環境の公平性を確保する観点から、例えば、ドイツにおいて就業者又は事業者の申請に基づき年金保険機構が自営業者か被用者かの地位確認を行う手続があることや、建設業の一人親方について判断基準を整理したチェックシートを用いて労働者性の自己診断の支援が行われていることを参考に、①自らを労働基準法上の労働者だと考える者から労働基準関係法令違反に関する相談を受ける窓口を整備する、②労働基準監督署は、自らを労働基準法上の労働者だと考える者からの申告に対して、関係者から資料が収集できないなどの特段の事情がない限り、原則として、労働者性の有無の判断を行うことを就業者に対して明確化するなど、労働者性の有無の判断が適切に行われるよう、必要な措置を行う。

いや実は、今まで労働側の弁護士や学者たちから規制緩和を言いつのる諸悪の根源みたいに悪くいわれてきた規制改革会議の方が、事務局側の内閣府の役人よりも百万倍まっとうな感覚の持ち主であったという、驚きの事実が明らかになったわけです。

少し調べると、内閣府がFacebookに詳細を書いていることがわかる。
新藤大臣の発案で、3週間の応募期間、51名の参加・36件の応募から書面審査により15件を選び、新藤大臣の主宰による2日間の座談会を行い賞を決定したようだ。

参考までに、新藤義孝氏は現在6つの大臣職を兼任している。
(経済再生担当大臣・新しい資本主義担当大臣・スタートアップ担当大臣・
感染症危機管理担当大臣・全世代型社会保障改革担当大臣・内閣府特命担当大臣(経済財政政策))

>>
新藤経済財政政策担当大臣の発案で、「賃上げ」をテーマとした内閣府初めてとなる政策アイデアコンテストを開催しました。
<<

>>
3週間の応募期間で、様々な部局から、外部も含め、51名が参加し、応募アイデアは36件に上りました。
 全36件の提案から、書面審査により15件を選び、新藤大臣が主宰して2日間にわたり座談会を行い、より詳しく提案内容を確認し、
特に優れたものについて、優勝2件、優秀賞5件を決定しました。また、座談会に参加した他の皆さんにも、敢闘賞を授与しました。
 新藤大臣からは、若手職員をはじめ多くの方々が情熱をもって参加してくれたことを大変頼もしく感じたこと、
今後の更なる活躍への期待を述べられました。
<<
https://www.facebook.com/story.php/?story_fbid=814962784072153&id=100066753153668


新藤義孝“園長”と保育業界のやりがい搾取

一方で、新藤義孝大臣は祖父が設立した川口ふたば幼稚園の園長を務めていたようで、現在も前園長としてサイトに記載がある。
不思議なことに現園長の名前の記載はなく、新藤義孝氏が事実上の代表だと思われる。
X上でも本人が2015年に「私が園長を務める川口ふたば幼稚園の卒園式」について触れている。
http://www.k-futaba.com/about/
https://x.com/shindo_y/status/581286409601880065


さて、保育業界は保育士のやりがい搾取が横行しているとされ、批判も多い。
保育士のミカタという保育士向けの転職口コミサイトの2023年のある口コミによれば、川口ふたばこども園でも正規職員に「無賃残業」があるらしい。
2021年~2024年の間に勤めていた正規職員だとしているので最近のことだ。
困ったことに、保育士に「無賃残業」を求めるような価値観は「すべての会社員を個人事業主にする」という異常な提案を優秀賞とする価値観と合致してしまう。
https://hoikushi-mikata.jp/nursery?facility=3184


もちろんネット上の口コミ情報のみから川口ふたばこども園に「無賃残業」が存在するとするのは早計だ。
しかし、6つの大臣特に“新しい資本主義担当大臣”を務める人物が事実上代表を務めている事業にもし、「無賃残業」があれば岸田政権への信頼が根幹から崩れるだろう。

日本では政治家や芸能人の不倫報道に関しては不確かなものでも報道されるのに対し、こういった労働における搾取の疑惑が報道されることは少ない。
労基法違反は刑事罰にもなる恐れもある。
日本の報道機関は不倫報道などしている暇があればこういった事例こそ事実関係を調査報道すべきだろう。


新藤義孝氏は政治資金規正法違反の疑いで刑事告発されて不起訴になった自民 党の派閥幹部ら16人のうちの一人でもある。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240708/k10014505391000.html

結局このアイデアは削除されて「なかったこと」になりましたね。
これで終わりにしないで欲しいです。
内閣府の職員を全員厚生労働省へ出向させて社会保険、労働法の意義をゼロから学ばせるくらいの事はしてほしい。

こう言う事態になったのは「政治改革」の一環で政治家主導のもと、内閣人事局、そして内閣府に権限を集中させたために内閣府職員におごりが生じているためなのでしょう。

そのうち各省庁から「内閣府職員は俺たちのところに出向させろ!そして俺たちがOJTでビシバシ徹底的に鍛えてやる!それが出来ないなら内閣府の権限を以前のように減らして元に戻せ!内閣府の職員はでかい面するな!」と言う声が出てくるのでは(^^;

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