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2024年7月 6日 (土)

井上定彦『現代社会経済システムの変容と展望』

61rx927jql_sy522_ 井上定彦さんから『現代社会経済システムの変容と展望』をお送りいただきました。

これはISBNのついている市刊本ですが、定価がついていない私家本でもあり、井上さんが前著『社会経済システムの転機と日本の選択』(三一書房)を出されてからの四半世紀あまりの間に書かれた論文やエッセイをとりまとめられたものです。

そのいくつかは掲載時に読んでおり、記憶を新たにしたものも多いですが、今回初めて読ませていただいたものも結構ありました。

井上さんは2000年まで連合総研の副所長として活躍され(労働界では「教授」と呼ばれてましたね)、当時その下におられた鈴木不二一さんとともに、結構談論風発意気投合していたこともありました。

その後島根県立大学に行かれたため、なかなかお目にかかる機会が乏しくなり、たまに書かれたものを拝見するくらいになっておりました。

第一部 現代の経済システムの変化を認識する
第一章 グローバル情報金融資本主義の展開と限界
第二章 不平等と貧困――日本社会の現在と民主主義の中心課題5
第三章 世界の構図の変容――現代史の転換と日本の課題
第四章 「コロナ禍」が人類に突きつけた「問い」
第五章 日本 非西欧世界で最初の福祉国家へ
第二部 日本の社会システムと課題
第一章 「労働の世界」の融解か?
第二章 「個人化」と教育・学習の課題
第一節 個人化と孤立の中の教育
第二節 社会の持続可能性と教育の役割
第三章 高等教育改革論の現在
第四章 行政改革30年を問い直す
第五章 日本の賃金決定方式が持つ二側面
第三部 認識と方法の課題
第一章 日本社会論の「現在」
第二章 総合政策論と政策の方法 客体と主体のダイナミズム
第三章 地域政策の視点と方法
第四章 「日本資本主義論争」の位置
第四部 より良き社会モデルの探索―社会経済システムの変動と人間の主体的役割
第一章 「より良き社会モデル」再考―「持続可能な社会」を求めて―
第二章 日本とステークホールダー型企業の可能性-ハイロード・アプローチ
第三章 論壇展望「エコロジーと親和する社会民主主義」構築へ―21世紀政治(思想)潮流の思考軸を考える―
結びに代えて ~あとがき~

本書の中で今の関心事に近いのは「日本の賃金決定方式が持つ二側面」でしょうが、ここではその次の「日本社会論の「現在」」に一言。

これ、今年の正月にNHKのBSスペシャル 欲望の資本主義2024「ニッポンのカイシャと生産性の謎」でわたしが喋ったことと結構つながっています。

戦後日本の日本社会論の変遷をたどって、終戦直後の「近代化を目指した」時代、高度成長期の「日本的なるものの中に普遍性を発見した時代」、その後の70年代、80年代の「日本的なるものの普遍化モデル」が成立した時代、を経て、90年代の「再び近代主義への回帰か?」と一巡りする。これがそういう社会全体の議論でもそうだし、日本的経営論という一分野でみてもやはり、アメリカ的経営を学ぼうとした時代から日本的経営の合理性に注目され、日本モデルの普遍性が定式化された時代を経て、再び日本的企業統治が批判を浴びる時代に、というわけです。これも書かれたのはもう20年以上前ですが、大きな流れは変わっていないでしょう。

NHKでは、戦時中に「近代の超克」が叫ばれ、戦後「近代化」が叫ばれ、70年代、80年代には再び(大平総理の研究会などにみられるように)「近代を超えて」が叫ばれたかと思うと、90年代にはまたもや逆転して・・・という話をしたと記憶していますが、まあ、大きな流れはそういうことです。

封筒にはもう一冊、こちらは完全な私家版で『第二部(随想ノート) 社会理論の発展とカール・マルクスの位置』という小冊子も入っています。これは、タイトルはマルクスを歌っていますが、出てくるのはシュンペーター、ウェーバー、E.H.カー、ダニエル・ベル、ハバーマス、その他諸々の思想家たちで、一家言ある人たちはいろいろと文句があるかもしれません。

 

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コメント

前著『社会経済システムの転機と日本の選択』の出版元が「三一書房」と言う辺り目がテンになりました。
今回のご著書はオンデマンドですね。
「知る人ぞ知る」と言う感じであまり多くの人の目に触れる事を目指していないのかな?と言う気がしました。

論壇は東京にあり、地方に行ってしまうと文字でしか顧みられない存在となる、のが社会科学なのだなぁ。

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