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2024年5月23日 (木)

ILOがプラットフォーム労働条約(勧告)に向けて動き出す?@『労基旬報』2024年5月25日号

『労基旬報』2024年5月25日号に「ILOがプラットフォーム労働条約(勧告)に向けて動き出す?」を寄稿しました。

 本誌3月25日号で紹介したように、今年3月11日にEUの閣僚理事会はプラットフォーム労働指令案に特定多数決で合意に達し、今年前半中にも正式に成立する見込みとなりました。これと併行して、より大きな国際レベルでもプラットフォーム労働への法規制の動きが始まっています。国際労働機関(ILO)も来年と再来年の2025年と2026年の2回の審議によって、プラットフォーム労働に関する新たな国際基準を設定する方向に向けて動き出しているのです。
 今年の1月31日に、ILOは「プラットフォーム経済におけるディーセントワークの実現(Realizing Decent Work in the Platform Economy)」という100ページを超える報告書を発表しましたが、この末尾には膨大な加盟国向けのアンケート票がついており、既に各国政府と労使団体はこれに対する回答に頭をひねっているところだと思われます。
 本報告書の「はじめに」によると、2019年の「仕事の未来に向けたILO100周年宣言」は、すべてのILO加盟国に対し、「適切なプライバシーと個人データ保護を確保し、プラットフォーム労働を含む仕事のデジタル変革に関連する仕事の世界における課題と機会に対応する政策と措置」を講ずるよう求めています。その後ILO理事会は2021年3月の第341回会合で、2022年中に「プラットフォーム経済におけるディーセント・ワーク」の問題に関する三者専門家会議を開催することを決めました。この専門家会議は2022年10月10日から14日までジュネーブで開催され、その結果が同年10月~11月の第346回理事会会合に報告されました。これを受けてILO理事会は、2025年6月の第113回ILO総会にプラットフォーム経済におけるディーセント・ワークに関する項目を議題とすることを決定したのです。さらに2023年3月の第347回理事会会合では、2025年6月の第113回ILO総会では二回討議手続をとることを決定しました。二回討議手続とは、1年目の第1次討議では一般的な原則を検討し、2年目の第2次討議で条約な勧告といった国際基準を採択するものです。ですから、2026年6月のILO総会でプラットフォーム労働に関する条約か勧告が採択されるという日程表がほぼ定まったわけです。
 報告書は全14章からなり、実に様々な問題を取り扱っていますので、ここでは目次を訳しておきます。
はじめに
第1章 プラットフォーム経済の登場と多様性
 1.1 ビジネスモデル、競争上の優位、市場における力
第2章 プラットフォーム労働の性質
 2.1 ビジネスと顧客を労働者につなげるプラットフォーム
  2.1.1 プラットフォームの数とプラットフォーム労働の広がり
  2.1.2 プラットフォームとプラットフォーム労働の場所
 2.2 プラットフォーム労働の主な特徴
  2.2.1 低い参入障壁と柔軟性
  2.2.2 プラットフォーム労働の業種と職種
  2.2.3 本業と副業
  2.2.4 労働のモニタリングと監視におけるアルゴリズムの役割
 2.3 プラットフォーム労働者の特徴
  2.3.1 年齢
  2.3.2 学歴
  2.3.3 性別
  2.3.4 移民・難民
 2.4 デジタルプラットフォーム労働とインフォーマル性
第3章 規制枠組み
 3.1 国際法とプラットフォーム労働
  結社の自由と団結権、強制労働、児童労働、機会と待遇の平等、労働安全衛生、雇用政策と促進、雇用関係、報酬、労働時間、アルゴリズム、個人データ保護、社会保障、移民労働者、紛争解決、雇用終了、労働監督、インフォーマル経済からフォーマル経済への移行、国際労働基準のプラットフォームへの関連性要約
 3.2 加盟国における規制介入の範囲
第4章 プラットフォーム労働者とプラットフォームの定義
第5章 デジタルプラットフォームのどの労働者が保護されるのか?
 5.1 文脈
 5.2 国と地域の取組み
  5.2.1 判例法
  5.2.2 立法
第6章 職場の基本原則と権利
 6.1 結社の自由と団体交渉権の有効な承認
 6.2 強制労働と児童労働の廃絶
 6.3 平等と非差別
 6.4 労働安全衛生
第7章 雇用政策と促進
第8章 労働保護
 8.1 報酬
 8.2 労働時間
 8.3 雇用終了と解除
 8.4 労働者の個人データ保護
 8.5 紛争解決
第9章 社会保障
第10章 労働者代表と労使対話
 10.1 文脈
 10.2 国と地域の取組み
  労働者代表、三者構成対話、団体交渉と二者構成対話
第11章 情報へのアクセス
第12章 法令遵守
 12.1 文脈
 12.2 国と地域の取組み
  12.2.1 執行、罰則及び関連する監督機構
  12.2.2 許可制と報告義務
第13章 ILOの作業と他の国際的な取組み
 13.1 グローバルな証拠へのILOの貢献
 13.2 加盟国を支援するILOの技術支援と調査
 13.3 より広範な国際的な取組み
第14章 プラットフォーム経済におけるディーセントワークに関する基準
 14.1 プラットフォーム経済の急速な登場とその規制に向けた歩み
 14.2 法と慣行からの教訓
 14.3 なぜ基準が必要なのか?
  将来の制度改正の手続の潜在的な簡素化と加速化、質問票
 この詳しい内容は、ILOのホームページに掲載されている本報告書を是非見ていただきたいと思います。
 ここでは、最後の「なぜ基準が必要なのか?」で列挙されている新たな基準に盛り込まれるべき内容を紹介しておきます。ILO事務局は、こういう方向で新基準を設定しようとしているのです。
(a) オンライン及び場所ベースのプラットフォームが、基準における共通の諸原則にふさわしい共通点を共有していることを認める、
(b) 雇用上の地位に関係なく労働者を対象としつつ、雇用上の地位が異なる労働者が権利を実現するための異なる経路が存在する可能性を認め、
(c) デジタルプラットフォームが、その地位が使用者であるか又は雇用関係以外の契約主体であるかにかかわらず、プラットフォーム労働者のディーセントワークを確保スル上で重要な役割を担っていることを認め、
(d) プラットフォーム経済におけるディーセントワークに対する新たな具体的な課題、とりわけプラットフォーム労働を編成し、監督し、評価するためのアルゴリズムの使用など、労働条件に影響を与える技術の使用に関連する課題に対処するための明確な枠組みを提供し、
(e) 労働関係の停止又は終了及びアカウントの無効化並びに労働者の個人データの保護に対処し、
(f) 紛争の国境を越えた性質を含め、プラットフォーム労働の国境を越えた性質に関連して生じる特定の問題に対処し、
(g) 法律及び慣行において国内条件及び国際労働基準に合致する保護を確立する上で、加盟国にある程度の柔軟性を提供し、
(h) プラットフォーム経済のダイナミックな性質を認識するとともに、急速な技術発展に対応するための将来的な基準の適応の可能性を確立し、
(i) 関係する労働者及びプラットフォームの有効な代表を確保しつつ、十分な法律及び規則を定義する際の三者構成社会対話の役割と、労働協約を締結する際の労使団体の役割を強調する。
 日本がプリーランス新法の制定と施行に専念していた時期に、世界はプラットフォーム労働という新たな就業形態に対する法的規制に向けた動きが着実に進みつつあったということは、政労使の何れの人々もきちんと認識して対応していく必要があると思われます。

 

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