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2024年5月10日 (金)

公務員法は77年前に純粋ジョブ型で作られたはずなんだが・・・

000003741 人事院の人事行政諮問会議が、国家公務員にジョブ型を拡大するとの案を提起したというのですが・・・、

国家公務員、ジョブ型拡大案

国家公務員の人事制度を協議する人事院の「人事行政諮問会議」は9日、中間報告を川本裕子総裁に手渡した。人材確保のため職務内容で報酬を定める「ジョブ型」を拡大する案を提起した。年功序列型の硬直的な制度を改め、専門能力を持つ民間人材の中途採用などを進めやすくする。・・・

人事院のサイトには詳しい資料も載っていますが、

人事行政諮問会議

でもなまじ公務員法制の歴史をちょっとでも知っていると、今頃になって「ジョブ型拡大」などという台詞の皮肉さがじわじわと感じられてしまうはずです。

なぜなら、今から77年前、1947年に国家公務員法が制定された時には、それはアメリカ直輸入の純粋ジョブ型の制度として設けられたものだったからです。詳細なジョブディスクリプションを作成し、ジョブに基づいてのみ採用することができ、ジョブに基づいてのみ給与を支払うことができると明記していたはずの国家公務員法が、それとは全く正反対の純粋メンバーシップ型で運用されるに至ってきたこと自体が、日本における法律と現実の乖離のもっとも典型的な実例であるわけで、その国家公務員法の担い手の人事院が70年ぶりにジョブ型なんて言い出しているということ自体、これ以上ない皮肉を感じないわけにはいかないはずですが、でもそもそもそんな歴史的経緯をわきまえている人自体がほとんど絶無に等しく、こういうことを言っても何を言ってるんだろうとぽかんとされるだけなのでしょうね、たぶん。

この問題については、2年前に『試験と研修』という雑誌に寄稿した「公務員とジョブ型のねじれにねじれた関係」が、わりとコンパクトにまとめているので、ご参考までに改めて掲載しておきます。

公務員とジョブ型のねじれにねじれた関係

1 純粋ジョブ型で作られた(はずの)公務員制度
 
 本稿の執筆依頼には「ジョブ型雇用を日本、特に公務に導入する際の課題」云々という表現があった。現代日本の公務員の世界がほぼ完全なメンバーシップ型で動いており、ジョブ型とは対極的な有り様であるというのは、誰もが同意する判断であろう。それゆえ、かくも対極的な「ジョブ型」を日本の公務員制度に導入するにはどうしたらいいのか、というのが最大の問いになるのも、これまた極めて常識的な認識と言えよう。さはさりながら、普通に公務員として日々働いているだけの者であれば格別、その職務上公務員制度に関わりを持つ者であれば、そこになにがしかのわだかまりを感じるはずである。いや感じてくれなければ困る。なぜなら、日本国の国家公務員法は今から75年前に、アメリカ直輸入の純粋ジョブ型の制度として作られたものだからだ。そして、2007年改正で条文として消えるまでの60年間、国家公務員法は(少なくともその条文上は)職階制というジョブ型の見本のような仕組みを中核とし、それに基づく任用制度と給与制度によって組み立てられてい(ることになってい)たはずだからだ。実際の運用とは真逆の看板を掲げ続ける後ろめたさからは解放されたとはいえ、現在の国家公務員法の基本構造はなお生誕時のジョブ型の母斑を残している。公務員制度とジョブ型雇用というテーマは、今なおねじれにねじれたものであり続けているのである。
 釈迦に説法の感もあるが、職階制とは何だったのか振り返っておこう。これは、幣原内閣の大蔵大臣であった渋沢敬三(栄一の孫)が招聘したフーバー率いる対日米国人事行政顧問団の指示によって国家公務員制度の中核として規定されたものであり、一義的には官職を分類整理し、格付することである。しかしそれで終わりではなく、それのみを「任用の資格要件」と「俸給支給の基準」としなければならないということが重要である。つまり、ある官職にいかなる人を就けるのか、そしてその者にいかなる給与を払うのかという、人事管理の2大根本事項を、分類整理され格付された職種と等級に基づくものにしなければならないのである。まさに、ヒト基準ではなくジョブ基準の人事管理を大原則として規定しているのが職階制なのだ。
 占領下ではこれに基づき職階法が制定され、さらに上級官職をジョブ型任用するためにS-1試験が遂行され、約4分の1の幹部職員が職を追われたという。こうしたことから職階制は他省庁から猛反発を受け、占領の終了とともに人事院が懸命に作成していた膨大な職級明細書はほぼ空洞化し、職階制は名存実亡の状態となった。では職階制に基づいて作られるはずの任用制度と給与制度はどうなったのか。
 1952年に人事院規則6-2(職員の任免)が制定され、人事院はその理念を「国家公務員法における任用とは官職の欠員補充の方法である。すなわち官職への任用であり、職員に特定の職務と責任を与えることであつて、職員に或る身分若しくは地位を与えることではない」と述べた。実際、同規則の規定ぶりはそうなっていたが、同規則第81条以下(経過規定)は、職階制が実施される日までは従前通りとし、そして職階制は永遠に実施されなかった。以来日本国においては、この当座の間に合わせの任用制度によって、「職員に或る身分若しくは地位を与えることであつて職員に特定の職務と責任を与えることではない」という純粋メンバーシップ型の運用がまかり通ってきたのである。
 一方給与制度は、1948年に「政府職員の新給与実施に関する法律第十四条に基づく職務による級別区分の基準」が設けられたが、この職務分類は「職務」を分類しておらず、最下級の1級職から最上級の15級職まで等級を分類しているだけであった。1948年改正国家公務員法はこの「職務分類」を国家公務員法の職階制規定に基づく計画と見なしたが、それは暫定的な措置であり、本来の職階制が実施されれば効力を失うはずであったが、その日は永遠に来なかった。正確に言えば、同法は期限切れで失効したが、それに代わって1950年4月に制定された一般職の職員の給与に関する法律が15級の職務分類の根拠規定を引き続き設けた。これも職階制が実施されるまでの暫定措置であり、そのことは同法第1条第3項に明記されていたが、やはりその日は永遠に来なかった。国家公務員法上には、職階制に適合した給与準則を制定し、これに基づくことなしにはいかなる給与も支払ってはならないと明記してあるにもかかわらず、給与準則が制定されることはなかった。そしてその結果、職務分類とはせいぜい給与法の別表に掲げる俸給表の違いでしかなくなってしまった。法律上は徹底したジョブ型給与制度を明記しながら、縦の等級区分は15級もあるのに、横の職務区分は一般のほかは税務、公安、船員しかないという、およそジョブ感覚の欠如したシステムが長年継続できた手品の種はここにある。
 
2 「能力主義」を掲げてジョブ型制度を廃止した2007年改正
 
 そして、2007年7月の改正により国家公務員法の職階制関係条項が削除され、職階法が廃止された。法律上のある制度を全面廃止するということは、それまで実施されてきたその制度の基本的考え方を根本的に変更するからというのが普通だろう。ところが、半世紀以上にわたって脳死状態で維持されてきた職階制に関していえば、まったくそうではなかった。この2007年改正は21世紀初頭から始まった公務員制度改革の一環として行われたものであるが、その考え方を明示した2001年12月の閣議決定「公務員制度改革大綱」も、2007年4月の閣議決定「公務員制度改革について」も、年次主義的・年功的人事管理から能力・実績主義人事管理への転換を図るための、能力等級制を中核とする新たな人事制度の構築を掲げているのだ。
 能力等級制という言葉は、高度成長期以降民間企業で普及してきた能力主義に基づく職能資格制を想起させる。民間企業の人事労務管理を少しでも齧ったことがあれば、それが1950年代から60年代にかけて当時の日経連が旗を振っていたジョブ型の職務給に対して、年功制を否定しないメンバーシップ型に適合的な制度として1970年代以降推進されてきたことは周知のことであろう。そして、1990年代後半以降になって、そうした能力主義に対する批判が強まり、成果主義を始めとしたさまざまな見直しが進められてきたことも常識に属する。
 ところが公務員制度の世界では、それを過ぎた21世紀にもなって、改めて能力等級制なるものがあるべき姿として持ち出されてきたのだ。しかも上記公務員制度改革大綱には、「新たに能力等級制度を導入し、これを基礎として任用、給与、評価等の諸制度を再構築することにより、これまでのように個々の職務を詳細に格付け、在職年数等を基準として昇任や昇格を行うのではなく、能力や業績を適正に評価した上で、真に能力本位で適材適所の人事配置を推進する」といった概念の混乱した記述が満ち満ちている。
 徹底したジョブ型の制度を法律上に規定していながら、それをまったく実施せず、完全にメンバーシップ型の運用を半世紀以上にわたって続けてきた挙げ句に、それが生み出した問題の責任を(実施されてこなかった)職階制に押しつけてそれを廃止しようという、まことに意味不明の「改革」である。
 今日、後述の非正規公務員問題を始めとして、公務員制度をめぐる諸問題の根源には、さまざまな公務需要に対応すべき公務員のモデルとして、徹底的にメンバーシップ型の「何でもできるが、何もできない」総合職モデルしか用意されていないことがあるが、それを見直す際の基盤となり得るはずであった徹底的にジョブ型に立脚した職階制を、半世紀間の脳死状態の挙げ句に21世紀になってからわざわざ成仏させてしまった日本政府の公務員制度改革には、二重三重の皮肉が渦巻いている。・・・・

 

 

 

 

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コメント

 今更ジョブ型雇用と言われましても。

 私の前の前の職場でもジョブ型雇用だったら良かったのに、と言うケースがありました。
 
 年金給付の事務でスキルを磨いていた女性職員が採用後5年ぐらいで総務・庶務に異動することが当たり前に行われていました。
 ところが総務・庶務ではそれまでの年金給付の事務スキルが生かせず、ゼロからスキルを学ばないといけない。
 そして数年たって異動して年金給付の事務の方に戻っても、総務・庶務で職務に中断があるから、スキルが中途半端になっていて、上手く行かない。
 結局結婚を機に退職する、と言うケースがかなりありました。

 メンバーシップ型雇用ゆえの悲劇だと思います。
 以前公務員は年数を経験すればスキルアップにつながりますよね、と言う人がいましたが、必ずしもそうではないのです。

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