高齢者の定義は・・・55歳だった!?
政府の経済財政諮問会議で、民間議員が高齢者の定義を65歳から70歳にせよと主張したという話が駆け巡っています。大体みんな社会保障、年金関係の文脈で騒いでいるようですが、原資料を見ると、そういう風にならないように、わざと「社会保障の強靱化」の方ではなく、「女性活躍・子育て両立支援、全世代型リスキリング、予防・健康づくり」の方の、リスキリングの項目に書き込んでいたようですね。
誰もが活躍できるウェルビーイングの高い社会の実現に向けて① (女性活躍・子育て両立支援、全世代型リスキリング、予防・健康づくり)
〇全世代リスキリングの推進:高齢者の健康寿命が延びる中で、高齢者の定義を5歳延ばすことを検討すべき。その上で、いつでもチャレンジできるよう、DXや将来の人材ニーズを踏まえ、就業につながる教育・訓練の実施と、新たな給付等を活用した受講者の生活保障の充実を、利用状況を検証しつつ一体的に進める。その際、諸外国の例も参考にしながら、生産性向上の切り札であるリスキリング推進をめぐる現下の課題に対して関係省庁が連携の上、女性、高齢者、就職氷河期世代等を含む全世代を対象としたリスキリングについて官民一体による国民的議論を喚起すべき。
誰もが活躍できるウェルビーイングの高い社会の実現に向けて② (社会保障の強靱化)
とはいえ、高齢者の定義を5歳引き上げるといわれれば、みんな書いていない社会保障の方の話だと思ってしまうわけです。
わざわざそちらの方に書き込んだリスキリングの話だとは思ってくれないようです。
ちなみに、リスキリングによって長く働けるようにしようということでいえば、雇用に関しては既に60歳以上定年と65歳までの雇用確保が義務づけられているのに加えて、70歳までの就業確保が努力義務となっていることは周知の通りですが、それと高齢者の定義とがどう関わるのか、あんまり明確ではないですね。
というか、これはおそらく労働関係者でも必ずしもよく知られていないのではないのではないかと思われるのですが、実はこれら規定が置かれている高年齢者雇用安定法には、高年齢者の定義規定というのがあるんです。正確に言うと、法律ではなくてその施行規則(省令)ですが。
(定義)第二条 この法律において「高年齢者」とは、厚生労働省令で定める年齢以上の者をいう。
(高年齢者の年齢)第一条 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(昭和四十六年法律第六十八号。以下「法」という。)第二条第一項の厚生労働省令で定める年齢は、五十五歳とする。
なんと日本国の実定法上、「高年齢者」というのは55歳以上の人のことをいうんですね。
これは、55歳定年が一般的であった1970年代に作られた規定が、そのまま半世紀にわたってそのまま維持され続けているために、こうなっているんですが、おそらく現代的な感覚からすれば違和感ありまくりでしょう。
ちなみに、同省令には続いて、
(中高年齢者の年齢)第二条 法第二条第二項第一号の厚生労働省令で定める年齢は、四十五歳とする。
45歳になったら中高年という規定もあって、こちらはそうかなという気もしますが(若者だと思っている人もいるようですが)、でも45歳からたった10年で55歳になったら高齢者というのは可哀想すぎますね。
高齢者の定義というのは、下手に踏み込むと得体の知れないものが出てくる魔界のようです。
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