菅野和夫・山川隆一『労働法 <第13版>』
菅野和夫・山川隆一『労働法 <第13版>』(弘文堂)をお送りいただきました。ありがとうございます。
https://www.koubundou.co.jp/book/b10045381.html
新しく共著者を迎え、全面的に見直した充実の改訂版。多数の法改正・新法をフォローし、重要な裁判例・実務の現状等にも目配りした基本書。
時代のなかで形成されてきた新しい労働法の姿を体系化し、その中で個々の解釈問題を相互に関連づけて検討した、実務家必携の「労働法」のバイブルです。
1985年の初版から初めて今回、菅野先生の単著から菅野・山川の共著となりました。第12版からさらに100頁以上も増量されています。
今回の改訂では、冒頭の「労働法の意義と沿革」のところで、いままでの菅野先生のテキストらしからぬかなり個人的な思いを込めたコラムがいくつか書かれています。
たとえば、p23の「労働時間貯蓄口座制の採用による選択的労働時間制度の可能性」では、既存の制度と新たな「労働時間貯蓄制とフレックスタイム制」のいずれかを選択できるようにすべきと論じ、p24の「解雇規制の在り方」では、「検討中の制度は、解雇はできるだけ回避して代替措置で済ませてきた経営者の意識(モラル)を、解雇は裁判所で争われても一定額の金銭解決で完結できるものへと変化させ、経済危機の際にも5%台半ばの失業率にとどめてきた雇用・労使関係に基本的な変化をもたらすおそれがある」と批判的で、p25の「従業員代表制度構築の課題」では、「過半数組織組合が存しない事業場における過半数代表機関の常設かを、労使を入れた場で早急に検討すべきであろう」と促しています。
このうち、解雇規制については私は菅野先生の考えには賛成できず、むしろ法的な枠組みがない中で裁判所に行かないレベルの中小零細企業の多くの労働現場では事実上の解雇の金銭解決や、金銭なし決着が山のように存在していることを考えれば、「解雇はできるだけ回避」という大企業セクターの現状にのみ着目した政策でよいとは思われません。
これに対し、従業員代表制度については、これまで何回もあった機会を失してきたことを考えれば、今年になって経団連が(労働時間規制の緩和との合わせ技で)労使協創協議制なるものを提起してきたのは千載一遇の機会なので、この際思い切って従業員代表制の本格的立法化を目指すべきだと私も強く感じています。
と、ここまででまだ30ページ弱。先は長いです。
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