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2024年3月24日 (日)

吉田誠『戦後初期日産労使関係史』

9784623097128_600 吉田誠『戦後初期日産労使関係史 生産復興路線の挫折と人員体制の転換』(ミネルヴァ書房)をお送りいただきました。

https://www.minervashobo.co.jp/book/b640758.html

本書は全自日産分会の活動を取り上げ、戦後最初期の日産における労使関係や人員体制の展開過程を検証し、現代的雇用関係の淵源を示す。従来研究で自明視されてきた男性本工主義という認識枠組みを脱し、戦後直後に大量に存在していた女性労働者が生産現場からいかに排除されていったかを丁寧に検証することで、この時期がその後形成される日本的雇用の起点となっていることを明らかにする。

吉田誠さんは、全自日産分会の1952年の闘争を分析した『査定規制と労使関係の変容:全自の賃金原則と日産分会の闘い』で有名ですが、今回の本はその前史に当たる終戦直後から1949年までの動きと、女性やとりわけ非正規労働者の扱いについて詳細に跡づけようとした労作です。

いろいろと興味深い点があるのですが、特に最初の第1章で従業員組合が設立されるいきさつについてのところや、後半で女性が排除されていく過程、ドッジプランで先任権制度が一瞬入ってきて直ぐに消えた話、とりわけ季節工、日雇いその他臨時に雇用された者というこの例外条項で以て臨時工が導入され増えていく話、など、まあいずれも労働研究者の中では関心を引くトピックでしょう。

序 章 戦後初期労使関係に対する分析視座
 1 企業別組合と日本的雇用慣行
 2 日産の労使関係に関する先行研究
 3 男性本工主義を超えて
 4 本書の構成
 5 本書で用いた資料について


 第Ⅰ部 戦後初期における労使関係の展開

第1章 日産重工業従業員組合の結成
 1 工員による組織化
 2 社工員一本化に向けた動き
 3 社工員一本化とその効果
 4 スライディング・プール制の導入と基本給改定の挫折
 5 産業報国会の経験と組合結成
 6 小 括

第2章 経営協議会の設置と初期労使関係の変転
 1 組合結成から労働協約締結まで
 2 労働協約と経営協議会との関係
 3 経営協議会と日産再建特別委員会の設置
 4 十一月闘争の経緯
 5 十一月闘争以降の経営再建の方向性
 6 職能委員会と危機突破本部の設置
 7 重役不信任問題と社長交代
 8 小 括

第3章 全自動車準備会の結成と運動方針の展開――産業復興への取り組みから「生産復興闘争」へ
 1 全自準結成前史
 2 全自準の結成と生産復興運動への取り組み
 3 業種別平均賃金の軋轢と全自準の方針転換
 4 産別会議における生産復興闘争のダブル・ミーニング
 5 全自準拡大中央委員会での議論
 6 小 括

第4章 生産復興運動と労使関係の動揺――1947年後半期を中心に
 1 日産の経営危機と生産復興運動の取り組み
 2 賃上げをめぐる攻防
 3 生産復興路線下での配置転換
 4 小 括

第5章 1948年の労働協約改定
 1 46年協約の特徴
 2 会社による新労働協約案
 3 関経協「労働協約に関する意見」(1946年11月)と会社案
 4 会社案批判と中闘委案
 5 1948年の労働協約
 6 小 括

第6章 生産復興闘争から防衛闘争へ
 1 職場生産復興闘争と残業問題
 2 暫定賃金制度
 3 経済九原則下での賃金問題
 4 残業問題をめぐる動き
 5 小 括


 第Ⅱ部 人員体制の転換と労使関係

第7章 戦後初期における人員体制の構築
 1 戦時総動員体制における女性労働力の活用
 2 敗戦後の採用動向と新聞の募集広告の概要
 3 新聞の募集広告における女性労働者
 4 現業部門における女性労働者
 5 性別の人員構成
 6 小 括

第8章 ドッジ・ライン下の人員整理における女性の解雇
 1 1949年の人員整理の概要
 2 人員整理基準から見た解雇対象者
 3 女性の排除としての人員整理
 4 なぜ女性が対象となったのか(客観的観点)
 5 なぜ女性が対象となったのか(主観的観点)
 6 小 括

補 章 ドッジ・ライン下における先任権の日本への移植
 1 1950年前後における先任権への関心
 2 GHQによる先任権制度の導入奨励と日経連の対応
 3 ドッジ・ライン期前後をめぐる人員整理基準の変遷
 4 ドッジ・ライン期の人員整理基準の特徴とその帰結
 5 小 括

第9章 臨時工の登場と組合規制――1949年の人員整理以前を中心に
 1 48年協約における臨時工的労働者の扱い
 2 除外規定された労働者の類型
 3 自動車再生作業について
 4 臨時工の採用と組合規制
 5 1949年の臨時工解雇問題
 6 小 括

第10章 人員整理後の臨時工活用の本格化とその処遇
 1 無協約時代の労使関係
 2 組合における「臨時工」の認知とその対応
 3 臨時工大量採用に対する組合の当初の対応
 4 本工と臨時工の賃金制度
 5 本工と臨時工の賃金格差
 6 本工と臨時工の賃金の相違
 7 小 括
 付 論 賃金額の推計方法

第11章 全自日産分会の本工化闘争
 1 臨時工との交流と問題意識の醸成
 2 臨時工をめぐる組合政策の登場
 3 一部本工化の実現
 4 1952年秋季闘争における全臨時工の本工化要求
 5 1953年争議における臨時工問題
 6 本工化闘争の背景
 7 小 括

第12章 転換嘱託の身分復元闘争
 1 転換嘱託とは
 2 整理解雇後の転換嘱託の労働条件の決定
 3 転換嘱託の労働条件の改善
 4 身分復元闘争
 5 小 括


終 章 戦後初期労使関係とその後
 1 会社共同体を目指した組合とその後
 2 女性の活用と排除
 3 臨時工の活用と格差の正当化装置

(追記)

なお、7月25日発行予定の『日本労働研究雑誌』8月号に、本書の書評を寄稿しております。

 

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