大内伸哉『最新重要判例200[労働法] <第8版>』
大内伸哉『最新重要判例200[労働法] <第8版>』(弘文堂)をお送りいただきました。
https://www.koubundou.co.jp/book/b10045191.html
膨大な判例の中から新しいものを中心に一貫した視点で重要判例を選び、単独執筆により統一的に理解できる判例ガイド。
判旨の要点がひと目でわかるよう2色刷りにし、読者の学習に配慮した判例解説の決定版です。
今改訂では、必要かつ十分な判例を読者に届けるという目標を再確認し厳選した結果、6判例を削除、新規判例6件を追加しました。限られた紙幅の中で、できるだけ新たな法律や裁判例に関する情報を盛り込んだ200判例を収録しています。法学部生をはじめ、各種国家試験受験生、社労士、企業の人事・労務担当者に最適の1冊。
大内さんの一人判例集も第8版です。『判例百選』の倍の判例が載っているのはありがたいという人も多いでしょう。
ただ、これは『判例百選』も含めて、この手の判例集全般に対して感じていることなんですが、あるトピックについて一つの代表的判例について大変詳しく解説し、その他の判例はちょびっと言及するか、名前だけ挙げるだけ、というのは、実際の使い勝手という観点から見てどうなんだろうか、という気がしています。
たとえばそうですね、採用内定と言えばかならず大日本印刷事件になるわけですが、これは新卒一括採用の正式内定のケースなわけです。新卒一括採用でも正式内定じゃない「内々定」では、まだ労働契約は成立していないというコーセーアールイー事件があるわけですし、そもそも中途採用では、内定取消を無効としたインフォミックス事件もあれば、有効としたユタカ精工事件もあります。特定の状況下のものだけを代表的判例としてしまっていいのか、いやまあ、100とか200とか制限のある中で選ぶんだから仕方がないじゃないかと言われればそうなんですが、もう少し扱いを公平にしてもいいんじゃないかと。
能力不足解雇についても、大体どの判例集でもセガエンタープライゼズ事件なわけですが、でもこれは新卒採用の若年者のケースであって、そもそもメンバーシップ型で素人を採用して鍛えるのが上司の任務だという前提があるわけで、中途採用者について有効という判例と無効という判例があるのを、ちらと言及だけというのもどうなのかなあ、と思ったりもします。
こういうのは、私が雇用システムの関心から、新卒採用の労働者と中途採用の労働者では社会の認識も違うし、判例のスタンスも違うし、そこは明確に示されるべきではないかと感じるからですが。
まあ、判例集というのはどういうものであるべきなのかというのは難しいですね。
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