正義の味方は自己責任@労災保険
これはほんとに雑件です。
『労働経済判例速報』の令和6年1月30日号に「中央労働基準監督署長事件」(東京地判令和5年3月30日)が載っています。労災に関する裁判例ですが、事案が(労働法学的な意味ではなく、世間的な意味で)興味深いのでちょっと紹介。
本件の原告は、ファミレスに勤務する普通のサラリーマンなんですが、深夜帰宅途中、山手線車内で女性客に迷惑行為(要するに痴漢行為ですな)をしていた中年男に注意したところ、逆恨みしたそいつから跳び蹴りを受けて負傷したという事案です。もちろんそれはそれで刑事事件になるわけですが、警察が治療費を払ってくれるわけではない。問題はこの負傷が労災-正確には通勤災害-になるかです。通勤災害も労災と同様手厚い補償を受けられるのですが、その認定基準では、通勤とは関係のない逸脱や中断があると認められません。通勤の帰りに関係ないところに立ち寄ったりすると認定されないわけです。さて本件、通勤経路という意味では何ら逸脱していないわけで、通勤車内で蹴られたわけですが、その原因は彼がなまじ正義感を出して痴漢中年男に注意したりしたからなんですね。監督署はこれは通勤の中断中に起きたものだとして不支給決定したので、審査請求を経て彼は裁判に訴えたというわけです。
裁判所の結論は監督署と変わらず、棄却となりました。労働法学的には当然の結論ということになるのですが、通勤中に車内で痴漢野郎を見つけても、余計なことをしない方がいいということにならないといいですね。
« EUプラットフォーム労働指令は骨抜きに? | トップページ | 第131回労働政策フォーラム「時間帯に着目したワーク・ライフ・バランス─家族生活と健康─」のご案内 »
« EUプラットフォーム労働指令は骨抜きに? | トップページ | 第131回労働政策フォーラム「時間帯に着目したワーク・ライフ・バランス─家族生活と健康─」のご案内 »
コメント