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2024年1月

2024年1月31日 (水)

㈱wiwiw『企業ではたらく20人の女性リーダー』

D50765e4ab8f1217f9f3b1a2e5b21fe6b0599b37 ㈱wiwiw『企業ではたらく20人の女性リーダー 自分らしい最高のキャリアのつくり方』(経団連出版)をお送りいただきました。

https://www.keidanren-jigyoservice.or.jp/pub/cat7/6ccecd4bb8fcd9183226180e08f3e88d3a2ea3ef.html

女性の活躍推進は待ったなしの状況ですが、企業からは、「女性はリーダーや管理職に挑戦する意欲が低い」「技術系の女性の採用や、営業職の女性の定着がむずかしく、女性活躍がなかなか進まない」といった共通の悩みが聞こえてきます。その一方で、当事者である女性たちからは、「育児と仕事を両立するだけで精一杯」「自分の会社にはロールモデルがいないのでキャリアを描きづらい」といった声も少なくありません。
そこで本書では、リーダーや管理職、役員として活躍している女性、土木・建築や理系分野でプロフェッショナルとして活躍している女性など、業種も職種も年代もさまざまな女性20人へインタビューを実施し、「どんな学びや経験がキャリアに影響を与えたのか」「キャリア形成における、女性であることでの課題」「挫折し、悩みを抱えたときに、どう乗り越えてきたか」「時間管理やワークライフバランス実現の方法」などに加え、ライフキャリア上でターニングポイントになった出来事なども紹介します。
本書を通じて、「自分らしく働きたい」「さらなるスキルアップ・キャリアアップをはかりたい」「管理職になって活躍したい」「戦略的に課題に取り組み会社に貢献したい」「コミュニケーション力を高め、リーダーシップを発揮して価値創造につなげたい」など、企業で活躍したいと思う意欲的な女性の方々の励みとなり、一歩踏み出す勇気を見出し、自分を動かすきっかけを見つけることができるでしょう。
先進各社のD&Iの取り組みや、活躍するリーダーの共通項も紹介しており、女性リーダー育成・登用への取り組みを推進している企業にとっても、深い気づきやヒントが得られる一書です。

というわけで、20社の20人の女性が登場しています。

〔取材先企業〕
IHI、イオン、エムスリー、大林組、カシオ計算機、北野建設、キリンホールディングス、寺田倉庫、東京ガス、日本ガイシ、日本通運、日本郵船、万協製薬、星野リゾート・マネジメント、堀越、三菱UFJフィナンシャル・グループ/三菱UFJ銀行、明治、ヤマト・スタッフ・サプライ、 横浜ゴム、リコー

いずれも女性の話も面白いですが、やはり理工系で頑張ってこられた方々の言葉はいいですね。

 

 

2024年1月29日 (月)

給料が下がる 「60歳の壁」をどう乗り越えるか@毎日新聞プレミア

8_20240129092501 本日の毎日新聞プレミアに、「給料が下がる 「60歳の壁」をどう乗り越えるか」というわたくしのインタビュー記事が載っています。

給料が下がる 「60歳の壁」をどう乗り越えるか

 定年を過ぎて働き続けた時に、給料が下がる慣行があります。どう考えるべきでしょうか。

 労働政策研究・研修機構労働政策研究所長の濱口桂一郎さんに聞きました。【聞き手・須藤孝】

 ◇ ◇ ◇

 ――定年を過ぎて継続雇用になると給与が大幅に下がる場合があります。

 ◆建前としては現在の賃金制度は能力給とされています。60歳で給与が大幅に下がるのは論理的にはおかしいことです。

 ――訴訟も提起されていますが、一方で受け入れる人も多くいます。

 ◆本音では生活給だと思われているからでしょう。

 年功序列的な賃金では、就職してから定年までの間の貢献度と総人件費が対応しています。若い時は低く、その分、中高年になると高くなります。

 しかし、定年後も高いままだと、この仕組みは持ちません。いままで生きてきた年功序列的な賃金システムを考えれば、しょうがないな、と感じる人が多いのでしょう。

「B級労働者」でいいのか

 ――ただ、高齢者の働き方は変わっています。

 ◆これまでは、60歳から65歳までの働き方は、60歳までに付け加わったものと思われてきました。

 しかし、高齢者雇用安定法ではすでに70歳までの雇用が努力義務になっています。いずれは70歳まで働くことが普通になるでしょう。

 今のように、60歳以後に大きく賃金を下げるのでは、社会の中で大きな割合を占める高齢者層が、不満を持ったまま働くことになります。社会全体としては良いことではありません。

 60歳以降を「B級労働者」のような扱いをすることがいいことなのか。…

 

 

2024年1月28日 (日)

EUプラットフォーム労働指令案は労働者性推定規定を切り離す?

Shutterstock_706093528800x450 依然としてステールメイト状態が続いているEUプラットフォーム労働指令案ですが、一昨日のEUractivの記事は、フランスのマクロン大統領が断固として立ち塞がってるんだよね、という話を関係者の台詞で延々書いた後、最後のところで、こんなことをさらりと書いています。

Is the platform work directive dead?

Officials Euractiv talked to are not yet at the point of total despair.

“I’ll fight for this until the very last day of this mandate,” Radtke said.

But the middle ground remains far on the horizon. Euractiv received confirmation from several people involved in the negotiations that the Parliament is looking to split the directive in two so a deal can be struck on algorithmic management before EU elections.

It’s not clear whether this would fly with member states, however. It also remains to be seen how much of a fight the file’s rapporteur, social-democrat Elisabetta Gualmini, is willing to put up – with growing pressures to find a deal to show on the campaign trail.

Contacted by Euractiv, Gualmini’s office declined to comment.

Ultimately, the directive is not dead, all said. But one thing remains firmly in the mind of the policymakers involved: “Better no deal than a bad deal”.

・・・ユーラクティブは、交渉に関与した複数の関係者から、議会がEU選挙前にアルゴリズム管理に関しては妥結できるよう、指令を2つに分割することを検討しているとの確認を受け取った。・・・

つまり、労働者性の推定規定を外して、アルゴリズム管理の規制の部分だけで指令として成立させてしまおうという案がでてきているようです。

 

2024年1月27日 (土)

ドロサヨ(泥臭左翼)の時代

2024012600010009huffpost0001view 「桐島、逃亡生活やめるってよ」というニュースが駆け巡った一日でしたが、彼が関わっていた「東アジア反日武装戦線」の爆弾事件はちょうど私の高校生時代で、あれからほぼ半世紀が経ったんだな、という感慨が湧いてきます。

そして、この頃のこういう動きが、左翼というのをそれまでの近代的、科学的な指向のイデオロギーから、それとはむしろ真逆の、反近代的、反科学的な指向のものと受け止める考え方の構えが一般化していったのだな、と思い返されます。

このあたり、もう10年以上も前に、演歌の本をめぐってこんなことを書いたことがありました。

新左翼によって「創られた」「日本の心」神話

わたくしの観点から見て、本書が明らかにしたなかなか衝撃的な「隠された事実」とは、演歌を「日本の心」に仕立て上げた下手人が、実は60年代に噴出してきた泥臭系の新左翼だったということでしょうか。p290からそのあたりを要約したパラグラフを。

いいかえれば、やくざやチンピラやホステスや流しの芸人こそが「真正な下層プロレタリアート」であり、それゆえに見せかけの西洋化=近代化である経済成長に毒されない「真正な日本人」なのだ、という、明確に反体制的・反市民社会的な思想を背景にして初めて、「演歌は日本人の心」といった物言いが可能となった、ということです。

昭和30年代までの「進歩派」的な思想の枠組みでは否定され克服されるべきものであった「アウトロー」や「貧しさ」「不幸」にこそ、日本の庶民的・民衆的な真正性があるという1960年安保以降の反体制思潮を背景に、寺山修司や五木寛之のような文化人が、過去に商品として生産されたレコード歌謡に「流し」や「夜の蝶」といったアウトローとの連続性を見出し、そこに「下層」や「怨念」、あるいは「漂泊」や「疎外」といった意味を付与することで、現在「演歌」と呼ばれている音楽ジャンルが誕生し、「抑圧された日本の庶民の怨念」の反映という意味において「日本の心」となりえたのです。

この泥臭左翼(「ドロサヨ」とでも言いましょうか)が1960年代末以来、日本の観念構造を左右してきた度合いは結構大きなものがあったように思います。

そして、妙な話ですが、本ブログではもっぱら「リベサヨ」との関連で論じてきた近年のある種のポピュリズムのもう一つの源泉に、この手のドロサヨも結構効いているのかも知れません。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/08/post-9d19.html(「マージナル」とはちょっと違う)

それまでの多数派たる弱者だったメインストリームの労働者たちが多数派たる強者になってしまった。もうそんな奴らには興味はない。そこからこぼれ落ちた本当のマイノリティ、本当の「マージナル」にこそ、追究すべき真実はある・・・。

言葉の正確な意味における「マージナル」志向ってのは、やはりこの辺りから発しているんじゃなかろうか、と。とはいえ、何が何でも「マージナル」なほど正しいという思想を徹底していくと、しまいには訳のわからないゲテモノ風になっていくわけで。

それをいささかグロテスクなまでに演じて見せたのが、竹原阿久根市長も崇拝していたかの太田龍氏を初めとするゲバリスタな方々であったんだろうと思いますが、まあそれはともかくとして。

(追記)

上で、「ドロサヨ」などという言葉を創って、自分では(「泥臭」と「左翼」という違和感のある観念連合を提示して)気の利いたことを言ってるつもりだったのですが、よくよく考えてみると、それはわたくしの年齢と知的背景からくるバイアスであって、世間一般の常識的感覚からすれば、むしろ、上で「ゲテモノ」とか「グロテスク」と形容した方のドロサヨこそが、サヨクの一般的イメージになっているのかも知れませんね。少なくとも、高度成長期以降に精神形成した人々にとっては、左翼というのは泥臭くみすぼらしく、みみっちいことに拘泥する情けないたぐいの人々と思われている可能性が大ですね。

・・・・・・

高度成長後の日本においては、「左翼」というのはこの上なく自由主義的で福祉国家を敵視するリベサヨか、辺境最深部に撤退して限りなく土俗の世界に漬り込むドロサヨか、いずれにしてもマクロ社会的なビジョンをもって何事かを提起していこうなどという発想とは対極にある人々を指す言葉に成りはてていたのかも知れません。

改めて考えてみれば、「東アジア反日武装戦線」なんて看板は、ナショナリズムとショービニズムとネイティビズムに充ち満ちたイデオロギーであって、ただ一つ異様なのは、日本人の一員である彼らがそれを民族的憎悪の対象とするという点にのみ存するということでしょう。そういうベクトルの向きだけ逆さに付け替えた極右思想を、過去半世紀の日本人は「左翼」だと思い込んできたわけです。

 

 

2024年1月26日 (金)

ローマ法学者 on 日本型雇用

09191 『法律時報』2月号には、ローマ法学者の木庭顕さんが「労働市場改革」というエッセイを寄せていますが、もちろんそんじょそこらにあるような生やさしい中身ではありません。

https://www.nippyo.co.jp/shop/magazines/latest/1.html

●論説 「労働市場改革」……木庭 顕

ローマ法のlocatio conductioの話がえんえんとなされて、多くの読者にはいささかちんぷんかんぷんではないかとも思われますが、それ以外も深い皮肉に満ちた文章が次々に繰り出され、人によっては木庭節に酔いしれるかも知れません。

たとえば、ローマ法の視角から見れば、こういう議論になります。

・・・労働時間規制がかからない「正規」というabsurdな形姿が、雇用関係が一種の丸抱えになっていることから導かれる、ということに疑いはない。正規労働者は福利厚生からあのおぞましい大宴会付き温泉旅行に至るまでたっぷりと恩恵を施され、それと引き換えに「配転」その他労働条件の恣意的な変更から公私混同のサーヴィスに至るまで何でもしなければならないのである。しかし我慢していれば定年退職とともに退職金及び年金は保障される。厳密に定義すればこれは奴隷に他ならない。・・・

そして、そういう日本型雇用を経済成長の源泉として礼賛しながら、一方で解雇の自由を叫んでいた1980年代前後の保守派知識人に対して、極めて辛辣な言葉を投げかけています。

・・・ところが、『文明としてのイエ社会』が解雇の自由を主張するのであれば、反「日本的雇用慣行」=流動性支持の側に立つに違いない、と読者は思う。・・・ところが、『文明としてのイエ社会』は、「日本的雇用慣行」に依拠するはずの「日本型経営」を「日本の」成功の秘訣とする。・・・そのくせ、アメリカのように解雇を自由にせよ、と叫ぶ。その大事な「イエ」を崩してよいのか。なぜこうもあから様な自己撞着を犯すのか、と読者は訝しく思う。・・・

私は基本的にこういうのはすべて時代精神(Zeit Geist)の表出に過ぎず、近代日本においては、それは20年周期で軽々と入れ替わっていくものだと考えていますが、2000年前のローマ法に視座を据えてみれば、まことに軽々しく見えるのも宜なるかなという気もしないではありません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

争議行為の参加人員6,447人@『労務事情』2月1日号

B20240201  『労務事情』2月1日号の「数字から読む日本の雇用」に「争議行為の参加人員6,447人」を寄稿しました。

https://www.e-sanro.net/magazine_jinji/romujijo/b20240201.html

本連載の昨年11月1日号では、2022年の日本では争議行為を伴う労働争議がわずか65件と絶滅状態にあることを紹介しました。欧米諸国から毎日のようにストライキの報道が流れ込んでくるたびに、彼我の落差に愕然とします。これをやや異なる数字で見ると・・・・

 

 

 

2024年1月24日 (水)

欧州議会選挙では極右が躍進する

47f11dfb9be219641d0d6e4f0781f1cd800x ついでにもう一つEUネタ。EUobserverの記事で、「EU Parliament will see far-right surge at election, study says」(欧州議会選挙では極右が台頭する)

EU Parliament will see far-right surge at election, study says

According to the ECFR's predictions, anti-European populists are expected to top the polls in nine member states: Austria, Belgium, France, Hungary, Italy, Poland, the Netherlands, Slovakia and the Czech Republic, while they are also likely to come second or third in a further nine EU countries.

ECFRの予測によると、反欧州ポピュリストはオーストリア、ベルギー、フランス、ハンガリー、イタリア、ポーランド、オランダ、スロバキア、チェコの9か国でトップになると予想されているが、他のEU 9 ヶ国でも2位か3 位につけている。

Forecasts for 2024 show that the two biggest winners will be the Identity and Democracy (ID) group, with almost 100 MEPs (an increase of 40 seats), and the European Conservatives and Reformists (ECR), with 85 MEPs (an increase of 14 seats).

2024年の予測によると、2大勝者は、約100人の議員(40議席増)を擁するアイデンティティと民主主義(ID)グループと、85人の議員(14議席増)を擁する欧州保守改革派(ECR)となるだろう。

Combined, the two populist-right groups would make up nearly a quarter of the chamber — surpassing the European People's Party (EPP) or the Socialists and Democrats (S&D) for the first time, and narrowing the gap with them, as ID would become the third-largest political force.

二つのポピュリスト右派グループを合わせると、議院のほぼ4分の1を占めることになり、初めて欧州人民党(EPP)や社会民主党(S&D)を上回り、両党とのギャップは縮まって、3番目に大きな政治勢力となろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

欧州委員会が欧州労使協議会指令の改正案を提出

Blobservlet_20240124231001 本日、欧州委員会は欧州労使協議会指令の改正案を提出しました。

Commission proposes to improve European Works Councils to strengthen transnational social dialogue

Today, the Commission proposes to revise the European Works Councils (EWCs) Directive to further improve social dialogue in the EU.

この指令が最初に採択されたのは、1994年ですからもう30年も前になりますね。

その翌年1995年に、わたしはブリュッセルに赴任し、3年間欧州委員会の第5総局(雇用社会総局)の人たちとおつきあいさせてもらいながら、EU労働法について勉強して、1998年に帰国後直ぐに『EU労働法の形成』という本を書いたのでした。

いろいろと懐かしい思い出のある指令です。1997年には、ルノー社がベルギーのビルボーデ工場を突然閉鎖するという騒ぎがあり、本指令違反じゃないかと裁判沙汰にもなりました。そのときルノー社の上級副社長だったカルロス・ゴーンが、1999年には日産のCEOとして「進駐」してきたわけですが。

その後2009年に若干の改正がされて、現時点の指令はこうなっています。

被用者への情報提供及び協議を目的とした欧州共同体規模企業及び欧州共同体規模企業グループにおける欧州労使協議会又は手続の設置に関する欧州議会及び閣僚理事会の指令(再制定)(欧州労使協議会指令)

第Ⅰ節 総則
 
第1条 目的
1 本指令の目的は、欧州共同体規模企業及び欧州共同体規模企業グループにおける被用者への情報提供及び協議を受ける権利を改善することにある。
2 この目的のため、被用者への情報提供及び協議の目的で第5条第1項に定める方法により要求があった場合には、全ての欧州共同体規模企業及び欧州共同体規模企業グループごとに、欧州労使協議会又は被用者に対する情報提供及び協議のための手続が設置されるものとする。被用者への情報提供及び協議の仕組みは、その有効性を確保しかつ当該企業又は企業グループが有効に意思決定を行うことを可能にするような方法により規定され、実施されるものとする。
3 被用者への情報提供及び協議は、審議される主題に応じて、経営側と被用者代表の適切なレベルで行われなければならない。これを達成するため、本指令に基づく欧州労使協議会の権限及び被用者への情報提供及び協議の手続の範囲は国境を超える問題に限定されるものとする。
4 国境を超える問題とみなされるのは、欧州共同体規模企業及び欧州共同体規模企業グループが全体として、又は二つの異なる加盟国に所在する当該企業若しくは企業グループのうち少なくとも二つの企業若しくは事業所に関わる場合である。
5 第2項にかかわらず、第2条第1項第第(c)号にいう欧州共同体規模企業グループの中に一以上の第2条第1項第(a)号又は第(c)号にいう欧州共同体規模企業又は欧州共同体規模企業グループが含まれている場合には、第6条にいう協定で別に定めない限り、欧州労使協議会は当該企業グループ全体のレベルで設置されるものとする。
6 第6条にいう協定においてより広い範囲が定められていない限り、欧州労使協議会の権限及び権能並びに第1項に規定する目的を達成するために設置される情報提供及び協議の手続の範囲は、欧州共同体規模企業の場合には加盟諸国内に所在する全ての事業所に、欧州共同体規模企業グループの場合には加盟諸国内に所在する全ての当該企業グループ傘下企業に及ぶものとする。
 
第2条 定義
1 本指令において、
(a) 「欧州共同体規模企業」とは、加盟国内で1000人以上の被用者を雇用し、かつ、2以上の加盟国でそれぞれ150人以上の被用者を有する企業をいう。
(b) 「企業グループ」とは、一つの支配企業とその被支配企業をいう。
(c) 「欧州共同体規模企業グループ」とは次の特徴を有する企業グループをいう。
- 加盟国内で1000人以上の被用者を有し、
- 異なる加盟国に2以上のグループ傘下企業が存在し、
かつ
- 1加盟国に150人以上の被用者を有する1以上のグループ傘下企業が存在し、かつ、別の加盟国に150人以上の被用者を有する他のグループ傘下企業が一以上存在すること。
(d) 「被用者代表」とは、国内法及び/又は国内慣行に規定する被用者の代表をいう。
(e) 「経営中枢」とは、欧州共同体規模企業の経営中枢又は欧州共同体規模企業グループの場合には支配企業の経営中枢をいう。
(f) 「情報提供」とは、使用者により被用者代表に対して主題事項について知りかつ検討しうるためになされるデータの伝達をいう。情報提供は、被用者代表があり得べき帰結について突っ込んだ評価を遂行し、適当であれば欧州共同体規模企業又は欧州共同体規模企業グループの権限ある機関との協議を準備することができるような時期に、そのようなやり方で、そのような内容でなされるものとする。
(g) 「協議」とは、被用者代表と経営中枢又は経営側のより適切なレベルの者の間における、被用者代表が提供された情報に基づいて協議が関わる提案された措置に対して経営側の責任に抵触することなく合理的な期間内に、欧州共同体規模企業又は欧州共同体規模企業グループ内で考慮に入れられ得る意見を表明することができるような時期に、そのようなやり方で、そのような内容でなされる意見の交換及び対話の確立をいう。
(h) 「欧州労使協議会」とは、被用者に対して情報提供及び協議を行う目的で、第1条第2項又は附則Ⅰの規定に従い設置される協議会をいう。
(i) 「特別交渉組織」とは、第1条第2項に従い欧州労使協議会又は情報提供及び協議の手続の設置に関し、第5条第2項の規定に従い経営中枢と交渉を行うために設置される組織をいう。
2 本指令において、適用基準たる労働力規模の最低人数は、パートタイム被用者を含め、国内法及び/又は慣行に従って算定された過去2年間に雇用されていた被用者の平均人数に基づくものとする。
 
第3条 「支配企業」の定義
1 本指令において、「支配企業」とは、資本の所有、資本の参加又は支配する規則により他の企業(「被支配企業」)に対して支配的影響力を行使することができる企業をいう。
2 ある企業が他の企業に対して直接的又は間接的に次のいずれかの要件を満たす場合には、反証がない限り、支配的影響力を行使しうる能力を有するものと推定されるものとする。
(a) 当該企業の引受資本の過半数を所有しているか、
(b) 当該企業の発行済み株式に基づき議決権の過半数を制しているか、
(c) 当該企業の経営機関、執行機関又は監督機関の構成員の半数以上を指名することができること。
3 第2項において、議決及び指名に関する支配企業の権利の中には、他の被支配企業の権利及び自らの名前で行動しているが支配企業又は他の被支配企業のために行動している個人又は機関の権利を含むものとする。
4 第1項及び第2項にかかわらず、ある企業が、企業間の集中の規制に関する2004年1月20日の閣僚理事会規則(139/2004)第3条第5項第(a)号又は第(c)号にいう会社である場合には、他の企業の株式を所有していても「支配企業」とは見なされない。
5 清算、解散、破産、支払停止、債務免除又は類似の手続に関する加盟国の法制に従い、執行者がその権限を行使しているという事実だけでは、支配的影響力が行使されているとは推定されない。
6 ある企業が「支配企業」であるかどうかを決定するために適用される法律は、当該企業を管轄する加盟国の法律とする。
 当該企業を管轄する法律が加盟国の法律でない場合には、当該企業の代表機関が所在する加盟国の法律が適用され、そのような代表機関が存在しない場合には、被用者をもっとも多く雇用するグループ傘下の企業の経営中枢が所在する加盟国の法律が適用されるものとする。
7 第2項の適用において法の抵触があり、同一グループの2以上の企業が同項に定める1以上の基準を満たす場合には、同項第(c)号に定める基準を満たす企業が支配企業と見なされる。ただし、別の企業が支配的影響力を行使できることの証明がある場合にはこの限りでない。
 
第Ⅱ節 欧州労使協議会又は被用者への情報提供及び協議の手続の設置
 
第4条 欧州労使協議会又は被用者への情報提供及び協議の手続の設置の責任
1 経営中枢は、欧州共同体規模企業及び欧州共同体規模企業グループにおいて、第1条第2項に定めるように、欧州労使協議会又は情報提供及び協議の手続の設置に必要な条件と手段を作り出す責任を有するものとする。
2 経営中枢が加盟国内に存在しない場合、必要があれば指定される加盟国内における経営中枢の代表機関が、第1項の責任を負うものとする。
 そのような代表機関が存在しない場合、加盟国の中でもっとも多くの被用者を雇用する事業所又はグループ傘下の企業の経営者が、第1項の責任を負うものとする。
3 本指令において、代表機関又はそのような代表機関がない場合には第2項第2文にいう経営者が経営中枢とみなされる。
4 欧州共同体規模企業グループに属する全企業の経営者及び欧州共同体規模企業グループの経営中枢又は第2項第2文にいうみなし経営中枢は、本指令の適用により関係当事者に第5条にいう交渉を開始するのに必要な情報、とりわけ企業又は企業グループの構造とその労働力に関する情報を入手し提供する責任を負うものとする。この義務はとりわけ、第2条第1項第(a)号及び第(c)号にいう被用者数に関する情報に関わるものとする。
 
第5条 特別交渉組織
1 第1条第1項の目的を達成するため、経営中枢は自らの発意によって、又は2以上の異なる加盟国の2以上の企業又は事業所の全部で100人以上の被用者又はその代表からの書面による要求によって、欧州労使協議会又は情報提供及び協議の手続を設置するための交渉を開始するものとする。
2 このため、次の指針に従い、特別交渉組織が設立されるものとする。
(a) 加盟国は、自国の領域内で選出され又は指名される特別交渉機関の構成員の選出又は指名に用いられる方法を決定するものとする。
 加盟国は、被用者の責めに帰すべき理由がないにも関わらず被用者代表が存在しない企業及び/又は事業所の被用者が、特別交渉機関の構成員を選出し又は指名する権利を有する旨を規定するものとする。
 第2文の規定は、被用者代表機関の設置の適用要件として最低被用者数を規定する国内法令及び/又は慣行を妨げないものとする。
(b) 特別交渉機関の構成員は、各加盟国において欧州共同体規模企業又は欧州共同体規模企業グループによって雇用される被用者数に応じて、全加盟国で雇用される被用者数の10%又はその端数に達する各加盟国ごとに雇用される被用者数の割合に応じて1人ずつ、選出又は指名されるものとする。
(c) 経営中枢及び事業所や子会社の経営者並びに権限ある欧州の労働者組織及び使用者組織は、特別交渉機関の構成及び交渉の開始について通知を受けるものとする。
3 特別交渉組織は、経営中枢とともに、欧州労使協議会の適用範囲、構成、権限及び任期又は被用者への情報提供及び協議の手続の実施方法を、書面による協定の形で決定する任務を有するものとする。
4 第6条に従って協定を締結することを目的として、経営中枢は特別交渉機関との会合を招集するものとする。経営中枢はこの旨を事業所や子会社の経営者に通知する。
 経営中枢とのいかなる会合の前後においても、特別交渉機関は経営中枢の代表の臨席なしに、いかなる必要な通信手段をも用いて、会合をする権利を有する。
 交渉のために、特別交渉組織は、権限ある承認された欧州共同体レベルの労働組合の代表を含む自らが選択した専門家の援助を要請することがができる。かかる専門家及び労働組合代表は、特別交渉組織の要請により諮問的地位において交渉会合に出席することができる。
5 特別交渉機関は、3分の2以上の議決により、第4項に従い交渉を開始しない旨又は既に開始した交渉を打ちきる旨を決定することができる。
 かかる決定は、第6条にいう協定を締結するための手続を中止するものとする。かかる決定が行われた場合には、附則Ⅰの規定は適用されないものとする。
 当事者がより短い期間を定めた場合を除き、新たな特別交渉機関の招集の要請は上記決定の後少なくとも2年経過した後に行うことができる。
6 第3項及び第4項にいう交渉に関係するいかなる費用も特別交渉機関が適切に任務を遂行できるようにするために経営中枢により負担されるものとする。
 この原則に則り、加盟国は特別交渉機関の運営に関する財務上の規則を定めることができる。加盟国は特に専門家の費用負担については1名のみに限定することができる。
 
第6条 協定の内容
1 経営中枢及び特別交渉組織は、第1条第1項に定める被用者への情報提供及び協議の実施の詳細な仕組みについて協定に達する目的で、協調の精神を持って交渉しなければならない。
2 当事者の自治に抵触しない限り、第1項にいう経営中枢及び特別交渉組織の間の協定は、書面により次の事項を決定するものとする。
(a) 協定の対象となる欧州共同体規模企業グループの傘下企業又は欧州共同体規模企業の事業所、
(b) 欧州労使協議会の構成、構成員数、可能であれば被用者の均衡のとれた代表の必要性を考慮に入れて、その活動、労働者範疇及び性別に関して議席の配分及び任期、
(c) 欧州労使協議会の情報提供及び協議を行う場合の権能及び手続並びに、第1条第3項に定める原則に従い欧州労使協議会の情報提供及び協議と国内被用者代表機関との連携、
(d) 欧州労使協議会の開催場所、開催頻度及び開催期間、
(e) 必要であれば、欧州労使協議会の中に設置される特別委員会の構成、指名手続、機能及び手続規則、
(f) 欧州労使協議会に配分される財政的、物質的資源、
(g) 協定の発効日及びその有効期間、協定の改正又は廃止の手続、欧州共同体規模企業又は欧州共同体規模企業グループの構造が変化した場合を含め、協定が再交渉される場合には再交渉の手続、
3 経営中枢及び特別交渉機関は、書面により、欧州労使協議会の代わりに、1以上の情報提供及び協議の手続を設置することができる。
 この協定は、いかなる方法によって被用者代表が彼らに伝達された情報を討議するために会合する権利を有するかを規定しなければならない。
 この情報は特に労働者の利益に重大な影響を与える国境を超える問題に関わるものとする。
4 第2項及び第3項にいう協定は、別段の定めがない限り、附則Ⅰの補完的要件に従ったものである必要はない。
5 第2項及び第3項にいう協定を締結するために、特別交渉組織はその構成員の過半数によって行動するものとする。
 
第7条 補完的要件
1 第1条第1項の目的を達成するために、次のいずれかの場合には、経営中枢の所在する加盟国の法制により規定された補完的要件が適用されるものとする。
- 経営中枢及び特別交渉機関がそう決定した場合、
- 経営中枢が第5条第1項の要求が行われてから6か月以内に交渉の開始を拒否した場合、
又は、
- 当該要求の日から3年後においても、経営中枢と特別交渉組織が第6条に定める協定を締結することができず、かつ特別交渉組織が第5条第5項に定める決定を行わない場合。
2 第1項にいう加盟国の法制により定められた補完的要件は、附則Ⅰに定める規定を満たさなければならない。
 
第Ⅲ節 雑則
 
第8条 機密情報
1 加盟国は、特別交渉機関又は欧州労使協議会の構成員及び彼らを援助する専門家が、機密であることを明示されて提供されたいかなる情報も漏洩してはならない旨を定めるものとする。
 情報提供及び協議の手続の枠組における被用者代表についても同様である。
 この義務は、第1文及び第2文にいう者がその任期を終了した後にも引き続き適用される。
2 各加盟国は、情報の性質が客観的な基準に照らし、関係企業の活動に深刻な支障をもたらし、又は関係企業に不利益を与えるものである場合には、個々の事例ごとに、かつ国内法令で定める条件及び制限の下に、その国内に所在する経営中枢が、情報を提供する義務がない旨を規定するものとする。
 加盟国はこのような適用除外を受ける条件として、事前の行政的又は司法的許可を必要とする旨を規定することができる。
3 各加盟国は、本指令の採択の日に既にそのような規定が国内法令に置かれていることを条件として、情報提供及び意見表明に関してイデオロギー的指導を行うことを直接かつ主たる目的とする当該国内に所在する企業の経営中枢のために特別の規定を置くことができる。
 
第9条 欧州労使協議会及び労働者に対する情報提供及び協議の手続の運営
 経営中枢及び欧州労使協議会は、相互の権利及び義務を尊重し、協調の精神をもって作業を行うものとする。
 労働者に対する情報提供及び協議の手続の枠組における経営中枢及び被用者代表の間の協調についても同様とする。
 
第10条 被用者代表の役割及び保護
1 この点で他の機関又は組織の権限を妨げない限り、欧州労使協議会の構成員は、欧州共同体規模企業又は欧州共同体規模企業グループの被用者の利益を集団的に代表する本指令から生ずる権利を適用するのに必要な手段を有するものとする。
2 第8条を妨げない限り、欧州労使協議会の構成員は欧州共同体規模企業グループの事業所又は傘下企業の被用者代表に、かかる代表がいない場合には労働力全体に対し、本指令に従い遂行された情報提供及び協議の内容及び結果について情報提供するものとする。
3 特別交渉機関の構成員、欧州労使協議会の構成員及び第6条第3項にいう手続の下でその権能を行使する被用者代表は、その権能の行使に当たり、その雇用されている国で効力を有する国内法令及び/又は慣行により被用者代表が与えられているのと同様の保護及び保証を受けるものとする。
 これは、特に特別交渉機関若しくは欧州労使協議会の会合又は第6条第3項にいう協定の枠組みにおけるその他の会合への出席及び欧州共同体規模企業又は欧州共同体規模企業グループの職員である構成員がその任務を遂行するために欠勤した期間の賃金の支払いに適用するものとする。
 海上船舶の乗組員である特別交渉組織又は欧州労使協議会の構成員若しくはその代理は、当該構成員又はその代理が航海中でないか又は船舶会社が所在する以外の国の港湾に停泊中であるときは、特別交渉組織又は欧州労使協議会若しくは第6条第3項に基づき設置された手続の下の他の会合が開催される場合にそこに出席する権利を有する。
 可能であれば、諸会合は海上船舶の乗組員である構成員又はその代理が出席できるような日程とするものとする。
 海上船舶の乗組員である特別交渉組織又は欧州労使協議会の構成員若しくはその代理が会合に出席できないときは、可能であれば新たな情報通信技術の利用が考慮されるものとする。
4 それが国際環境におけるその代表としての任務の行使に必要である限り、特別交渉組織又は欧州労使協議会の構成員は賃金の減額なしに訓練を受けるものとする。
 
第11条 本指令の遵守
1 各加盟国は、経営中枢がその国に存在するか否かを問わず、国内に所在する欧州共同体規模企業の事業所の経営者及び欧州共同体規模企業グループの傘下企業の経営者、それらの被用者代表、又は場合によっては被用者が、この指令に規定される義務に従うべきことを確保するものとする。
2 加盟国は、本指令が遵守されない場合に採られるべき適切な措置について規定するものとする。特に加盟国は、本指令から生ずる義務が実施されるように、適切な行政的又は司法的手続が適用されることを確保するものとする。
3 加盟国が第8条を適用する場合、経営中枢が同条に従い機密保持を要求し又は情報を提供しない場合に、被用者代表が行うことができる行政的又は司法的な訴えの手続に関する規定を置くものとする。
 かかる手続は、問題となる情報の機密性を保護するための手続を含むことができる。
 
第12条 他の欧州共同体規定及び国内規定との関係
1 欧州労使協議会への情報提供及び協議は、それぞれの権限と範囲及び第1条第3項に規定する原則に十分配慮しつつ、国内の被用者代表機関への情報提供及び協議と連携するものとする。
2 欧州労使協議会と国内被用者代表機関への情報提供及び協議の連携の仕組みは、第6条にいう協定により定めるものとする。同協定は被用者への情報提供及び協議に関する国内法及び/又は慣行の規定を妨げない。
3 協定によりかかる仕組みが定められない場合には、加盟国は、意思決定が作業編成又は契約関係に甚大な影響を与えると見込まれる場合には国内被用者代表機関とともに欧州労使協議会にも情報提供及び協議の手続が行われるよう確保するものとする。
4 本指令は指令2002/14/EC(一般労使協議指令)の情報提供及び協議の手続、指令98/59/EC(集団整理解雇指令)第2条及び指令2001/23/EC(企業譲渡指令)第7条の特定の手続を妨げない事会指令(77/187/EEC)に従って講じられる措置に抵触しない範囲で適用されるものとする。
5 本指令の実施は、各加盟国で既に行われている状況との関係で、またそれが適用される分野の労働者の一般的保護水準との関係で、いかなる後退にも十分な根拠とはならないものとする。
 
第13条 適応
 欧州共同体規模企業又は欧州共同体規模企業グループの構造が著しく変化し、有効な協定によって定められた規定が存在しないか、又は2以上の適用しうる協定の関係規定の間で矛盾が生じている場合には、経営中枢は自らの発意によって、又は2以上の異なる加盟国の2以上の企業又は事業所の100人以上の被用者又はその代表からの書面による要求によって、第5条にいう交渉を開始するものとする。
 既存の欧州労使協議会又は各欧州労使協議会の3名以上の構成員は、第5条第2項に従い選出又は指名された構成員に加えて、特別交渉組織の構成員となるものとする。
 交渉期間中、既存の欧州労使協議会は欧州労使協議会の構成員と経営中枢の間で合意により適応された仕組みにより運営を継続するものとする。
 
第14条 既存の協定
1 第13条に抵触しない限り、次に掲げる欧州共同体規模企業及び欧州共同体規模企業グループには、本指令から生じる義務は適用されないものとする。
(a) 指令94/74/EC(旧欧州労使協議会指令)第13条第1項又は指令97/74/EC(旧欧州労使協議会指令をイギリスに適用拡大する指令)第3条第1項に基づき、全ての被用者を対象とする国境を超える被用者への情報提供及び協議について定める協定が締結されているか、又はかかる協定が企業若しくは企業グループの構造変化のために修正されているか、
又は、
(b) 指令94/74/EC(旧欧州労使協議会指令)第6条に基づき締結された協定が、2009年6月5日から2011年6月5日の間に署名又は改定された場合。
 協定が署名又は改定されたときに適用される国内法は第1文第(b)号にいう企業又は企業グループに引き続き適用されるものとする。
2 第1項にいう協定の期間満了の場合には、当該協定の当事者は共同して当該協定を更新又は改定することができる。更新又は改定がなされない場合には、本指令の規定が適用されるものとする。
 
第15条 報告
 2016年6月5日までに、欧州委員会は欧州議会、閣僚理事会及び経済社会委員会に対し、本指令の施行に関して、必要であれば適当な提案を付して、報告するものとする。
 
第16条 国内法転換
1 加盟国は、2011年6月5日までに、第1条第2項、第3項及び第4項、第2条第1項第(f)号及び第(g)号、第3条第4項、第4条第4項、第5条第2項第(b)号及び第(c)号、第5条第4項、第6条第2項第(b)号、第(c)号、第(e)号及び第(g)号、第10条、第12条、第13条及び第14条並びに、附則Ⅰ第1項第(a)号、第(c)号及び第(d)号、第2項及び第3項を遵守するのに必要な法律、規則又は行政規定を発効させるか、又は労使団体が同日までに協約の手段によって必要な規定を導入するように確保するものとし、この場合加盟国は本指令により課せられた結果をあらゆるときに保証するよう必要なあらゆる措置をとるよう義務づけられるものとする。
 加盟国はこれらの規定を採択するとき、本指令への言及を含めるか又は官報掲載時にかかる言及を附記するものとする。これにはまた、既存の法律、規則及び行政規定における本指令によって廃止された指令への言及が本指令への言及として解釈される旨の宣言を含めるものとする。加盟国はかかる言及がいかになされ宣言がいかになされるかを決定するものとする。
2 加盟国は欧州委員会に対し、本指令の対象分野で採択した国内法の主要な規定の文言を通知するものとする。
 
第17条 廃止
 附則Ⅱ第A部に列記する指令によって改正された指令94/45/EC(旧欧州労使協議会指令)は廃止され、2011年6月5日に効力を失い、附則Ⅱ第B部に定める指令の国内法転換期源に関する加盟国の義務を妨げない。
 廃止された指令への言及は本指令への言及と解釈されるものとし、附則Ⅲの対応表に従って読まれるものとする。
 
第18条 発効
 本指令は欧州連合官報への掲載の20日後に効力を発する。
 第1条第1項、第5項、第6項及び第7項、第2条第1項第(a)号から第(e)号まで、第(h)号及び第(i)号、第2条第2項、第3条第1項、第2項、第3項、第5項、第6項及び第7項、第4条第1項、第2項及び第3項、第5条第1項、第3項、第5項及び第6項、第5条第2項第(a)号、第6条第1項、第6条第2項第(a)号、第(d)号及び第(f)号、第6条第3項、第4項、第5項、第7条、第8条、第9条及び第11条、並びに附則Ⅰ第1項第(b)号、第(e)号及び第(f)号、第4項、第5項及び第6項は、2011年6月6日から適用する。
 
第19条 名宛人
 本指令は加盟国に宛てられる。
 
附則Ⅰ (第7条にいう)補完的要件
 
1 第1条第1項に定める目的を達成するため、かつ第7条第1項に定める場合において、欧州労使協議会の設置、構成及び権限は次の基準に従うものとする。
(a) 欧州労使協議会の権限は第1条第3項に従って決定されるものとする。
 欧州労使協議会への情報提供は、とりわけ欧州共同体規模企業又は欧州共同体規模企業グループの構造的、経済的、財務的状況、事業、生産及び販売の予測に関するものとする。欧州労使協議会への情報提供及び協議は、とりわけ雇用、投資の状況及びその予測、組織の実質的変更、新たな作業方法及び生産過程の導入、生産の移転、企業、事業所又はその重要な一部の合併、縮小、閉鎖、並びに集団整理解雇に関するものとする。
 協議は、被用者代表が経営中枢と会合し、その表明したいかなる意見に対しても回答とその回答の理由を得られるような方法で遂行されるものとする。
(b) 欧州労使協議会は、被用者代表又はそのような代表がいない場合には被用者全体により選出又は指名された、欧州共同体規模企業又は欧州共同体規模企業グループの被用者により構成されるものとする。
 欧州労使協議会の構成員の選出又は指名は、国内法及び/又は慣行に従って実施されるものとする。
(c) 欧州労使協議会の構成員は、欧州共同体規模企業又は欧州共同体規模企業グループによって各加盟国において雇用されている被用者数に応じて選出又は指名され、全加盟国で雇用される被用者数の10%又はその端数に達する各加盟国ごとに雇用される被用者数の割合に応じて1人ずつ配分されるものとする。
(d) その活動を調整することができるように、欧州労使協議会は、その構成員の中から5名以内で構成される特別委員会を選出するものとし、その構成員は定期的に活動することができるような条件を享受しなければならない。する。
 欧州労使協議会は自らの手続規則を定めるものとする。
(e) 経営中枢及び他のいかなる適当なレベルの経営者も、欧州労使協議会の構成について通知を受けるものとする。
(f) 欧州労使協議会が設置されてから4年後に、同協議会は第6条にいう協定を締結するための交渉を開始するか、又は本附則に従って採択された補完的要件の適用を継続するかについて検討するものとする。
 第6条に従い協定の交渉を開始する決定が行われた場合、第6条及び第7条を準用するものとする。この場合において「特別交渉組織」とあるのは「欧州労使協議会」と読み替えるものとする。
2 欧州労使協議会は、欧州共同体規模企業又は欧州共同体規模企業グループの事業の進展と見通しに関し、経営中枢により作成された報告書をもとに情報提供及び協議を受けるため、年に一回、経営中枢と会合を持つ権利を有するものとする。子会社や事業所の経営者は、この会合について通知を受ける。
3 特に再配置、事業所又は企業の閉鎖、集団整理解雇のように被用者の利益に重大な影響を与える例外的な状況又は決定の場合には、特別委員会又はそのような委員会が存在しない場合には欧州労使協議会が、情報提供を受ける権利を有するものとする。特別委員会や欧州労使協議会は、その要求により、欧州共同体規模企業又は欧州共同体規模企業グループの経営中枢又はその措置を決定する権限のあるより適切なレベルの経営者と、情報提供及び協議を受けるために会合を持つ権利を有するものとする。
 問題となっている状況又は決定に直接関係がある事業所及び/又は企業から選出又は指名された欧州労使協議会の構成員もまた、特別委員会とともに会合に参加する権利を有するものとする。
 この情報提供及び協議のための会合は、欧州共同体規模企業又は欧州共同体規模企業グループの経営中枢又はより適切なレベルの経営者により作成された報告を基に、可能な限り早急に開催されるものとする。この報告に対しては、会合終了時又は合理的期間内に意見を提出することができる。
 この会合は、経営中枢の経営権に影響を与えるものではない。
 上記状況について規定される情報提供及び協議の手続は、第1条第2項及び第8条を妨げることなく遂行されるものとする。
4 加盟国は、情報提供及び協議のための会合の議事規則を定めることができる。
 欧州労使協議会又は特別委員会、必要な場合には第3項第2文により拡大されたものは、経営中枢との会合の前に、関係する経営者が出席しない場で会合を持つ権利を有するものとする。
5 欧州労使協議会又は特別委員会は、その任務の遂行に必要な範囲内で、自らが選択した専門家の援助を受けることができる。
6 欧州労使協議会の運営費用は、経営中枢が負担するものとする。
 関係する経営中枢は、欧州労使協議会の構成員が適切に任務を遂行できるように、これら構成員に対し、財政的及び物質的資源を提供するものとする。
 特に、会議の設営及び通訳の提供に要する費用並びに欧州労使協議会及びその特別委員会の構成員の宿泊費及び旅費は、別に合意がある場合を除き、経営中枢が負担するものとする。
 これら原則に従い、加盟国は欧州労使協議会の運営に関する財政上の規則を定めることができる。加盟国は特に専門家については1名のみの負担に限定することができる。

 

 

 

「フリーランスまるごと労災保険の特別加入」@『労基旬報』2024年1月25日

21 『労基旬報』2024年1月25日に「フリーランスまるごと労災保険の特別加入」を寄稿しました。

 昨年末の12月22日、労働政策審議会の労災保険部会で、労災保険法施行規則の改正案が承認されました。これは、これまで個別業務ごとに少しずつ増やされてきていたフリーランスの労災保険への特別加入を、一気にフリーランス一般に拡大するもので、そのインパクトはかなり大きなものがあると思われます。今回はこの経緯を簡単に振り返っておきましょう。
 そもそも労災保険制度は、労働基準法適用労働者の労働災害に対する保護を目的とした制度であり、労働者でない中小事業主や自営業者は対象としていません。しかしながら、これら非雇用労働者の中には業務の実態から見て労働者に準じて保護するにふさわしい者が存在することから、1965年労災保険法改正により一定範囲について特に労災保険への加入を認めることとされました。しかしながら、実はそれ以前から通達による擬制適用という形で特殊な取扱いが認められてきていたのです。まず1947年11月、土木建築事業に従事する労働者の中には、いわゆる一人親方として、その実態が一般労働者と変わらない者があることから、任意組合を組織させ、その組合を便宜上使用者として保険加入させたのが始まりです(基発第285号)。これがその後次第に拡大されていきました。やがて、1963年10月の労災問題懇談会報告において「自営業主、家内労働者への適用を考慮すべき」との意見が出され、これを受けた労災保険審議会は1964年7月、「一人親方、小規模事業の事業主及びその家族従業者その他労働者に準ずる者であって、労働大臣の定める者については、原則として団体加入することを条件として、特別加入することを認める」と答申しました。労働省は翌1965年3月法案を提出し、6月には成立に至りました。
 これにより、中小規模事業主とその家族従業者、一人親方とその家族従業者及び特定作業従事者について、特別加入制度が設けられました。中小事業主に特別加入を認めたのは、事業主が労働者とともに労働者と同様に働くことが多く、労働者に準じて保護するにふさわしいことに加えて、特別加入を通じて中小企業の労災保険への加入を促進しようという政策意図が働いていました。一人親方については、土木建築事業のほか、自動車運送(個人タクシーやトラック)、漁業が認められました。また特定作業従事者としては、危険な農機具を使用する自営農業者が指定されました。その後、1970年に家内労働法が制定され、危険性の高い作業を行う家内労働者等が特定作業従事者に指定されました。具体的には金属加工、研磨作業、履物製造加工、陶磁器製造、動力織機等です。また、1976年には一人親方に林業と配置薬販売業が加えられ、1980年には廃品回収業も加えられました。
 一方、2017年3月の働き方改革実行計画の策定以降、雇用類似の働き方に対する保護の在り方が議論されるようになります。その具体的な動きは後述しますが、その一環として労災保険の特別加入を徐々に拡大するという政策が採られていくことになります。すなわち、2020年6月から労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会で順次審議が行われ、翌2021年1月には芸能従事者、アニメーション制作従事者及び柔道整復師、同年2月には高年齢者雇用安定法改正によって導入された創業支援等措置による就業者、さらに同年8月にはプラットフォーム型フードデリバリー等の配達員(省令上は「原動機付自転車又は自転車を使用して行う貨物の運送の事業」とやや広い規定ぶりです。)、フリーランスのIT技術者が追加されました。その後も、2022年4月から按摩マッサージ指圧師、鍼師及び灸師、同年7月から歯科技工士と、続々追加されてきたのです。
 ここで、労災保険からいったん離れて近年のフリーランス保護法政策の動きを概観しておきます。厚生労働省は働き方改革実行計画を受けて、雇用類似の働き方検討会で政策の方向性を議論し、さらに雇用類似の働き方論点整理検討会で一定の提案をする寸前までいきましたが、コロナ禍の2020年になると政府全体の流れが公正取引委員会主導で進められる方向に向かいました。公正取引委員会は既に2018年2月に人材と競争政策に関する検討会報告を取りまとめ、発注者の優越的地位の濫用という観点からこの問題に取り組んでいくことを明らかにしていました。その後2020年6月の全世代型社会保障検討会第2次中間報告では、フリーランスとの取引について、独占禁止法や下請代金支払遅延等防止法の適用に関する考え方を整理し、ガイドライン等により明確にすること等を、内閣官房、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省連名で年度内に策定するガイドラインに盛り込むと明記され、これは翌7月の成長戦略実行計画にも盛り込まれました。こうして翌2021年3月には、公正取引委員会、経済産業省、厚生労働省の連名でフリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドラインが策定されました。そこでは、公正取引委員会による独占禁止法(優越的地位の濫用)・下請代金支払遅延等防止法の適用に関する考え方を整理しています。
 2021年10月に就任した岸田文雄首相は、就任とともに直ちに「新しい資本主義実現会議」を立ち上げ、翌11月には「未来を切り拓く『新しい資本主義』とその起動に向けて」と題する緊急提言をとりまとめました。その中では、「新たなフリーランス保護法制の立法」という項目が立てられ、「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するため、事業者がフリーランスと契約する際の、契約の明確化や禁止行為の明定など、フリーランス保護のための新法を早期に国会に提出する。あわせて、公正取引委員会の執行体制を整備する。」と、新たなフリーランス保護法制の立法が予告されていました。翌2022年6月の「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」においても、フリーランスの取引適正化のための法制度について検討し、早期に国会に提出するとしていました。こうして同年9月、内閣官房が「フリーランスに係る取引適正化のための法制度の方向性」についてパブリックコメントを開始しました。この法案は2022年秋の臨時国会に法案を提出する予定でしたが、自民党内で反発もあり、政治状況等の影響で提出に至りませんでした。
 翌2023年2月になって、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案」という名称で法案が国会に提出され、同年4月に特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律が成立しました。この法律において、「業務委託」とは、事業者がその事業のために他の事業者に物品の製造、情報成果物の作成又は役務の提供を委託することであり、「特定受託事業者」とは、業務委託の相手方である事業者であって従業員を使用しないものと定義されています。
 規定は大きく取引の適正化に係る部分と就業環境の整備に係る部分からなり、前者は公正取引委員会と中小企業庁、後者は厚生労働省の所管となっています。前者の規定としては、特定受託事業者の給付の内容、報酬の額等の書面又は電磁的方法による明示義務、特定受託事業者の給付を受領した日から60日以内の報酬支払義務、禁止行為として① 特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく受領拒否、② 特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく報酬減額、③ 特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく返品、④ 通常相場に比べ著しく低い報酬の額、⑤ 正当な理由なく自己の指定する物の購入・役務の利用強制、⑥ 自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること、⑦ 特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく内容を変更させ、又はやり直させることが規定されています。
 後者の規定としては、①広告等により募集情報を提供するときは虚偽表示等をしてはならず、正確かつ最新の内容に保たなければならないこと、②特定受託事業者が育児介護等と両立して継続的業務委託に係る業務を行えるよう、申出に応じて必要な配慮をしなければならないこと、③特定受託業務従事者に対するハラスメント行為に係る相談対応等必要な体制整備等の措置を講じなければならないこと、④継続的業務委託を中途解除する場合等には、原則として、中途解除日等の30日前までに特定受託事業者に対し予告しなければならないことが規定されています。
 本法は施行後1年半までに施行されることになっており、おそらく今年の秋に施行されるでしょう。それに向けて、現在公正取引委員会と厚生労働省でそれぞれの所管部分についての省令、告示等を制定するための検討が進められています。
 さて、このフリーランス新法が国会で採択される際にその附帯決議の中で、労災保険の特別加入の拡大が求められました。
十六 労災保険の特別加入制度について、希望するすべての特定受託事業者が加入できるよう対象範囲を拡大する・・・こと。
 こうして、これまでの個別業務ごとの拡大からフリーランス一般(「希望するすべての特定受託事業者」)への大幅拡大に向けて舵が切られたのです。
 厚生労働省は2023年10月4日に労働政策審議会労災保険部会で特別加入制度の対象範囲の拡大について審議を開始しましたが、そのときに提示された事務局案では、「フリーランス法における特定受託事業者が業務委託事業者から業務委託を受けて行う事業(以下「特定受託業務」という。)を労災保険の特別加入の対象とすることについてどう考えるか」とされていました。概念が込み入っているのでわかりやすく整理すると、フリーランス(特定受託事業者)は事業者から仕事を請け負うこともあれば、事業者ではない個人(多くの場合消費者)から仕事を請け負うこともあります。フリーランス新法はあくまでも事業者から仕事を請け負う場面(いわゆる「B to B]」)にのみ適用されるので、消費者から仕事を請け負う場面(いわゆる「B to C」)には適用されません。これは、フリーランスの保護のためにその取引相手方である委託者に様々な義務を課す法律であるからであって、そのこと自体は当然です。
 しかしながら、フリーランスが災害に遭う危険性は、B to BであれB to Cであれ変わりがなく、しかも労災保険の特別加入というのは労災保険本体と異なり特別加入者自身が保険料を負担するのですから、取引相手方に負担をかけるわけではないので、労働側の富高委員らからこの点に疑問が呈せられました。これを受けて次の11月20日の部会では、事務局案が「フリーランス法に規定する特定受託事業者が、業務委託事業者から業務委託を受けて行う業務(特定受託事業者が、業務委託事業者以外の者から同種の業務について物品の製造、情報成果物の作成又は役務の提供の委託を受けて行う業務を含む。)」と修正され、B to Cの場合も対象に含められることとなりました。また労災保険料率は一律に1000分の3とされ、この内容がほぼ了承されました。こうして、12月22日の部会に労災保険法施行規則の改正案要綱が諮問され、妥当との答申を得ました。今後改正省令が官報に掲載され、フリーランス新法の施行と同時に施行されることになります。
 さて、労災保険の特別加入は、特別加入団体を通じて行うこととされており、今回の特定受託事業者の特別加入団体については、次のような要件を追加することとされています。
① 特別加入団体になろうとする者(その母体となる団体を含む。)が、特定の業種に関わらないフリーランス全般の支援のための活動の実績(活動期間が1年以上、100名以上の会員等がいること)を有していること。
② 全国を単位として特別加入事業を実施すること。その際には、都道府県ごとに加入希望者が訪問可能な事務所を設けること。
③ 加入者等に対し、加入、脱退、災害発生時の労災給付請求等の各種支援を行うこと。
④ 加入者に、適切に災害防止のための教育を行い、その結果を厚生労働省に報告すること。
 11月の部会でヒアリングを受けている一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会が想定されているのかもしれません。

 

 

 

2024年1月23日 (火)

非ジョブ型雇用社会における企画業務型裁量労働制@WEB労政時報

WEB労政時報に「非ジョブ型雇用社会における企画業務型裁量労働制」を寄稿しました。

https://www.rosei.jp/readers/article/86453

 2023年3月の労働基準法施行規則の改正により裁量労働制の規制強化が行われ、目前の2024年4月から施行されますが、そもそも裁量労働制とはいかなる根拠のあるものなのでしょうか。専門業務型裁量労働制は、いろいろ議論はあるとはいえ、対象労働者層が特定の専門職という社会的実体にリンクされているからまだいいのですが、企画業務型裁量労働制のほうにそうした明確な職種の限定はなく、制度設計によっては一般ホワイトカラー労働者すべてがその対象になり得るだけに、「企画業務」とはそもそも一体何なのか?という問題を、改めて考えてみる値打ちがあります。・・・・・

 

 

 

2024年1月19日 (金)

『2024年人事の課題23今こそ“働きたい”職場づくり』

90fc6683a3243ab8ec898e41aaad48de 産労総合研究所編『2024年人事の課題23 今こそ“働きたい”職場づくり』(経営書院)をお送りいただきました。

https://www.e-sanro.net/books/books_jinji/personnel_system/86326-372-7.html

人事の担当者は、いま多くの課題を抱えています。本書は、そうした課題のうち、2024年に特に取り組むべきもの23をピックアップしました。さらに、それぞれの課題のなかでも特にここを解決しなくてはという重要な問題を設定し、専門家に実際的な解説をいただきました。解説は、知っておくべきキーワード解説、実務の進め方リスト、ミニQ&Aという構成となっています。これからの時代の新しい職場づくりのためにぜひご活用ください。

というか、実は私もちょびっとだけ登場しています。

第Ⅰ章 23の人事課題:キーワード解説と実務対応のためのチェックリスト、ミニQ&A
1.新型コロナ後遺症にどう対応する?
2.大幅な春闘賃上げは継続する?
3.最低賃金引上げの対応、どのように準備しておけばよい?
4.新卒初任給、どのように引き上げていくとよい?
5.日本のインターンシップは、どう変わろうとしている?
6.人事にとっての各種情報開示の意義は?
7.リスキリングに、人事担当者はどう取り組めばよい?
8.労働条件の明示義務の改正で何が変わる?
9.今後の無期転換ルールへの対応には何が必要?
10.「年収の壁」を含めた年金問題はどのように検討されている?
11. 外国人雇用はどう変わる?
12. 障害者雇用はどうすればうまくいく?
13.定年後の処遇、もっと改める必要がある?
14. 退職社員に業務委託契約でスムーズに働いてもらうには?
15.iDeCo と NISA の改正、何を知っておけばよい?
16.2024 年問題とは?
17.裁量労働制はどう変わる?
18.テレワークの運用見直し、ポイントはどこ?
19. 男性の育休取得がスムーズにいくよう見直すべきことは?
20. 介護離職を防止し、仕事との両立を支援するには?
21.LGBTQ に配慮した職場づくりは必要?
22. カスハラ、パワハラによるメンタル不調を どう防ぐ?
23. いま日本社会における労働組合の役割は?
基本課題 人事部に期待される「ビジネスと人権」への取組み
第Ⅱ章 人事部へのメッセージ
吉田 寿氏(HCプロデュース シニアビジネスプロデューサー)
西久保浩二氏(山梨大学 教授)
木下潮音氏(第一芙蓉法律事務所 弁護士)
藤村博之氏(労働政策研究・研修機構 理事長)
第Ⅲ章 資料 

どこに出てくるかというと、これらテーマ別の論述のところじゃなくって、最後の資料のところの「2023年の重要労働判例一覧」という見開き2ページくらいの部分です。

一体どんな判例を取り上げているのか興味のある方は是非本屋の店頭でめくってみてください。

 

 

経団連が労使協創協議制(選択制)の創設を提言

さて、『経営労働政策特別委員会報告』とおなじ1月16日付で、経団連は「労使自治を軸とした労働法制に関する提言」というのを発表しておりました。

労使自治を軸とした労働法制に関する提言

これが、読めば読むほど興味深い記述に満ち満ちており、どこまで本気なのか突っ込みたくなる文書になっています。

大きな方向性としては、労働時間法制の規制緩和を求めるものであって、その点に変わりはないのですが、そのための手法として、次の二つを打ち出しているのです。

① 【過半数労働組合がある企業対象】労働時間規制のデロゲーション#6の範囲拡大 

② 【過半数労働組合がない企業対象】労使協創協議制(選択制)の創設

これまでの議論では過半数組合と過半数代表者を同列においてデロゲーションの要件とするものだったのですが、ここにきて労働者の自発的結社である労働組合と、そうでない過半数代表者を分けて、前者のみをデロゲーションにかからしめるという発想が(おそらく経営側の文書としては初めて)登場しています。

これは、労働法の根本哲学からすると、労働者の意思を反映していない過半数代表者による規制緩和に否定的な労働組合に対し、自らの権限の範囲内については責任を持てよ、という話なのであり、筋論としては「労働組合なんて信用できないからやめさせろ」と労働組合自身が声高に主張することは自己否定になる以上、変な反応の仕方をすることができないようなうまい球になっています。

しかしながら逆に言うと、これは組織率16%という現状において労働組合未組織の大部分の企業ではデロゲーションはできないということであり、とりわけ組織率1%未満の100人未満の中小零細企業では、圧倒的大部分の企業でデロゲーションは不可能になり、商工会議所や中央会からは「経団連さんはそれでいいかも知らんが、うちは困るんや」と苦情が出てきそうではあります。

そこで、というか、経団連が投げ込んでくるもう一つの球が、労使協創協議制(選択制)の創設というやつです。

法制面では、過半数組合がない企業の労使における意見集約や協議を促す一助として、新しい集団的労使交渉の場を選択的に設けることができるよう、「労使協創協議制」の創設を検討することが望まれる。

これは一体何なのか、というと、

具体的内容は今後さらなる検討が必要であるが、過半数労働組合がない企業に限り、有期雇用等労働者も含め雇用している全ての労働者の中から民主的な手続きにより複数人の代表を選出、行政機関による認証を取得、必要十分な情報提供と定期的な協議を実施、活動に必要な範囲での便宜供与を行うなどを条件に、例えば、同一労働同一賃金法制対応のため有期雇用等労働者の労働条件を改善するなど、労働者代表者と会社代表者との間で個々の労働者を規律する契約を締結する権限を付与することが考えられる#9。また、より厳格な条件の下、就業規則の合理性推定や労働時間制度のデロゲーションを認めることも検討対象になりうる。

有期雇用等労働者も含め雇用している全ての労働者の意見を丁寧に集約し労使で十分な協議を行うためには、そうした環境が整っている労使であることが重要である。労使自治の実効性を担保する観点から、同制度の導入は個別労使の判断に基づく選択制とすべきである。

ちょっと待って、これって、もしかして、今から10年以上も前にJILPTの研究会が公表した「様々な雇用形態にある者を含む労働者全体の意見集約のための集団的労使関係法制に関する研究会報告書」の、放置プレイのあとのよみがえりでしょうか。

【記者発表】 「様々な雇用形態にある者を含む労働者全体の意見集約のための集団的労使関係法制に関する研究会」報告書

様々な雇用形態にある者を含む労働者全体の 意見集約のための集団的労使関係法制に関する研究会 報告書

しかも経団連提言の興味深いところは、「過半数労働組合がない企業に限り」という要件の付け方が、連合の「労働者代表法案要綱骨子(案)」とも通底しているところです。

連合「労働者代表法案要綱骨子」(案)

使用者は、常時 10 人以上の労働者を使用する事業場について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては、労働者代表委員会を設置しなければならない。

これが今後どういう風に動いていくのかいかないのか、注目していきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

2024年1月18日 (木)

経団連『2024年版経労委報告』 on メンバーシップ型雇用

01161439_65a616882fbab毎年恒例の春闘の時期が迫るとともに、経団連から毎年恒例の『経営労働政策特別委員会報告』2024年版が送られてきました。

https://www.keidanren.or.jp/policy/2024/004.html

はじめに
第Ⅰ部 「構造的な賃金引上げ」の実現に不可欠な生産性の改善・向上
「働き方改革」と「DE&I」のさらなる推進による生産性の改善・向上
「円滑な労働移動」の推進による生産性の改善・向上
人口減少下における労働力問題への対応
生産性の改善・向上による地方経済の活性化
法定最低賃金に関する考え方

■ TOPICS
中小企業における生産性の改善・向上の事例
障害者雇用の現状と今後の動向
就業調整(年収の壁)に関する動向
人材投資額・OJT実施率の国際比較
採用活動に関する日程ルールの歴史と現状
日本型雇用システム(メンバーシップ型雇用)に関する考察
ジョブ型雇用の現状と検討のポイント
雇用保険財政
労働力問題の現状
AIの活用状況と課題
フリーランスの現状と保護に関する動向
職場における安全衛生対策

第Ⅱ部 2024年春季労使交渉・協議における経営側の基本スタンス
2023年春季労使交渉・協議の総括
わが国企業を取り巻く経営環境
連合「2024春季生活闘争方針」への見解
2024年春季労使交渉・協議における経営側の基本スタンス

■ TOPICS
物価上昇局面における賃金引上げの動向
実質賃金に関する考察
中小企業の賃金引上げに関する現状と課題
労働分配率の動向
内部留保のあり方
配偶者手当の現状と課題
同一労働同一賃金法制と有期雇用等労働者の待遇改善
日本の労使関係

当然世間の関心は「構造的な賃上げ」に集中するわけですが、一方で4年前の2020年経労委報告で打ち出され、その後世間に「ジョブ型」という言葉があふれかえったことを考えると、ジョブ型、メンバーシップ型について今年の経労委報告が何を言っているかというのも興味を惹かれるところです。

今年はなんと、TOPICSにおいて「ジョブ型雇用」の話の前にわざわざ「日本型雇用システム(メンバーシップ型雇用)に関する考察」というのが差し込まれています。そこでは、まず最初のパラグラフで「日本型雇用システムの特徴とメリット」と題して、メンバーシップ型の良さが縷々書かれていて、4年前の経労委報告が火をつけたジョブ型礼賛論に水をぶっかけようという気持ちが伝わってきます。

・・・「新卒一括採用」は、高校や大学等を新たに卒業する生徒・学生を企業に属するメンバー(社員)として一定時期にまとめて採用する手法である。企業にとっては、計画的で安定的な採用が実施しやすいほか、企業が学生等に毎年多くの就職機会を提供していることは、日本の若年者の失業率が国際的に低い要因の一つと考えられる。

 新卒一括採用した新入社員に対し、企業は、OJTを中心とする「企業内人材育成」の下、職務を限定せずに移動等を通じて自社内の様々な職務を経験させ、中長期的な視点で自社に適した社員への育成している。この結果、多くの社員が多様な職能を習得するとともに、自社の事業活動に対する多面的な理解が進み、業務改善や新技術導入時の協力が得られやすいことなどが、日本企業の強みや競争力の源泉の一因とされる。

 また、定年までの勤続を前提とした「長期・終身雇用」の下で、年齢や勤続年数の上昇に伴い職務遂行能力(職能)も向上するとの考えに基づいて毎年上昇する「年功型賃金」により、社員は人生設計を立てやすく、雇用と経済面での一定の安心感となって、社員の高い定着率とロイヤリティの実現に寄与している面がある。・・・・

これはほとんどテキスト的な記述ではありますが、まずは前提としてメンバーシップ型雇用にはメリットがあるんだよということを確認したうえで、その顕在化してきた問題点を解決するために「ジョブ型」を持ち出しているんであって、日本型雇用の全面否定ではないんだよということを、噛んで含めるような調子で縷々述べていますね。

 

 

 

2024年1月16日 (火)

雇用保険特定受給資格者 20万人弱@『労務事情』

B20240115 『労務事情』2024年1月1/15日合併号の「数字から読む 日本の雇用」に「雇用保険特定受給資格者 20万人弱」を寄稿しました。

https://www.e-sanro.net/magazine_jinji/romujijo/b20240115.html

解雇の金銭解決制度の議論は20年以上議論が続けられて未だに道筋が見えてきませんが、そもそもいま現在日本で解雇というのは一体何件くらい発生しているのでしょうか。・・・・・

 

 

2024年1月15日 (月)

土田道夫『労働法概説 <第5版>』

114e300e7a3a49768e5bfad336a085e6 土田道夫さんのテキスト『労働法概説 <第5版>』(弘文堂)をお送りいただきました。

https://www.koubundou.co.jp/book/b10040190.html

 労働法の教科書として定評ある本書の待望の改訂版です。
 いろいろな労働法の問題となるケースを題材に具体的な法制度の基本から応用まで読者を誘います。
 新型コロナ危機によって雇用社会に大きな変革をもたらしたテレワークやジョブ型雇用、労働者性としてのフリーランスの働き方、トランスジェンダー雇用、外国人雇用、リ・スキリング等の、時々刻々と変化を遂げている労働法上の問題に対応し、最新の重要判例を盛り込んだ、現在の労働法を概説した最新版です。

第4版が2019年でしたから5年ぶりの改訂ということになり、この間のいろんなネタが盛り込まれています。

そのうち「ジョブ型雇用」については、解雇のところと配転のところでかなり詳しく取り上げています。

たとえば、p189では、こういう風に論じられています。

・・・配転との関係では、ジョブ型社員は労働契約上、職務記述書(Job Description)等によって職務内容(労働義務内容)を限定されていることから、当該職務・職種以外の職務・職種への一方的配転命令は認められず、本人同意が必要となる。それにもかかわらず、ジョブ型社員の配転が必須となる場合(企業の組織再編によってジョブ型社員の職務がなくなる一方、その職務・職種が契約上特定されているため配転を命ずることができないケース)は、前記の通り、使用者がジョブ型社員の同意を得るよう努力することを前提に、同社員がなお同意しない場合には、変更解約告知を認めることで労使間の利益調整を実現すべきであろう。。・・・

 

 

 

 

 

2024年1月13日 (土)

EUプラットフォーム指令案をめぐる暗闘の舞台裏

1702413973264_20231212_ep161228a_aha_009 昨年末から、EUプラットフォーム指令案をめぐって二転三転の事態となっていますが、昨日付のEurActivは、公開されていない理事会資料を駆使して、現在進行しつつある事態の舞台裏を垣間見せてくれています。

https://www.euractiv.com/section/gig-economy/news/france-leads-charge-to-rewrite-platform-workers-rulebook/

Last month, a coalition of EU countries blocked the provisional agreement on the Platform Workers Directive. But while the Belgian EU Council presidency wants to use the political deal as the starting point for future discussion, Paris wants a more comprehensive file reshaping.

先月、連帯したEU諸国はプラットフォーム労働指令の暫定合意をブロックした。しかしEU理事会議長国のベルギーはこの政治的ディールを将来の議論の出発点として使いたいと望んでいるが、パリはより包括的な見直しを望んでいる。

フランスのマクロン政権は、プラットフォーム労働者が安易に労働者とみなされてしまうような指令には反対だということのようです。

消息筋から入手したらしい1月10日付のフランス政府のコメントによると、

The French actively reject this. “The threshold of 2/5 for triggering the presumption does not seem to French authorities to constitute an element of security enabling genuine self-employed to remain self-employed,” the document reads.

フランスは積極的にこれを拒否する。「労働者の推定をもたらす5要件のうちの2要件充足という基準は、フランス当局には純粋の自営業者を自営業者のままに維持することを可能にする保障の要素を構成するようには見えない」と文書は述べる。

It also criticises the very wording of each criterion as set out in the provisional agreement – a Parliament ask – as deemed to be so broad some would “be likely to be systematically met”, to the detriment of platform work who actively want and choose to remain self-employed.

同文書はまた、暫定合意に示された各基準の文言自体が、あまりにも広範で「体系的に合致しがち」であるため、積極的に自営業者であり続けることを望み選択しているプラットフォーム労働者にとって有害だと批判する。

というわけで、ベルギー政府はスペイン政府の線に沿って意見をまとめたいところのようですが、フランスのマクロン政権は断固それを拒否し続けるつもりのようで、こうなると当分指令の採択は先送りになりそうですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地方公務員は労働基準法第39条第7項が適用除外となっている理由

F9fmcqd_400x400 焦げすーもさんが、トリビアのように見えてなかなかディープな問題提起をしています。

おっちゃん「地方公務員の1/4くらいが年休5日/年取れてないという調査知っとるかい?」 ワイ「知らんけど、実感とズレるなあ。」 おっちゃん「地方公務員の大部分が労基署の調査対象外やけど、そもそも、年休取得が義務化されてない。」 ワイ「嘘やん、地方公務員法第58条第3項・・・ほんまや。」

地方公務員法第58条第3項(他の法律の適用除外等) “労働基準法第二条、(中略)第三十九条第六項から第八項まで、(中略) の規定並びにこれらの規定に基づく命令の規定は、職員に関して適用しない。” 改正労基法の年次有休休暇の取得義務の箇所がすっぽりと適用除外に。 どうしてこうなった。。

おっちゃんのこの問いは、なぜ地方公務員の労働基準が守られないかという根源的なものであった。 回答としては、 1.民間と比較して、監督機関が機能していない 2.罰則を背景としていない(※)ため、管理者が法令遵守する動機づけが弱い(※現業等を除く) 3.人事管理部署が素人集団 といったところか。

あとは、 同規模の民間企業と比較して、管理職のマネジメント意識・能力が低いこと。(エビデンスはない

そもそも地方公務員に労働基準法が原則的には適用されているにもかかわらず、国家公務員と同じように適用除外だと勝手に思い込んでいる人が結構多かったりするんですが、それはまあおいといて。

ていうか、そもそも労働基準法が1947年に制定された時に、ちゃんとこういう規定が設けられており、これは今日に至るまで存在し続けているんですが、公法私法二元論という実定法上に根拠のない思い込みの法理論によって、脳内で勝手に適用除外してしまっている人のなんと多いことか。

(国及び公共団体についての適用)
第百十二条 この法律及びこの法律に基いて発する命令は、国、都道府県、市町村その他これに準ずべきものについても適用あるものとする。

いずれにしても、地方公務員法で労働基準法の一部の規定については適用除外になっているのですが、それは公法私法二元論などとは全く関係がなく、単純に公務員法上は過半数組合又は過半数代表者がないために、それに引っかけた規定が適用除外されているということなんですね。そもそも、労働基準法第2条が先頭に立って適用除外されているのは、民間企業では労使対等かも知らんが、公務員に労使対等なんてないぞ、使用者は国民様や住民様であるぞ、というイデオロギーから来ているのですね。

で、労働基準法が制定された時には、第39条の年次有給休暇の規定はフルに適用されていたのですが、1987年改正で労使協定による計画付与(現在の第6項)が設けられた時に、労使協定というのは地方公務員にはあり得ないからという理由で、この項が適用除外にされたのです。労使協定による変形労働時間制やフレックスタイムや裁量労働制なんかと同じ扱いです。

さて、そういう目で働き方改革で導入された第7項を見ると、どこにも過半数組合又は過半数代表者とか労使協定とかという文字は出てきません。

 使用者は、第一項から第三項までの規定による有給休暇(これらの規定により使用者が与えなければならない有給休暇の日数が十労働日以上である労働者に係るものに限る。以下この項及び次項において同じ。)の日数のうち五日については、基準日(継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日をいう。以下この項において同じ。)から一年以内の期間に、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。ただし、第一項から第三項までの規定による有給休暇を当該有給休暇に係る基準日より前の日から与えることとしたときは、厚生労働省令で定めるところにより、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。

どこをどうみても、使用者に年休を取得させる義務を課しているだけで、これを適用除外する理由はなさそうに見えます。

ところが、この2018年改正時の地方公務員法第58条第3項の改正規定を見ると、それまで労働基準法第39条第6項だけが適用除外であったのが、同条第6項から第8項までが適用除外となっているのですね。いったいこの第8項とは何かというと、

 前項の規定にかかわらず、第五項又は第六項の規定により第一項から第三項までの規定による有給休暇を与えた場合においては、当該与えた有給休暇の日数(当該日数が五日を超える場合には、五日とする。)分については、時季を定めることにより与えることを要しない。

第5項は時季変更権ですが、第6項がまさに1987年改正で導入された労使協定による計画付与で、その場合にはこの第7項が排除されるというわけです。つまり、第7条の適用されるか否かは、第6条によって影響を受けるのであり、それは過半数組合や過半数代表者が関わってくるので、その論理的帰結として、第7条の規定も丸ごと地方公務員には適用除外とした、というまあそういう説明になるわけです。

とはいえ、そういう手続規定の輻輳を理由として、れっきとした実体法的規定を適用除外してしまっていいのか、というのは、それ自体大きな問題であり得るように思います。

本来なら立法の府であるはずの国会で、選良であるはずの国会議員の方々が口々に疑問を呈してもよかったはずだと思いますが、残念ながら国会審議の圧倒的大部分は、裁量労働制のデータが間違っていたことの非難と、高度プロフェッショナル制度というのが如何に危険きわまりないものであるかの糾弾に終始し、誰もこういう問題を提起することはありませんでした。まあ、それも繰り返される光景ではありますが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2024年1月12日 (金)

鈴木誠『職務重視型能力主義』

09176 鈴木誠『職務重視型能力主義 三菱電機における生成・展開・変容』(日本評論社)をお送りいただきました。ありがとうございます。

https://www.nippyo.co.jp/shop/book/9176.html

日本企業における人事処遇制度の形成過程と歴史的展開を、三菱電機の事例に即して明らかにする研究。

鈴木さんは現在長野大学教授を務めていますが、かつて2006年から2016年までJILPTの労使関係部門のアシスタントフェローをしていて、主としては呉学殊さんのもとで労使関係の調査をしていましたが、わたしの労働局あっせん事件の分析にも参加してもらったこともあります。

しかしその頃から鈴木さんの関心は一貫して本書に結実した戦後日本企業の人事労務管理の展開にあり、その頃からほぼ2年に1ぺんの割合で、JIL雑誌に三菱電機の労務管理史の分析を発表していました。

今もそうですが、その頃も労働分野におけるこういう歴史研究ははやらない分野であって、ある人に「そんな研究に何の意味があるのか?」みたいなことを言われたこともあり、「いや、歴史をおろそかにした現状分析なんて空疎なものです」と言ったこともあります。

そうやってこつこつと積み重ねてきた研究成果を一冊にまとめたのが本書で、かなりの部分はかつてJIL雑誌で読んだものですが、大卒ホワイトカラーの話など書き下ろしの部分もいくつかあります。

資料に即して非常に丁寧に分析をしていくのと、次の時代の話の前段に前の時代の話をするためにわりと繰り返しが多いので、読むのがしんどいかも知れませんが、ここまで一社の人事労務管理の歴史を終戦直後から21世紀に至るまでその変遷を丁寧に追いかけた研究というのは他にあんまり例を見ないのではないかと思います。

 序章 課題と方法
1 問題関心
2 研究方法と対象
3 本書の概要

第Ⅰ部 経営民主化のなかの「能力」と「職務」

第1章 戦後型学歴身分制の形成
――1948年身分制度改定
1 はじめに
2 戦前の身分制度の構造
3 戦後に改定された身分制度の構造
4 身分制度改定をめぐる労使交渉
5 考察

第2章 職務重視型人事労務管理の萌芽
――1950年職階制度導入
1 はじめに
2 戦前の出来高給
3 戦後直後期の人事処遇制度
4 職階制導入をめぐる労使交渉
5 結語

第Ⅱ部 職務重視型能力主義の登場

第3章 戦後型学歴身分制から能力主義的人事処遇制度へ
――1968年人事処遇制度改定
1 はじめに
2 学歴身分制を軸とする人事処遇制度の構造
3 1960年代の変化と課題
4 能力主義的人事処遇制度の構造
5 結語

第4章 能力主義下における職務給・能率給
――1968年人事処遇制度改定のもう一つの側面
1 はじめに
2 1968年人事処遇制度改定以前の職階給――能率給的制度
3 1968年人事処遇制度改定後の職階給――能率給的制度から職務給的制度へ
4 考察

第Ⅲ部 苦境に立つ職務重視型能力主義

第5章 「新職能資格制度」と職務重視型能力主義の再編成
――1978年人事処遇制度改定
1 はじめに
2 1978年改定以前の人事処遇制度の構造
3 1970年代の変化と課題
4 1978年改定によって成立した人事処遇制度の構造
5 結語

第6章 処遇をめぐる納得性の担保
――1986年・1993年人事処遇制度改定
1 はじめに
2 1980年代から1990年代にかける変化と課題
3 資格職階給の新設――1986年改定
4 資格職階給の展開――1993年改定
5 結語

第7章 大卒ホワイトカラーの能力主義管理
――1978年人事処遇制度改定のもう一つの側面
1 はじめに
2 1978年改定以前の人事処遇制度の構造
4 1978年改定後の人事処遇制度の構造
5 1981年役職制度改定と資格制度の活用
6 結語

第8章 管理職層における発言機構の整備
――1981年役職制度改定・労働協約改定
1 はじめに
2 1978年人事処遇制度改定・1981年役職制度改定と当時の問題状況
3 組合員範囲とその特徴
4 組合員範囲の見直しに関する労使交渉
5 結語

第Ⅳ部 役割主義の台頭

第9章 管理職層の成果主義と役割等級制度
――1998年職群制度導入
1 はじめに
2 1998年職群制度導入以前の人事処遇制度の構造
3 1990年代後半の変化と課題
4 1998年に導入された職群制度の構造
5 結語

第10章 職務重視型能力主義から役割主義へ
――2004年役割・職務価値制度導入
1 はじめに
2 2004年改定以前の人事処遇制度の構造
3 2000年代の変化と課題
4 2004年に導入された役割・職務価値制度の構造
5 結語

終章 総括と展望
1 総括
2 展望

たいへんざっくり言うと、「年功」→「職務」→「職務遂行能力」という通説的理解に対して、一貫して「職務」を重視しつつも変遷を遂げてきた三菱電機の(本書タイトルにもなっている)職務重視型能力主義を提示することで疑問を呈しているのが本書といえます。

そして、それを踏まえて最後の「展望」のところで、ジョブ型雇用論、働き方改革、人事制度改革の三つについて若干のコメントを加えています。

ジョブ型について鈴木さんはこう語ります。

 近年、浅薄なジョブ型雇用論がかまびすしい。・・・・

 そもそもジョブ型というのは何も新しい概念ではない。・・・・

 「職務」を重視するという考え方は、三菱電機における能力主義から役割主義への転換においても生きている。多くの企業で導入されている役割等級制度はホワイトカラーの仕事の流動性から職務評価の固定性を避けるために「役割」という表現を用いているが、その分類の基軸が何であるのか明確になっていない。しかしながら、三菱電機(ママ)おける役割等級制度の分類基軸は「役割」であり、それは広い意味で「職務」ないしそれを大ぐくりにしたものとなっている。

 本書は、日本企業においてもこれだけ「職務」にこだわった人事処遇制度を構築してきた企業・労働組合があったことを世間に知らしめることになる。三菱電機の事例は、メンバーシップ型とジョブ型の二項対立が意味をなさないことを示している。これによって、近年の過剰なジョブ型雇用論の流行に大きな槍を突き通すことになると思われる。

やや高揚した語り口で、私からすると、そもそもジョブ型・メンバーシップ型というのは現実を抽象化した理念型なので、二項対立が意味をなさないのではなく世間の振り回し方がおかしいと言うだけだと思うのですが、それはともかく確かに浅薄なジョブ型論には一服の清涼剤になる研究でしょう。

あと一点、本書の特に古い時代の記述に繰り返し出てくる勤労部次長→勤労部長を務めた中川俊一郎さんは、労働組合の日給者と月給者の区分廃止要求に対して、両者の労働の違いを盾に拒否したのですが(本書66ページ)、これが戦後日本のホワイトカラー労働時間問題の根源に位置し、やがて企画業務型裁量労働制やホワイトカラーエグゼンプションに連なる問題を、その最初期に指摘していた議論であったことは、拙著等でも繰り返し指摘をしています。

Qll_211 もう20年近く前ですが、『季刊労働法』2005年冬号に書いた「時間外手当と月給制」において、この中川俊一郎さんが登場していました。

・・・・とはいえ、だいぶ過去にさかのぼると、経営者側がこの問題に正面から取り組んだ文書も出てきます。1953年6月に日経連から出された『当面する賃金問題解決の方向』に収録された三菱電機勤労部次長の中川俊一郎氏による「月給制、日給制の検討」という論文です。ここでは、月給制の仕事は投下された労働力の成果が時間単位で把握測定できず、二、三年、場合によっては一生かかって価値が具体化されるものであり、一応月をもって区切り月給として支払っているものであるとし、2時間分の仕事の成果がちょうど1時間分の仕事の成果の2倍に当たるような時間給の仕事とは異なると強調しています。

 大変興味深いのは「日給制と基準法との関係について」というところで、こう述べています。「本質的には基準法が間違いで、これをつくった日米の当事者が、せめて私ほど日給制、月給制の問題を考えてくれれば、ああいうばかなものはできなかったと思う。われわれの考える基準法たらしめるためにも、あれは今後十分改めなければならぬ面が多いことを痛感しておる。それでもしも現在の月給者にして、時間単位で測れる日曜出とか残業手当というものが欲しいものは日給者になれと云いたい。もっとも現在は基準法に違反するからやむなく右の手当は支給はしている」。「日米の当事者」といわれては、適用除外制を有しているアメリカ側の当事者は困ってしまうでしょうが。

 

 

 

 

 

 

2024年1月11日 (木)

アメリカ労働省の労働者性判断規則

Seal_of_the_united_states_department_of_ 昨日、アメリカ労働省が公正労働基準法上の労働者性の判断規則を改定したようです。

US DEPARTMENT OF LABOR ANNOUNCES FINAL RULE ON CLASSIFYING WORKERS AS EMPLOYEES OR INDEPENDENT CONTRACTORS UNDER THE FAIR LABOR STANDARDS ACT

Frequently Asked Questions - Final Rule: Employee or Independent Contractor Classification Under the FLSA

Employee or Independent Contractor Classification Under the Fair Labor Standards Act

The U.S. Department of Labor today announced a final rule to help employers and workers better understand when a worker qualifies as an employee and when they may be considered an independent contractor under the Fair Labor Standards Act.

The rule provides guidance on proper classification and seeks to combat employee misclassification, a serious problem that impacts workers’ rights to minimum wage and overtime pay, facilitates wage theft, allows some employers to undercut their law-abiding competition and hurts the economy at-large.  

アメリカ労働省は本日、公正労働基準法のもとで労働者が被用者とみなされるか独立請負業者とみなされるかを、使用者と労働者がよりよく理解できるような最終規則を公表した。

本規則は適切な区分の指針を提供するとともに、労働者の最低賃金や残業代の権利に影響し、賃金泥棒を促進し、使用者の遵法競争を阻害し、経済全体を傷つける深刻な問題である被用者誤区分と戦うことをめざす。

官報に掲載された規則は100ページ以上になるようなので(上記リンク先)ちゃんと読めていませんが、そのうちアメリカ労働法の専門家が解説してくれるでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

ウラジーミル・プーチン『プーチン重要論説集』@『労働新聞』書評

9784065332658_2245x400 今年も『労働新聞』で書評をしていきます。私の興味の赴くままに紹介していきますが、それが皆様の読書生活に何かのご参考になれば幸いです。

さて、今年の第1回目は、もうすぐ3年目に入ろうというウクライナ戦争の背景を探ろうという訳で、ウラジーミル・プーチン『プーチン重要論説集』(星海社新書)です。

【書方箋 この本、効キマス】第48回 『プーチン重要論説集』 ウラジミール・プーチン著、山形 浩生訳/濱口 桂一郎

 ロシアがウクライナへの侵略を開始してから早くも3年近くが経った。この間、国際政治学者や軍事評論家により膨大な解説が溢れたが、そもそもプーチンは何でこんなとんでもないことを始めたのか、という一番肝心のことについては、いまいち隔靴掻痒の感を免れない。弱い者いじめをする悪者だから、で片付けてしまってはいけないだろう。戦争とは正義と正義のぶつかり合いであるとするならば、プーチンにはプーチンの正義があるはずだ。それを知るには、誰かの解説という間接話法ではなく、プーチン自身の肉声に耳を傾けるのが一番いい。そのために絶好の素材が、この500ページを超える分厚い新書版の翻訳書だ。
 プーチンの論説なんか嘘とまやかしに満ちているに違いない、と決めつけるなかれ。いやもちろん、2014年のクリミア併合時に、公式の記者会見ではロシア兵なんかいないよとうそぶいていながら、直後のテレビ生放送の直通電話では平然とロシアの特殊部隊を使ったと語ってみせるなど、そういう戦術レベルのことについては、いくらでも嘘をついていいと思っているようだ。しかしながら、なぜウクライナに攻め入らねばならないかというような思想の根本に関わるようなレベルについては、プーチンは本音を、彼にとっての真実を語っている。
 プーチンにとっての真実が全面展開されているのが、ウクライナ侵略の半年前に書かれた「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性について」だ。プーチンにとって、ウクライナなんて国は本来存在するはずのないものなのだ。なぜなら、ウクライナ人などという民族は存在せず、彼らはロシア人なのだから。千年前の古ルーシ(キエフ公国)の末裔が、その後の東(モンゴル)と西(ポーランド、オーストリア)からの侵略で引き裂かれていただけなのだ。なのに、マロロシア(小ロシア)地方に住むロシア人を「ウクライナ人」という名の民族であるかのように仕立て上げ、ソビエト連邦の構成共和国をでっち上げたのは、レーニンたち共産党の連中だ。
 そう、プーチンにとってレーニンたちのロシア革命とは、偉大なロシア帝国を架空の民族共和国に切り刻むという許しがたい犯罪行為であったようなのだ。彼は説く。「したがって現代のウクライナは完全にソヴィエト時代の産物なのだ。その相当部分は歴史的ルーシの土地に作られたのをみんな知っているし記憶している。・・・ボリシェヴィキはロシアの民を、彼らの社会実験のための無尽蔵の材料と見なした。・・・ロシアは確かに奪われたのだ」と。
 ウクライナ政府をネオナチと呼び、大愛国戦争でナチスドイツを打倒した軍事的栄光を褒め称えるからといって、プーチンは決して共産党時代のソ連を礼賛するわけではない。彼の本領はむしろ、大ロシア主義に満ち満ちた「ロシアのネトウヨ」なのだろう。だからこそ、社会主義の理想を掲げて作り上げられた偽善に満ちた「アファーマティヴ・アクションの帝国」(テリー・マーチンの著書の題名)が、ソ連崩壊後に瓢箪から駒のように新たな民族国家を生み出したことが許せないのだ。

よく見ると、プーチンの名前が「ウラジミール」になっていますな。原著は「ウラジーミル」で、私の原稿もそうなっていたはずですが、編集部がなまじ気を利かして日本で一般的な表記法にしてしまったようです。

さっそく、労働新聞編集部が修正してくれたようです。

 

2024年1月10日 (水)

2024年のキーワード:日本型職務給@『先見労務管理』

002_20240110120401 『先見労務管理』 2024年1月10日号に「2024年のキーワード:日本型職務給」を寄稿しました。

https://senken.chosakai.ne.jp/

 2024年がはじまりました。新年最初の特集は毎年恒例となりました、年間の5つのキーワードを押さえます。本年は①日本型職務給、②年収の壁、③2024年問題、④LGBT理解増進法、⑤技能実習――のキーワードについて、識者の方々に解説いただきました。

わたくしが「日本型職務給」、毎熊典子さんが「年収の壁」、土屋真也さんが「2024年問題」、森伸恵さんが「LGBT理解増進法」、佐野誠さんが「技能実習」という取り合わせです。

 岸田文雄首相はその掲げる「新しい資本主義」の基軸の一つとして、職務給の導入に熱意を示しているようだ。たとえば、2022年9月、岸田首相はニューヨーク証券取引所で「メンバーシップに基づく年功的な職能給の仕組みを、個々の企業の実情に応じて、ジョブ型の職務給中心の日本にあったシステムに見直す」と述べ、翌2023年1月の国会施政方針演説では、「従来の年功賃金から,職務に応じてスキルが適正に評価され、賃上げに反映される日本型の職務給に移行することは,企業の成長のためにも急務」と力説した。・・・

1 職務給は今までも繰り返し流行してきた
2 ジョブの値段、ヒトの値段
 ジョブに対して「定価」をつける職務給
 人事査定で昇給した蓄積の職能給
 職能給からマイナスアルファの成果主義
3 日本型職務給とは何か
 職務給を目指しつつヒトへの着目をも維持
4 リスキリングをめぐって
 能力・情意で昇給する日本では常に空回り

 

 

 

 

 

2024年1月 6日 (土)

熊沢誠さんの至言

2461887_l 『POSSE』55号をお送りいただきました。

特集は「物流危機を救うのはAIと規制緩和か?」ですが、面白かったというか考えさせられたのは、熊沢誠さんのインタビュー記事でした。

◆『イギリス炭鉱ストライキの群像』をめぐって──40年前の敗北の闘争がいま、私たちに教える経験とは 熊沢誠(甲南大学名誉教授)

ここで熊沢さんがイギリスの労働組合運動をベースに語っていることは、日本人の労働者感覚と如何にかけ離れているのかをしみじみと感じさせます。

・・・いまの日本のマスコミ用語では、「分断」が悪いという強烈な倫理コードがありますよね。私はこれはおかしいと思います。これはいわば闘争するなってことですよね。・・・

・・・日本では階級・階層間の価値観の統合を要求される。典型的な例として、対照的に例えばイギリスでは、ブルーカラーは欠席や遅刻で賃金をカットしていたのを、日本的経営が入ってきて、「従業員は平等」ということで、月給制にして引かないようにした。その代わり、労働者が休んだら本当に病気で休んでいるのか、遊びに行ったのかを管理者が巡回して見回りするようになったんです。イギリスの労働者はそれを喜ばない。賃金を引かれるのだから、休みたい時に休んでもいい。さぼれる。月給制になって賃金がカットされないのだからさぼるのは禁止というのは嫌だと。日本ではなかなか通らないでしょうが、面白い考え方ですね。

日本の企業社会は、ある意味での平等性がかなり徹底している。しかし、その裏面で労働者も会社側と同じように考えなければならないという息苦しさがある。もっとも、非正規労働者は別です。平等に扱うのは限界があるから、労働条件は劣悪ですがある意味では「自由な」非正規雇用を活用したのです。

ここには、等しく「職場の民主主義」とか「産業民主主義」という言葉を掲げながらも、その中身がほとんど正反対であるイギリスと日本の対照が浮き彫りになっています。終戦直後の日本の労働者が、労働運動が必死に追い求め、実現してきた「日本における産業民主主義」とは、エリートとノンエリートを「同じ社員じゃないか」という平等主義の沼に等しく浸けきらせることであり、それこそイギリスの労働者が、労働組合が最も忌むべきこととして忌み嫌ってきたことであったわけです。

こういういわば「原ジョブ型」とでもいうべき「分断」の感覚がかけらもない日本社会にどっぷり漬かった人々が、流行の商品よろしく「ジョブ型」を売り歩くのですから、その特殊日本的「ジョブ型」なるものが、もっとますます労働者を会社に一体化せよといわんばかりの代物に成り果てるのもむべなるかなと言えましょう。

若い&同世代の真面目な友達と話すとよく「うちの会社の上層部は危機感ない」という話になるのだが、むしろ私たちが無駄に危機感を持ちすぎている可能性もあって、一労働者なのだから会社にそこまで危機感も責任感も持たなくていいし、危機感ない上層部を心配する必要すら本来はないんじゃないか。

ってのが、駒沢誠さんの推奨する労働者根性であり、本当の「ジョブ型」はこっちに近いのです。

一点だけ指摘しておくと、ここで熊沢さんが非正規は劣悪だけど自由だといっているのはもはや過去の話になっているようです。

同誌の常見陽平の「スラムダンクの倫理とバ畜の精神」では、「会社に飼い慣らされ思考停止した『社畜』のアルバイト版」であるバ畜の問題を(皮肉たっぷりに)とりあげています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2024年1月 4日 (木)

「欲望の資本主義2024」は1/11(木)夜に放送されるようです

能登半島地震の報道のために放送休止となった「欲望の資本主義2024 ニッポンのカイシャと生産性の謎」は、1月11日(木)の夜10:40-0:09に放送されるようです。

https://www.nhk.jp/p/bssp/ts/6NMMPMNK5K/episode/te/V2YVJ35PQN/

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出演者ほか

【出演】レベッカ・ヘンダーソン,ウリケ・シェーデ,ジョエル・コトキン,ジリアン・テット,ジョナサン・ハスケル,高岡浩三,松尾豊,濱口桂一郎,マルクス・ガブリエル,【語り】やくしまるえつこ,【声】古賀慶太

詳細

進むインフレ、円安、上がらない賃金。AI時代に日本の生産性を上げる鍵は?デジタル経済の時代に静かに忍び寄る「新しい封建制」とは?「富を生むルール」激変の時代、かつて称賛された「日本的経営」の功罪を見極め、今あるべき組織の形を探り、企業の生産性の本質を問う。知性たちと考える資本主義の最前線。「やめられない、止まらない」欲望の行方は?閉塞感を打開する道は?毎年恒例の異色ドキュメント、2024年最新版。

2024年1月 2日 (火)

能登半島地震で「欲望の資本主義2024」が延期されたようです

昨年予告していた「BSスペシャル 欲望の資本主義2024 ニッポンのカイシャと生産性の謎」が、昨日発生した能登半島地震により放送延期となったようです。

ただ、正月特番なんかではないので、そのうち通常の放送時間に流されると思います。

欲望の資本主義2024 ニッポンのカイシャと生産性の謎

日本の会社の何が問題か?難問山積の時代、労働の定義も変わる。逆転の発想は?錯綜する欲望の資本主義の迷宮を解き明かすスリリングな90分。今年も元日から思考の旅へ。

進むインフレ、円安、上がらない賃金。AI時代に日本の生産性を上げる鍵は?デジタル経済の時代に静かに忍び寄る「新しい封建制」とは?「富を生むルール」激変の時代、かつて称賛された「日本的経営」の功罪を見極め、今あるべき組織の形を探り、企業の生産性の本質を問う。知性たちと考える資本主義の最前線。「やめられない、止まらない」欲望の行方は?閉塞感を打開する道は?毎年恒例の異色ドキュメント、2024年最新版。

Yokubounoshihonshugi2024

 

 

2024年1月 1日 (月)

新年明けましておめでとうございます

Dragon  昨年は、ロシアのウクライナ侵略が二年目となる中で、ガザをめぐるイスラエルとパレスチナの紛争も勃発するなど、ますます世界中に不穏な空気が立ちこめました。
 わたくしは三月に労働政策レポート『労働市場仲介ビジネスの法政策ー職業紹介法・職業安定法の一世紀』を、四月に労働政策研究報告書『労働審判及び裁判上の和解における雇用終了事案の比較分析』をとりまとめました。。また、解雇の金銭解決制度に関わって、解雇無効判決後の復職状況調査も手がけましたが、その取り纏めは今年になります。
 また七月には文春新書から『家政婦の歴史』を上梓しましたところ、幸い多くの方から共感の声をいただきました。
 今年こそは内外ともに良い年となり、皆様にとっても素晴らしい年となりますように心よりお祈り申し上げます

二〇二四年一月一日

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