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2023年12月15日 (金)

労使関係の「近代化」の非近代的帰結

283_h1_20231215141701 今日届いた『季刊労働法』冬号は、ストライキ特集ですが、その冒頭を飾る小山敬晴さんの「日本におけるストライキの停滞状況に関する法的分析―団交権中心論の歴史的意義と限界」は、日本でこんなにストライキがなくなったのは、プロレーバー法学を批判して主流化した団交権中心論のゆえではないか、と批判するものです。

Tm_mjqwx5vcmq これを読んで、この話は労働法学内部の対立だけに視野を狭めるのではなく、戦後日本社会における労使関係のあり方をめぐる議論に拡大して論じられるべきではないか、と感じました。というのも、実は今から10年前に『季刊労働法』240号に「労使関係の『近代化』とは何だったのか」という論考を書いていて、小山さんが労働法学内部で団交権中心論ととらえた発想を、より広く「労使関係近代化論」と捉え、それが日本的な家族争議的などろどろした企業内労使関係を欧米風のからりとした取引的な労使関係に転換することを唱えながら、結局はむしろ協調的な企業主義的な労使関係を確立することになったというアイロニカルな帰結を跡づけたものです。

同じような話ではないかと思われるかもしれませんが、労働法学内部の学説のどっちが主流かというような話は、所詮コップの中の話であって、それが現実社会をすべて動かしたかのような議論は、いささか労働法学の力を過信しすぎているように思われます。むしろ、労働法学内部で団交権中心論が主流化したこと自体が、労使関係近代化論の労働法学への現れであったと考えるべきでしょうし、団交権中心論が主流化する中で肝心の団体交渉が空洞化していったのも、労使関係近代化論がの非近代的帰結の現れというべきなのではないかと思います。

(参考)

4 「労使関係近代化」の帰結が「近代主義の時代」を終わらせた
 
 本連載でも繰り返し述べてきたように、日本の労働法政策は1970年代初頭までは「職業能力と職種に基づく近代的労働市場」をめざし、年功制を脱した職務給を唱道してきましたが、1970年代半ば以降は企業内における雇用維持を最優先とし、企業を超えた外部労働市場の充実は二の次三の次と見なすような政策思想に大きく転換しました。
 この転換のもとになった要因にはさまざまなものがあります。もっともよく指摘されるのは、高度経済成長下で進められた技術革新の中で、新規事業への転換が頻繁に起こり、職務給のような「古くさい」考え方ではそれに対応していけないという企業現場レベルの反発です。これを受けて、すでに1960年代末には、日経連も『能力主義管理』において職務主義から能力主義への転換を図っていました。
 なお近代主義の言葉を語り続けていた政府が最終的に立場を翻したのは1970年代半ばでした。1973年に起こった石油ショックに対して、労使一体となった要求に基づき、雇用調整助成金の導入による雇用維持を最優先とする方向に大きく舵を切ったのです。労使一体で雇用維持を求めたのは、同盟系の組合だけでなく、雇用保険法の改正に反対していた総評系の組合も含まれていました。まさに、「個々の労働者の現実から遊離した政治活動」から現場の労働者の利益に直接関わる政策課題への転換でした。この流れがやがて政策推進労組会議を経て、全民労協、民間連合、そして現在の連合につながっていくわけですが、それはまさに上述の日本生産性本部が広めようとしていた「労使関係近代化」の延長線上にあるとともに、それなるがゆえに、1960年代に経済政策サイドや雇用政策サイドが主唱していた「近代主義の時代」に終止符を打つものでもあったのです。
 「労使関係近代化」の帰結が「近代主義の時代」を終わらせたというのが、この皮肉に満ちた一部始終を総括する結論になりそうです。

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コメント

これは興味深い話ですね。当該論文は未読ですが、労働法学の見識が原因でストライキが減少したというのはいくら何でも暴論でしょう。本末転倒甚だしいと感じます。そういえば同じ出版社、労働開発研究会から蓼沼謙一『戦後労働法学の思い出』という本が昔出版されましたが、この本は現実における労使関係の動向がいかに労働法学に影響したのかを描き出しており非常に参考となりました。こういう理解が当たり前かと思っていましたが、若手の方でしょうか、学説が現実の運動に影響していると考えるお方がいるのですね。

一般論としては、学者さんによる規範的な理論が判決に影響することはありそうです。

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