駒川智子・金井郁編『キャリアに活かす雇用関係論』
駒川智子・金井郁編『キャリアに活かす雇用関係論』(世界思想社)をお送りいただきました。
働きがいのある人間らしい仕事の実現へ
経済社会の変化と人々の価値観の多様化が、性別に基づく雇用管理に変化を迫る。就職から始まるキャリアの形成過程をジェンダーの視点から分析し、現状・課題・解決への道筋を示す。働くすべての人の必携書!
雇用関係論、人事労務管理論、人的資源管理論、キャリア形成論、労働問題、労働経済論、社会政策、キャリア教育、ワークルール教育などの授業テキストとして最適。
【序章より】
自分の望む働き方を手にするには、どうすればよいだろう。たとえ安定的な企業・組織に勤めていても、上司や組織に任せているだけではうまくいかない。なぜなら、自分が望むことは、自分にしかわからないからだ。色々な業務にチャレンジしたい、管理職になりたい、育児や介護と無理なく両立させたいなど、仕事に求めることは人それぞれである。だからこそ希望する働き方に向けて、自分の労働条件や職場環境を理解し、どうすればよいかを考えて行動することが重要となる。そのためには、働くことを自分でコントロールする知識と力が必要である。幸せな職業生活を自分の手でつかむためには、働くことの仕組みを学ぶことが大切なのである。このことは、自分だけのためではなく、社会で働く人皆のための行動にもなる。
「雇用関係論」というタイトルはあんまりほかで見かけないですが、中身は下にコピペした目次を見れば分かるように、人事労務管理論とか人的資源管理論といわれるようなテキストと変わりません。ただ、一読した感想ですが、全体としてジェンダー格差やそれと絡む諸問題により敏感であり、戦後日本型雇用システムの生み出す矛盾により批判的であり、オルタナティブな雇用の在り方を唱道する傾向が若干強い点が、あえていえば特徴なのかも知れません。
序 章 なぜ雇用管理を学ぶのか〔駒川智子・金井郁〕
第1章 大卒就職・大卒採用――制度・構造を読みとく〔筒井美紀〕
第2章 配属・異動・転勤――キャリア形成の核となる職務〔駒川智子〕
第3章 賃 金――持続可能な賃金のあり方とは〔禿あや美〕
第4章 昇 進――自分のやりたいことを実現する立場〔大槻奈巳〕
第5章 労働時間――長時間労働の是正に向けて〔山縣宏寿〕
第6章 就労と妊娠・出産・育児――なぜ「両立」が問題となるのか〔杉浦浩美〕
第7章 ハラスメント――働く者の尊厳が保たれる仕事場を〔申琪榮〕
第8章 管理職――誰もが働きやすい職場づくりのキーパーソン〔金井郁〕
第9章 離職・転職――長期的キャリア形成の実現に向けて〔林亜美〕
第10章 非正規雇用――まっとうな雇用の実現のために〔川村雅則〕
第11章 労働組合――労働条件の向上を私たちの手で〔金井郁〕
第12章 新しい働き方――テレワーク、副業・兼業、フリーランス〔高見具広〕
第13章 いろいろな人と働く――SDGsによる企業の人権尊重とDE&Iの推進〔田瀬和夫・真崎宏美〕
終 章 労働の未来を考える〔金井郁・駒川智子〕
より深い学びのために
一点だけコメントしておきますと、第1章で「能力の実体論」と「能力の社会的構成論」を対比させているんですが、この対比自体は欧米社会を前提とした社会学の対立図式のものですが、日本企業における「能力」という概念の複雑怪奇さは、到底素朴な社会的構成論の次元ではないくらいであって、企業が自分で作り出した「能力」概念の深みにはまり込んで中高年の人事処遇で四苦八苦しているという皮肉きわまる状況を論じるにはやや力不足な感じがします。
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